ソニー、新機構採用で動画撮影も可能なデジタル一眼レフα
-ミラーを透過して撮影。動画はフルHD AVCHD対応
ソニーは、フルHDのAVCHD方式で動画撮影も可能なデジタル一眼レフカメラ、「α55」(SLT-A55V)と、「α33」(SLT-A33)を9月10日に発売する。価格はどちらもオープンプライス。ボディのみの店頭予想価格は、α55が9万円前後、α33が75,000円前後。
レンズキットも用意。「DT 18-55mm F3.5-5.6 SAM」の標準ズームキットが、「α55」の場合95,000円前後、「α33」は8万円前後。前述の標準ズームと高倍率望遠ズーム「DT 55-200mm F4-5.6 SAM」の2本をセットにしたWズームキットもあり、「α55」が115,000円前後、「α33」が10万円前後で用意する。
α55に標準ズームを装着したところ | α33。ボディサイズは両機種で共通 |
α55に「DT 18-55mm F3.5-5.6 SAM」を装着したところ | α33に「DT 18-55mm F3.5-5.6 SAM」を装着したところ | 高倍率望遠ズーム「DT 55-200mm F4-5.6 SAM」の2本をセットにしたWズームキットも用意する |
APS-Cサイズの「Exmor APS HD CMOS」センサーを搭載したデジタル一眼レフカメラ。2機種の大きな違いは画素数で、α55は有効約1,620万画素、α33は有効約1,420万画素。連続撮影速度がα55が秒間約10コマ、α33が約7コマ。また、α55のみGPSを備えている。外形寸法は約124.4×84.7×92mm(幅×奥行き×高さ)で共通。重量(本体のみ)はα55が約441g、α33が約433g。
最大の特徴は、2機種とも「Translucent Mirror Technology」と呼ばれる、従来の一眼レフカメラとは異なる機構を採用した事。内部にミラーを搭載しているのは通常のカメラと同じだが、ミラーが透過型となっており、レンズからの光の大部分がミラーを素通りし、常にCMOSセンサーに光が当たっている状態になる。そのため、デジタル一眼と異なり、ミラーを上げないまま撮影やライブビュー表示&撮影ができる。
Translucent Mirror Technologyの概要。左が一般的な一眼レフカメラの構造、右がTranslucent Mirror Technologyの構造 | ミラーボックス部分。ミラーが降りている状態だが、ミラーそのものが透過し、背後が透けて見えている事がわかる |
レンズを外したところ。従来の一眼レフで言うところのミラーが降りている状態だが、素通しして背後のCMOSが見えている事がわかる |
ミラーは従来の一眼レフのように、CMOSに対して斜めに配置されており、CMOSに光が透過する以外に、一部の光は上方向に反射する。上部には位相差検出用の15点対応AFセンサーが配置されており、位相差検出方式でのAFを実現。画像のコントラスト検出でAFを行なうミラーレスのデジタルカメラと比べ、高速なAF動作を実現しているのが特徴。
ペンタプリズムは内蔵しておらず、電子ビューファインダー(EVF)を装備。背面の液晶、もしくはEVFを見ながら撮影を行なう。なお、撮影時もミラーを透過して光がCMOSに届くため、ミラーはアップ/ダウンしない。
この構造を採用する事で、低価格なモデルながらα55では秒間約10コマという高速連写と、高速連写時でも被写体を追従できるAF性能を実現。従来の一眼レフと比べても動作がシンプルになっており、連写時にミラーアップ/ダウン、ミラー衝撃吸収、AF測距、AFモーター駆動という4つのアクションが必要なところ、「Translucent Mirror Technology」の場合はAF測距、AFモーター駆動の2アクションのみを繰り返して連写ができるため、より素早いAF追従が行なえるという。
ミラーボックスの上部に突き出た部分がAFセンサー部 | カットモデル。左がレンズマウント、右がセンサー。左から入って来た光(黄色の矢印)が、センサーと、上部のAFセンサー導かれることがわかる |
この結果、ペンタプリズムを搭載しない事や、ミラーボックス内のメカの削減などでボディを小型/軽量化できる事や、常時ライブビュー撮影が行なえるといった、ミラーレス機に近い特徴を持ちつつ、ミラーレスのコントラスト検出ではなく、位相差検出型の高速なAFや高速連写機能といった通常の一眼レフの利点も取り込んだモデルとなっている。連続撮影枚数はJPEGのFINE設定でα55が35枚、α33が16枚。
