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700万円超のオーディオで楽しむ「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」SACD。オリオスペックイベントレポート

PCショップ・オリオスペックのイベントスペースで開催された

1979年に発売されたLP「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」が、昨年12月にSACDハイブリッドとして発売。それを記念し、この作品をキッカケとしてストリーミング・オーディオの始め方、また、聴き比べなどを行なうイベントが、3月15日に秋葉原のPCショップ・オリオスペックで開催された。会場にはゲストとして、キングレコードの当時の担当ディレクター・藤田純二氏、今回のリマスターを手掛けたエンジニアの辻裕行氏、企画の担当ディレクター松下久昭氏も登場。作品の舞台裏も語られた。

1979年にLPで発売された「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」
昨年12月に発売されたSACDハイブリッド版(KIGC-38 4,400円)

1979年にLPで発売された「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」は、お馴染み「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」の劇伴を、作曲者自らのオーケストラにアレンジ。小松一彦指揮 東京交響楽団によって演奏された作品。

当時の担当ディレクター・藤田純二氏

当時の担当ディレクター・藤田氏によれば、この作品が誕生するキッカケは、それ以前に発売した「ウルトラマン大百科」というLPにあったという。新譜の企画を考えていた藤田氏は、作品が増えていたウルトラマンシリーズの楽曲を集めた、コンピレーションアルバムを発案。それを「ウルトラマン大百科」としてリリースしたところ、予想を超えるヒットとなり、その後もコンピレーションアルバムシリーズが4作まで作られた。

「ウルトラマン大百科」LP

「それをやりながら、なんとか新録はできないものかと考えはじめました」(藤田氏)。当時、「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」などのアニメの音楽を、シンフォニックにアレンジした作品がレコード市場で人気になっており、「ウルトラセブンの楽曲に、シンフォニックなものが多かったので、実現できるのではないかと考えました」(藤田氏)。

そこで、ウルトラセブンからリリースするのではなく、最初の作品であるウルトラマンも含めた「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」が生まれる事に。オーケストラに依頼しての新録には多額の費用がかかるものの、ウルトラマン大百科シリーズが人気であったため、チャレンジできたという。

「しかし、都内のホールを借りるのは高価で、スケジュールも埋まってしまっていたので、当時、出来たばかりの新しいホールで、音も良かった福生市民会館で録音する事になりました」。1978年12月3日行なわれた録音はアナログで実施され、「確か、マルチチャンネルと2chを両方回したと思います」(藤田氏)。録音後、スタジオでマルチチャンネルのマスターテープから、2chにトラックダウンしてLP「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」(KIGC-38 4,400円)が完成した。

そして、今回発売されたSACDハイブリッドや、音楽配信サービス用のデータの元になっているのも、このマルチチャンネルのマスターテープだという。

リマスターした辻氏によれば、マスターテープは経年劣化でベタつきがあったため、オーブンで2時間ほど“焼いて”、ベタつきを抑えて使用。

名機スイス・スチューダーの「A820」で再生し、ドルビーのデコーダーを経由し、0.1dB単位の細かな調整が可能なBettermakerのイコライザーや、Avalonのイコライザー「AD2077」を通し、MASELECのアナログコンプレッサーを経て、EMM LABSのA/Dコンバーター「ADC8MK4」を使い、DAWのSADiE(サディー)へ。そこで、SACD層用のDSD 2.8MHzを作成。さらに、44.1kHz/24bitのPCMデータも作成。そこから16bitに変換し、CD層用のファイルも作成したそうだ。

また、「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」はハイレゾで配信もされているが、その配信用のデータは、DAWのPyramixを用いて前述のDSD 2.8MHzから、24bit/192kHzへ変換したという。

リマスターを手掛けたエンジニアの辻裕行氏(左)

SACDハイブリッド化を企画した、キングレコードの担当ディレクター松下久昭氏は、当初、ウルトラセブンの音楽を担当した作曲家・冬木透氏の生誕90周年を記念したアルバムを作ろうと考えていた。しかし、松下氏が冬木氏に連絡をとろうとしていた矢先の2024年12月、冬木氏が亡くなってしまう。「本当は追悼ではなく、生誕記念でリリースする予定でした。そこで、伊福部先生の時のように、“昔のLPをそのままをSACD化したら喜ばれるのではないか」と考え、ウルトラシリーズの音楽起点としてウルトラマンの音楽を担当した作曲家・宮内國郎氏の没後20年にもあたるため、今回のSACD化が実現した。

LPが発売された頃は中学生だった松下氏は、「当時ウルトラマンも好きでしたが、ウルトラセブンの方が何故か好きでした」と回想。「今考えると、ウルトラセブンの音楽が好きだったんだと思います。最終回ではクラシックが沢山流れるなど、かなり劇伴でクラシックが使われた作品でした。いま、私は(キングレコードの中で)クラシック専門でやっておりますが、オーケストラが好きになったのは、ウルトラセブンがキッカケだと思います。冬木先生の存在があって、こういう仕事に就いたのだと思います」と語る。

