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nasne録画番組をAndroidへダウンロード。「DiXiM for Android 3.3」

DiXiM for Android

 DiXiM for Androidは、デジオンが開発したAndoridプラットフォーム向けのDTCP-IP対応アプリケーション。地上デジタル放送やBS/CSデジタルなどの録画番組をネットワーク経由で再生できるアプリで、富士通やNECカシオなどのAndroid搭載機器にプリインストールされている。

 最新バージョンとなるVer.3.3では、新たにDTCP-IPのダウンロード型ムーブに対応し、対応のレコーダなどと組み合わせることで、端末へ録画番組をダウンロードすることが可能になった(ただし、Ver.3.3のプリインストール機器すべてがダウンロード型ムーブの機能が含まれるわけではないとのこと)。

 残念ながら、このDiXiM for Android Ver.3.3は、現時点では端末出荷時のプリインストールのみに限られており、アプリ単体販売は行なっていない。とはいえ、録画番組をスマートフォンで持ち歩けるという待望のアプリだ。Ver.3.3プリインストールのNTTドコモ「ARROWS V F-04E」を入手したので、nasneとの連携を中心にテストした。

【訂正】対応機器情報や、Ver.3.3でもダウンロードムーブ非対応機器があること、内蔵メモリへの保存方法などを修正しました(12月7日16:15追記)

最新バージョンの「3.3」でDTCP-IPダウンロード型ムーブをサポート

nasne

 DiXiM for Android 3.3では、新たにDTCP-IPのダウンロード型ムーブに対応。ストリーミングによる録画番組の視聴だけでなく、端末へダウンロードして視聴することが可能になった。

 これにより、ダウンロード型ムーブに対応するSCEのネットワークレコーダ「nasne」で録画した番組を、DiXiM 3.3搭載端末にダウンロードして視聴できるようになる。なお、同様にダウンロード型ムーブに対応したパナソニック「ブルーレイDIGA」にも対応する。

 これまでもレコーダやNAS経由で、録画番組を転送できるソリューションはあったが、これらは「アップロードムーブ」という方法を使い、録画機器などから操作して、ダビングしていた。今回のVer.3.3によるダウンロードムーブ対応で、レコーダ側ではなく、スマートフォンなどの視聴端末側からの操作で番組をダウンロードできるようになる。また、nasneはダウンロードムーブのみの対応(アップロードムーブ非対応)なので、対応機器が増加するというわけだ。

方式操作
ダウンロードムーブスマートフォン
タブレット
アップロードムーブレコーダ/STB/NAS

 nasneで録画した番組を端末にダウンロードして視聴するという点では、SCEのPlayStation Vita(PS Vita)で、nasneの録画番組をPS Vitaに書き出せるアプリ「torne(トルネ) PlayStation Vita」を12月20日より800円で販売(2013年2月27日までは無料)するが、DiXiM for Android 3.3がプリインストールされたAndroidであれば同様の視聴環境が整うことになる。

 一方、現状のところDiXiM for Androidはプリインストールのみに限られており、ダウンロード購入などでアプリを追加することはできない。最新バージョンとなる3.3がプリインストールされたモデルは富士通の「ARROWS V F-04E」、「ARROWS Tab F-05E」、「ARROWS ef FJL21」、京セラ「DIGNO S」(ダウンロードムーブには非対応)、となっている。

ダウンロードには大容量の外部ストレージが必須

 前バージョンの3.2と比較すると、画面下部のアイコンデザイン変更などの細かな違いはあるものの、基本的なインターフェイスはほぼ同等。無線LANに接続した状態でDiXiM Playerを立ち上げると、同一ネットワークに存在するDLNA対応機器が表示され、動画や画像、音楽といったコンテンツをネットワーク経由で再生できる。

前バージョンの3.2
3.3。アイコン変更以外はほぼ同じインターフェイス
nasneのフォルダ構成

 nasneの場合、表示できるコンテンツは「ビデオ」「ミュージック」「フォト」の3種類で、「ミュージック」と「フォト」についてはnasneをNASとして利用している場合に保存している画像と音楽をそれぞれ利用可能。録画した番組は「ビデオ」からアクセスできる。

 番組は録画番組をすべて録画日時の降順で表示するほか、ジャンルや日付での絞り込みも可能。番組をタッチすると本体でのストリーミング再生が可能だが、長押しすることで円形のメニューが表示され、一番下の矢印アイコンをクリックすることで録画番組をダウンロードできる。

ジャンルや日付ごとの表示も可能
録画時に設定されたジャンルで表示
日付は年と月で絞り込める
ダウンロードしたい番組を長押しし、下向きの矢印アイコンを選択

 なお、番組のダウンロードは、デフォルトでは内蔵ストレージではなく外部ストレージとなる。ストレージの変更は、DiXiM Player設定画面の「保存先設定」から行なう。内蔵メモリ64GBのARROWS V F-04Eであれば、録画番組のダウンロードにもある程度の余裕はある。ただ、番組自体が1時間で数GB単位となるため、ダウンロードを利用頻度が高い場合は大容量のSDXCカードなどを用意しておくといいだろう。

