レビュー

音楽をより身近に。生まれ変わった第6世代iPod touch

Apple Musicの魅力を最大化。中身は一新の新世代機

 7月に発売開始され、久しぶりの新iPodとなった第6世代iPod touch。スマートフォン「iPhone」でなく、音楽プレーヤー「iPod」を求めていた人にとっては待望の新モデルといえるだろう。

第6世代iPod touch

 ほぼ3年ぶりのiPod touch新モデルだが、外観やディスプレイ、サイズ、機能はほぼ共通。しかし中身は一新され、カメラ機能は800万画素に強化(従来は500万画素)されたほか、写真や1080/30pの動画撮影だけでなく、1秒間に10枚の写真を連写するバーストモード、120fpsのスローモーション撮影、タイムラプスビデオなどに対応した。64bitプロセッサの「A8」の搭載によるパフォーマンスの向上もカメラ機能やヘルスケアアプリ連携、ゲームのパフォーマンス強化などに繋がっている。

 簡単にまとめると、従来のiPod touchのサイズやデザインは継承しながら、カメラやプロセッサなどのハードウェアを最新iPhoneに近づけ、iOSの最新機能をより快適に使えるようにしたものが、第6世代iPod touchといえる。

 Apple Store価格は24,800円(16GB)、29,800円(32GB)、36,800円(64GB)、48,800円(128GB)。音楽プレーヤーと考えると、iPod touchとして初めて128GBモデルが用意されたことも重要なポイント。なお、128GBはApple Store限定モデルとなる。

 すでに、ファーストインプレッション記事をお届けしているが、今回はその後約2週間使った新iPod touch(128GBモデル)の使い勝手をレポートしたい。

 ざっくりとした感想は以下のとおり。結論をいうと、かなり満足している。

  • 軽さ、小ささが魅力
  • 音質も良好
  • Touch IDが欲しかった
  • 新touchにより、Apple Musicがより魅力的に
パッケージ
パッケージ内容

軽さと薄さが魅力。Touch IDが欲しかった

 カメラやA8チップの搭載に加え、無線LANの最新規格であるIEEE 802.11 ac対応やストラップ(iPod touch loop)の廃止、カラーバリエーション一新など、第6世代ならではの変更点もあるが、デザインは第5世代を踏襲。外形寸法は123.4×58.6×6.1mm(縦×横×厚み)、重量88g、液晶ディスプレイも4型/1,136×640ドットと、第5世代とほぼ共通だ。

第6世代iPod touch
前面
側面
背面

 ただ、久しぶりにiPod touchを使ってみて実感するのは、その軽さ。最近のスマホでは比較的軽く小さいiPhone 5s(123.8×58.6×7.6mm/112g)ユーザーの筆者でも「軽くて薄い」と実感できる。手に持った感覚でやや不安なくらい薄いと感じる。

Phone 5s(左)と第6世代iPod touch(右)

 iPod touchが出始めた時は、オーディオプレーヤーとしては「薄いが大きい」という印象を抱いたのだが、5インチオーバーのスマホが当たり前になった今では、「薄くて小さくて軽い」と感じるから不思議なものだ。ちなみに2007年9月の初代iPod touchのレビューには。「3.5型液晶を装備しており本体サイズ自体は片手で持つには少々大きい」と書いていた……

 スマホとの2台持ちも問題ない軽さと薄さで、「音楽プレーヤーとスマホを分けたい」という人にとっては魅力的な選択肢だ。また、ポータブルアンプとの併用を考える人にとっても、この薄さと軽さは魅力といえる。

薄さが第6世代iPod touchの魅力
iPhone 5sと比較

 一点、iPhoneユーザーとして不満に感じるのは指紋認証の「Touch ID」非対応という点。スマホほどではないにしろ、写真やビデオ、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア、メールなどと連携し、プライバシーの塊でもあるiPod touch。そのため、最低限パスコード(4桁のパスワード)は必須といえる。

 Touch IDを備えたiPhone 5s以降の場合、指紋認証により、ホームボタンに触れるだけでパスコードを解除できる。しかし、iPod touchはTouch IDを備えていないため、ロック解除時に毎度4桁のパスコードを入力する必要がある。これは億劫で、「音楽をすぐ聴きたい」というiPodに対するニーズを妨げるもの。次世代iPod touchではTouch ID対応して欲しい。

