【CEATEC 2012】世界初のフルデジタルスピーカーを体験

-クラリオン「01DRIVE」。“天井取り付け型”も


「Z8/Z17F」を搭載したデモカー

 クラリオンは、10月6日まで幕張メッセで開催されている「CEATEC JAPAN 2012」において、車載向けのフルデジタルスピーカー採用AVナビ「Z8/Z17F」を国内初出展。デモカーで試聴も可能となっている。

 Z8/Z17Fに採用されたフルデジタル伝送のスピーカー「01DRIVE」は、一般的なスピーカーのように、デジタル信号をアナログに変換してからスピーカーへ伝送/駆動するのではなく、音源からスピーカーユニットまでの完全デジタル伝送を実現。デジタル信号処理には、Trigence Semiconductorの「Dnote」技術を採用している。

 デジタルアンプにより増幅するのではなく、デジタル変調を行なう「Dクラスドライバ」をスピーカー1基につき1個ずつ使用。スピーカーユニットと共に車のドアなどに収納できるサイズになっている。このDクラスドライバで、44.1kHzのデジタル音源にオーバーサンプリング(256fs)をかけ、11MHzに変調。これをアナログ変換することなく、スピーカーのボイスコイルに直接入力することをDnote技術で実現している。0.93W×6chに分割された信号が1つの「マルチボイスコイル」に入力され、ユニットを駆動するという仕組み。

 スピーカー部の「Z8」は、同軸2ウェイのユニットと、セパレートのツイータで構成。このフルデジタルスピーカーシステムでは、同軸ユニットのウーファとツイータを合わせて一つのフルレンジユニットのような役割になっており、セパレートのツイータが高域を受け持つ。

 Dクラスドライバは1チップLSIで、超高速/低消費駆動を特徴とし、ヒートシンクレスの小型ドライバユニットを実現している。ウーファとツイータには独立したフィルタ回路を搭載し、きめ細かな音響チューニングを可能にしたほか、ウーファ出力のツイータへの影響も完全に排除したという。デジタル変調でスイッチングのパルスを11MHzまで高速化したことにより、高密度な再生だけでなく、不要なときに動作させないことで低消費電力化を実現。消費電力は従来の1/8、駆動電圧は従来の12V相当から5V以下まで低減できるという。

 さらに、スピーカーに接続するためのハーネスはデジタルスピーカー専用ではなく、既存の配線を流用できることも特徴。デジタル信号とドライバ用の電源を重畳して伝送する「Power Digital Line Carrier System」を採用している。

同軸2ウェイスピーカーユニットとセパレートツイータ、SDナビで構成する同軸ユニット。ウーファ用のデジタル信号は、ツイータ部から出ている信号線を伝ってウーファ背面にあるボイスコイルに入力されるDクラスドライバ搭載ユニット

 このように、一般的なスピーカーとは様々な点が異なる「01DRIVE」。CEATEC会場にはデモカー(プリウス)が用意されており、実際に試聴した。このデモカーは、フロントドアに同軸スピーカーユニットとオンダッシュのセパレートツイータ、リアドアにオプションの同軸ユニットを搭載したシステム。これらでナビの「Z17F」からの音楽を再生している。

 最初に感じたのはレスポンスの良さ。ボリュームをある程度下げても急激に音質が落ちることは無く、効率の良さもうかがえる。また、高域の解像感の高さも良好で、音像の定位が明確なことも印象的だった。一方で、低域の沈み込みに関してはやや物足りなさも感じた。止まっている車で聴いたので、走行中のロードノイズが加わった場合にどう聴こえるかが気になるところだ。しかし、従来の1/8という消費電力でここまで高い音圧を実現できたというのは驚き。エコカーにも最適なシステムだと言える。

 製品としては、プリウスやアルファード/ヴェルファイアの車種向けにパラメトリックイコライザをチューニングした形での販売となる。この調整値はソフトウェア上のデータなので、後からプリセット値を変更することも技術的には可能。今後、他の車種のチューニングデータを、クラリオンのサイトからダウンロード提供することについても、検討していくという。

フルデジタル駆動システムの構成ユニット背面にある「マルチボイスコイル」に信号を入力してユニットを駆動
立ち上がりの良さや、デジタルアンプよりも良いという効率などが特徴フルデジタルスピーカーシステムの概要
デモカーのシステムナビはSDカード利用の2DINタイプ。ダッシュボードにセパレートツイータを配置フロントドアに同軸ユニットを内蔵


■ Bluetoothモバイルスピーカーや家庭用など、車載以外にも展開

2日の発表会で披露されたポータブルBluetoothスピーカー「ZP1」

 クラリオンは車載機器メーカーとして知られているが、このフルデジタルスピーカーは車載以外にも展開。既報の通り、ポータブルBluetoothスピーカー「ZP1」(MG-1100A-A)を12月上旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は24,800円前後。

 フルデジタル伝送の方式は車載向けと同様だが、ユニットはフルレンジ3個を搭載。内蔵バッテリのほかソーラーパネルも搭載し、この方式の特徴である“低消費電力”を前面に押し出した製品に仕上がっている。バッテリで30時間の連続駆動が可能で、ソーラーパネル利用時は約3時間の充電で約1時間動作する。

 iPod touchからのBluetooth音声を実際に聴いたところ、音声は3ユニットからまっすぐリスナーに届くような指向性の高いもので、車載モデルとの違いを感じるが、定位の明確さは同じ。低域はもう少し欲しいところだが、スマートフォンなどの音楽を長時間流しっぱなしにする使い方にもピッタリだ。

 この製品以外にも、リビング向けのスピーカーとして、「シーリングフルデジタルスピーカー」を参考出展。

 これは、「ZP1」と同じBluetooth対応のフルデジタルスピーカーなのだが、一般的なシーリングライト取り付け部に工事不要で装着でき、上から“ミスト(霧)のように”音楽が聴こえるという点が特徴。照明は、スピーカーの下部に吊り下げられる。発売時期や価格は未定。

 スピーカーユニットは6基で、外側6方向に向けて配置。室内の全方位へサウンドが広がる「360度リスニングポジション」としている。Bluetooth接続の距離は約10m。プロファイルはA2DPに対応する。リモコンも付属する。

参考出展された「シーリングフルデジタルスピーカー」設置イメージ6つのユニットを外側に向けて搭載する

(2012年 10月 3日)

[AV Watch編集部 中林暁]