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フォステクス、平面駆動型ヘッドフォン「TH500RP」8月上旬発売。74,000円

平面駆動型ヘッドフォン「TH500RP」

 フォステクスは、平面駆動型ヘッドフォン「TH500RP」を発表した。発売時期は8月上旬で、価格は74,000円。10日から中野サンプラザで開幕した「春のヘッドフォン祭 2014」において発表会が開催された。

 通常のダイナミック型ヘッドフォンは、ラッパのような形状版の振動板を使っているが、平面駆動型は、板のような平面の振動板を採用しているのが特徴。「TH500RP」は、その平面振動板を全面駆動する事で音を出す。駆動方式はダイナミック型で、静電型ではなく、通常のアンプと接続して使用できる。ハウジングは開放型。

ハウジングは開放型
内部構成パーツ。赤いラインが直接音、青いラインがハウジング内の空気の動き
平面駆動型のユニット内部。オレンジ色が振動板、それをはさむように設置されているのが磁石
日本初の平面駆動型ヘッドフォン「T50」

 ユニットの構造は右の画像の通り。オレンジ色の部分が振動板で、磁気回路をプリントしてある。その振動板を、銀色の棒状の磁石ではさむような構造になっており、間に磁界が発生。振動板を全面駆動する。一般的に、平面振動型のヘッドフォンは、振動板の分割共振などに起因する問題を解消でき、f0(共振周波数)を抑え、振幅が小さくてもキチンとした音が出せるが、能率が低いという問題がある。

 フォステクスは1974年に、日本初の平面駆動型ヘッドフォンとなる「T50」を発売するなど、従来から平面振動板のヘッドフォンを手がけているが、その能率の低さから、大出力のアンプと組み合わせる必要があるため、スタジオモニターヘッドフォンとして主に訴求してきた。

 しかし、イヤフォン/ヘッドフォンブームでヘッドフォンアンプ市場も盛り上がり、ヘッドフォンアンプを使って音楽を楽しむ一般ユーザーも増加した事から、「平面振動板をもう一度キチンと鳴らす体制が整ってきたと判断」(新町政樹バイス・プレジデント)し、「TH500RP」の開発に至ったという。

 新機種開発にあたっては、平面振動板ユニットを改めて細かく解析。「共振点が分散できるのが特徴とされているが、というよりも、振幅が通常のダイナミック型と較べてすごく少なく、小さく動くだけでキチンとした音になる。その結果、共振点が発生しにくいのがわかった」(プロオーディオ プロダクトプランニングの山口創司氏)という。

新町政樹バイス・プレジデント
プロオーディオ プロダクトプランニングの山口創司氏

 こうした解析の結果や、振動板へ磁気回路を印刷する際の精度の向上、配置する磁石を従来の平面駆動型ヘッドフォンと比べ、より最適化しながら磁石自体を減らすなどの工夫をする事で、弱点とされる能率も改善。インピーダンスは48Ωで、再生周波数帯気は20Hz~30kHz。感度は93dB/mW。最大入力は3,000mWとなった。

 ハウジング内部では、ユニットからの直接音のほか、ハウジング内の空気の逃し方も追求。特に低域、中域に影響する部分で、TH900開発時に培った技術を用いて、内部に配置するスクリーンの穴のサイズやスポンジの配置を工夫し、低域の周波数を調整。「音がこもり、膜がかかったような音になりがちな平面駆動型だが、アコースティックなチューニング、ドライバの改良などで改善している」(山口氏)という。

 ケーブルは3mのY型で着脱はできない。入力プラグは標準タイプ。「着脱にするか社内でも議論したが、我々のポリシーとして、この組み合わせが一番良いというケーブルと組み合わせた。ただ、リケーブルというマーケットは存在しており、考えている」と説明。

 また、搭載するユニットは、前述の通り従来から同社が使っているものに様々な改良を加えたものだが、ユニット自体を「TH500RP」向けに1から開発したものではない。山口氏は、「TH500RP」の開発で培った技術を用いて、「かなり先になるかもしれない」としながらも、より上位モデルの開発も検討している事も明らかにした。

イヤーパッド部分
アーム部分はこのように動いて頭に密着する
ケーブルの着脱はできない

 発表会には、AVライターの野村ケンジ氏もゲストとして参加。「嬉しくなるほど脚色の無い音。低域の改造感を頑張っているなどといったヘッドフォンは他にもあるが、そういったものとは異なり、演出を極力排して、肩の力を抜いてフラットに再生されている。かといって、優しい腰の柔らかい音ではなく、ダイレクト感もあるのが面白い」と評価。

 「ラブライブ!」のハイレゾアニソン楽曲で試聴しても、「メンバーそれぞれの声の特徴や、表情が見えるよう」と、描写能力の高さを紹介。ランティスの制作部門アイウィルの佐藤純之介氏もビデオメッセージを寄せ、「全体域で解像度が高い。解像度が高い部分と、そうでない部分があるというように、解像度の深度が帯域の中でばらつかない」と賞賛した。

AVライターの野村ケンジ氏
アイウィルの佐藤純之介氏もビデオメッセージを寄せた

(山崎健太郎)