Touch ID非対応が惜しい。下はTouch ID対応のiPhone 5s

iPod touchで、Apple Musicがより魅力的に

 第6世代iPod touchは、iOS 8.4を搭載(8月7日時点)。音楽プレーヤーとしての基本機能は、iPhoneや従来のiPod touchなどと大きく変わるものではない。iTunesで購入した楽曲や、WindowsやMacから転送した曲は[ミュージック]アプリから再生できる。

 音質については前回のレビューでも触れているが、iPhone 5sとほぼ同傾向ながら、聴き比べるとiPod touchのほうが好印象だ。付属のイヤフォンは「EarPods」。バランスが良く、開放的かつ音場が結構広く、低域もシャープ。音質は充分なのだが、個人的には耳から外れやすくく、装着感の点では難ありと感じる。

付属イヤフォンの「EarPods」

 ヘッドフォンにソニーの「MDR-1A」を使って、テイラー・スウィフト「1989」(44.1kHz/24bit WAV)や256kbps AAC楽曲で、第6世代iPod touchとiPhone 5sを比較したところ、touchのほうがやや音場が広めで、中低域が強く、勢いを感じる。また、シンバルのアタック感などもtouchのほうが明瞭だ。傾向は良く似ているのだが、特に音場感はiPod touchのほうが優れていると感じる。

Apple Music

 また、7月にスタートした月額980円の定額制音楽配信サービス「Apple Music」もミュージックアプリに統合されている。

 Apple Musicの詳細は、サービス開始時のレビュー記事も参照して欲しいが、新iPod touchで魅力に感じたのが、音楽専用機として利用できることによる、Apple Musicの使い勝手の良さだ。

 Apple Musicは、ストリーミング形式の音楽配信サービスで、インターネット接続環境さえあれば、3,000万曲におよぶクラウド上の楽曲に自由にアクセスして再生できるという便利なサービス。安定したWi-Fi環境下ではとても魅力的だが、モバイル利用時には4G/3G通信を行ない、パケット通信料を圧迫してしまうため、モバイル回線にはやさしくないサービスともいえる。国内の大手通信キャリアでは、7GB/月の容量制限が基本となっていることを考えると“モバイル回線で聴き放題”という運用は難しい。

Apple Music楽曲をオフライン再生可能に

 そのため、Apple Musicではマイミュージック登録曲を[オフライン再生]可能にする機能を装備。My MusicからApple Musicの曲やアルバムを選択し、アルバムアートや楽曲脇の[…]ボタンを押すと[オフラインで再生可能にする]という項目が現れる。これを選べばiPod touchの本体メモリに楽曲をダウンロードできるので、通信環境なしでいつでも楽曲再生可能になる(Apple Musicの契約期間中であればだが)。

 この点はiPhoneも同じだが、スマホとして利用するiPhoneの場合、ほかにも多くのアプリやデータなどを持ち運ぶはず。筆者のiPhone 5sも容量が32GBということもあるが、ダウンロードに利用できる領域は実質1GB程度だ。

 しかし、iPod touchを音楽プレーヤー専用に使えば、比較的ストレージ容量を自由に使えるはず。また、新touchには64GBや128GBの大容量モデルも用意されている。そのため、自宅や会社でApple Musicを使っている時に、気に入った曲やアルバムがあったら、とりあえず[オフライン]化しておけば、電車内など外出先でも、ローカルファイルと同様に聴ける。これが思っていた以上に快適だ。

 もちろん、iPhoneと違って、「聴きたいときにいつでも聴ける」というApple Musicの魅力は損なわれるのだが、オフライン化をためらいなく行なえるため、2週間で5GB超をダウンロードしていた。また、広大なApple Musicのライブラリを自分のものにしたかのような感覚があり、iPod touchを使い始めてから、Apple Musicの満足度も確実に向上している。アップルの思う壺というか、まんまと取り込まれたような気もするが、サービスとハードウェアの両輪で、それぞれの魅力が高まったと感じる。

大量のApple Music楽曲をtouch上にダウンロード

 Apple Music自体も、LINE MUSICやAWA(オフラインは8月下旬対応)と比べても、洋楽を中心に楽曲数が多く、プレイリストも音楽ファン向け。比較的年齢層が高いユーザーにマッチするというサービスの特性も、「大量に曲をダウンロードしたい」というニーズにマッチするように思える。

