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デノン、旭化成DAC搭載でHDR対応も強化したAVアンプ。9万円のX2400H、約6万円のX1400H
2017年5月17日 10:00
ディーアンドエムホールディングスは、デノンブランドのAVアンプ新製品として、7.2chの「AVR-X2400H」と「AVR-X1400H」を6月中旬に発売する。価格は「AVR-X2400H」が90,000円、「AVR-X1400H」が59,500円。10万円以下の製品だが、どちらもDolby AtmosやDTS:Xに対応、4KのHDR映像はDolby Visionやハイブリッドログガンマにも対応する。
X2300W、X1300Wの後継モデル。共通する進化点として、最新の映像規格にフル対応。4K/60p/4:4:4/24bitや、4K/60p/4:2:0/30bit、4K/60p/4:2:2/36bitなどのフォーマットをサポートし、広色域表現を可能にする「BT.2020」のパススルーも可能。4K Ultra HDのパススルーもできる。
HDR映像は、UHD BDに採用されているHDR10に加え、Dolby Visionとハイブリッドログガンマにも対応。パッケージ、ストリーミング、放送など様々なソースでHDR映像が楽しめる。なお、Dolby Visionとハイブリッドログガンマには、今秋のファームウェアアップデートで対応する。また、2016年モデルも同時期に、両フォーマットへの対応を予定している。
HDMI入力は、X2400Hが8系統搭載。59,500円のX1400Hも6入力を備え、クラス最多の端子数となっている。全HDMI端子がデジタル映像の著作権保護技術「HDCP 2.2」に対応。
HDMI出力はX2400Hが2系統、X1400Hが1系統。X2400Hではテレビとプロジェクタなど、2つの画面に同時に同じ映像を出力できる。
オブジェクトオーディオのDolby Atmos、DTS:Xに対応。既存のオーディオ信号についても、サウンドモードの「Dolby Surround」、「DTS Neural:X」を使い、スピーカーの構成に応じて最適なアップミックスが可能。
5.1.2のスピーカー配置に対応。2つのハイトチャンネルスピーカーを接続でき、ハイトチャンネルスピーカーには、フロントハイト、トップフロント、トップミドル、フロントドルビーイネーブルド、サラウンドドルビーイネーブルドのいずれかを選択可能。サラウンドバックやハイトチャンネルスピーカーを使用しない場合には、フロントスピーカーの駆動に4チャンネルのアンプを使うバイアンプ駆動、2系統のフロントスピーカーを切り替えて使用する「A+B」のアサインも可能。
Dolby Atmos、DTS:Xのパフォーマンスを活かすために、従来モデルから引き続き32bitクアッドコアのDSPを搭載。Dolby Atmos、DTS:Xに対応しながら、音場補正回路の「Audyssey MultEQ XT」も利用できる。Audyssey MultEQ XTでは、付属のマイクを使い、スピーカーの有無やサイズ、リスニングポイントまでの距離、音量を測定。最大で8カ所の測定データを解析することで、スピーカーごとの周波数特性の違いや部屋の反響音などの音響的な問題を取り除ける。マイクを設置する組み立て式のスタンドも付属する。
天井に音を反射させる事で、トップスピーカーの代わりとなるDolbyスピーカーも、セットアップでサポート。天井までの距離を入力する事で、スピーカーから視聴ポイントまでの距離を計算し、反射を含め、より正確なディレイタイムを実現する。
さらに細かな設定を可能にする有料アプリ「Audyssey MultEQ Editor」も2,400円(税込)で用意。AVアンプ単体では設定できない調整項目にアクセスできる。インストーラーの利用も想定したアプリとなる。
DACも変更、音質もブラッシュアップ
プリ部は、Hi-Fi向けアンプのエンジニアも加わり改良を加えている。シンプル&ストレートにこだわった設計で、上位機種のX6300H、X4300Hでも採用された、新しいカスタムボリュームICを採用。従来はセレクターとボリュームがワンチップだったが、JRC(新日本無線)と共同で開発した、セレクターとボリュームそれぞれ個別のICを使う事で、信号経路を最短化。
ハイインピーダンスであるアナログ入力を、トランスより極力離して配置する事で、ノイズの影響を減らしている。
DACも刷新。従来はTIのバーブラウン24bitタイプを使っていたが、旭化成エレクトロニクスの32bitタイプ8ch DAC「AKM4458」を1基搭載(上位機は2基)。DAC経路の低域用周波数特性を改善し、オブジェクトオーディオにも十分対応できるよう、よりフラットな低域特性を実現したという。
パワーアンプ部は7chのディスクリート構成。新たなプリ部やDACに合わせてチューニングを行なっているほか、高速整流ダイオードと大容量ブロックコンデンサを使った電源部により、4Ωのスピーカーもしっかりドライブできる、余裕のあるドライブ能力を実現した。
出力段の保護回路構成の見直し。「映画のダイナミズムを再現するため」として、カレントリミッターをアンプブロックから排除。パワートランジスタの発熱をリアルタイムにモニタリングする事で実現したもので、瞬時電流供給能力を約3倍に高めている。
