ソニー、2010年度第2四半期決算の営業利益は687億円

-ゲームとPCが寄与し改善。TV事業黒字化「厳しい」


加藤優CFO

 ソニーは29日、2010年度第2四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比4.3%増の1兆7,332億円。営業利益は為替の悪影響があったものの、前年同期の326億円の損失から大幅に改善し、687億円の黒字化。税引前利益は627億円、純利益は311億円となった。

 為替レートが前年同期に比べ、ドルで9%、ユーロで21%の大幅な円高となったが、これら為替の悪影響を売上の増加で吸収。特にゲーム事業、およびPCの貢献があったネットワークプロダクツ&サービス分野が連結営業損益改善に大きく寄与したという。



■テレビ事業の黒字化は「厳しい見通し」

セグメント別の売上高と営業利益

 コンスーマー・プロフェッショナル&デバイス分野の売上高は前年同期比1.4%増の8,853億円、営業利益は同158.7%増の169億円。増収による売上総利益の増加、売上原価率の改善、構造改革費用の減少などが寄与したという。

 構造改革費用を除くベースで、分野全体の損益変動にプラスの影響を与えたのは、プロフェショナル・ソリューションで、デジタルシネマプロジェクタやHD製作用の放送・業務機器などの売り上げが増加。イメージセンサーの売り上げが増加した半導体も寄与した。

 一方、液晶テレビの販売台数は前年同期から約50%増加し、490万台。売上高は15%増加の約2,560億円。しかし、営業損益はコスト削減に取り組んだものの、大幅な価格下落の影響を受け、前年同期から50億円悪化し、160億円の損失となった。

 加藤優CFOは「色々な方面で努力しているが、とにもかくにも商品力。昨年はLEDバックライトのラインナップが少ないなどの影響もあったが、今年はモノリシックデザインや3D、インターネットTV(GoogleTV)など、高付加価値なものを揃えているので、価格競争の波を受けないようにしていく事が大切だと考えている」という。

 さらに「インターネットTVは好調な滑り出しを見せている。新たな取り組みとして、インターネットTVに代表されるような、“TVを売って終わり”ではなく、ネットに繋がることで、売った後も収益に繋がるような事業構成を考えていきたい。こうしたものの合わせ技てやっていきたい」とした。

 なお、同社は2010年度のテレビ販売目標として2,500万台を掲げ、通期での黒字化も目指している。加藤氏は「達成は第3四半期の出来にかかっている。BRICsをはじめとする新興国市場では高いレベルの成長が続いており、日本もエコポイントの駆け込み需要でテレビマーケットが盛り上がっているが、米国では景気動向が懸念され、北米では市場全体で実売が前年割れの状況が続き、業界全体の在庫が重たく、価格・販促面で厳しい環境が想定される。しかし、今年は商品力が強いので四つに取り組んで戦っていきたい」という。

 しかし、「黒字化の見通しは厳しくなってきた」という。その理由として加藤氏は、「強い商品のサポートをするために、積極的に広告宣伝などを展開しており、そういった販売のための費用を踏まえた上での見通しだが、その費用を使い切る必要があるのか無いのかこれから見極める必要がある。事業として昨年は700億、800億といった損失だったが、今の段階ではブレイクイーブンにわずかに届かない程度かもしれない」と語り、黒字化できず、マイナスとなったとしてもその額は昨年より大幅に少ないとした。

 コンパクトデジタルカメラは、台数が大幅に増加したものの、価格下落や為替の悪影響で若干の減収。営業損益は数量増やコスト削減強化があったが、価格下落、為替、ビジネス拡大に向けた販促投資で相殺されて減益。デジタル一眼カメラはα55や、コンパクトなNEX-5などが好調だという。ビデオカメラは為替、台数減少の影響で減収減益だが、コスト改善により利益率はほぼ前年同期と同じだという。


■ゲームとPCが好調。「PSPgoは想定より下回っている」

ネットワークプロダクツ&サービス分野の営業利益増減要因

 ネットワークプロダクツ&サービス分野は前年同期比5%増加の3,691億円、営業利益は69億円。ゲームビジネスは、売上高は前年同期比13%減少の1,710億円。PlayStation 3(PS3)ハードのソフトが好調だったものの、プレイステーションポータブル(PSP)ハードやプレイステーション2(PS2)ソフトの売り上げが減少した事が響いている。

 しかし、損益は前年同期比540億円改善し、130億円の利益となった。この大幅改善はPS3ハードのコストダウン、PS3ソフトの売り上げ数量増加が寄与している。これでゲームビジネスは4四半期連続で黒字化を達成。PS3ハードの売上台数は、ソフトのヒットタイトルが生まれ、ハードの普及を牽引したことで、新型PS3を投入した昨年の実績を上回る350万台を達成しており、年間計画の1,500万台に向け、順調に推移しているという。

 また、「9月から販売を開始したPlayStation Moveの導入などにより、年末商戦に向けて弾みをつけたい」という。同四半期のPSP売上台数は150万台、PS2は150万台。

 なおPSPに関しては、10月26日から「PSPgo」が16,800円に1万円値下げされている。この施策について加藤氏は「PSPgoはUMDドライブが無く、ネットを主体とした商品なので、ネット環境が整ったマーケットやユーザーに向けたものだが、販売台数が想定より下回っているというのは事実。有力なソフトが出てくるタイミングでもあり、少し刺激をしたいなと考えたのと、コスト削減も進んでおり、値下げさせていただいた。この値下げに含んだメッセージとしては、とにかく皆さんに“手にとっていただきたい”という思いがあり、そのためのアプローチとご理解いただきたい」と語った。

 映画分野の売上高は、前年同期比6.1%増加の1,448億円。営業損失は前年同期64億円のマイナスから、48億円のマイナスと、赤字額が減少。「ソルト」や「バイオハザードIV アフターライフ」など好調な映画が多く、営業損益の改善には米国外のテレビネットワークにおける増益などが寄与している。

 音楽分野の売上高は前年同期比10.8%減の1,110億円。営業利益も前年同期86億円から、81億円に減少している。これは主に、前年同期にマイケル・ジャクソンのカタログ作品の売上貢献が大きかったためだという。

 ソニー・エリクソンの売上高は、前年同期比1%減収。製品ポートフォリオの集約にともない、携帯電話の販売台数が減少したものの、スマートフォンへの注力による製品ミックスの改善から、平均単価が大幅に上昇。税引き前損益は2008年7月に開始した費用削減施策の効果や、製品ミックスの好影響で大幅改善。持分法による投資損益は、前年同期の109億円の損失から、26億円と黒字になっている。


■業績見通し

今年度の連結業績見通し

 通期の見通しについては、下半期の想定為替レートを、ドルは7月時点の1ドル90円前後から、83円前後に変更。ユーロは1ユーロ110円前後で変更しないという。

 それを踏まえた見通しとして、売上高および営業収入は、為替レートを円高に見直したことで、7兆6,000億円から2,000億円下方修正し、7兆4,000億円に。営業利益は好調だった第2四半期業績を折り込み、7月時点の1,800億円から、200億円増加の2,000億円に上方修正している。



(2010年 10月 29日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]