ミニレビュー

AirPods Max(USB-C)がケーブル接続でロスレス・低遅延に。その実力をチェック

AirPods Max(USB-C)。色はブルー

AirPods Max(USB-C)が、ケーブル接続でのロスレス再生・低遅延再生に対応した。

筆者の私物にもアップデートが降ってきたので、取り急ぎ色々と試してみた。そうすると、色々面白いことがわかってきた。

アップデートは時間をかけて

今回アップデートの対象となるのは、アップルの「AirPods Max」の中でも、昨年9月に発売された「USB-C版」だ。残念ながら、Lightning端子のモデルはロスレス対応しない。

アップルの定めた条件によれば、利用には、4月2日に公開された、iOS18.4・iPadOS 18.4・macOS Sequoia 15.4が必要になるという。

これらのOSへとアップデートした上で、

  • Bluetoothで接続可能な範囲にある
  • AirPods Maxが充電状態にある

状態だと、ファームウエアのアップデートが行なわれる。アップデートには30分以上かかり、途中でAirPods Maxを使うと中断されてしまう。そのため、長めに放置しておくのが良いだろう。

しばらく経ったら、対応機器側でファームウエアのバージョンを確認してみてもらいたい。「7A291」から「7E101」になっていればアップデートは終了だ。

バージョンが「7A291」から「7E101」になれば(赤枠内)アップデート完了

拍子抜けするほど接続はシンプル

アップデートが終わってしまえば、あとはシンプルだ。特別な設定は何もない。単純にUSB Type-Cのケーブルで、iPhone/iPad/Macと接続するだけだ。

AirPods MaxとiPhoneなどをUSB Type-Cケーブルで直接つなぐ

初回には「USB-Cロスレスオーディオ」に関する通知が出るが、これも「続ける」を押せばいい。

初回接続時には通知ダイヤログが

つながってしまうと、音質を除くと、有線なのかBluetoothなのかを区別する方法すら少ない。デカデカと「ロスレス」という表示が出るわけでも、対応周波数が表示されるわけでもない。

表示をよく見ると「USBオーディオ」という表記がある。これが有線接続の印だ。

iPhone上での表記。よく見ると中央(赤枠内)に「USBオーディオ」の文字が
Macでのオーディオ表示。ここもよく見ると(赤枠内)「USBオーディオ」表記

ケーブルも特にセンシティブではない。一般的にはAirPods MaxやiPhoneに付属する「USB-Cケーブル」でいい。これはUSB 2.0仕様だが、帯域的に問題はなさそうだ。

特殊であるのは、この状態でもUSBだけで接続しているわけではなく、並列でBluetoothでもつながっている……ということだろう。

USB Type-Cケーブルで接続中だが、Bluetoothでも同時につながっており、空間オーディオなどが使える

そのため、ヘッドトラッキングを使った空間オーディオや、各種ノイズキャンセル機能もそのまま使える。

音声を伝送するための帯域をケーブルで補ったもの……と考えれば良さそうだ。

逆に言えば、ワイヤレスでロスレス対応するわけではない。

また、あくまで「48kHz/24bitまでのロスレス」対応であり、ハイレゾロスレスではない点に注意が必要だ。

音質は素直に「ロスレス」で改善、遅延はBluetoothの半分に

では音質はどうだろうか?

Apple Musicのロスレスおよびハイレゾロスレス音源を中心に聴いてみたが、確かに音は良くなる。キレが良くなって澄んだ音になるのだが、AAC伝送によるロッシーな音源がロスレスになればそうなるだろう……という素直な変化と言える。

そもそもAirPods Maxは、かなり素直で良い音の出るNCヘッドフォンだ。その魅力が増した……と考えればいいだろうか。

ただ、あくまで48kHz/24bitまでなので、「息をのむような劇的な変化」というのはおおげさだろう。

次に遅延もチェックしてみよう。

Bluetoothのヘッドフォンはその仕組み上、遅延が出やすい。アップルの場合にはAACで最適化をして遅延を小さくしており、特別な低遅延コーデックは採用していない。比較的遅延は小さい方だとは思うが、それでも、音楽を演奏する「GarageBand」のようなアプリでは、「Bluetoothの場合遅延が出る」という警告が出る。音楽系ゲームでの遅延が気になる、という人もいるだろう。