デジタル系デバイス用の電源に、倍速ドライブスイッチング電源(SMPS)を投入。スイッチング電源から発生するノイズは音質に悪影響を与えるが、そのノイズを可聴帯域外に押しやっている。配置もプリアンプから最も遠くにするなど、考慮した。
X2400HとX1400Hの違い
X2400Hには、上級モデルのパーツを投入。デュアルトランジスタを搭載し、微小信号の表現力を高め、低域の安定感を実現した。電源トランスのコアサイズも、X2400Hの方が大型になっている。
HDMI以外の端子として、どちらのモデルもコンポジット入力×2、コンポジットモニター出力×1、光デジタル入力×2、サブウーファプリアウト×2、ヘッドフォン出力×1を装備。
アナログ音声入力を、X1400Hは2系統、X2400Hは4系統搭載。X2400Hは、ZONE2プリアウトも備えている。また、X2400Hのみ、コンポーネント入力を2系統搭載。HDMIビデオコンバージョン機能も備えている。
アンプの定格出力も異なり、X1400Hは80W×7ch(8Ω)、X2400Hは95W×7ch(8Ω)
ネットワーク再生機能も強化
デノンのネットワーク/ワイヤレススピーカー「HEOS」シリーズのテクノロジーも搭載。HEOSスピーカーとAVアンプの連携が可能で、AVアンプから信号をワイヤレス伝送し、HEOSスピーカーから音を出す事も可能。
AVアンプに搭載するネットワークモジュールも新しいものになっており、通信速度が大幅に向上。利便性や安定性もアップしているという。
ネットワークプレーヤー機能もAVアンプに搭載。DLNAのNASなどに保存したPCM 192kHz/24bit、DSD 5.6MHzまでのファイルを再生でき、DSD、WAV、FLAC、Apple Losslessファイルのギャップレス再生も可能。USBメモリからの再生もサポートする。
ネットワーク再生の制御には、無料のスマートフォン/タブレット向け「HEOS」アプリを利用。Bluetooth伝送も制御できる。AirPlayもサポートしており、iOS機器とも連携が可能。
AVアンプの機能制御用には、既存のアプリ「Denon 2016 AVR Remote」を利用。ネットワーク再生には前述の「HEOS」と、2つのアプリを切り替えて利用するスタイルとなる。
セットアップのわかりやすさにもこだわり、背面のスピーカーターミナルはケーブルを接続しやすいように、横一列に配置し、差込口を真上に調整。各ターミナルをカラーリングし、チャンネルの識別を容易にしている。ケーブルにもカラーラベルを付属。
OSDで接続から初期設定までを、テキストとグラフィックを使ってガイダンスする「セットアップアシスタント」を用意。ガイダンスに従って進める事で、セットアップが完了する。
フロントパネルとリモコンには、クイックセレクトボタンを用意。入力ソース、音量レベル、サウンドモードの設定などをまとめてボタンに登録できるもので、AVアンプの操作がわからないという人も、ボタンを押すだけで、様々な設定を一度に切り替えられる。
有線LANに加え、無線LANも装備。2.4GHzと5GHz帯のデュアルバンド対応で、安定した通信を実現する。FM/AMチューナを搭載し、ワイドFMにも対応。
アンテナを寝かせた状態の外形寸法と重量は、X2400Hが434×339×167mm(幅×奥行き×高さ)で、9.4kg。消費電力は500W。X1400Hは、434×339×151mm(同)で、8.5kg。消費電力は430W。
デノンの試聴室でX2400Hの音質をチェック
新製品2機種のサウンドについて、サウンドマネージャーの山内慎一氏は、「AVアンプはモデルチェンジのたびに音質がアップしているが、今年のモデルはその“進化の度合”がグンと上がったと考えている。評論家の方にも聴いていただいたが、“凄く変わった”という声をいただいている」という。
具体的には、「SN比が良くなり、それが全体的な音質の改良に寄与している。スケール感、分離感が良くなり、音楽のレイヤーの重なり具合がハッキリと聴き分けられる音になっている」と分析した。
デノンの試聴室でX2400Hの音質をチェック。まず2chのCDで「ソランジュ/don't you wait」を聴くと、従来モデルで印象的だったトランジェントの良さ、音圧の豊かさといった部分がより改良されているのがわかる。山内サウンドマネージャーによる新たなデノンサウンドの進化という印象で、ベースラインとボーカルといった音像の輪郭が明瞭で、重なる部分も分離が良く、確かに“音楽のレイヤーの重なり”が良く分かる。
かといって、分解能が高いだけの線が細い音ではなく、個々の音像に勢いがあり、エネルギッシュさもある。見通しがよく、なおかつ気持ちのいいサウンドだ。
映画「不屈の男 アンブロークン」でDolby Atmosを体験すると、SN比が良好な事により、音場が広大だ。爆撃シーンでは、その空間の内側に爆撃機があり、その内側に役者達の息遣いといった細かな音の定位が明瞭で、各音像の三次元的な奥行きがよく描かれている。トランジェントが良いため、銃撃音が生々しく、首をすくめるような怖さがある
音楽Blu-rayとして、マムフォード&サンズのライブ盤を再生すると、会場に広がる観客が、合唱する包囲感が凄い。包み込まれる感覚と同時に、1人1人の細かな声も分解能良く描写しているため、聴力がアップしたような、鮮明な印象も受ける。アンプとしての基本的なポテンシャルの高さが、Blu-ray再生でも活きていると感じた。