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第450回:RMEのオーディオI/F最上位「Fireface UFX」を試す

〜USB/FireWire対応、高性能DSP搭載の多機能モデル 〜


Fireface UFX

 高品質なオーディオインターフェイスの開発メーカーとして定評あるドイツのRME。先日そのRMEのエントリーモデル「Babyface」を紹介したが、最上位となるフラグシップモデル「Fireface UFX」が1月29日に発売された。

 実売価格が24万円とオーディオインターフェイスの中では、かなり高価な価格設定となっているが、実際どんな機能、性能を持った製品なのかチェックした。



■ USB/FireWire対応。“30ch入出力”の仕組みとは?

 RMEフラグシップモデルのFireface UFXは、1Uラックマウントのオーディオインターフェイス。お馴染みのブルーカラーのフロントを持ち、仕様上はなんと30IN/30OUTという膨大なチャンネル数を誇る。またPCの接続はUSBとFireWireの二本立てとなっており、WindowsでもMacでも利用可能というすごいスペックとなっている。

 でも30チャンネルの入出力って、どうやってそんなにいっぱいの端子がこの機材に載るんだろうと思って数えてみると、ちょっとしたトリックがある。全部アナログの入出力が30個ずつ用意されているわけではなく、アナログは入出力ともに12チャンネルずつ、そのほかにADAT×2=16チャンネル、AES/EBU×1=2チャンネルの計30チャンネルとなっているのだ。またADAT入出力のうち片方は、ドライバの設定によりAES/EBUのオプティカルまたはS/PDIFオプティカルに切り替えることも可能になる。その場合、チャンネル数は6チャンネル分減る計算だ。


前面 ADAT入出力のうち片方は、AES/EBUまたはS/PDIFに切り替えることも可能

 ここで浮かぶ次の疑問は、30チャンネルもの入出力を本当に一度に扱うことができるのか、USBやFireWireのバスの転送速度で追いつくのか、という点だ。多くのオーディオインターフェイスの場合、10IN/10OUTとかせいぜい16IN/16OUTといった程度なので、30IN/30OUTなどというのが本当に可能なのか不思議にも感じる。

 ここでこのFireface UFXの仕様を確認すると、FireWireとUSBの双方で接続することは可能となってはいるが、同時に両方を扱えるというわけではない。USBでつなげばUSBオーディオインターフェイスに、FireWireで接続すればFireWireオーディオインターフェイスとなる仕様となっているため、15チャンネルずつ分担するというわけではない。

 ここで論理的な計算をしてみよう。24bit/44.1kHzのフォーマットである場合、1chあたりでの転送速度は24×44.1=1058.4kbps≒1Mbpsとなる。したがって、30チャンネル分であれば1Mbps×30=30Mbpsという計算だ。実際には、それ以外にもさまざまなやり取りをするため、もっと高い転送レートとなるとは思うが、ひとつの参考値にはなるだろう。一方、USB 2.0での転送速度は480Mbps、FireWireでも400Mbpsだから、10倍以上の余裕がある計算。入力と出力それぞれ30チャンネルを同時に扱っても、USBやFireWireでの伝送速度がボトルネックとなることはなさそうだ。多くのオーディオインターフェイスが10チャンネル程度に制限されているのは、オーディオインターフェイス本体での処理速度の問題なのかもしれない。

 ちなみにUSB接続用のドライバとFireWire接続用のドライバは別々に用意されており、用途に応じて各ドライバをインストールする必要がある。もちろん、両方のドライバをインストールすることも可能であり、どちらで接続してもWindowsのコントロールパネルからはまったく同じように30個ずつの入出力が見える。一方で、DAWからASIOドライバとして見るとUSBのドライバとFireWireのドライバは別々のものとして見えるようになっている。

 なお30IN/30OUTとなるのはサンプリングレートが44.1kHzまたは48kHzのときだけだ。というのもサンプリングレートが上がるとADATで扱えるチャンネル数が減るためで、88.2kHzまたは96kHzにすると、ADAT1つにつき4チャンネルとなるため、22IN/22OUT、176.4kHzまたは192kHzにすると18IN/18OUTとなるのだ。


USB/FireWire接続用のドライバを両方インストールした場合の、Windowsコントロールパネルの表示 DAWからASIOドライバとして見るとUSBのドライバとFireWireのドライバは別々のものとして見える


