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第385回:ロジテックのiPod/iPhone用マイク「LIC-iREC03P」

〜 Dock接続でリニアPCM録音可能 〜


 先日ロジテックからiPhone/iPod用のX-Y型ステレオマイク「LIC-iREC03P」が発売された。オープンプライスだが、直販価格が7,980円と手ごろであり、これによってリニアPCMレコーディングが可能になるのだから、ちょっと気になるところ。

iPhone/iPod用のX-Y型ステレオマイク「LIC-iREC03P」。iPod touchは別売

 発売されたばかりのこのマイクとiPodで、リニアPCMレコーダとして見たとき、どれだけの性能を持っているのかチェックしてみた。

 記事初出時には推奨環境外でのテストのみでしたが、推奨環境でのテスト結果を追記しました。
(2009年9月9日/AV Watch編集部)


■ 16bit/44.1kHzのリニアPCM録音が可能なステレオマイク

 iPhone/iPod用高性能マイクと謳っている製品は、ロジテックのLIC-iREC03Pがはじめてではない。著名なところではALESISのProTrackなどがあるが、ProTrackの場合、標準価格で27,090円とちょっと高価。iPhoneやiPodの仕様上、最高で16bit/44.1kHzにしか対応していないことを考えると、そこまでの金額を出すべきものなのだろうか……と思っていた。

 そもそもZOOMのH2など24bit/96kHz対応の製品が20,000円以下で購入できることを考えると、そうまでしてiPhoneやiPodに集約すべきなのだろうかと疑問に感じてしまうのだ。

本体は重量約20gと小型軽量

 そんな中、登場したLIC-iREC03Pは直販価格で7,980円とだいぶ安い。また突起部、Dockコネクタを除いた外形寸法が51.0×52.0×20.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量が約20gと、非常に小さいのもうれしいところ。

 iPhone/iPodを覆うようなProTrackと比較して、システム全体の大きさで比較して圧倒的に小さいのだ。16bit/44.1kHzという制限があるにせよ、これでいい音が録れるなら、iPhone/iPodを持ち歩くユーザーにとっては、結構な便利なアイテムといえそうだ。これまでいろいろと比較してきたリニアPCMレコーダと同様な方法でチェックしてみることにした。

 が、いきなりスタートの時点でトラブってしまった。手元にあるのは第1世代iPod touchだけなのだが、改めてLIC-iREC03Pのパッケージの裏側に書かれている「接続可能なiPod」という一覧を見てみると、第2世代iPod touchとは記載されているものの、第1世代はない。iPhone 3G Software Update for iPod touchを適用すればうまくいくだろうと勝手に思っていたのだが、これをインストールしても、やはりボイスメモのアプリケーションは現れてこない。

 パッケージにも記載されている推奨のレコーディングソフト、YUDOの「Rectools02」をインストールすれば、なんとかなりそうと考えて、体験版であるRectools02 LITEを無償ダウンロードしてiPod touchと同期をとったところ、互換性がないとのことで、転送することすらできない。


■ レコーディングソフト「Ultimate Voice Recorder」

 そこで、いくつかのボイスレコーダのアプリをダウンロード購入してみたが、これらもダメ。原稿締め切りが近く、野外での録音など実験する時間を考えると、ほかのiPodを用意している余裕もなく、なんとか動かないものかと、第1世代iPod touchで試行錯誤を続けた。

「Documents 2」というアプリを使用してレコーディング

 さらにいろいろ探した結果、ようやく見つけたのがFingertip Accessの「Ultimate Voice Recorder」というソフト。これは元々Nokiaの携帯用のレコーダソフトとして進化してきたもので、iPhone/iPod touch版は第1世代iPod touchでも動かすことができる。

Fingertip Accessの「Ultimate Voice Recorder」 第1世代iPod touchでも使用可能

 しかも、しっかりとLIC-iREC03Pをマイクとして使ったレコーディングができる。機能もなかなか豊富で、まずレコーディング時には、レベルメーターの表示ができるため、ヘッドフォンでモニターしなくても、どのくらいの音量なのかは、ある程度、目で確認することができる。

