シャープ、亀山工場を中小型液晶に転換。堺は大型強化

-'11年度液晶TV減をスマホ関連で吸収


片山幹雄社長

 シャープは3日、2011年度の経営方針説明会を開催。2011年度の業績予想を発表するとともに、片山幹雄社長が液晶事業の構造改革について説明した。

 液晶事業については成長市場への対応を理由に、スマートフォンやタブレット向けの中小型液晶を強化。これまでテレビ向けパネルの製造拠点として稼働していた亀山第2工場を中小型液晶向けに転換することなどを明らかにした。


 


■ 2011年度予想は営業利益970億円。堺工場停止で特損270億円

2011年連結業績予想

 同社は、4月27日に2010年度の決算発表を行なったが、「3月11日に発生した東日本大震災の影響が広範囲で、業績に与える影響額を現段階で合理的に見積もれない」として、2011年度予測の発表を見送っていた。

 2011年度の業績予測は、売上高が前年比0.9%増の3兆500億円、営業利益は同22.9%増の970億円、純利益は69.1%減の60億円。

 純損益で減益を見込んでいる大きな要因は、第1四半期に亀山第2工場およびグリーンフロント堺のテレビ向け液晶パネル生産を停止したことと、液晶事業構造改革費用のため。

主な特別損益の項目

 パネル生産停止に伴う特別損失として、第1四半期に約270億円を計上した。同社では震災の影響による部材の調達難と市場環境の悪化、それにともない在庫増などが発生し、4月から液晶パネル生産を一時停止していた。なお、ゴールデンウィーク明けから生産を再開している。

 液晶事業改革については、亀山第1/2工場の生産ラインを中小型液晶向けに転換するための費用が中心となり、第1/2四半期に各60億円、下期に30億円の合計150億円の特別損失を計上する。

 2011年度の部門別見通しは、液晶テレビが台数ベースで18万台増の1,500万台、売上高は同15.4%減の6,800億円。日本のエコポイントが終了し、「特にアナログ停波後は厳しくなる」としている。海外での事業拡大を図り、台数ベースでは拡大を目指す。ただし、平均単価の下落を勘案し、売上高は減少する見込み。

 携帯電話は前年比14万台減、売上高同5.6%減の3,900億円。スマートフォンを強化する方針だが、国内市場が成熟していること、従来のケータイの落ち込みが予測されることから売上減を見込む。

部門別情報

 大きな事業構造変化が見込まれるのが、液晶事業。売上高1兆200億円は、前年比0.7%減と大きな変化はないが、テレビ向けの大型が3割以上減少し、モバイル向けの中小型が50%以上の大幅増となる。そのため、「2010年度は35%程度だった中小型の構成比は、2011年度は半分強になる」という。太陽電池は前年比20.5%増の3,200億円。国内を中心に伸長を見込み、販売量は前年比36.9%増の1,700MW。

 全体では、国内の売り上げが前年比16.5%減の1兆3,300億円となる一方で、海外は20.4%増の1兆7,200億円を見込む。売上減を見込むのは、国内の液晶テレビと大型液晶の外販、携帯電話。売上増はLEDやCCD、CMOSなどの電子デバイスと、モバイル液晶の外販などの“スマートフォン関連”。また、太陽電池や海外の液晶テレビの伸びも見込んでいる。2011年度の想定為替レートは米ドルが83円、ユーロが118円。

部門別売上高2011年予想売上高の主な増減。液晶テレビの減速をスマートフォン関連で補う部門別営業利益

 


■ 亀山でモバイル液晶強化。30~40型は外部からのUV2A調達も

液晶事業改革のコンセプト

 大きな事業構造転換が発表されたのが、液晶事業。片山社長は「液晶産業には大きな変化が起きている。市場成長が鈍化し、大幅な価格下落が発生。その中で世界主要メーカーが軒並み収益悪化している。これは液晶テレビメーカーも同様だ」とし、テレビ市場の伸長に依存した事業が踊り場に来ていることを説明。一方で、「スマートフォン、タブレット向けの高精細液晶のニーズが急拡大している」とする。

 こうした環境変化を受けて、大型の収益改善と拡大する中小型液晶への対応強化策を発表。大型から中小型へのシフトとして、亀山第1/2工場でのモバイル向け生産を強化。大型については、堺での60型以上の生産を本格化させ、大型液晶テレビや、デジタルサイネージやデジタル黒板などの成長領域に集中。30~40型の競争の激しい領域は外部調達の活用を進める。