■ 内部DSP/前面ディスプレイ搭載で、ミキシングコンソールとしても利用可能

 ここで改めて入出力端子をチェックしてみよう。まずフロントパネルを見ると、左側に4つのコンボジャック入力が用意されている。マイクまたはTRSフォンの入力に対応したもので、もちろん+48Vのファンタム電源にも対応している。その隣には縦ににヘッドフォン出力が2つ並んでおり、それぞれ独立したアナログ出力となっている。その右にあるがのMIDIの入出力、さらにその右はUSB端子となっている。このUSB端子はフラッシュメモリを接続するためのものであり、PCなしでもオーディオのレコーディングや再生を可能にするもの。DAWでレコーディングをしながらも、このフラッシュメモリにも同時にレコーディングすることで強力なバックアップ体制を築くことができる。ただ、現時点ではまだこの機能はサポートされておらず、近日中にアップデートするファームウェアによって使えるようになる見込みだ。

 次にリアパネルを見てみよう。右から見ていくとアナログのTRS入力が8つ並び、その左にメイン出力となるXLRのアナログ出力が2つ、さらにTRSライン出力が6つ並ぶ。さらに左にはXLR接続のAEB/EBUの入力、出力、そしてADATの入出力が2系統並ぶ。ADAT2の入出力は前述のとおり、AES/EBUまたはS/PDIFへの切り替えが可能という仕様だ。また、その上にあるのがWordClockの入出力、ADAT2の隣にはPCと接続するためのUSBおよびFireWire、さらに右にフロントとは別系統のMIDI入出力という構成だ。以上の入出力をブロックダイアグラムで表すと下図のようになる。

フロントパネル左側にマイク/TRSフォンのコンボジャック入力が4つ USBメモリなどへのレコーディングも可能 背面
XLRアナログ出力が2系統と、TRSライン出力が6系統 背面にもMIDI入出力 入出力のブロックダイアグラム
RME TotalMix

 このFireface UFXは単に多くの入出力を備えているということに留まらない。内部に大規模なFPGAチップを搭載しており、これがDSPとして機能するため、入出力信号のルーティングはもちろん、各入出力チャンネルごとに独立したEQやダイナミクスの設定、またリバーブやエコーなどシステムエフェクトの設定など、まさに大規模ミキシングコンソールさながらの機能を装備している。

 そのコントロールはドライバといっしょにインストールされるRME TotalMixを用いて行なうのが基本だ。この画面を見てお気づきの方もいらっしゃると思うが、実はこれ、先日紹介したBabyfaceのものとほぼ同じ。Fireface UFXとBabyfaceでは当然入出力のチャンネル数や、端子の形状、役割が異なるため、その面での違いはあるが、使い方や基本的な機能はまったく同じ。

 1番上の段がオーディオ入力、2段目がPCからの出力、3段目が外部への出力を示しており、1段目と2段目をそれぞれどのチャンネルに出力するか、その音量をどの程度にするかは細かく設定できるようになっている。

 たとえばアナログの1/2チャンネルの入力の設定を見てみよう。ここでは-10dBVの民生用ラインレベル、+4dBuの業務用レベル、それにローゲインの3つから選択できるほか、マイクをL/Rそれぞれの位相反転、またエフェクトへのセンド量などが決められる。またEQを選ぶと3バンドのパラメトリックEQとして、Dを選ぶとコンプレッサ/エクスパンダーとして設定できるといった具合。これを1〜8チャンネルのライン入力すべてで独立して設定できるほか、フロントの入力端子である4つのマイク入力では、+48Vのファンタム電源のオン/オフなどができるようになっている。

アナログの1/2チャンネル入力の設定。-10dBV/+4dBu/ローゲインの3つから選べる マイクL/Rの位相反転 3バンドのパラメトリックEQ
コンプレッサ/エクスパンダーとして設定できる +48Vファンタム電源のオン/オフも可能

 こうした設定は、TotalMixで行なうのが分かりやすく、設定もしやすいのだが、Fireface UFXではほかにも設定する方法が用意されている。フロントパネル右側にカラー液晶ディスプレイが搭載されており、ここでTotalMixで行なう操作のほぼすべてが行なえるようになっている。操作に用いるのは液晶の左右にあるボタンやプッシュボタン機能付きのロータリー式ノブ。全体の状況を見渡せるTotalMixと比較すると、使いやすいとはいえないが、PCを操作しなくても本体のみで、細かくパラメータまで動かせるというのは大きなメリットだろう。さらに、Fireface UFXのMIDI入力にMackie Control互換の機材を接続すると、そのコントロールサーフェイスからFireface UFXをコントロールできるというのも大きなポイント。こうした組み合わせを構築すれば、それはもうオーディオインターフェイスというよりも、ミキシングコンソールと呼んだほうがいい機材へ変身するわけだ。

