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5万円台でもDTS:X。デノンから音質&ハイレゾ対応強化の7.2ch AVアンプ2機種

 ディーアンドエムホールディングスは、デノンブランドのAVアンプ新モデル2機種を6月中旬に発売する。価格は「AVR-X2300W」が85,000円、「AVR-X1300W」が57,500円。エントリーモデルのX1300Wも含め、どちらのモデルもDolby Atmos、DTS:Xに対応する。

手前が「AVR-X1300W」、奥が「AVR-X2300W」

 どちらも7.2chのAVアンプ。最大出力は「AVR-X2300W」が185W×7ch、「AVR-X1300W」が175W×7ch。全チャンネル同一構成のディスクリートパワーアンプを搭載している。また、オブジェクトオーディオ技術のDolby Atmos、DTS:Xもサポートする。

「AVR-X2300W」
AVR-X1300W
AVR-X2300W

機能面での強化ポイント

 前モデルから強化されたのは、ネットワークオーディオ再生機能。DLNAに対応し、DSD、AIFF、WAV、FLACなどの再生ができ、従来機はDSD 2.8MHzまでの対応だったが、X2300W/X1300Wでは5.6MHzまでの再生が可能になった。AIFF、WAV、FLACは最大192kHz/24bit、Apple Losslessは最大96kHz/24bitまでの再生が可能。FLAC、WAV、DSD、AIFF、Apple Losslessのギャップレス再生もサポートする。

DSD 5.6MHzの再生も可能に

 フロントのUSB端子から、USBメモリなどに保存したハイレゾファイルも再生可能。AirPlay、インターネットラジオの聴取にも対応。Bluetoothにも対応し、スマートフォンやタブレットから手軽にワイヤレスで音楽再生ができる。

 無線LANも強化。IEEE 802.11a/b/g/nの2.4GHzに加え、5GHzにも対応。デュアルバンド対応になった事で、無線LAN環境でも快適にネットワークオーディオ再生やネットラジオが楽しめるという。AM/FMラジオチューナも備え、ワイドFMにも対応する。

 スマホやタブレットからの制御も可能だが、新アプリ「Denon 2016 AVR Remote」を公開。スマホなどからAVアンプの操作ができるほか、DLNAサーバー内の音楽を検索したり、インターネットラジオの選局などが可能。今後のアップデートでは、より細かな操作も可能になっていくという。

 HDMI入出力は、X2300Wが8入力2出力、X1300Wが6入力1出力を装備。いずれの端子もHDCP 2.2と、4K映像の伝送に対応。HDRやBT.2020映像にも対応している。

 オブジェクトオーディオのパフォーマンスを再現するため、32bitクアッドコアのDSPを搭載。2014年モデルのDSPと比べ、約4倍の処理能力を持つというチップで、音場補正回路の「Audyssey MultEQ XT」などと、Dolby Atmos、DTS:Xの併用が可能。

32bitクアッドコアのDSPを搭載

 Audyssey MultEQ XTは、付属マイクを使い、スピーカーの有無やサイズ、距離、音量などの基本的な調整値を自動的に設定する。最大8カ所の測定データを解析することで、スピーカーごとの周波数特性の違いは、部屋の反響音などによる悪影響の要因を排除可能。組み立て式のマイクスタンドも付属する。

 スピーカー配置は「5.1.2」に対応。5.1ch+フロントハイト、5.1ch+トップフロント、5.1ch+トップミドル、5.1ch+フロントドルビーイネーブルド、5.1ch+サラウンドドルビーイネーブルドの5パターンからアサインが選べる。

柔軟なスピーカー配置が可能

 ドルビーイネーブルドスピーカーは、天井のトップスピーカーを設置する代わりに、天井に音を反射させるものだが、イネーブルドスピーカーと天井までの距離を90cm~3.3mの間で入力する事で、ディレイなどのタイミングをより正確に調整できるようになる。

 セットアップも手軽にできるよう、背面のスピーカーターミナルにはカラーリングを施し、ケーブル差込口を真上に用意するなど、接続もしやすくなっている。各スピーカーからのケーブルを正しく接続するため、それぞれのケーブルをターミナルの色に合わせてマーキングするためのカラーラベルも付属する。

 接続から初期設定までを、テキストとグラフィックを使い、ガイドする「セットアップアシスタント」機能も用意。スピーカーや入力機器の接続、スピーカー設定、ネットワーク設定などがここから行なえる。

 フロントパネルと、リモコンに「クイックセレクトプラス」用ボタンを用意。入力ソース、音量レベル、サウンドモード設定を一括で記憶するためのもので、様々な設定を手軽に、一度に変更できる。

音質面での強化

 プリアンプ部は、ヒートシンクや電源トランスからの振動を受けにくく、信号経路のミニマイズも考慮したレイアウトを採用。ハイインピーダンスなアナログ入力を、トランスより極力離して配置する事で、ノイズの影響を低減している。

