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パナソニック津賀社長「事業構造改革完遂」宣言。4月1日テレビ事業部復活
(2015/3/26 21:42)
パナソニックは、2015年度の事業方針を発表。その席上、同社の津賀一宏社長は、2014年度中に赤字事業の方向づけが完了し、中期経営計画CV2015で取り組んできた事業構造改革が完遂したことを宣言。また、4月1日付けでテレビ事業部を復活させることなども明らかにした。
中期経営計画「CV2015」の目標数値で掲げた営業利益3,500億円以上と、累計キャッシュフローの6,000億円以上の数値目標については、2014年度中に1年前倒しで達成する見通しであることを改めて示し、「残るは営業利益率5%以上。2015年度は5%以上の『以上』という部分にこだわる。また、売上成長による利益創出の実現に大きく舵を切る年とし、成長に向けた投資についても積極的に実行に移す。構造改革効果や固定費の削減によって支えられた過去2年の収益構造から脱却し、売上成長が、増益を牽引する構造へと転換する」と、成長戦略への転換を力強く語った。
テレビ事業復活、「オペレーション力」と「常識を覆す新たな価値」
赤字事業であったテレビ/パネル、半導体、回路基板、携帯電話、光デバイス、エアコン、デジタルスチルカメラの7つの事業については、半導体、光デバイスが、2015年度も赤字事業として残るものの、「方向付けができ、やることが明らかになっている」と明言。テレビ事業をはじめとする残る5つの事業は、2015年度には黒字化することを示した。
テレビ/パネル事業については、PDP事業の終息、LCD事業の転地の加速により、方向づけが完了。携帯電話事業についてはスマートフォン事業の終息および黒字化、エアコンおよびデジタルスチルカメラは2014年度に黒字化したという。
テレビ事業に関しては、4月1日付けでテレビ事業部を復活させることを発表。「テレビ事業の回復にマジックはない。オペレーションを軽くすることが大切。開発や生産拠点を軽くし、オペレーション力を高める。テレビはリードタイムが長い分、市場の変動に対応しにくく、在庫が溜まりやすい。マーケットと呼吸をあわせたような事業展開ができるかどうかが重要。また、その一方で、テレビの常識を覆すような新たな価値、あるいは新たな住空間にマッチした製品を投入することが重要」などと語った。
一方で、2018年度の売上高10兆円達成に向けて、通常の設備投資に加えて、今後、1兆円規模の資金を「戦略投資」として計上。非連続な成長を実現するためのM&Aや、成長を加速させるための積極的な研究開発投資や、宣伝投資なども行なうという。
2015年度においては、通常投資の約2,800億円に加えて、約2,000億円の戦略投資を予定しているという。
だが、津賀社長は、「過去の大規模投資の多くが、減損に繋がった反省を踏まえ、成長投資によって増加する資産にもしっかりと目を向け、将来に負の遺産を残さないような事業運営を行なっていく」とした。M&Aに関しては、「現時点では、具体的なものはなにもない」とするものの、BtoBソリューション分野におけるM&Aなどを視野に入れている模様だ。
'18年度売上10兆円に向けた取り組み
2015年度の業績目標は、2014年度見通しに対して、売上高が2,500億円増の8兆円、営業利益は800億円増の4,300億円、営業利益率は5.4%とした。「売上高は、為替影響を除いたベースでも増収になる」という。
さらに、2015年度においては、エアコン、ライティング、ハウジングシステム、インフォテインメントシステム、二次電池、パナホームの6つの事業において、売り上げ、利益改善に取り組む姿勢をみせた。
「これらの6つの事業は売上高が3,000億円以上の大規模な事業部であるにも関わらず、営業利益率が5%未満となっている。この6事業部の収益性を改善できれば、全社の増益への貢献度が大きい」と津賀社長は語る。
2015年度は、6事業部合計で1,500億円の売り上げ増加、390億円の営業利益の増加を見込んでおり、これが全社の売り上げ増、利益増の大きな部分を占めているという。「これを達成すれば、6事業部の営業利益率は3%台から、5%水準へと改善することになる」と述べた。
さらに、これまでは公表していなかった2016年度、2017年度の売上高目標についても明らかにした。これによると、2016年度は8兆4,000億円、2017年度は9兆1,000億円の売上高を目指し、2018年度には10兆円を目指すことになる。営業利益については公表していないが、「まだ言える段階にはない。ただ、2018年度には最低でも5%以上の営業利益率は達成したい。2018年度は創業100周年を迎える年。売上高をあげて、利益をあげればいいというわけではない。そのときに、どんな会社になるのか、どんな貢献するのかという意味での10兆円。車載2兆円、住宅2兆円の次はなにか。どんなメイージをつくるのかが大事である」などと述べた。
また、「2016年度の8兆4,000億円、2017年度の9兆1,000億円は、10兆円を達成するためには、それぞれの年において、何としてでも達成しなければならない、という決意を込めた数字。これらの目標が達成できなければ、10兆円のターゲットには届かない。2015年度からは、1年1年が勝負の年だという認識で事業を進めていく」とした。
