ニュース
クリプトン、ブックシェルフの新最上位スピーカー「KX-5PX」。バイワイヤリングにこだわり
2019年9月20日 19:15
クリプトンは、ブックシェルフ型スピーカーのリファレンスモデル「KX-5」シリーズの三代目モデル「KX-5PX」を10月下旬に発売する。価格はペアで498,000円。また、このKX-5PXの音質進化にも関連した、バイワイヤリング用スピーカーケーブル「SC-HR2000」も10月下旬に14,500円/m切り売りで発売する。
ブックシェルフスピーカーの新リファレンス「KX-5PX」
2ウェイのブックシェルフスピーカー。エンクロージャーは密閉型。既存モデル「KX-5P」との大きな違いとして、ウーファー、ツイーターの各内部配線材に、新開発で単品販売もする高級スピーカーケーブル2種類を採用。これに合わせて、試聴を繰り返して音作り・チューニングも改めて行なわれている。
ツイーターには50kHzまで再生可能な砲弾型イコライザ付き35mm径ピュアシルクリングダイアフラムを採用。OFCエッジワイズボイスコイルと、貴重で高価なアルニコマグネットを使った壷型内磁気回路を採用。超高域までリニアリティや歪みを改善。ハイレゾの高音質を楽しめるという。
ウーファーには、伝統の17cm径クルトミューラー製コーンを使用。こちらにも、エッジワイズロングトラベルボイスコイルとアルニコ壷型内磁気回路を使い、能率を高め、駆動力を改善。
エッジ部は、伸びやかな低域再生を実現するため、リニアリティの高いブチルゴム・サラウンドエッジを使用。共振周波数を35Hzに設計して低域を伸ばし、ダイナミックレンジ拡大と過渡応答特性の改善に寄与しているという。
エンクロージャは、針葉樹系高密度(比重0.8)の18mmパーチクルボードを採用した高剛性の密閉型。天然材突き板とポリエステルを用いたピアノ塗装で鏡面6面仕上げとした。これにより、不要な振動を抑え、振動減衰特性や表面波のスピードなどを改善。「ぬけの良い高級楽器のようなエンクロージャ」としている。吸音材は、純毛(ウール100%)の低密度フェルトと、クリプトンの吸音材ミスティックホワイト(ダイニーマ)をハイブリッドで使用。制動特性を調整し、ウーファの低域特性との相乗効果により、低域再生を向上させている。
内部配線材を一新
前述の通り、ウーファーとツイーターの内部配線材を、新開発のケーブルに変更してる。ウーファー用には、絹を介在として使ったPC-Triple Cのケーブルを開発。ツイーター用には、マグネシウム芯線の外周に、PC-Triple Cを6本撚りした構造のケーブルを開発した。
ディバイディングネットワークは、歪みを抑えるため抵抗値の低いOFC材を用いた1.2mm径の空芯コイルや、ケース入りのピッチ材で振動を抑えた低損失のメタライズドフィルムコンデンサーなどを使用。
スピーカーターミナルは、バイワイヤリング接続に対応。LOWとHIGH端子に、内部配線材と同じ、高級アクセサリーのPC-Triple Cショートワイヤーを使っている。
バイワイヤリング接続での音質向上を、ユーザーに訴求するモデルでもあり、バイワイヤリング接続用のスピーカーケーブル「SC-HR2000」(14,500円/m切り売り)も同時発売する。
再生周波数帯域は40Hz~50kHz、クロスオーバー周波数は3.5kHz。インピーダンスは6Ω。定格入力は50W、最大入力は150W。出力音圧レベルは87dB。外形寸法は380×319×224mm(幅×奥行き×高さ)、重量は11kg。
バイワイヤリング接続用スピーカーケーブルも発売
スピーカーの既存モデル「KX-5P」は、内部配線やジャンパーケーブルに、既に生産が終了しているPCOCC-Aを採用している。オーディオ事業部の渡邉勝氏によれば、このケーブルは、クリプトンがストックしていたPCOCC-Aのインゴットを使って作っていたが、それも無くなったため、それに代わるケーブルを作る必要が出てきたという。
また、KX-5Pはバイワイヤリング接続に対応しているが、バイワイヤリング接続すると音質が明らかに向上する事も改めて確認。多くのユーザーにバイワイヤリング接続を使ってもらうためにも、新たにバイワイヤリングケーブル「SC-HR2000」を開発。そこで開発したケーブルを、内部配線にも活用したのが前述の「KX-5PX」となる。
