小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1214回

意外にLUMIX初!? デジタルシュー対応マイク「DMW-DMS1」
2026年3月18日 08:00
本体でいい音が録りたい
昨今の動画カメラの用途として、自分のしゃべりを録るVlog的な使い方が拡大している。多くのカメラはモニターをフリップさせて自撮り可能という機能は必須になっているほか、アクションカメラも前面にもディスプレイを設けるなど、自撮り+しゃべり集音はすでにスタンダードな利用方法となっている。
とはいえデジタル一眼内蔵マイクでは、音声集音に十分な性能のものは少ない。そもそもレンズの駆動音など内部の音が大きく、マイクの搭載位置も理想的な配置は難しいため、マイクが上向きや横向きに付けられているものが多い。現場音はステレオで録れるが、正面や背面からの音声の集音には十分とは言えない。
加えてしゃべり手の姿を収めるために、カメラから80cm程度離れる必要がある。静かな場所ならその距離でも集音できるが、屋外ではちょっと難しいだろう。こうした課題解決のために、昨今はコンシューマでもアナログマイク入力を使うワイヤレスマイクが盛況なのはご承知の通りである。
そんな中、パナソニックがLUMIXシリーズのデジタルシューに直結できるオールインワンマイク「DMW-DMS1」を発売する。価格はオープンで、市場想定価格は税抜き48,000円前後。
意外にもLUMIXブランドとしては、デジタルシュー直結マイクは初めての製品化ということになる。これまでマイク入力ユニットは積極的に展開してきたが、カメラ用の自社製マイクとなると、2012年発売のステレオガンマイク「DMW-MS2」以来。
それだけに期待も高まるところだ。早速試してみよう。
一般的なマイクのイメージとは遠い構造
「DMW-DMS1」(以下DMS1)は、ユニット本体部分の上に円盤状のマイクユニットが飛び出しているという、変わった形状になっている。
上部の円盤部分には10mm径のマイクアレイが、ダイヤモンド型配列で4基搭載されている。位置の異なる複数のマイクから集音される、位相の異なる音声を使って演算することで、指向性を自在に変化させようというわけだ。具体的には、前方単一指向性、ステレオ、ワイドステレオ、前方超指向性、後方超指向性、前後超指向性の6モードが搭載されている。
パナソニックでマルチマイクを使った指向性の可変ということでは、2020年に発売された「LUMIX G100」が思い出される。これには3つのマイクアレイを使って動的に指向性を変える「OZO Audio」という技術が搭載された。顔認識、瞳認識と連動してそちらへマイクの指向性を動的に向けられるという、革新的な機能であった。
一方DMS1に搭載されているのはOZO Audioではないので、動的に指向性を変化させるというものではない。モード切りかえボタンが背面にあり、ユーザーが自分でモードを選ぶという実装になっている。
ボタンアイコンでは指向性が示されており、選択中のモードは青く光る。カメラメニューの音声設定に入らなくても、簡単に切り替えられるのがポイントだ。
上部のマイク部とベース部の接続はフローティング構造となっており、カメラ側の振動が伝わらないように設計されている。マイクが上向きだとフカレが心配になるところだが、専用ウインドスクリーンも付属している。
下部のベース部にはマイク設定スイッチがある。ウインドカット、ノイズカットはそれぞれOFF、STD、HIの3モード、ゲインは0dBと±12dBの3モードが選べる。リミッタはOFF、ON、AUTOの3モードだ。また入力ゲインダイヤルもある。
ユニットに電源ボタンなどはなく、LUMIXシリーズのデジタルシューに取り付ければ自動的に電源ONとなる。対応するカメラはDC-S1M2、S1M2ES、S1RM2、S5M2、 S5M2Xで、使用するには3月上旬に公開された新ファームウェアへのアップデートが必要になる。DC-GH7、G9M2に関しては、将来的に対応予定となっている。
32bitフロート録音にも対応するが、これに対応するのはDC-S1M2、S1M2ES、S1RM2のS1シリーズのみとなる。フロート録音の際は、ゲインや入力レベルは0dB固定となり、リミッタの設定も無効になる。
またフロート録音技術を用いた新方式の風音キャンセラーも搭載した。従来方式では、風雑音が入ると音割れしないように音全体を圧縮したのち、風雑音を除去するため、目的音が小さくなる。一方フロートを利用した新方式では、ダイナミックレンジが広いので圧縮せず風雑音を処理できる。