ダウンロード時間は実時間以下。複数番組の同時ダウンロードも可能

ARROWS V F-04E

 1.5GHzクアッドコアCPU「Tegra 3」を搭載したARROWS V F-04Eで、フレッツ光向けルータ「RV-A340NE」へIEEE 802.11gで接続し、nasneで録画した番組のダウンロードを行なったところ、DRモードで録画した容量6.3GBの1時間番組は約1時間、3倍モードで録画した容量1.5GBの30分番組は15分程度でダウンロードが完了した。端末のスペックにもよるが、ハイスペックモデルであればDRモードが実時間、3倍モードは約半分の時間程度が目安といえる。

 なお、DiXiM for Androidの説明ページによれば、ダビング時に[高画質](録画したオリジナル画質)と、720×480ドットに変換した[低画質]が選択できるはずなのだが、今回のテストでは選択画面が現れなかった。デジオンによれば、[低画質]でのダウンロードは、今回検証したARROWS V F-04Eでは対応していないとのこと。

 そのため、上記の転送時間は高画質でのダビング時のものとなる。対応機器で[低画質]でダビングできれば、もっと転送時間は短くなるはずだ。

 番組のダウンロードは連続操作も可能なため、通勤中に見たい番組を寝る前に複数ダウンロードしておく、という利用も可能だ。なお、ダウンロードはダビング10に準じており、1回のダウンロードでダビング回数を1消費。書き戻しはできない。

ダウンロード時にはダビング10の注意が表示される
複数番組の同時ダウンロードも可能
ダウンロード済みの番組
再生イメージ

 当然のことながらダウンロードした番組は、地下鉄など電波の届きにくいエリアでも快適な視聴が可能。視聴を一時中断した場合も再度視聴する際には続きから再生できるため、外出中の空いた時間を使って番組を見るのにも便利。番組をたくさん録画するが、なかなか消化しきれない、というユーザーには非常に嬉しいソリューションだ。

 録画番組のファイルをそのままダウンロードしているだけに画質も高く、画面サイズがテレビに比べると小さいこともあって高精細で美しい番組を楽しめる。再生スペックもクアッドコアCPU搭載モデルということもあり、途中で動画が止まることもなく滑らかな再生が可能だった。

 また、家庭内でのネットワーク接続時に限られるものの、現在放送中の番組をAndroidで再生できる「ライブチューナ」も対応。無線LANの電波が安定して届けば視聴できるため、室内ではワンセグよりも取り回しやすく画質もいい。防水対応のスマートフォンであれば出勤前のニュースを浴室で視聴したり、リビングのテレビを他の家族が利用していても手元のスマートフォンで好きなテレビを見ることも可能だ。

放送中の番組をネットワーク経由で再生できるライブチューナ
放送中の番組一覧

 なお、DiXiM for Android 3.3搭載のスマートフォン/タブレットのうち「ARROWS V F-04E」、「ARROWS Tab F-05E」では、パナソニックのブルーレイDIGAとの連携機能もサポートした。

 最新のお部屋ジャンプリンク対応DIGAとの組み合わせでは、ライブチューナでの画質選択で「高画質」(720p/6Mbps)、「低画質」(640×360ドット/3Mbps)が選べるほか、録画番組を指定の日時分だけ、まとめて転送できる「DIGAかんたん転送」などの機能を搭載している。

ライブチューナの画質選択
DIGAかんたん転送
転送する番組の期間設定

DTCP-IPの機能面で先行するDiXiM

 地デジやBS/CSデジタル放送をネットワーク経由で視聴するためのDTCP-IP。技術自体は以前から存在していたものの、従来の一般的な認知度は低いと言わざるを得なかった。しかし、2012年後半からDTCP-IPを取り巻く環境が大きく変化した。特にルール緩和により、アプリ追加でも端末のDTCP-IP対応が可能になったことを受け、パケットビデオはDTCP-IP対応の「Twonky Beam」をiOS向けにリリース。ソニーのBDレコーダもiOS向けのストリーミング視聴に対応するなど、DTCP-IP関連が盛り上がりを見せ始めている。

 そうした盛り上がりの中で、現状はプリインストールモデルに限られるものの、DiXiMはいち早く録画番組のダウンロードに対応するなど機能面で先行。また、iOS版の提供も計画しており、ストリーミング再生だけでなく、将来的にはダウンロードにも対応する方針とのこと。

 DiXiM for Android 3.3でのスマートフォンによるダウンロードムーブ対応は、録画機やスマートフォンの活用の幅を拡大してくれる魅力的な機能だ。それだけに、アプリ単体での販売も期待したいところだが、端末毎のデコーダの有無やCPUスペックなどの違いが多く、動作確認が難しいため、現時点では単体発売の予定はないとのこと。この点は残念ではあるが、環境が整備され、DTCP-IP周辺技術が使いやすく、分かり易いものになってきた。2013年に向けたさらなる活発化を期待したい。

甲斐祐樹