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ブラジルから始まる中南米4Kの波。一大市場を狙う各社がSET EXPO 2015に

 中南米最大規模の放送機器展示会である「SET EXPO 2015」(主催・ブラジルテレビ放送技術協会=SET)が、2015年8月25~27日までの3日間、ブラジル・サンパウロのEXPO CENTER NORTEにおいて開催された。

SET EXPO 2015が開催されたブラジル・サンパウロのEXPO CENTER NORTE

 日本方式の地上デジタルテレビ放送技術を、海外で初めて採用したブラジルでは、2018年の完全デジタル化に向けた準備が急ピッチで進んでいるほか、2016年にはリオデジャネイロ オリンピック/パラリンピックが開催されることで、次世代の放送機器に対する関心が高まっている。

総務省は、日本の放送技術を展示する「日本パビリオン」を出展
日本における4K/8Kのロードマップについても説明。日本のISDB-Tの取り組みを紹介した

 関係者によると、現在、ブラジル全体には約600局の放送局があるが、そのうち、デジタル化の準備ができているのは約4割。2015年11月にはブラジリア近郊のリアデルジにおいて、先行的に完全地デジ化への移行実験が行なわれる予定で、今後は、ブラジル国内において地デジ化への機運が一気に高まることが予想される。また、リオデジャネイロ オリンピック/パラリンピックの開催に向けて、フルHD化や4Kに対する関心も高まっており、それに向けた放送設備への投資が加速することも見込まれる。ブラジルでの動きが中南米全域へと波及することも見込まれる。

東芝はブラジルで展開するISDB-TB関連製品を展示
日本からはキヤノンも出展。終日多くの関係者が詰めかけていた
日立国際八木ソリューションが放送システムを展示

 だが、その一方で、急激な為替変動、ブラジル国内の景気悪化などのマイナス要因もあり、これが、今後の放送設備への投資にどう影響するかが懸念材料ともいえる。多くの放送局が導入しやすいように価格を抑えた製品群の展示も相次いだが、その多くが輸入品であるため、高い関税の影響も気になるところだ。

 そうした中で開催された今回の「SET EXPO 2015」は、地デジ時代や4K時代を見据えた放送用カメラやスイッチャー、あるいはIPネットワークやクラウドを活用した映像伝送機器やサービスの提案などが相次いでいた。ブラジルの放送局向けカメラで圧倒的なシェアを持つソニーと、第2位の立場からそれを追うパナソニックのSET EXPO 2015での展示を紹介する。

 ソニーブースでは、今年4月に米ラスベガスで開催されたNABの展示内容を踏襲し、新たな出展はなかったが、4K映像制作に向けたカメラやライブスイッチャーなどを展示。新製品「HDC-4300」は、これまでソニーが得意としてきた映画などのハイエンド映像制作向けや、高品位ドラマ撮影向けの4Kカメラとは一線を画し、4Kでのスポーツ中継やスタジオ撮影に適した製品として投入し、注目が集まっていた。

SET EXPO 2015のソニーブースの様子
ソニーブースでは4Kを切り口にした展示に力を注いだ
世界初の2/3型3板式4Kイメージセンサーを搭載した4K/HD対応システムカメラ「HDC-4300」。スポーツ中継にも最適なカメラとして提案していく
4Kライブに対応した「PMW-F55」。4K時代の新たな提案になる
XDCAMカムコーダー「PXW-X500」はQoS対応のライブストリーミング機能を搭載する
XDCAMショルダーカムコーダ「PXW-X320K」。多様な用途に利用できるベーシックモデル
ネットワークRXソリューション「PWS-100RX1」。ソニー独自のQoS技術により安定したライブストリーミングを実現する
MVS-3000Aなどのスイッチャーソリューションを展示
タッチパネルで簡単操作ができるスイッチャー「AWS-750」
4Kメモリープレーヤー「PMW-PZ1」。多彩なインターフェースを持ち、ディスプレイと接続して4Kコンテンツをダイレクトに再生する
プロダクションビデオサーバー「PWS-4400」。4KからHDまでをカバーする
光ディスク技術を活用したオプティカルディスク・アーカイブソリューション「ODS-L30M」
ソニーによるシステムワークフローソリューションの展示
ソニーが持つ各種メディアソリューションの提案も行なっていた
液晶テレビ「BRAVIAシリーズ」も展示

 一方、パナソニックは、このほど、オリンピック会場への投入が決定したシステムカメラをはじめ、ブラジル市場への展開を強く意識した放送局用カメラの展示に力を注いでいた。

SET EXPO 2015のパナソニックブースの様子

 なかでも、注目を集めていたのは、放送局向けカメラの戦略製品ともいえる4Kカメラ「AG-DVX200」。メニューをポルトガル語で表示し、保証期間を3年から5年に延長したブラジル国内向け専用モデル「AG-DVX200PB」を投入することを新たに発表。「ブラジル市場向けのモデルは、1年前に発売したAG-AC8PBに続いて2機種目。2万レアル(約70万円)の価格設定と、フリーカメラジャーナリスト、ウェディングカメラ用途などに適した仕様、赤を配した思い切ったデザインが高い評価を得ている」という。

オリンピックのTOPスポンサーとしての強みを生かして、各種カメラを中心に展示
パナソニックの放送局向けカメラの戦略製品ともいえる4Kカメラ「AG-DVX200」
ブラジル市場向け専用の第1号製品となった「AG-AC8PB」
ニュース用などのスタジオ利用を想定したHDカメラ「AJ-PX380G」。ブラジル市場のニーズを取り入れて発売したデジタル化の向けた普及モデル
リオオリンピック各会場内に設置されたディスプレイへの表示用として導入が決定したカメラ「AJ-PX800P」。33会場に約40台が導入される。機動性の高さと、上位モデルと同等の画質が評価された
こちらもリオオリンピック会場への導入が決定したスイッチャー「AV-HS6000」。6台が導入される
「AV-HS450」もリオオリンピック会場への導入が決定。約40台が導入される
クラウドを通じて映像の配信を行う「P2 CAST」もデモンストレーションした
オリンピックの放送を支えてきたパナソニックの歴史も紹介
1988年のカルガリーオリンピックでは、「MII」と呼ぶ大型のテープシステムで記録
同じく1988年のソウルオリンピックでは「D3 1/2デジタル」システムを採用
1998年の長野オリンピックではデジタル化が促進。「DVC PRO」が採用された
2008年の北京オリンピックで採用されたAVC Intra。P2HDシステムとして注目を集めた
2016年のリオデジャネイロオリンピックでは4Kの採用がどこまで進むかに注目が集まる
家庭用液晶テレビの需要も増加しているという。パナソニックはブラジル国内で4Kテレビの生産も開始した
パナソニックが開発した超短焦点レンズ「ET-D75LE90」を搭載したDLPプロジェクタ「PT-DZ21K」
映画業界向けなどに投入した4Kカメラ「VARIAM 35」。中南米市場におけるパナソニックの新たな挑戦となる
1.2TBのブルーレイディスクマガジンを使用して、最大638TBのデータをアーカイブできるソリューション
プロジェクションマッピッングのデモスレトーション

(大河原 克行)