前面のカラー液晶ディスプレイで、TotalMixの操作はほぼ全て行なえる
液晶の左右にあるボタンやプッシュボタン機能付きのロータリー式ノブで操作 MIDI入力にMackie Control互換の機材を接続すると、そのコントロールサーフェイスからFireface UFXを操作できる

 もちろん、この小さなディスプレイでの表示内容とTotalMixでの設定内容は同じであり、同期しているから、どちらで操作してもお互いが追従するようになっている。



■ レイテンシはFireWire接続の方がやや良好。PCオーディオユーザーにも

 さて、ではここでいつものように、RMAA Proを使っての音質テストを行なってみよう。ここではリアにある3/4チャンネルのインとアウトをループバックさせた形でデフォルトの-10dBVの設定で44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzの4つのサンプリングレートでテストしてみた。その結果が以下のとおりだ。これを見ても、さすがフラグシップモデルという結果となっている。これはUSB接続での結果だが、FireWire接続で行なってもほぼ同様の結果となった。

44kHz 48kHz
96kHz 192kHz

 続いてレイテンシーの測定だ。これもいつものようにCentranceのASIO Latency Test Utilityを使っての測定で、先ほどのRMAA Proと同じように3/4チャンネルをループバックさせたまま行なった。サンプリングレートは44.1kHz、96kHz、192kHzのそれぞれ。また基本となる44.1kHzのテストでは、一番小さいバッファサイズである48sampleのほかに、ほかの機種と比較する際の基準として128sampleでも測定している。

USB接続時のレイテンシ―のテスト(44.1kHz/48 samples) 48kHz/128 samples 96kHz/96 samples 192kHz/192 samples

 以上の結果はUSB接続でのものだが、FireWire接続で行なうとちょっと結果が変わってくる。以前、記者発表会のときにFireWire接続よりもUSB接続のほうがパフォーマンスがいいという旨の話をドイツから来日したジュニアプロダクトマネージャーが話をしていたが、確かにレイテンシーを見る限りそのような結果になっている。そう大きく違うわけではないが、いずれもUSB接続のときよりもレイテンシーが大きくなっている

FireWire接続時(44.1kHz/48 samples) 48kHz/128 samples 96kHz/96 samples 192kHz/192 samples

 いずれにせよ、小さいレイテンシーとはなっているが、極めて小さい値かというと、そこまでとはいえないかもしれない。実は、レイテンシーにおいては現在のところFireface UFXをWindowsで使う場合とMacで使う場合ではパフォーマンスに違いがある。44.1kHzの場合、Windowsでは今見たとおり48sampleまでにしか縮められないが、Macでは14sampleにまで設定可能となっており、結果的にレイテンシーをずっと小さくできるのだ。

 その一方で、この測定ツールはWindows専用なのでMacでの結果を測定することはできなかった。さまざまな機種、環境があるWindowsではトラブルを起こさないようにバッファサイズを大きめにとっているためと予想されるが、環境によってもっとバッファサイズを小さくできるのであれば、そうした設定も用意してほしいところ。ぜひ、今後のドライバやファームウェアのバージョンアップによって、前出のフラッシュメモリのレコーディング機能追加とともに、バッファサイズの縮小をお願いしたいところだ。

 以上、一通りRMEのFireface UFXについてみてきたが、機能、性能ともまさにオーディオインターフェイスの最高峰の製品に仕上がっている。価格面からみて個人のDTMユーザーにはちょっとハードルが高いことは確かだが、Mackie Control互換のコントロールサーフェイスがあれば、30IN/30OUTというそこそこの規模のコンソールシステムを構築することができ、ProTool  9も完全対応しているため、かなり安価に業務用のレコーディングシステムを構築できるというのも大きなポイントだ。さらに、ややオーバースペックかもしれないが、PCオーディオのユーザーにとっても最高の再生環境を構築することができるので、注目を集めそうだ。


(2011年 1月 31日)

= 藤本健 =  リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto

[Text by 藤本健]