特にこだわったのが2016年度の売上高だ。津賀社長は次のように語る。
「2014年度の売上高はほぼ横ばいであり、外からは、10兆円に近づいていないのではないか、と見えるかもしれない。しかし、売りが伸びる事業と売りを落とさなくてはならない事業を比べたとき、まだ売りを落とさなくてはならない事業の比率の方が高かった。その結果が横ばいということになる。だが、2015年度においては、落ちる事業よりも、伸びる事業の方が大きくなり、それが成長につながる。やるべきことが明確になってきたという点では、10兆円には確実に近づいている。それが外からは見えない点である。問題は2016年度。8兆4,000億円という目標については、まだ、M&Aの成果が表れない時期である。足が長い車載事業も、東日本大震災時の営業活動が行なえず、2016年度のタイミングではまだ受注が取れていない状況にある。成長の要素が変わる時期であり、この年がポイントになる」。
車載事業は、売り上げの多くをインフォテインメント事業が占めるが、「この事業は受注が先行し、その費用がかさむこと、さらに開発しても2年は売りに結びつかないという状況にある。そのなかで事業規模を倍増しており、利益率が落ちる結果につながっている。この2年は厳しいとみているが、2018年度の2兆1,000億円の目標に向けてはすでに70%が受注済み。快適、安全、環境という領域において、それぞれ投資を行ない、残りの3割の受注を獲得していく」という。
また、「構造改革を中心に事業を展開してきたこれまでは、スピードを心がけた。今後は成長を軸に考えていくことになる」と語った。
国内は住宅、車載、BtoB。海外は家電が成長の軸に
パナソニックは2018年度の売上目標を、5つの事業軸と、3つの地域軸を掛け合わせた「5×3」のマトリックスで表現しているが、このほどそれぞれの領域における売上高目標を数値で初めて示した。
「大きな売上成長が期待できるのは、日本においては住宅、車載、BtoBソリューション、欧米では車載、BtoBソリューション。海外戦略地域では家電。これらの売上増は、現在の事業の延長線上だけで実現できるものではなく、戦略的な投資を行なっていくことが前提。この6つの交点には、ヒト、モノ、カネの全社リソースを重点的に投下する」という。
特に、BtoBソリューションにおいては、「グローバルに事業を展開する企業が多い米国に大きなポテンシャルがある」とし、BtoB事業の中核を担うAVCネットワークス社の社長に就任した榎戸康二氏を米国に常駐させ、米国中心でオペレーションを行なう体制を構築。「最大市場である米国に身をおくことで、脱日本発想を加速。スピード感を持って、事業創造を図っていく」という。また、BtoB事業におけるM&Aなどの投資判断および執行についても、北米基軸で推進するという。
また、海外戦略地域においては、2018年度に向けては家電事業が成長の牽引役になるとの考えを示し、4月にAPアジアおよびAP中国を設立。「地域のニーズにあった商品およびサービスを、地域の責任で迅速に市場投入する。開製販の機能を集約し、権限を大幅に委譲することで、事業拡大を加速する」という。
APアジアでは、重点国にベトナム、インドネシア、フィリピンの3カ国を位置づけ、Japan Premium商品で、「憧れ」を生み出すような戦略的なマーケティングを展開。AP中国では、富裕層にターゲットを絞り込み、プレミアム商品に開発リソースを集中させることで、中国のローカルメーカーとは一線を画した商品展開を行ない、プレミアムゾーンにおけるニッチトップを目指すという。
「いままでは、プレミアムゾーンおよび中級以上のゾーンに対して、本気で品揃えができていなかった。いや、やっていなかったといった方が正しい。いままでは日本に過度な注力をしており、海外で戦えるラインアップが揃っていなかった。やっていないのだから、韓国や中国のメーカーとは比較ができない状況。これからはそこをしっかりとやっていく」と語った。
さらに、成長事業に位置づける住宅事業についても説明。「パナソニックは、家電、設備、住宅事業を合わせ持つ唯一の会社。その技術と知見の掛け合わせで、新しいくらしの価値を提供し、強みを活かす」と前置きし、「国内の住宅設備/サービス事業では、物販事業の拡大に加えて、エイジフリー事業の展開を加速。国内の住宅事業では、リフォーム事業で、業界No.1に挑戦する。ここでは、リノベーションから部品取り付けまでを担う総合リフォーム会社として、事業を拡大する」とした。また、「住宅事業の海外展開については、台湾およびASEANでの展開を本格化。台湾では、現地デベロッパーとの合弁で事業を推進し、ASEANでは、新工法を用いた地域密着型の専用住宅を投入することにより、ボリュームゾーンの攻略と、スマートシティ案件の展開を進める」と語った。
今回の事業方針説明は、会見の冒頭に示された「事業構造改革の完遂宣言」に代表されるように、パナソニックの事業戦略が、成長へと大きく舵を切ったことを改めて強調するものとなった。創業100周年を迎える2018年度の売上高10兆円に向けて、力強い一歩を踏み出したのは明らかなようだ。