ミニレビュー

3,980円でも侮れない音。Blue Ever Blueのイヤフォン「868B」を聴く

 イヤフォン市場が成熟するにつれ、沢山のユニットを搭載した高級イヤフォンも増加。つい人気メーカーのハイエンドモデルにばかり目を奪われてしまうが、その一方で、低価格な製品でも、口コミで人気が広まるモデルもある。

 昨年から、ネットでよく名前を見かけるようになったのが、Blue Ever Blueというメーカーの「868B "the silver"」というイヤフォン。5月29日現在、Amazon.co.jpでは3,980円で販売されている。

Blue Ever Blueの「868B "the silver"」

 価格帯としてはエントリーモデル、スマホやポータブルプレーヤー付属イヤフォンからの最初のステップアップというところ。話題になっているので気になってはいたが、それと同時に「ずいぶん安いけど、音はどうなのかな?」と、興味半分、不安半分という状態だった。

Blue Ever Blueって?

 Blue Ever Blueというメーカーは、アメリカ・ワシントンD.C.にあるそうだ。最大の特徴は、HDSS(High Definition Sound Standard)という技術を採用したイヤフォンの開発・販売を行なっている事。「868B」にもこのHDSS技術が使われているという。

 HDSS技術は米TBI Audio Systemsを中心に提唱されている音響技術で、コストを抑えながら音質を向上させる事ができるとのこと。そのTBI Audio Systemsから、イヤフォン専業のために独立したのが、Blue Ever Blueだという。

 このHDSS技術、詳しい説明は輸入代理店のシースピリッツ(店舗名はHAKOJIRO SOUND BOX)のサイトに記載されているが、ポイントをまとめると、ETL(Embedded Transmission Line)モジュールと呼ばれる特殊な部材をハウジング内や振動板の背後に設置する事で、内圧を温度変化や再生中の音、残響、定常波の有無に依らずに一定に保ち、振動板の正確な動作を補助。自然な音と、広がり、心理的ストレスを緩和した音が得られるというもので、ETLの素材、形状、取り付け方とその効果が特許化されているという。

聴いてみる

 特殊な技術が使われてはいるものの、868Bの基本的な仕様はダイナミック型のイヤフォンだ。ユニットの口径は10mm。再生周波数帯域は20Hz〜20kHz。インピーダンスは16Ω、感度は109dB。筐体の素材はアルミだ。ケーブルの長さは1.2mで着脱はできない。

「868B "the silver"」。筐体はアルミ製で質感は高い。デザインはシンプルだ

 試聴にはいつものハイレゾポータブル「AK240」を使ったが、20万円を超えるプレーヤーと3,980円のイヤフォンという組み合わせもアンバランスなので、スマートフォン(Xperia Z1)の直接接続も混ぜて試聴した。

 音を出す前に「868B」の装着感だが、ハウジングが小さいので、装着自体は難なく行なえる。価格からすると、アルミ製ハウジングの質感は高く、高級感がある。ただ、形状的に耳穴手前の空間にスポッとはまって強固にホールドするタイプではないので、イヤーピースが耳穴に対して小さめだと、ポロッと抜けやすくなる。大きめのサイズを選ぶと良いだろう。

 音はなるほど面白い。10mm径のダイナミック型1発とは思えないほど中低域の音圧が豊かで、「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best OF My Love」を聴くと、1分過ぎからのアコースティックベースが「グォーン」と熱気の塊のようなパワフルな低音が吹き寄せてくる。

 これだけであれば、低価格イヤフォンにありがちな「低音が膨らんだ音」で終わりだが、868Bが面白いのは、これだけ音圧豊かな中低音が張り出しながら、その背後にある女性ヴォーカルの声が極めてクリアなまま存在し、キチンと音楽の大事な部分が聴き取れる事。

 また、低音の響きも豊かなのだが、それがハウジング内に充満して高域の頭を抑えたり、音色を変えたりはしていない。確かにHDSS技術により、不要な振動や音の響きをキッチリ抑え、目指している音を出そうとしているのが良く分かる。

 傾向としては、低音重視のパワフルサウンドだが、単純にボンボンドコドコと膨らむ音ではなく、クリアに中高域も聴かせるオールマイティーさも兼ね備えている。3,980円という値段を考えると確かに価格以上のパフォーマンスで、話題になるのも頷ける。

「866B "the red"」もチェック

 ただ、個人的な好みとしては、もう少し低域の膨らみを抑えて欲しい。試しに、より低価格な、3,480円(5月29日現在/Amazon価格)で販売されている「866B "the red"」というイヤフォンも聴いてみた。こちらは8.2mm径のダイナミック型ドライバで、ハウジングの鮮烈な赤が印象的。筐体はアルミだ。

 音はまさに好みにドンピシャ。868Bのパワフルな中低域をちょっと抑え、より音場の見通しが良くなる。特に奥行き方向の空間描写が巧みで、音楽を立体的に再現してくれる。低域の沈み込みは868Bよりやや浅いが、HDSS技術の魅力は、こちらのイヤフォンの方が良く分かる。モニターライクな音が欲しいというのであれば、個人的には「866B」の方をオススメしたい。いずれにしても、価格以上のパフォーマンスを発揮してくれる2モデルだ。

Amazonで購入
Model 868B
"the silver"
Model 866B
"the red"

(山崎健太郎)