液晶事業改革のコンセプト亀山工場を中小型転用し、モバイル液晶を強化
シャープモバイル液晶の優位性。亀山第1はスマートフォン向けにCGシリコンを、第2はタブレット向けにIGZO液晶を製造

 中小型液晶の強化については、亀山工場をモバイル向けを中心に転換。亀山第1工場は、スマートフォン向けの「CGシリコン液晶」を、亀山第2工場ではタブレット端末向けに、新開発の「IGZO(酸化物半導体)液晶」の生産ライン設置に着手する。いずれも本格稼働は2012年度を見込む。

 CGシリコン液晶は、現在の天理工場(Fab1)、三重第3工場(Fab2)に加え、亀山第一工場(Fab3)で展開。第6世代のマザーガラス(1,500×1,800mm)での製造を予定。「スマートフォン市場の急拡大にあわせ、さらなる精細度が求められるようになった。これにより、CGシリコンの注目度が増している」とし、2013年まで市場拡大と高精細化が進むとの見通しを示した。

 一方、亀山第2工場で立ち上げ予定のIGZO液晶は、タブレット向けと位置づける。IGZOの高い電子移動度を活かすことで、薄膜トランジスタを小型化でき、1画素あたりの光の透過量が向上。低消費電力化や高精細化が図れる点が特徴。こうした特性を活かし、高精細、高画質、低消費電力のモバイル液晶としてIGZOを強化。2011年度末から生産開始し、その後比率を高めていく。

 片山社長は、「“いくぞー”じゃなくてIGZO(いぐぞー)です」とのジョークを飛ばしながら、「タブレットもスマートフォン同様に高精細化が進む。また、今のタブレットの課題は重いということ。当社も重い製品を出したが、重さにより商品性を損なってしまう。重さの原因は液晶ではなくバッテリだが、超低消費電力のIGZOであればバッテリを小さく、軽くでき、商品性を高めることができる」と訴えた。

 なお、中国や日本で「亀山ブランド」が定着していることから、亀山工場におけるテレビ向けの生産も「引きがある限り、継続して行なう。また、テレビ向けに転用できるようにライン設計している」とする。

亀山第1にCGシリコンを導入。第6世代マザーガラスを採用亀山第2はIGZOの比率を高めていくモバイル液晶の生産を拡大
第10世代マザーガラスを活かして、大型パネルを生産

 大型液晶については、堺工場を中心に、60型や70型などの付加価値の高いレンジを強化する。

 北米を中心にリアプロジェクションの市場がほぼ消滅し、50型以上の大型液晶テレビが伸長している。その中で、北米で2010年には60型以上で約20万台を販売。大型を中心に展開することで、米国で前年の約3.8倍の約1万8,000台の店頭展示を獲得し、店頭での訴求力を高めたという。台数も金額も伸びている大型テレビを強化するとともに、デジタルサイネージや電子黒板などのNon-TV領域も強化する方針。

 堺工場は第10世代のマザーガラスを採用しているものの、「これまでは、ほとんど40型台だった。コモディティがメインになっており、18枚取りでも採算が合わず、大幅な赤字に陥った」と説明。「成長市場は大画面と言い続けてきたが、やっとG10のマザーガラスが活かせる」とし、60型で8枚、70型でも6枚取れるという第10世代の生産能力をアピールした。

 50型超の大型パネルに集中すると、ボリュームゾーンとなる30~40型は手薄になる。片山社長は、「26、32、40型ぐらいを外販するのは低成長。収益的にやる必要は無いし、やる余裕もなくなる」とし、外部調達を推進する方針を説明した。

 具体的には、シャープが技術供与を行なった南京のG6工場などからの調達に加え、台湾メーカーからの調達も予定。シャープのUV2A技術をライセンスし、技術移転しており、パートナーから供給を受けたUV2Aパネルを利用する方針。「コスト競争力のある中国、台湾を活用したアライアンスによる外部調達を行なう。コモディティ領域では、新興国などグローバルで攻めていく」という。

北米で大型テレビ市場が拡大サイネージやデジタル黒板などの事業領域も強化大型の生産比率を拡大

(2011年 6月 3日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]