なお、透過ミラーを通す事で光量は落ちるが、その分をAFセンサーや撮像素子の感度向上で補っているという。また、ミラーを透過させた後の光を基準に露出計算をしているため、例えば単体の露出計を用いて算出した絞り、シャッタースピード、ISO感度設定などをα55/33に適用しても、通常のカメラと同様の適正な露出の画像が撮影でき、暗めの画像が撮影されるような事は無いという。
自動センサークリーニング機能を装備。撮影時にミラーを上下する必要は無いが、センサーを直接クリーニングするために、ミラーを上げる事は可能。また、ミラーには汚れが付きにくい処理を施しているという。
■ フルHDのAVCHD動画撮影にも対応
背面。右肩の部分に赤い録画用ボタンを備えている |
フルHDのAVCHD動画撮影にも対応。動画でも高速な位相差方式のAFが利用できるのはレンズ交換式デジカメとして世界初で、速く動く被写体にもピントが合わせ続けられるという。背面には動画撮影専用ボタンを備え、素早く撮影が開始できる。
動画はAPS-Cサイズのセンサーを活かし、奥行き感のある映像が撮影可能。様々なAマウントレンズで、動画時撮影中のAFが可能。ボディ内手ブレ補正も備えているが、同社ビデオカメラなどで採用されているより強力な手ブレ補正機能の「アクティブモード」は備えていない。
オートだけでなく、絞り優先モードでの動画撮影も可能(MF設定時)。フォーマットはAVCHDで、解像度は最大1,920×1,080ドット、60i(センサー出力は29.97fps)。ビットレートは17Mbps。MP4形式での録画も可能で、その場合は1,440×1,080ドット/30p/12Mbps、640×480ドット/30p/3Mbpsとなる。
内蔵のステレオマイクで録音するほか、指向主軸角を90/120度に切り替えできる別売ステレオマイク「ECM-ALST1」(10月14日発売予定/15,750円)も用意。VG10と同時に発表された、モノラルのショットガンマイク「ECM-CG50」も使用できる。
新開発の有効1,620万画素(α55)/有効約1,420万画素(α33)のCMOSセンサを採用。読み出し速度をより高速化しているほか、組み合わせる画像処理エンジン「BIONZ」のアルゴリズムもCMOSに合わせて最適化。ノイズリダクションや画像処理を改良する事で、高感度でもノイズの少ない撮影が可能という。ISOは100~12800まで選択可能。
さらに、同社のコンパクトデジカメにも搭載されている、様々な撮影補助機能も用意。夜景などを撮影する際に、6枚の画像を高速連写し、自動的にカメラ内で高精度に重ねあわせることで、最大約2段分の低ノイズを実現する「マルチショットNR」機能も利用できる。このモード使用時にはISO 25600も設定可能。
コンパクトデジカメでは「手持ち夜景モード」として採用されているものだが、「マルチショットNR」では任意の露出設定(シャッタースピード/F値/ISO)が設定できるのが特徴。設定不要な「手持ち夜景モード」も備えている。
ほかにも、明暗差の大きい被写体でワイドダイナミックレンジを実現する「オートHDR」や、カメラを横にスイングしながら撮影するとパノラマ画像が撮影できる「スイングパノラマ」機能、同様にスイング撮影しながら素子から左目用と右目用の画像を取り出し、3D静止画を撮影する「3Dスイングパノラマ」機能も備えている。
液晶は回転も可能なバリアングル・チルト機構タイプ |
α55は、レンズ交換式デジタルカメラとして世界で初めてGPSも搭載。撮影画像にGPSデータを記録でき、付属ソフトのPicture Motion Browser(PMB)などで地図と共に画像が確認できる。BRAVIAのフォトマップ機能を使い、テレビで地図を確認しながらの鑑賞も可能。PMBはWebサービスへの画像投稿にも対応する。
背面モニタは3型/約92万画素で、TruBlack技術を用いたエクストラファイン液晶。バリアングル・チルト機構を採用する。EVFは0.46型で、有効約115万画素。視野率100%で、ソニーでは「Tru-Finder」と名付けている。記録メディアはメモリースティックデュオとSD/HC/XCカードに対応。
α55の撮影モードダイヤル。秒間約10コマの高速連写用モードを備えている | 背面モニタを縦位置にして撮影する事もできる | 各種操作ボタンの写真。左下に動画撮影用の赤いボタンを備えている |