 パワーアンプ部はディスクリート構成。厳選したパーツで構成する事で、ICやパワーパックを超える充実したサウンドを実現したとする。どちらのモデルも、高速整流ダイオードと大容量のブロックコンデンサを使った電源部により、4Ωのスピーカードライブにも対応する。

AVR-X1300Wのパワーアンプ部
AVR-X2300Wのパワーアンプ部

 X1300Wは、カスタムコンデンサを出力段のパワートランジスタと同一基板上に配置。最短距離で電源供給を実現している。

 デジタル・セクションの基板設計は全て刷新。「演算処理が増えているので、それをいかにスマートに行なうかが、サウンドに大きな影響を与える」という。DACはバーブラウン。DAC経路の低周波特性を改善する事で、オブジェクトオーディオにも十分対応できるよう、ポストフィルタはより低域をフラットにのばす方向に再設計したという。

デジタル・セクションの基板設計は全て刷新

 力強いサウンドを実現するため、カレントリミッタをアンプブロックから排除。代わりに、パワートランジスタの発熱をリアルタイムでモニターするタイプに、保護回路を見なおしている。これにより、パワーアンプの瞬時電流供給能力が向上。よりハイスピードでパワフルな再生が可能になったとする。

開発を担当した、グローバル Product ディベロップメント プロアクト エンジニアリングの高橋佑規サウンドマネージャー

 さらに、倍速ドライブスイッチング電源(SMPS)も投入。スイッチング電源からのノイズは音質に悪影響を及ぼすが、このノイズをオーディオ周波数バンド外に出してしまう事で、音質を高めている。

 また、X2300Wのみの特徴として、パワーアンプの初段に高性能なデュアル・トランジスタを導入。微小信号の表現力を高め、低域の安定感も実現したとする。

X2300Wのみの特徴として、パワーアンプの初段に高性能なデュアル・トランジスタを導入
倍速ドライブスイッチング電源も投入

 HDMI以外の入力端子は、X2300Wがコンポジット×2、コンポーネント×2、アナログ音声×4、光デジタル音声×2。出力はサブウーファプリアウト×2、ゾーンプリアウト×1、ヘッドフォン出力×1、コンポジット×1も搭載する。X1300Wの入力は、コンポジット×2、アナログ音声×2、光デジタル音声×2。出力はコンポジット×1、サブウーファプリアウト×2、ヘッドフォン出力×1。

 消費電力と外形寸法、重量は、X2300Wが500W(通常スタンバイ時0.1W)、434×339×167mm(幅×奥行き×高さ)、重量は9.4kg。X1300Wは430W(通常スタンバイ時0.1W)、434×339×151mm(幅×奥行き×高さ)、重量は8.5kg。

AVR-X1300Wの背面
AVR-X2300Wの背面

音質をチェック

 サウンド面の変化について、サウンドマネージャーの山内慎一氏は、「毎年改良を重ねているが、今年も大きな進歩があった。昨年来、(ピュアオーディオにおいて)“ビビッド”と“スペーシャス”をキーワードに製品開発を行なっているが、クリアで生き生きとしたサウンドをマルチチャンネルにも展開した」と説明。

 「マルチチャンネルに展開した際は、“スペクタキュラー”と表現している。抑揚、ダイナミズム、そういった強弱の部分がより明解になっており、よりオーディオ的になってきたなという印象を持っている」という。

サウンドマネージャーの山内慎一氏

 2chで両モデルのサウンドをチェック。どちらもハイスピードでクリア、トランジェントの良い鳴りっぷりが印象的だ。山内氏がサウンドマネージャーに就任してからの、デノンサウンドの特徴がAVアンプにも貫かれている。低価格なX1300Wでも、音像の輪郭が明瞭で、低域の分解能も高く、アンプとしての基本的な能力の高さを伺わせる。

 低域をメインに聴き比べると、ベースなどの重い音はX1300Wよりも、X2300Wの方が沈み込みが深い。音場の奥行きもX2300Wの方が深く、全体として低重心で、余裕のある表現が可能になっている。

 マルチチャンネル5.1.2chでも同様の傾向で、シャークでクリアな描写はオブジェクトオーディオでも、音像の移動感や包囲感をさらに高めている。同時に、X2300Wは音場がさらに広く、部屋の壁が無くなったような感覚が味わえる。

 どちらもコストパフォーマンスに優れているが、個人的にはX2300Wのサウンドは10万円以下のAVアンプとは思えないクオリティだと感じる。筐体デザイン的には良く似た2モデルだが、X1300Wは出来の良いエントリーモデル、X2300Wは上位モデルのサウンドを手頃に楽しめる中級モデルという印象を持った。

デノンの試聴室で2機種のサウンドをチェック

(山崎健太郎)