ただしこの機能は32bitフロート録音が前提となるので、それができないカメラでは機能しないものと思われる。
4ch集音を利用したバックアップ録音モードも備えるが、これも同様に上記のS1シリーズのみとなる。
指向性がボタン1つで変えられる
では早速集音してみよう。今回使用するカメラはS5M2のため、32bitフロート録音およびバックアップ録音は使用できない。
DMS1をデジタルシューに取り付けると自動的に認識し、オーディオ入力はDMS1経由に切り替わる。オーディオ設定としてはサンプリング周波数程度しかいじれる箇所はない。S5M2の場合は、48kHz/24bit/2chか96kHz/24bit/2chが選択できるのみだ。今回は96kHz/24bit/2chで集音している。
まずウインドカットからテストしてみた。フロート録音ではないので、新方式の風音キャンセラーは動作していないと思われる。ウインドカットをOFF、STD、HIに切り替えてみたが、風切り音の低減にはそれほど違いはないように思える。一方で背後の波の音は、ウインドカットを上げていくにつれ、次第に明瞭になってくるのがわかる。
一方物理的なウインドスクリーンは、かなり効果が高い。音質も変わらず風切り音の低減には効果絶大なので、基本的にはつけっぱなしで問題ないだろう。
ノイズカットも試してみた。交通量の多い交差点での集音を試してみたが、モードを切り替えてみてもノイズカットの具合は確認できなかった。おそらく32bitフロート録音でないと効果がないものと思われる。S1シリーズ以外のカメラユーザーにとっては残念な結果だ。
続いては待望の指向性の切り替えを試してみる。まずはステレオ、ワイドステレオ、前方単一指向性を試してみた。ステレオに対してワイドステレオは、確かに背景の波の音のワイド感がかなり異なる。周囲の音が重要な集音では効果を発揮するだろう。
なおNLEで編集する際の注意点としては、2chで集音されるものの、NLEによってはLRで振り分けられているわけではなく、モノラルが2トラックあるという認識になる。よってそのままだとモノラルになってしまうので、個別にLRの振り分け設定が必要になる。聞いてみてステレオ感がないなと思ったら、そのあたりを疑ってみてほしい。
最後に指向性タイプとして、前方超指向性、後方超指向性、前後超指向性を切り替えてみた。1本のマイクでカメラ正面や背面など、用途によって瞬時に切り替えできるだけでなく、撮影中でもボタンを押せばノイズレスで指向性が変えられるのは、現場で臨機応変に撮影したい人にはメリットが大きい。
ワイヤレスマイクを胸元につけるのと違い、カメラマイクとして使用するなら周囲の音をどれぐらいミックスするかがポイントになる。どう混ぜるかを現場で決められるのはメリットである一方で、きちんと収録前にテストでのモニタリングは必須であろう。特に一人で収録する場合は、ワイヤードのイヤフォンやヘッドフォンは常備しておきたい。
総論
指向性が自由に変えられるマイクは、複数のマイクを1台に実装したアツデンのSMX-30シリーズや、Zoomのハンディレコーダシリーズなどが知られるところだ。ただこれらはサードパーティの汎用マイクであり、アナログ入力か個別録音ということになる。
DMS1は、メーカー純正でケーブルレスのカメラ直結マイクとしては割と珍しいタイプのマイクということになる。一番のメリットは、デジタルでカメラ直結であり、結線のトラブルもなくカメラ側の設定もないということだろう。マイクはマイクでハードウェアとして設定するだけというシンプルさは、間違いのない集音が可能だ。
その一方で、ウインドカットやノイズカットなど、このマイクらしい機能は32bitフロート録音がベースとなっており、S1シリーズのカメラでなければ真価が発揮できないのが残念なところだ。S5などは24bitまでしか対応しないが、マイク内で32bitフロートで処理して、出力は24bitにダウンコンバートするなどの方法も考えられる。ただダウンコンバートの過程で遅延が発生する可能性もあり、それで見送られたのかもしれない。
一方S5シリーズは機能的には4ch集音も可能だ。よってバックアップ録音は使えてもおかしくないところである。
個人的には、機材価格のレンジから考えて、S1シリーズを投入する現場でカメラ直結マイクで集音するのかという疑問もある。それよりもコスパ重視のコンパクトデジカメで最大の効果が発揮できるマイクのほうが、魅力的だったのではないかと思う。1台で指向性が可変できるマイクはコスパが高く、相性がいい。
ぜひこの製品で弾みをつけて、「LUMIXは純正マイクが凄い」というブランディング攻勢に期待したいところだ。








