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クリプトン、10周年のピアノ仕上げスピーカー「KX-5P」。アルニコ搭載、48万5,000円

 クリプトンは、同社のスピーカー参入10周年を記念した密閉型の2ウェイブックシェルフ型スピーカー「KX-5P(Piano & Performance)」を10月下旬に発売する。価格は48万5,000円(ペア)。

KX-5P(右)

 また、音楽配信サービスの「クリプトン HQM STORE」において、カメラータ・トウキョウの13タイトルをDSD形式でラインナップに追加することを発表。既存のリニアPCM版と聴き比べることも可能になる。

ピアノフィニッシュで“熟成を極めた”ブックシェルフ「KX-5P」

 同社オーディオ事業の柱と位置付けるスピーカーシステムへの参入から10年が経過し、同時に10モデル目にあたるのが今回の「KX-5P」。これまでの集大成として「メイドインジャパンの熟成を極めた本格的ブックシェルフスピーカー」というモデルで、ハイレゾの超高域50kHzもカバーしている。

 高額な希少金属のため近年では搭載が少なくなっているアルニコマグネットをウーファ/ツイータに備えた2ウェイ2スピーカー構成。ユニットは既存のKX-5(ペア45万円)を継承しているが、エンクロージャの仕上げを、KX-5のポリウレタン材塗装仕上げから、KX-5Pではポリエステルのピアノフィニッシュに変更。それに合わせて吸音材などを見直し、チューニングを重ねて製品化に至った。なお、KX-5も併売となる。

左が既存のKX-5、右が新モデルのKX-5P

 ツイータには50kHzまで再生可能な砲弾型イコライザ付き35mm径ピュアシルクリングダイアフラムを採用。エッジワイズボイスコイルとアルニコ壷型内磁気回路により、超高域までリニアリティや歪みを改善。ハイレゾの高音質を楽しめるという。

 ウーファは、伝統の17cm径クルトミューラー製コーンを使用。エッジワイズロングトラベルボイスコイルとアルニコ壷型内磁気回路により能率を高め、駆動力を改善し、大きく振幅した際の磁気回路外れに対応、低歪みを実現したとしている。

ツイータ部
ウーファ部

 エッジ部は、伸びやかな低域再生を実現するため、KX-5と同様にリニアリティの高いブチルゴム・サラウンドエッジを使用。共振周波数を35Hzに設計して低域を伸ばし、ダイナミックレンジ拡大と過渡応答特性の改善に寄与しているという。

 エンクロージャは、針葉樹系高密度(比重0.8)の18mmパーチクルボードを採用した高剛性の密閉型。天然材突き板とポリエステルを用いたピアノ塗装で鏡面6面仕上げとした。これにより、不要な振動を抑え、振動減衰特性や表面波のスピードなどを改善。「ぬけの良い高級楽器のようなエンクロージャ」としている。エンクロージャの変更に合わせて、吸音材によるチューニングにも見直しを行なっており、「純毛(ウール100%)の低密度フェルト」と、クリプトンの吸音材「ミスティックホワイト(ダイニーマ)」をハイブリッドで使用。制動特性を調整し、ウーファの低域特性との相乗効果により、低域再生を向上させている。

 ウーファとツイータの内部配線材には、PCOCC-Aを用いた同社の単品ケーブルを使用。ディバイディングネットワークは、歪みを抑えるため抵抗値の低いOFC材を用いた1.2mm径の空芯コイルや、ケース入りのピッチ材で振動を抑えた低損失のメタライズドフィルムコンデンサーなどを使用。素子間の結線はハンダフリーのかしめ方式。端子は金メッキで、バイワイヤリング対応。LOW/HIGH端子を接続するショートワイヤーにも、内部配線材と同じPCOCC-Aを使っている。

 再生周波数帯域は40Hz~50kHz、クロスオーバー周波数は3.5kHz。インピーダンスは6Ω。定格入力は50W、最大入力は150W。出力音圧レベルは87dB。外形寸法は380×319×224mm(幅×奥行き×高さ)、重量は11kg。

内部配線にPCOCC-Aケーブル(左)を採用
背面
サランネット装着時

吸音材などのチューニングで、「サイズ2倍のエンクロージャと同等」

 クリプトンの濱田正久社長は、これまでの同社スピーカーの歩みを振り返り、「音楽の聴き方は様々だが、上質なものを目指し、奇をてらわずに良いものは残していこうという方針でこれまでやってきた。クリプトンらしさを失わずに、上質を目指してこれからも変化を続けたい」との考えを示した。

クリプトンのスピーカーの歩み

 かつてのビクター在籍時代から合わせると、スピーカを手掛けて半世紀に至るというクリプトンのオーディオ事業部長 渡邊勝氏は、'10年のKX-5から今回のKX-5Pへ至るまでの開発過程などを説明。「表面材を変えることは、チューニングとしては、ほぼゼロからのスタートとなる。ピアノフィニッシュにして締まった音を、豊かにしていかなければならなかった」とし、前述のPCOCC-A内部配線材の採用などで“硬さ”をやわらげたという。

 さらに、密閉型ブックシェルフながら低音を向上させることを目的に、吸音材によって音が通る“迷路”を作り、大きなエンクロージャを使った場合と同じようにすることを目指した。そのため、吸音材の素材に気泡を持つウールや、音が通る際に抵抗となって時間をかけさせるというミスティックウールを組み合わせたことなどを説明。これらの工夫により、実際のエンクロージャのサイズより2倍と同等の性能にしたという。

濱田正久社長
オーディオ事業部長 渡邊勝氏

HQM STOREのDSD配信に13タイトルを追加

 ハイレゾ配信サービスの「HQM STORE」では、カメラータ・トウキョウの「オリジナルマスターシリーズ」のDSD配信ラインナップを追加。8月に開始した6作品に加え、11月6日より順次13タイトルを配信する。これにより、同シリーズの19タイトルが全てPCMとDSDの両方で配信されるようになり、好みの形式を選択できるほか、両方を聴き比べることも可能になるとしている。

 11月6日からのDSD配信タイトルは、いずれもDFF 2.8MHzで、価格は各3,300円。

アナログマスターからDSD作成の作業工程
  • 「ロッシーニ:3つの弦楽ソナタ Vol.2」ベルリン弦楽合奏団
  • 「モーツァルト:3つのフルート・ソナタ」ガッゼローニ&カニーノ
  • 「イェルク・バウマン/無伴奏チェロ・リサイタル」イェルク・バウマン(チェロ)
  • 「ブルーノ・カニーノ plays ロッシーニ&ドニゼッティノ」ブルーノ・カニーノ(ピアノ)
  • 「バッハ:パルティータ全集」エディット・ピヒト=アクセンフェルト(チェンバロ)
  • 「テレマン:リコーダー作品選集」クナイス&ホフステッター(リコーダー)
  • 「ドヴォルジャーク:チェロ協奏曲」ワルター・ノータス(チェロ)
  • 「驚異のデュオ Vol.2」ベルリン・フィルハーモニック・デュオ
  • 「バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻」エディット・ピヒト=アクセンフェルト(チェンバロ)
  • 「革命/オレイニチャク・ショパン・リサイタル」オレイニチャク(ピアノ)
  • 「バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻」エディット・ピヒト=アクセンフェルト(チェンバロ)
  • 「ツィクルス/吉原すみれ~打楽器の世界」吉原すみれ(打楽器)
  • 「J.S.バッハ:イギリス組曲(全曲)」エディット・ピヒト=アクセンフェルト(チェンバロ)

(中林暁)