 また設定項目もいろいろあり、コーデックとしてリニアPCMのほかに、VoIPなどで利用されるA-Law、U-Lawを選択することが可能。ファイル形式もWAV、AIFF、AIFC、CAFから選択できる。モノラル、ステレオの選択もできるし、サンプリングレートも設定可能。さらに途中から録音し直すことを可能にする簡易編集機能なども搭載されている。

レベルメーター表示 リニアPCM、A-Law、U-Lawコーデックが選択可能
モノラル/ステレオの選択もできる サンプリングレートの設定も可能

 そして、非常に便利だったのがPCへのデータの転送。録音したファイルをFTPサーバーへアップロードするという方法が用意されているほか、WiFi経由でPCとP2P接続し、ブラウザを使って転送するという便利な方法もある。

 結果的にはケーブル経由でiTunesで転送するよりも速いような感じだ。ちなみに、iPod標準のボイスメモを使って録音したデータは、iTunesでもボイスメモのデータとして認識され、同期されるが、Ultimate Voice Recorderの場合は、それとは無関係であり、iTunesを使って転送することはできない。

PCへのデータの転送は、録音ファイルをFTPサーバーへアップロードする方法や、P2P接続を行ないブラウザを使って転送する方法がある

■ 録音性能をチェック

 さて、ようやく準備が整ったので、iPod touchにLIC-iREC03Pを取り付けた状態で、改めて録音の設定を行なった。LIC-iREC03Pに搭載されているスイッチは3つ。自動的に音量を調整するAGCのスイッチと、音量を制限するためのアッテネータ、それにこのマイクを使うか、サイドにあるLINE INを使うかの選択スイッチだ。

AGCスイッチとアッテネータスイッチ 側面に搭載したLINE IN LINE/MICの選択スイッチ

 AGCにはHIGH、LOWの選択もあるが、ここでは当然オフにする。また高感度マイクと謳ってはいるものの、そう簡単にピークに達することはないので、アッテネータもオフにした。もちろんLINE INは使わないのでMICへ設定しておく。普通のリニアPCMレコーダの場合、これに入力ゲイン調整を行なうが、iPodにそれはない。AGCをオフにしたら、調整する手段はなく、入力は完全固定となる。

 さっそく野外に持ち出して、セミなどが鳴く場所で録音してみたので、ぜひ聴いてみてほしい。アッテネータはオフにはしているが、かなり小さめな音量だったので、ここに掲載したのは、後で波形編集ソフトを用いてノーマライズしたものだ。

録音サンプル
セミなどの鳴き声を収録 mushi.wav(4MB)
編集部注:録音ファイルは、収録したWAVEファイルを波形編集ソフトでノーマライズしたものです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 音の広がりとか、空気感といったものがあまり感じられず、低域も捉えていないようだ。普通、リニアPCMレコーダを外に持ち出すと、飛行機のジェット音が気になって仕方がないが、それがまったくといっていいほど入っていない。最初から思い切りローカットが効いているという感じである。もちろん、そのローカットやリミッタといったスイッチは用意されていないが……。

 また、手で持った状態で録音はしていたが、そのグリップノイズも、ほとんど入っていない。いいのやら、悪いのやら……という感じ。なお、マイク素子はPanasonicのWM-55A103というエレクトレットコンデンサマイクが採用されているという。WM-55A103のデータシートを見てみると、周波数特性は100Hz〜16kHz、感度が-47dB±4dBとある。100個単位で購入した場合の1つの単価は190円前後。


■ ステレオ感が低い?

