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シャープ、赤字決算と5カンパニー制への移行を発表。家電関連は日本・アジアに集中へ

 シャープは14日、営業赤字に転じた2014年度通期決算の発表とともに、2015~2017年度までの中期経営計画や構造改革などを発表。新たに、AV・白物家電などのコンシューマーエレクトロニクスや、液晶のディスプレイデバイスなど5つのカンパニーに事業を分割し、カンパニー制に移行することなどを発表した。

シャープ 高橋興三社長

 また、「資本、資金の面で深刻な状況」(高橋興三社長)を踏まえて、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、およびジャパン・インダストリアル・ソリューション(JIS)からの資本増強を行なうほか、人員削減にも取り組む。人員削減の規模はグローバルで10%、国内で3,500人程度となる。6月1日付けで長谷川祥典常務執行役員が代表取締役に就任する役員人事も発表した。

デジタル家電やケータイは新カンパニーに。5カンパニー制導入

 従来は2ビジネスグループ8事業本部となっていたが、これをコンシューマエレクトロニクス、エネルギーソリューションズ、ビジネスソリューション、電子デバイス、ディスプレイデバイスの5カンパニーに分割する。

5カンパニー制に移行

 カンパニー制は9月1日から導入予定だが、そこを見据えて6月1日付で5つの事業体制(事業統括/事業本部)に移行。経営責任の明確化を図る。

 これまでデジタル情報家電、通信システム、健康・環境の各事業本部に分かれていた事業を、コンシューマーエレクトロニクス カンパニーに集約。画像処理、プラズマクラスター、通信、クラウド、UI、Androidなどの技術を集約し、各新商品の創出に取り組むとしているほか、ロボットや車載システムなどの新規事業創出を行なうとしている。また、コンシューマエレクトロニクスについては、日本、アジアにリソースを集中し、欧州のTV/白物終息、米州のTV事業アライアンス検討などに取り組む。

 コンシューマエレクトロニクスカンパニーを統括するのは、現常務執行役員通信 システム事業統括 兼 通信システム事業本部長で、新たに代表取締役に就任する長谷川祥典氏。

コンシューマエレクトロニクス カンパニーの狙い

 「人と家電のつながり」を重視し、クラウドサービスを使った新商品提案を行なっていくほか、デザインも全面的に刷新。「新たなデザインビジョンの策定を進めている」(高橋社長)とした。

 米国のテレビ事業のアライアンスについては、「検討しているが、現時点では何も決まっていない」とし、あくまで方針であることを強調した。なお、テレビの設計部門などが入る矢板工場については、「縮小とか撤退は全く考えていない」とした。

日本・アジアにリソース集中

 高橋社長は、「テレビは、日本・アジアで力を入れていく。特に日本では白物もIoTにつながり、そのためのWi-Fiだったり、通信の技術をコンシューマエレクトロニクスカンパニーで持っている。ディスプレイはどう考えても家の中に必要で、これがないとエレクトロニクスカンパニーとして客様に寄り添った提案ができない。幸いにして、国内である程度のシェアを頂いているので、いつになるかわからないが、『これが昔で言うテレビだったのか』、というような世界を作っていきたい。そのために日本、アジアではテレビ終息は考えていない」と語った。

 太陽電池などのエネルギーソリューションカンパニーは、ソリューション売上の拡大と高付加価値化による黒字拡大を目指す。国内ではソーラーと蓄電池をベースに、HEMSなどをクラウドで繋いだソリューションを提案するという。

 ビジネスソリューションは、既存消費や顧客基盤を活かして、グローバル展開を拡大。電子デバイスカンパニーは、スマートフォン向けカメラの販路拡大や、センシングを中心にした付加価値領域への拡大を見込む。

 液晶のディスプレイデバイスカンパニーは、独自技術を活かして、売上変動リスクの少ない「BtoBtoB」の比率を'14年度の14%から、17年度に25%、21年度に40%まで拡大。亀山第二工場の次世代IGZO展開や、インセル方式タッチパネル展開、フリーフォームディスプレイなどに取り組む。なお、液晶事業の売却については、「液晶だけを特別視しているわけではない。現時点で(売却の)ロードマップを書いているわけではない」とした。

2014年度は2,223億円の赤字

 2014年度連結業績は、液晶テレビやエネルギーソリューションの販売減少、中小型液晶の価格下落の影響などで、売上高は2兆7,862億円(前年度比4.8%減)となった。

2014年度連結決算概要

 利益は、ソーラーパネルの原材料(ポリシリコン)の買付契約評価引当金の計上などにより、営業損益が480億円の損失(前年度は1,085億円の黒字)、経常損益が965億円の損失(同532億円の黒字)となり、液晶工場や堺太陽電池工場等の減損損失1,040億円、欧州などの事業構造改革費用212億円、欧州太陽電池事業の解決金143億円などを計上したことで、当期純損益は2,223億円の赤字となっている。

 液晶テレビや中小型液晶の売上未達などで、売上高が当初予測費で1,137億円規模の未達となったほか、海外液晶テレビの構造改革や堺工場の太陽電池減損、液晶は亀山・三重工場減損、電子デバイスは三原・福山工場の減損など、1,035億円規模の構造改革関連費用を積み増したことで、純利益は大幅な赤字となった。デジタル情報家電の通期実績は、売上高が前年同期比9.9%減の436億円、営業利益は134億円の赤字。

営業利益。期初予測との差異

中期経営計画

 '14年度の決算を踏まえ、抜本的な構造改革を盛り込んだ'15~17年度の中期経営計画を発表した。高橋社長は'14年度の成果について、欧州の太陽電池や家電事業の構造改革完了や、有利子負債削減などを進めたと述べる一方で、課題として米国のテレビ事業や、中小型液晶などで需要や技術トレンド変化に対応が遅れたことなどを説明した。

中期経営計画の基本戦略

 現時点の課題としては、「変化への対応力の弱さ」、「成長事業の立ち上げ遅れ」、「コスト競争力の低下」(液晶テレビ、中小型液晶)、「ガバナンス・経営管理能力の不足」(在庫急増、売上減速などの業績悪化への予兆管理の不足)を挙げた。

 そのため新中期経営計画では、安定的な事業構造の確立に向けたポートフォリオ再構築、固定費削減、組織・ガバナンスの再編/強化に取り組む。そのため今回調達した資金を割り当てて行く。

カンパニー制の狙い

 前述のカンパニー制導入に加え、人員削減や本社スリム化、本社売却、給与削減などで2015年度の収益改善効果約285億円/年を見込む。高橋社長は、本社売却について、「本当に不退転の挑戦で、シャープ全体での挑戦の時。もはや聖域はない。(売却により)キャッシュは入ってくるし、経営貢献できるが、残念ながら移転先は決まっていないし、いつ売れるかも決まっていない。気持ちとしては売却してまででも構造改革を遂行したいという強い意志だ」と意義を強調した。

固定費を削減。希望退職も

 構造改革をふまえ、2015年度の通期予想は売上高が0.5%増の2兆8,000億円、営業利益は800億円を見込む。さらに、2016年度は売上高2兆9,000億円、営業利益1,000億円で、純利益でも黒字化、2017年度は売上高3兆円、営業利益1,200億円で、営業利益率4%を目指す。

中期経営計画のロードマップ

 高橋社長は、シャープの目標を、「長年培ってきた技術と、シャープな目の付け所、人に一番近く寄り添う『人により添い、新しい価値を提供し続ける企業』と語り、中期経営計画の達成を強調。経営責任を問う質問についても、「間違いなく私が中心となり作成した中期経営計画。やり遂げる」と語った。

(臼田勤哉)