パナソニック、中期経営計画「GT12」を策定

-TV黒字化は'11年度必達。'12年度の3D TV構成比7割へ


大坪文雄社長

5月7日発表


 パナソニックは7日、2012年度を最終年度とする新中期経営計画「Green Transformation 2012(略称・GT12/ジー・ティー・トゥエルヴ)」を発表した。

 2012年度の経営目標として、売上高10兆円、営業利益率5%以上、ROE10%、フリーキャッシュフローが3年間累計で8,000億円以上、2005年度基準で5,000万トンのCO2削減貢献を掲げた。

 大坪文雄社長は、「三洋電機を加えた新パナソニックグループとして、エレクトロニクスナンバーワンの環境革新企業になるというビジョンの実現に向けた、最初のステップを刻むのがGT12。環境貢献と事業成長の一体化をはかり、成長への大胆なパラダイム転換と、環境革新企業の基盤づくりに取り組むことで、2012年度には成長力あふれるパナソニックグループになることを目指す」とした。

 具体的には、「成長へのパラダイム転換」と「環境革新企業の基盤づくり」を掲げ、成長へのパラダイム転換では、「既存事業偏重からエナジーなど新領域へ」、「日本中心から徹底的なグローバル志向へ」、「単品志向からソリューション・システム志向へ」の方針を打ち出した。また、「環境革新企業の基盤づくり」では、グローバルエクセレンス指標の追求を目指す「成長をベースとした収益力強化」、グリーン指標No.1の基礎固めを行なう「環境貢献の拡大」をあげた。

GT12のグループ経営目標新中期計画のテーマ新中期計画の位置付け

 さらに、2012年度の目標として、ネットワークAV、エナジーシステム、冷熱コンディショニング、セキュリティ、ヘルスケア、LEDの6つの重点事業における全社売り上げ構成比を、2009年度実績の35%から45%に拡大。とくにエナジーシステム事業は5,400億円の事業規模を8,500億円に拡大するとした。さらに2018年度には、重点事業分野の構成比を55%以上、エナジーシステム事業の規模を3兆円以上を目指す。

 また、新興国の売上高は2009年度実績で4,400億円であったものを、2012年度には7,700億円を目指し、海外売り上げ比率を48%から55%に引き上げ、さらに2018年度には60%以上とする。

 「2012年度には売上成長の8割にあたる1兆2,000億円をこの6つの重点事業で目指すことになるが、とくにネットワークAV、エナジーシステム、冷熱コンディショニングの3つの事業は、グループの中軸事業と位置づけ、全社の販売および収益を牽引していくことになる」(大坪社長)とした。

 また、大坪社長は、「薄型テレビやデジタルカメラ、ブルーレイディスク、モバイルAVなどのネットワークAV事業には、2010年度からの3か年で2,200億円の投資を行なう」としたほか、「ネットワークAV事業は、2009年度実績で1兆6,000億円だった売上高を、年平均10%の成長により、2012年度には2兆1,500億円の規模を目指す」とし、「プラズマテレビは3Dにおける優位性を徹底追求するとともに、大幅な消費電力の引き下げにより、商品力を高める。また、今年度からは液晶テレビにLEDバックライトモデルを導入し、省エネナンバーワンを訴求ポイントとして展開していく」などとした。

薄型テレビの方針ネットワークAV事業では、薄型テレビ商品力強化などを図る「Transformation」の指標

 2012年度には、PDPテレビで年間1,000万台、液晶テレビで年間2,000万台の生産が可能に体制を確立できるとしており、2012年度における3Dテレビの構成比は70%、LEDバックライト採用液晶テレビの構成比は60%を目指すという。

 さらに大坪社長は、「薄型テレビは売り上げ成長以上に、収益改善が最大の課題と考えており、セットおよびモジュールのアジアシフトや、部品点数半減などによる大幅な原価低減に取り組む。加えて、2011年度は新規投資を抑制し、これまでの投資回収を徹底して行なう。2011年度にテレビ事業の黒字化を必達目標にする」とした。

 また、新興国向けの展開では、2012年度には、全社で3,300億円の増販を計画。新興国向けの薄型テレビの販売計画として、2012年度には1,100万台を目指すとした。今年6月には、インド市場向け専用に開発した32型液晶テレビを発売する計画で、業界ナンバーワンの省エネ、高出力スピーカーというこだわりの一方で、台座は簡易型、バックライトは一本と割り切ることで、インドの中間所得層が月収で購入できる価格を実現したという。

2010年度見通しとGT12

 三洋電機とのコラボレーションに関しては、2012年度には営業利益ベースで800億円以上のシナジー効果を発揮する見通しを示しながらも、「重複事業の見直しなどにより、3,000億円規模の事業からの撤退を見込む。撤退事業の個々の内容については、現時点では話すことはできない」などとした。

 ただし、パナソニックと三洋電機の白物家電事業における開発、生産の一元化を図る姿勢を明らかにした。

 また、5%以上の営業利益率という中期経営計画の目標については、「5%に達しない事業は無くすという強い意志によるもの」として、事業撤退の基準を営業利益率5%の維持に置くことも明らかにした。