バイワイヤリングケーブル「SC-HR2000」は、仕様の異なるツイーター用ケーブル、ウーファー用のケーブルを1本にまとめている。
ツイーター用ケーブルは、芯線0.7mm 導通ありのマグネシウムに、PC-Triple C 0.7mm×6をロープ撚りにして、ポリエチレンの絶縁被膜で構成。外径は3.9mm。
ウーファー用は、1mm径導通無しのポリエチレン芯と、PC-Triple C 0.33mm×7本を6束にしてロープ撚り。ポリエチレンの絶縁被膜で構成している。外径は3.9mm。
ウーファーとツイーター用を合わせ、絹の介在を紙テープで巻取り、耐熱性ポリオレフィン樹脂のシースで構成したのが「SC-HR2000」となる。
また、SC-HR2000のウーファー用ケーブル、ツイーター用ケーブルを分離したケーブルも単品で発売。ウーファー用が「SC-HR1500」(12,000/m 切り売り)、ツイーター用が「SC-HR1300」(8,000/m 切り売り)となる。
ウーファー用「SC-HR1500」は、1mm径ポリエチレン芯と、PC-Triple C 0.33mm×7本を6束にしてロープ撚り。ポリエチレンの絶縁被膜で構成。絹の介在と、紙テープを合わせた耐熱ポリオレフィン樹脂のシースも使っている。外径は9.8mm。
ツイーター用「SC-HR1300」は、芯線0.7mmのマグネシウムに、PC-Triple C 0.7mm×6をロープ撚りにして、ポリエチレンパイプと紙テープを巻き合わせた、ポリエチレン絶縁シースで構成。外径は8.5mm。
これらのケーブルは、クリプトンのスピーカー専用ではなく、他社スピーカーのユーザーに向けても訴求。ウーファー用のSC-HR1500は低音の量感があり、トランジェントやS/N感に優れる。ツイーター用のSC-HR1300は、高域の音楽振動による微小振動をマグネシウム芯線とポリエチレンパイプが吸収、滑らかで透明感のある高域再生が特徴。こうした特徴を活用し、ユーザーがオーディオシステムの音質を、自分の理想に近づけるためのケーブルとしても訴求している。
なお、これらのスピーカーケーブルは前述の通り1m単位での切り売りとなるが、クリプトンの直販サイトでは、ユーザーが求める端子を取り付けた状態のケーブルとして、オーダーできるようにする予定。
「KX-5PX」をバイワイヤリングケーブルで聴く
既存モデルのKX-5Pと、新モデルKX-5PXをバイワイヤリング接続で聴き比べた。ケーブルはSC-HR2000を使っている。
そもそもバイワイヤリング方式は、スピーカーをバイアンプやバイワイヤリング接続で駆動する事で、ウーファーユニットとツイーターユニットを分離する技術だ。個々のユニットは振幅して音を出すが、逆に振幅する事で逆起電力が発生。それが、例えばウーファーからツイーターへと流れて、悪影響を及ぼす。バイアンプやバイワイヤリング接続する事で、こうしたモジュレーションを防ぎ、中高音の歪を低減。透明感を増した再生ができるという。
大きな進化点は内部配線だが、音質の向上幅は大きい。すぐにわかるのは、音場の奥行きの深さ。5PXの方がより深く、音場が立体的に感じる。その影響もあり、ボーカルなどの音像がよりクッキリと、前に出てくるようにも感じる。
鐘の音の響きが、空間に消えていくような描写も、5PXの方がより奥まで響きが伝搬していくのが聴き取れる。低域の沈む深さや分解能、高域の情報量も5PXの方が優れている。
シングルワイヤ接続でも、こうした音の進化は感じられる。だが、バイワイヤリング接続した方が、よりその進化が聴き取りやすいと感じる。専用ケーブルというわけではないが、5PXとSC-HR2000は非常にマッチする組み合わせと言える。
また、分離したスピーカーケーブル、ウーファー用の「SC-HR1500」、ツイーター用「SC-HR1300」にも、それぞれ音の傾向に前述のような違いがある。これを活用し、例えば、高域がキツめのスピーカーと、SC-HR1500を組み合わせて、聴きやすいサウンドに変化させるといった使い方もできる。ユーザーが理想のサウンドを追求する際のケーブルとしても注目だ。なお、新スピーカーの「KX-5PX」には、SC-HR1500のケーブルを使ったジャンパーケーブルが付属する。