■ 新しいAマウントレンズも発表
Distagon T* 24mm F2 ZA SSMを装着したところ |
Distagon T* 24mm F2 ZA SSM | 85mm F2.8 SAM | DT 35mm F1.8 SAM |
■ ソニースタイルではオリジナルセットを用意
ソニースタイルではα55/33の本体に、撮影に便利なアクセサリをセットにしたオリジナルセットを2種類発売する。いずれもセットの総額に対して5%のソニーポイントが付与されるのが特徴。
「アウトドアセット」にはバッテリ、ソフトキャリングケース、MCプロテクタ、液晶保護セミハードシートが付属。「インドアセット」には、グリップベルトと外部フラッシュが付属する。ほかにも、購入者全員に長期保証5年ワイドが付属。パノラマ写真の無料プリント券(1枚)や、αレンズの無料お試し券(二泊三日)もプレゼントされる。
「アウトドアセット」にはバッテリ、ソフトキャリングケース、MCプロテクタ、液晶保護セミハードシートが付属 | 「インドアセット」には、グリップベルトと外部フラッシュが付属 |
■ 「写真の腕が上がれば、それに応えてくれるカメラ」
パーソナル イメージング&サウンド事業本部 イメージング第3事業部の勝本徹事業部長 |
新機構を採用することで、普及機でも高速な連写機能や、連射時でも追従できるAF機能を採用した理由については、「誰にでもかけがえのない瞬間があり、その瞬間を捉える嬉しさ、撮り逃した悔しさがある。それを撮り逃さないために何ができるかを考えた」と説明。
さらに、「一眼レフは、写真の腕が上がると、高価な機種に乗り換えていくのが一般的だが、新機種では腕を磨けば磨くほど、いつまでもそれに応えてくれるようなカメラを目指した。そのために高いISO感度設定が利用できたり、ハイスピードな連写機能を持たせ、プロ機で撮れるような写真が、いつかは撮れるようなカメラになっている」と自信を見せた。高い連写機能を持つことから、「スピード一眼」をキーワードに訴求していくという。
Translucent Mirror Technologyの上位機種への投入については、「マーケットからの要望に応えていくのが基本だが、大きな流れとして、中級、上級機種にも採用していきたいと考えている。かといってペンタプリズムを排除するというわけではなく、今後の機種はあくまで市場の要望による」とした。
筐体のデザインについては、「(EVFを採用し、ペンタプリズムが無いなど、機構的には従来の一眼レフとまったく違う形状にもできるが)何十年も培われた一眼レフのデザインは、既に完成の域に達していて、各パーツにおける光軸の一致や、グリップの形状など、大きく変えにくい部分がある。長く使っていただきたいモデルでもあり、今回はデジタル一眼の伝統的なスタイルの中に、どれだけ突き抜けた機能を入れられるかに挑戦した。デザイン面は開発が同時進行していたNEX-5/3で徹底的に追求している」という。
国内のマーケティング戦略は、ソニーマーケティング デジタルイメージングマーケティング部の下野祐氏が説明。NEX-5/3のような小型一眼は主に女性ユーザーに支持され、被写体もパーソナルなものが多いのに対し、既存の一眼はファミリー層が主に利用し、被写体も子供や孫といったファミリーが多い事に着目。子供がスポーツをしたり、瞬間的に見せる表情を高速レスポンスで撮影する感動を訴求していくという。
そのため、テレビCMも子供をメインにし、キーワードは「はじけろ、こども!」に設定。プロモーションイベントとして、9月2日~10月中旬にかけ、銀座ソニービルに遊園地をテーマにした撮影体験コーナーを設け、小さなジェットコースターも設置。高速AF&連写を来場者に体験してもらうなどの施策を発表した。
台数ベースでのデジタル一眼市場シェア。ソニーはNEX-3/5の貢献でシェアを伸ばしている | 通常の一眼レフユーザーと、小型一眼レフユーザーの被写体や利用者の違い | 銀座のソニービルに小さなジェットコースターを作るという |
CMのキーワードは「はじけろ、こども!」に決定 | 発表会場ではマウンテンバイクの選手を室内で、α55で撮影するコーナーが用意された |
(2010年 8月 24日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]