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ビクターエンタ、ハイレゾ配信に邦楽ポップスを追加

e-onkyo musicでの配信第3弾を27日より開始

VICTOR STUDIO HD-Sound.レーベル

 ビクターエンタテインメントは、オンキヨーエンタテインメントテクノロジーの高音質音楽配信サービス「e-onkyo music」における「VICTOR STUDIO HD-Sound.」レーベルの第3弾となる15タイトルを発表。2月27日13時より配信開始される。価格は、アルバムが各2,800円、単曲は各400円(一部はアルバム配信のみ)。

 「VICTOR STUDIO HD-Sound.」は、ビクターエンタテインメントが運営するビクタースタジオが2012年8月に立ち上げたハイレゾ音源のレーベル。配信フォーマットは24bit/96kHz、24bit/192kHzなどのWAVやFLAC、もしくは1bit/2.8MHzのDSDで、既に第1弾の20タイトル、第2弾の16タイトルがe-onkyo musicにおいて配信されている。

第3弾の配信タイトル(予定作品も含む)

 今回の第3弾では、第2弾と同様に高音質化技術の「K2HDプロセッシング」を一部タイトルに採用するほか、邦楽ポップスもカタログに追加してジャンルの幅を拡大。27日より高橋真梨子「NO Reason 3」(24bit/96kHz)や広瀬香美「名曲アルバム」(24bit/96kHz)、フランク永井「オール・オブ・ミー~フランク永井 スタンダードを歌う」(24bit/192kHz)などのFLAC/WAVを配信するほか、DSD音源はジルデコ「JiLL-Decoy association ジルデコ4~ugly beauty~」(1bit/2.8MHz)を用意する。フュージョン2タイトル、ジャズ4タイトル、クラシック2タイトル、ポップス6タイトルで、今後はロック作品としてELPの「エマーソン・レイク&パーマー」、「タルカス」も24bit/48kHzで配信予定(本国配信後に開始)としている。

 配信音源はデジタルデータの作成方法により、5つのタイプに区別できる。タイプAは、1インチのアナログマスター音源を使用。タイプBはダイレクトカッテイング・レコード音源、タイプCはアナログマスター音源、タイプDはハイレゾデジタル音源、タイプEは「K2HD プロセッシング」を使って制作された音源となる。ラインナップは下表の通り。

ジャンルタイトル/
アーティスト
マスター音源のタイプ:
音質
アルバム価格単曲価格
フュージョン&
ポップス
マイ・ディア・ライフ
渡辺貞夫
C:24bit/96kHz2,800円400円
JiLL-Decoy association
ジルデコ4~ugly beauty~
ジルデコ
D:DSD 2.8MHz2,800円400円
ジャズブリリアント・コーナーズ
C:24bit/192kHz2,800円400円
ランドスケープ~アート・ペッパーライブ・
イン・トウキョウ '79
アート・ペッパー
C:24bit/96kHz2,800円-
べサメ・ムーチョ~アート・ペッパーライブ・
イン・トウキョウ '79
アート・ペッパー
C:24bit/96kHz2,800円-
ボサ・ノヴァ・イン・トーキョー
ヘレン・メリル
C:24bit/96kHz2,800円400円
クラシックシャコンヌ
長谷川陽子
D:24bit/176.4kHz2,800円400円
ベートーヴェン 交響曲第3番 変ホ長調 OP.55「英雄」
朝比奈隆 指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団
C:24bit/192kHz2,800円-
邦楽NO Reason 3 ~洋楽想ひ~
高橋真梨子
E:24bit/96kHz2,800円400円
WHEN THE WORLD TURNS BLUE
阿川泰子
C:24bit/96kHz2,800円400円
edition 10/パリス・マッチD:24bit/96kHz2,800円400円
名曲アルバム/広瀬香美E:24bit/96kHz2,800円400円
<COLEZO!>/岩崎宏美E:24bit/96kHz2,800円400円
オール・オブ・ミー
~フランク永井 スタンダードを歌う
フランク永井
C:24bit/192kHz2,800円400円
その他
(ガムラン)
Resonance Meditation
ゴング・グラダグ
D:24bit/192kHz2,800円-