GarageBandの画面。Bluetooth接続では警告が出る

今回はあまり時間がないこともあり、少々簡易的な方法を採用した。

テストに使ったのは、サウンドハウスがYouTubeで公開している「遅延計測ツール」という動画だ。

サウンドハウスがYouTubeで公開している「遅延計測ツール」

ヘッドフォンから音が外に聞こえる状態にしてこの動画を再生、毎秒240コマのスロー動画としてその様子を撮影し、中央の印で「音が出た」あと、針がどこで音が鳴ったかを、動画編集ソフトで音を手がかりにコマ単位で確認している。

iPad Proで動画を再生、その音をヘッドフォンなどで鳴らして、その様子を「動画撮影」して遅延の量を計測

動画自体が毎秒60コマなので、値も60分の1秒でチェックしている。

これを5回繰り返し、平均値を出した。

簡易的なものであり、1,000分の1秒単位で云々するようなものではない。システム側の補正も存在する。結果にはディスプレイの表示に伴う遅延も含まれているはずで、厳密とは言い難い。

このため、「動画を見た時の音ズレをざっくりチェックした」と考えてもらえばいい。ただ、これであっても、低遅延が本当なら明確な差は出るはずと考えた。

また、仕事場にあってすぐ取り出せて、使っている人も比較的多いものを選び、様々なヘッドフォンで遅延を確かめてみた。

結果は以下の表の通りだ。

テスト結果。AirPods Maxのケーブル接続は、スピーカー出力と同等。Bluetooth(コーデックはAAC)の半分にまで遅延が減った

想定以上にばらつきがなく、ちょっと拍子抜けしたが、傾向ははっきりわかった。

ケーブルであろうがスピーカーであろうが、アップル製品での最低遅延は60分の2秒から60分の3秒。前述のように、これは誤差もあるし、ディスプレイ表示(テストにはiPad Proを使用)の特性もあるだろう。ゼロではないが、このくらいは出てしまうものということもわかる。

AACをコーデックに使ってアップル製品と接続しているヘッドフォンは、おおむね60分の4コマから5コマの間。特性的にも似るのは不思議な話ではない。

このテストの中で、ケーブル接続に対応したAirPods Maxは、Bluetooth接続の半分程度の遅延に短縮されると考えていい。そしてその値は、本体のスピーカーから出るものと大差ない。これも、アップルがプレスリリースで謳っている通りである。

WindowsやAndroidにも「USBオーディオヘッドフォン」としてつながる

さらにいくつかテストしてみた。

AirPods Maxを、USB Type-Cケーブルで「Windows PC」や「Android」につないでみたらどうなるだろう?

答えは「USBオーディオ接続のヘッドフォンになる」。

今はどのプラットフォームもOSにドライバーが組み込まれているので、特になにもすることなく、普通につながる。こちらもMacなどに接続した場合と同じく、48kHz/24bitで認識される。音質も、Macなどで使ったときと大きな変化はない。

Windows 11に接続した時の状況。「AirPods Max USB Audio」という名称でつながる
AndroidにもUSBでつながり、そのまま再生可能

違いは「Bluetoothでは並列につながらないので、空間オーディオなどは活用できない」という点だ。ノイズキャンセルについてはボタンを押すと切り替え可能な場合もあり、使えないわけではない。

実はこの仕様、すでにアップル傘下のBeatsのヘッドフォンで採用されているものと同じ考え方ではある。

アップルの方も仕様を変えてきた……というのが、今回の変更の実態なのだろう。

USB-Cと3.5mmステレオミニの接続ケーブルも

今回同時に、USB-C端子から3.5mmステレオミニ端子へ接続するケーブルも発売されている。価格は6,480円。

USB-C - 3.5mmオーディオジャックケーブル。価格は6,480円

このケーブルは昨年秋にUSB-C版が発売されたとき、「後日販売を予定している」とされていたもの。Lightningにもあったものと性質は同じだ。あくまで普通の3極ステレオケーブルなので、過大な期待はしないように。

もちろん、ヘッドフォンアンプなどにつないで聞けば、相応に音は変わる。そこを楽しんでもいいだろう。

なお、このケーブルはAirPods Max専用というわけではなく、iPhoneやiPadなどを3.5mmオーディオ入力につなぐためにも使える。どちらかといえばそちらの方で必要……という人が多いような気もする。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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