 では、より音質を実感できる音楽を録るテストを行なってみよう。これはいつもリニアPCMレコーダで行なっているのとまったく同じ環境での実験で、ニアフィールドモニタースピーカーで大きな音を出したものを約50cmの距離で録音するというものだ。

本体に動作状態を表すLEDを搭載

 さすがに-10dB、-20dBとあるアッテネータを効かせる必要があるかなと思ったが、ピークインジケータが光ることはなかったため、0dBのまま実験を行なった。本体には動作中を示す青いインジケータとピークを示す赤いインジケータの2つのLEDが搭載されている。

 さっそくWaveSpectraでの周波数分析結果を見つつ実際の音を聴いてみてほしい。音を聴けば分かるとおり、リニアPCMレコーダというよりも、ボイスメモといったレベルの音質。最初からサーというホワイトノイズがずっと入っており、音に伸びも広がりもない。上は14kHz以上は出ていない模様だ。

 このグラフから低域については読み取れないため、横のスケールをリニアではなく対数型にすると、やはり200Hzあたりから下は出ていないようだった。この結果からいって、16bit/44.1kHzでステレオのリニアPCMフォーマットを使うのはちょっともったいないのでは、と感じるほどだ。

録音サンプル:楽曲(Jupiter)

WaveSpectraでの周波数分析結果。14kHz以上が出ていない模様(左)。また、200Hz以下も出ていないようだ(右)
music.wav(6.3MB)

楽曲データ提供:TINGARA
編集部注:録音ファイルは、16bit/44.1kHzフォーマットのWAVEファイルです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 音質とともに、非常に気になったのがステレオ感の少なさ。あまりにも広がりが感じられないため、地下のスタジオで何も鳴らさない状態で録音をスタートさせ、本体から30cm程度のところで手を叩きながら180度回してみた。これを聴いてみても、立体感がまったくなく、モノラルなのではと疑うほどのものだった。さすがに心配になり、LINE INにステレオのソースを接続して録音すると、こちらはしっかりとステレオで入るので、実験に問題はなさそうだ。

 

録音サンプル
手を叩きながら180度回して収録 stereo.wav(1.1MB)
編集部注:録音ファイルは、16bit/44.1kHzフォーマットのWAVEファイルです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 以上が、LIC-iREC03Pを第1世代iPod touchで試した結果だ。今回は実験はしなかったが、プラグインパワー対応の外付けマイクを接続することもできるので、音質を向上させるのであれば、そうした方法をとるのも有効かもしれない。


■ 対応iPodで再テスト(9月9日追記)

 記事掲載後、読者の方からメーカー推奨環境でのテスト結果も掲載してほしいという問い合わせをいただいた。そこで、改めて第2世代のiPod touchと、個体不良の可能性も考えて、メーカーから「LIC-iREC03P」をお借りして再度テストを行なった。結果は以下のとおりだ。

録音サンプル:楽曲(Jupiter)

WaveSpectraでの周波数分析結果
music2.wav(6.95MB)

楽曲データ提供:TINGARA
編集部注:録音ファイルは、16bit/44.1kHzフォーマットのWAVEファイルです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 確かに、動作の安定性という点では推奨環境である第2世代iPod touchのほうが安定し、第1世代iPod touchで発生した時折ノイズが混入するというトラブルもまったくなくなり、使いやすくなった。

 音質やステレオ感も、劇的ではないが、改善がみられた。特に、本体から30cm程度のところで手を叩きながら180度回してみる実験では、左右の音量の差はあまり出ないものの、聴いてみると手の動きが感じられる。

録音サンプル
手を叩きながら180度回して収録 stereo2.wav(1.35MB)
編集部注:録音ファイルは、16bit/44.1kHzフォーマットのWAVEファイルです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 音質面では単体のリニアPCMレコーダには及ばないものの、すでに対応iPod/iPhoneを所有していれば、7,980円でリニアPCM録音環境が手に入るというのは大きなメリットといえるだろう。


(2009年 8月 31日)

= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。また、アサヒコムでオーディオステーションの連載。All Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。

[Text by 藤本健]

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