配信楽曲は「耳とデータ」を基準に作る

説明会が行なわれたビクタースタジオ

 18日に東京・青山のビクタースタジオにおいて記者向けに今回の配信第3弾に関する説明会が行なわれた。

 ビクタースタジオ長の秋元秀之氏は、「VICTOR STUDIO HD-Sound.」レーベルの特徴について改めて説明。ポイントとして「絶対的な音質へのこだわり」、「タイトルの厳選」、「オリジナル技術での高音質・ハイレゾ化」の3点を挙げた。

 「音質」については、「単にスペックだけではなく、実際に聴いていただいて、ハイレゾ良さが体感いただけるソフトであるということ。これは、現場の音に精通している我々だからこそ提供できる」とした。また、「タイトル」については、音楽ジャンルなど従来のカテゴリ分けだけでなく、制作システムや録音の方法といった現場ならではの視点で提供していることを紹介した。「オリジナル技術」については、独自の「K2HD」などの技術を採用していることを説明した。

 独自技術のK2HDプロセッシングは、CDのフォーマットではカットされる20kHz以上の広域情報を、最大100kHzまで復元できるというもの。16bit/44.1kHzから24bit/192kHzなどへアップコンバートが自由に行なえるというもので、「『元に無い音を作っている』と思われがちだが、我々は基準が違う」とする。同社のアプローチは、元の24bit/96kHzなどのマスター音源を一度16bit/44.1kHzのCDスペックにダウンコンバートし、そこから元のハイレゾに復元するというプロセスを重ね、「耳とデータによる判断」を基準とする。これによって“もともとあったものを復元する”のがK2HDプロセッシングの特徴だという。このK2HDプロセッシングを、マスターがCDしか現存しないような楽曲などにも活用し、過去の音源を復刻するといった取り組みもなされている。

ビクタースタジオ長の秋元秀之氏
ビクタースタジオの概要
VICTOR STUDIO HD-Sound.の特徴
K2HD プロセッシングのアプローチ
オリジナル素材をCD品質にダウンコンバートして、そこからオリジナルに復元することを追求している
K2HD プロセッシングを用いた配信楽曲
サウンドプロデューサーの高田英男氏

 ビクタースタジオのサウンドプロデューサーを務める高田英男氏によれば、必ずしもハイレゾ化すれば配信音源として適したものになるのではなく、「実際に聴いてみて、ダメなものもあった」という。なお、高橋真梨子「NO Reason 3」の配信用マスタリングを手掛けたのは、CDのマスタリング時と同じエンジニアだったとのことで、「CDでは器の制限の中での音作りだったが、ハイレゾは制限が外れて、声の魅力をより伝えられる」というエンジニアのコメントも紹介した。

 今回、作品のジャンルを広げたことで、秋元氏は「限られたハイエンド層だけでなく、今回の高橋真梨子さんのようなポップスで、音の良さもアピールしたい」とした。また、旧譜からのハイレゾ化だけでなく、新曲リリース時に、CD発売に先行してハイレゾ音源配信を開始するといった取り組みについても問い合わせがあるという。こうした新譜にも積極的に対応していくという方針を示した。

 会場のビクタースタジオで、16bit/44.1kHzのCDと、24bit/96kHzなどのハイレゾ音源の比較試聴も行なった。CD音源も豊かな情報を持っているが、その後で配信音源を聴くと、単に高域の伸びだけでなく豊富な情報量からくる全体の厚みに違いを実感できた。高品位なマスターからの音をそのままに近い形で聴けるという醍醐味はもちろん、懐かしい邦楽ポップスなどもK2HD プロセッシングなどの効果で新鮮な楽曲として生まれ変わったように感じられた。

ビクタースタジオ内のシステムで、配信楽曲とCD音源を試聴した
試聴にはスタジオに備えたGENELECのモニタースピーカーを使用していたが、民生機でも体感できるとして、ウッドコーンコンポも使用

(中林暁)