【IFA 2010】スマートフォンでドルビーHD音声が再生可能に

-ノキア「N8」でドルビーデジタルプラス再生/HDMI出力


ドルビーのデモルーム。過去の名作映画とともに、ドルビーのフォーマットの歴史が記されている

 9月3日~8日(現地時間)に行なわれたIFA 2010において、ドルビーは最新音響技術のデモを実施。搭載機器の多様化に合わせ、テレビ向け、PC向け、携帯向け、映画向けにそれぞれの技術を紹介していた。

 そのなかで、携帯機器向けの「ドルビーモバイル」において、スマートフォンなどでサラウンド音声付き動画などを持ち運んで、HDMI出力できるというソリューションが説明された。



■ スマートフォンでHD音声もサラウンド再生可能に

 欧州で2010年第3四半期に発売予定のスマートフォン「Nokia N8」は、1,200万画素カメラや、HD動画撮影/再生機能を搭載した端末で、ソフトウェアプラットフォームにSymbian^3(シンビアン・スリー)を採用している。

 今回ドルビーが説明したのは、Blu-ray Discビデオにも採用されているドルビーデジタルプラス音声が、このN8で再生/HDMI出力できるという内容。端末自体にドルビーデジタルプラスのデコーダを内蔵しており、端末のヘッドフォン出力で2chダウンミックス再生ができるほか、HDMIミニ端子でテレビなどに接続することで、5.1chでの再生が可能になる。

 デモでは、MPEG-4 AVC/H.264動画と5.1chのドルビーデジタルプラス音声を使った、「トロン:レガシー」(12月公開)のトレーラーを視聴した。HDMIでN8からテレビとシアターシステムに映像/音声を出力。N8メニュー画面が表示され、「ビデオ」の項目からファイルを再生。バイクが縦横無尽に走るシーンでサラウンド再生の威力が感じられた。

 なお、モバイル向けのHD動画/音声ファイル作成については、コンテンツ製作者向けにドルビーが「Dolby Media Generator」を提供している。このエンコーダを利用することで、MPEG-4 AVC/H.264動画やドルビーデジタルプラス音声を1つのファイルに収められる。

Nokia N8テレビとHDMI接続して5.1chサラウンド再生ドルビーモバイル搭載機器。国内ではドコモが一部機種で採用しており、海外ではLGなどで採用されている

 説明スタッフは「このようにモバイル機器でHD動画/音声を持ち運べるので、家庭用とモバイル用のファイルを用意する必要がなく、1つのファイルで事足りる。友人の家にスマートフォンを持って行って、一緒に映画を見ることもできる」とアピールしていた。

 ドルビーモバイルの機能には、上記のドルビーデジタルプラスのデコード以外にも、ステレオヘッドフォンでサラウンド感が得られる機能や、低域の強調、圧縮音声で失われた高域の補間、モノラル音声にステレオ感を持たせるといった機能が搭載されている。

 

 


 

■ そのほか

 PC向けでは、ステレオ音声を5.1ch化する拡張技術「ドルビーアドバンストオーディオ」や、その上位機能に当たる「ドルビーホームシアター v3」対応のPCを紹介。日本では、ソニーや東芝の半分以上のPCで採用されているという。

 ドルビーデジタルプラスのデコーダはWindows 7自体に搭載されているため、搭載PCであれば再生が可能。ドルビーではデコーダを「アプリケーションではなくドライバレベルで搭載していることにより、全てのオーディオに適用できる」(ドルビージャパンのベン・ティン営業部シニアセールスマネージャー)とアピールしている。

 テレビ向けソリューションでは、異なるソースの音声を再生する際に、ボリュームレベルを自動調整する「ドルビーボリューム」について紹介された。この機能は、テレビやAVアンプだけでなく、サウンドバーやiPodスピーカーへの組み込みも検討されている。なお、米国ではドルビーボリューム機能に特化した音声アダプタ「GefenTV Auto Volume Stabilizer」(179ドル)もGefenから発売されている。

ドルビーアドバンストオーディオや、ドルビーホームシアター v3などの搭載PCドルビーデジタルプラスのデコーダなどはドライバレベルで搭載ドルビーボリューム搭載機器。左上段にあるのが「GefenTV Auto Volume Stabilizer」


(2010年 9月 9日)

[AV Watch編集部 中林暁]