SACD化を手掛けた、キングレコードの担当ディレクター松下久昭氏

松下氏は、「ちゃんと作られた曲は、オーケストレーションしても素晴らしいものになります。作曲者自身が、オーケストレーションしたというのも外せないポイントだと思いますね。宮内さんはジャズ畑の人ですが、ジャズのフルバンドのような雰囲気が感じられ、冬木さんはクラシカルな方なので、その基本に則って作曲されていると感じる。お二人のカラーが出ていますよね」と、作品の聴きどころを紹介した。

イベントの司会は、オリオスペックの佐藤智将氏、キングレコードの中山良輝氏が担当した

総額約700万円超のオーディオで「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」を楽しむ

オリオスペック店内のイベント会場には、以下の、国内メーカーをメインとした総額約700万円超のオーディオ機器が集結。

ソースとしてQobuzの配信、ファンレスのオーディオPC「OLIOSPEC CANARINO FILS9」をプレーヤーとして使い、「SOULNOTE B-3」でZERO LINK伝送、「SOULNOTE S-3 ver.2 Reference」をDACとして使い、「SOULNOTE A-2 ver.2」でスピーカーを駆動。「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」を再生した。

イベント内では、Spotifyのロスレス(CD相当)と、Qobuzの24bit/192kHzハイレゾの比較試聴も実施。筆者も会場後方で聴いていたが、ハイレゾの方が音像に厚みが感じられたほか、音の余韻が背後に広がっていく様子も細かく描写されて聴き取りやすいので、空間の奥行きもハイレゾの方が深く感じられた。来場者からも「(24bit/192kHzの方が)楽器の細かな描写がわかる」などの声が聞かれた。

  • AMP: SOULNOTE A-2 ver.2
  • SACD/CD PLAYER & DAC: SOULNOTE S-3 ver.2 Reference
  • ZERO LINK TRANSPORT: SOULNOTE B-3
  • PHONO EQ: SOULNOTE E-2 ver.2
  • SPEAKER: TAD EVOLUTION TWO (TAD-E2-WN)
  • ANALOG PLAYER: Technics SL-1200G
  • CARTRIDGE: Phasemation PP-200
  • HEADSHELL: Phasemation CS-900A
  • AUDIO PC: OLIOSPEC CANARINO FILS9
  • POWER SUPPLY UNIT: OLIOSPEC CANARINO DC POWER SUPPLY 12V

イベントには、Qobuzの日本カントリーマネージャーである祐成秀信氏も参加。Qobuzでは、ハイレゾのストリーミングが楽しめるだけでなく、ダウンロードサービスも用意している事や、音楽を聴きながら、音楽の最新情報、特集記事、オーディオ機器の試聴レポートなどが読めるマガジンが用意されている事などを紹介。新人発掘を目的とし、Qobuzの国際音楽チームが、アーティストのデビュー・アルバムまたは2ndアルバムに対して投票して選ばれる「Qobuzissime(コバズィシム)」も魅力だという。

さらに、昨年登場した新機能「Qobuz Connect」も紹介。スマホやタブレットだけでなく、対応するオーディオ機器も含め、アプリから出力先を指定するだけで、それらの機器から音楽を再生できる利便性の高さも紹介。試聴では実際に、Qobuz Connectが使われた。

Qobuzの日本カントリーマネージャーである祐成秀信氏
試聴では実際に、Qobuz Connectが使われた

イベント1部の最後では、来場者から希望が多かった、交響詩「ウルトラセブン」の9曲目「ウルトラホーク発進」を、SACDで体験。来場者達は、勇壮でありつつ、DSDならではの滑らかなサウンドを堪能。Q&Aコーナーでは、高い抽選倍率を超えて集まった熱心なファンから「マスターテープの磁束密度は?」など、マニアックな質問も飛んだ。

ラストには、フジ・アキコ隊員役の桜井浩子氏の直筆サイン入りポスター(当時のLP特典を完全再現したもの)がもらえるジャンケン大会も実施。熱気溢れる第一部が幕を閉じた。

なお、第2部では、『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』制作当時~最新リマスタリングの証言&試聴比較”と題し、トークショーでは制作背景ならびにリマスタリングの工程について、さらに深掘り。「”1979年当時のLP音源”と”2025年最新リマスター音源”の聴き比べ」、「今回発売された”SACD音源”と”ハイレゾ音源”の同音源のフォーマット違いでの聴き比べ」なども実施。初公開となる2013年に撮影された冬木透氏のインタビュー映像の上映もされた。第2部の模様は、日本で生まれた良質な音楽に焦点を当てたキングレコードのアーカイブプロジェクト「SOUND FUJI」のWebサイトで、今後公開予定だ。

アーカイブプロジェクト「SOUND FUJI」Webサイト