 Apple Musicユーザー、特にパケット通信料に不安を持つ人にとって、非常に魅力的だ。また、ハイレゾと違って、Apple Musicの配信形式は256kbps AACなので、アルバム1枚でも100MB程度。数十枚アルバムをダウンロードしていても10GBに満たないので、かなりのアルバム数をオフラインで管理できる。

 ただ、iPod touchやiPhoneなど複数のiOSデバイスを使ってる場合、どちらのデバイスでオフライン化したか忘れて、「ダウンロードしたはずなのに、落とせてなかった」ということもある。iPhoneであれば、そのままストリーミングで聞けばいいのだが、iPod touchだと手が出ないので、オフライン化に失敗しているとストレスを感じることもあった。

ポータブルアンプ接続にも対応

 iPod touch本体だけではハイレゾ再生できないが、「HF Player」や「iAudioGate」などのプレーヤーアプリを使えば、本体で48kHzダウンコンバート再生できる。また、対応の外部DACを用意すれば、DACへのハイレゾ出力も可能となっている。

ラトックシステム「REX-KEB02iP」と接続
DSD 11.2MHzも再生できたが、やや不安定だった

 実際に、11.2MHz対応したラトックシステムのポータブルアンプ「REX-KEB02iP」とLightning接続したところ、192kHz/24bitや96kHz/24bitのFLAC、WAV、2.8MHzのDSDもハイレゾ出力が行なえた。また、iAudioGateで、11.2MHz DSDのヤマサリ「超絶のスーパーガムラン ヤマサリ」も再生できたが、再生開始時にブツブツ音が切れたり、時折倍速再生されたりするなど、やや不安定だった。ラトックではDSD 11.2MHz再生時の推奨プレーヤーはHF Playerとしているので、アプリ側の問題のようだ。

カメラも強化。120fpsスロー撮影も

 カメラも800万画素に強化され、裏面CMOSの採用により感度も向上。1秒間に10枚の写真を連写するバーストモードやHDR撮影にも対応している。

背面カメラは8メガに強化
120fpsのスローモーション撮影に対応

 ビデオ撮影機能も強化され、1080/30pの動画撮影に加え、120fpsのスローモーション撮影やタイムラプスビデオなどに対応している。

 音楽だけでなく、写真や映像についても、A8チップ搭載によるパフォーマンス向上が聞いており、レスポンスも良好。iPhone 5s以降にかなり近い写真、ビデオ撮影機能が導入されたといえ、音楽以外のメディア機能の強化も第6世代iPod touchの魅力といえる。

スローモーション撮影サンプル
第6世代iPod touchの写真サンプル
[参考]iPhone 5sの写真サンプル

iPod touchが引き出すサービスの魅力

 操作性は、多くの人にとって慣れ親しんだiPhone/iPod touchそのもの。なじみやすく使いやすい操作系は多くの人に受け入れられるものだろう。それだけに、Touch ID非対応によるiPhoneとの違いが気になってしまう部分ではあるが……。

 ストレージ容量を気にせず、音楽をどんどん追加できる気楽さ、ハイレゾには対応していないものの満足度の高い音質、強化点されたカメラ機能など、スマホ的な多機能を持ちながらも自分のニーズに合った使い方ができるiPod touchならではの魅力は、第6世代になってさらに進化した。

 単体の音楽プレーヤーとしては、ハイレゾの本体再生に対応していない点は物足りない。しかし、各社からアプリが提供されており、ポータブルアンプとの組み合わせも面白い。新touchを前提としたポータブルアンプやDACの新製品などの登場にも期待したい。

 個人的に最も魅力に感じたことは、iPod touchにより、Apple Musicを使うことが楽しくなったということ。ハードウェアとサービスの連携で、それぞれの魅力が向上するということを実感できた。もちろん、今後iPhoneが大容量化したり、Apple Musicの低ビットレート配信などが始まると事情は変わるとも思うが、ポータブルオーディオの世界だけでなく、音楽配信サービスの行方を占う上でも、iPod touchは重要なポジションを担っていくのかもしれない。

(臼田勤哉)