■ 3Dテレビ受注は計画の3倍。10年度はシェア50%以上獲得へ

 同日に発表した2009年度連結決算では、売上高は前年比4%減の7兆4,180億円、営業利益は161%増の1,905億円、税引前損失は前年の3,826億円の赤字から293億円の赤字へと赤字幅が縮小。当期純損益は前年の3,790億円の赤字から、1,035億円の最終赤字となった。三洋電機の2010年1~3月分および為替の影響を除いた売上高は前年比6%減となった。

 

2009年度の通期連結決算概要
 「第4四半期はエコポイント制度の影響もあり、薄型テレビは国内で92%増となり、エアコン、冷蔵庫も好調に推移した」という。

 2009年度通期業績における地域別の売上高は、日本が前年比6%減の3兆9,944億円、米州が7%減の9,179億円、欧州が15%減の7,713億円、中国が7%減の9,035億円、アジアが2%増の8,309億円となった。

 「アジアでは薄型テレビやデシタルカメラが好調。それに対して、ロシア、東欧の景気低迷が影響した欧州で前年実績を大きく割り込んだ」(上野山常務取締役)とした。

 セグメント別では、デジタルAVCネットワークの売上高が前年同期比9%減の3兆4,095億円、営業利益は前年の32億円から大幅に回復し、873億円となった。

 2009年度におけるプラズマテレビの出荷実績は前年比22%増の682万台、液晶テレビは102%増の902万台。薄型テレビ全体で58%増の1,584万台となった。地域別には、日本が75%増の412万台、海外が28%増の991万台、パネルの外販が179万台。また、テレビの販売金額は、前年比1%増の1兆57億円。そのうち、プラズマテレビが5%減の5,481億円、液晶テレビが13%増の3,834億円となった。

 デジタルカメラは、2%減の2,038億円。BD・DVDレコーダは6%増の1,381億円、そのうち、BDレコーダおよびBDプレーヤーは40%増の1,030億円。ビデオムービーは18%減の618億円となった。

 アプライアンスの売上高は7%減の1兆1,423億円、営業利益が36%増の665億円。デバイスの売上高は11%減の1兆53億円、営業利益が408%増の361億円。電工・パナホームは売上高が8%減の1兆6,321億円、営業利益が13%減の347億円。三洋電機の売上高が4,048億円、営業損失がマイナス7億円。その他事業の売上高は6%減の1兆122億円、営業利益は18%減の197億円となった。

上野山常務取締役業績の推移デジタルAVCネットワーク

 一方、2010年度の連結業績予想は、売上高が前年比19%増の8兆8,000億円、営業利益は31%増の2,500億円、税引前利益は1,793億円改善となる1,500億円の黒字、当期純損益は1,535億円改善の500億円の黒字を目指す。

 三洋電機の売上高を年間ベースにした前年対比では、売上高では2%増となる。

 セグメント別の計画は、デジタルAVCネットワークの売上高が前年同期比1%増の3兆4,500億円、営業利益が337億円増の1,250億円。デジタルAVCネットワークの主要ドメイン別では、AVCネットワークス社の売上高が2%増の1兆7,351億円、営業利益が452億円増の110億円。パナソニックモバイルコミュニケーションズの売上高は9%減の2,805億円、営業利益が63%減の40億円とした。

 2010年度におけるプラズマテレビの出荷計画は前年比13%増の770万台、液晶テレビは47%増の1,330万台。薄型テレビ全体で33%増の2,100万台とした。国内は、前年比8%増の450万台、海外は26%増の1,250万台。パネルの外販が400万台を見込んでいる。

 「第3四半期の業績発表時では、2010年度の薄型テレビの計画を2,000万台としていたが、3Dテレビが当初計画の3倍の受注に達しているほか、2010年モデルの反響が大きいことから、100万台上乗せした。3Dテレビは、全世界で100万台の出荷を計画しているが、それ以上に伸びる可能性もある。2010年度は3Dテレビで50%以上のシェア獲得を目指す」とした。

 価格下落については、「2009年度実績では、42型プラズマテレビが2割程度の価格下落となったが、2010年度は6%程度の下落。32型液晶テレビでは2009年度は2割の下落に対して、2010年度は14%程度の下落に留まると見ている」とし、「3Dテレビの登場や、LED化することで価格を引き上げていくこと、拡売費の見直しを行なうとともに宣伝費を投入することで、小売り価格の引き上げにつなげる」などとした。

 だが、「2010年度上期は、今年1月から稼働した尼崎の新工場、4月から稼働する姫路の新工場の立ち上げによる稼働損や歩留まりの問題などもあり費用がかさむことから、テレビ事業は赤字のままだろう。下期は稼働数量の増加、合理化の影響で黒字化すると見ている。通期の計画では赤字となるが、量産の前倒しなどにより黒字化を目指したい」とした。

 アプライアンスの売上高は4%増の1兆2,500億円、営業利益が16%増の770億円。デバイスの売上高は5%増の9,800億円、営業利益が41%増の510億円。電工・パナホームは売上高が1%増の1兆6,500億円、営業利益が24%増の420億円。三洋電機の売上高が1兆7,500億円、営業利益が0。その他事業の売上高は1%増の1兆200億円、営業利益は57%増の310億円とした。

三洋電機デバイスAVCとPMCの概況


(2010年 5月 7日)

[Reported by 大河原克行]