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ニコ生にHEVCを適用する実験。画質向上やトラフィック削減を目指す
(2014/11/20 18:56)
ドワンゴとNTTは20日、2013年7月より開始した業務提携の取り組みの一環として、H.265/HEVC(以下HEVC)を、ニコニコ生放送に適用する共同実験を開始。さらに、niconicoの「視聴品質最適化技術」の実証実験も開始した。
HEVCをニコニコ生放送に適用する共同実験
4K、8K映像などで使われる、次世代映像符号化規格のHEVCを「ニコニコ生放送」に適用する共同実験。HEVCは、従来のH.264と比べて処理負荷が高く、ライブ配信サービスを低コストで行なうことが困難だった。
NTTではHEVCを高速に圧縮するソフトウェア技術の研究を行なっており、それを低レート・小画面動作向けに最適化。H.264と比べ、データ量を最大50%削減できるほか、小画面に合わせて領域分割処理や並列処理を最適化し、データ量の割り当てを細かく制御する事で、小画面・低レート動作時の実行速度と画質が向上したという。
これにより、低レートでも小画面を高画質にリアルタイム圧縮できるソフトウェア技術を確立。PCだけでリアルタイム圧縮が可能となり、安価なライブ配信サービスを構築できるという。
共同実験では、この技術をニコニコ生放送に適用、処理性能や画質、帯域削減効果を実証。ニコニコ生放送において、画質の向上やトラフィック削減効果が期待できるとする。
「視聴品質最適化技術」の評価と実証実験の開始
niconicoの体感品質向上に向けた共同実験の取り組みとして、NTTは「視聴品質最適化技術」を実現する品質APIの試作環境を設置。ドワンゴは、この品質APIに接続し、最適化を可能とする機能をAndroidスマートフォン向けのアプリに組み込んだ。
Android向けniconicoアプリを利用している一部ユーザーの視聴情報を、NTTの品質APIに送信、レコメンド情報を受けて配信レートを最適化した場合に、どの程度体感品質が向上するのかを分析する実験を実施した。
最繁時には33%のユーザーの再生が停止しているところ、視聴品質最適化技術を適用すると発生率を1~2%に低減された。体感品質(QoE)も、最繁時に35%、一日平均でも20%向上できるという。また、配信レートを最適化することで、通信データ総量も17%低減できるとする。
大きな品質改善が見込める事から、ドワンゴでは11月20日より、Android向け公式アプリを利用しているユーザーから、無作為に抽出して実証実験を開始。「ユーザーが再生停止に遭遇する率は激減し、体感品質の向上が期待できる」という。
小林幸子武道館公演の全天球映像配信も
ドワンゴとNTTの共同開発成果はこれだけでなく、11月17日に配信された、歌手・小林幸子氏の日本武道館公演のニコニコ生放送に、「全天球映像向けインタラクティブ配信技術」を実装した。
ライブ会場に設置した360度全天球カメラの映像から、視聴者が「Oculus Rift」などのヘッドマウントディスプレイを通して好きな方向を自由に見渡すことのできる新しい視聴サービスを提供した。
全天で広範囲に撮影された映像をいくつかの領域に分割し、個別に高品質エンコードし、ユーザーが見ている方向に応じた領域の高品質映像を選択配信する技術だが、見ている方向の領域のみが高品質に視聴できることから、全天球映像全域を高品質に配信するよりも限られた帯域で配信できるのが特徴。
概要は2月に発表し、その後もシステムをライブ化するための技術開発を進めた事で、エンコード処理を実時間で行なうシステムが構築できたという。