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第451回:大変身したエントリー向けDAW「SSW Lite 7/Start」

〜VOCALOID 2連携も強化。INASIOドライバにも注目 〜


Singer Song Writer Lite 7 Singer Song Writer Start

 2月18日にインターネットから、DTMエントリーユーザー向けのDAW「Singer Song Writer Lite 7」(15,750円)が発売され、1カ月後の3月18日には「Singer Song Writer Start」(オープン/実売8,500円前後)の2つが発売された。

 このうち「Singer Song Writer Lite 7」(以下SSW Lite 7)は、低価格ながらVSTエフェクト、VSTインストゥルメント、ReWire、ASIOドライバをサポートするなど、従来のSSW Liteとは一線を画し、使えるDAWへと大きく進化。さらに、オーディオインターフェイスがなくてもすぐに実用可能なトリックが施されているなど、なかなか良いバランスの製品に仕上がっている。今回は実際に使ってみたので、どんなソフトになっているのか紹介していこう。




■大変身した「Singer Song Writer」

 国産DAWとしてこれまで大きな実績を持つ「Singer Song Writer」。先日は、最上位製品の「Singer Song Writer 9 Professional」について紹介した。ユーザーインターフェイスや機能など、従来製品とは大きく変わり、CubaseやSONARなどの海外勢と張り合えるものへと進化したことは、紹介した通りだが、そのエントリーバージョンも大変身を遂げている。

 「SSW Lite 7」は旧バージョンの「SSW Lite 6」と比較するより、「SSW 9」と比較したほうが分かりやすいほどの進化で、バージョン番号は異なるが、実質的には「SSW 9」と同じ世代のDAWと見て間違いないだろう。詳細な機能の違いは同社のサイトをご覧いただきたいが、利用可能なトラック数や同時起動可能なプラグインの数、またバンドルされているエフェクトやシンセサイザなどの違いと考えていい。

 一方、Singer Song Writerの長い歴史の中で、初登場となるのが「SSW Start」。価格も安く、VST/VSTi、ReWireも使えないため、実質的にはこれが「SSW Lite 6」の後継と考えてもいいのかもしれない。SSW Lite 7とSSW Startを簡単に比較すると以下のようになる。

 

  Lite Start
オーディオトラック数 8 4
MIDIトラック数 32 16
VSTi対応 ×
VSTエフェクト対応 ×
収録エフェクト数 21 2
ReWire対応 ×
ピアノロールエディタ ×
収録オーディオループ
(ACID対応オーディオループ素材)
3,850 1,349
収録MIDIフレーズ数 3,390 2,212
収録ソフト音源 VSC/Alpha VSC
価格 15,750円 オープンプライス
実売8,500円前後



■UI一新。VST/VSTiのプラグインにも対応

 さっそく「SSW Lite 7」の画面を見てみよう。基本的に「SSW 9」とそっくりなユーザーインターフェイスで、ピアノロールや譜面入力可能なスコアエディタを使ってMIDI入力が可能なのは、昔からのSSWユーザーにとって馴染み深いデータ入力方法。初めてDTMにチャレンジする人も、違和感なく使えるだろう。

「SSW Lite 7」のメイン画面 ピアノロールの画面 譜面入力可能なスコアエディタ
鼻歌入力機能「シングtoスコア」も健在

 もちろん、SSWの大きなウリである鼻歌入力機能「シングtoスコア」も健在。これなら楽器が弾けない人でも鼻歌でメロディーなどを入力できるので安心だ。このシングtoスコアではどんなマイクを使っても大丈夫だが、どのマイクを買えばいいかわからない場合は、オーディオテクニカのダイナミックマイク「AT-VD3」を同梱したパッケージ「Singer Song Witer Lite 7 MIC BOX」(17,325円)も販売されている。

 なお、古くからのDTMユーザー、SSWユーザーにとって大きなポイントとなっていた数値入力機能は残念ながら「SSW Lite 7」には搭載されていない。これが必要な場合には「SSW 9」を買うしかないようだ。

 さて、MIDIトラックにはデフォルトではマルチユースのGS音源であるRoland VSCが組み込まれており、音色選択するだけで好きな音色が利用できるのもわかりやすい。難しい設定なく、音符を入力すれば、すぐに好みの音で演奏できるというわけだ。

 また、VSTインストゥルメントのラックを表示させると、Roland VST以外の音源もいろいろ使えるのも大きなポイントだ。「SSW Lite 7」にはドイツのソフトシンセメーカー、LinPlugのアナログシンセ・Alphaが同梱されているから、すぐに利用可能だ。


Roland VSCが組み込まれて、音色選択するだけで好きな音色が利用できる Roland VST以外の音源もいろいろ使える LinPlugのアナログシンセ・Alphaも同梱されている
VST/VSTiのプラグインが使えるようになった

 さらに市販のVSTインストゥルメントやフリーウェア、シェアウェアなどを「Program Files\INTERNET Co.,Ltd\Singer Song Writer Lite 7\VSTPlugins」というフォルダにインストールすれば、それらを自在に利用できる。今はDTMユーザー必須のアイテムであるVST/VSTiのプラグインが従来の「SSW Lite 6」では使えなかったのが大きなネックだったが、それが使えるようになったことだけでも、十分買う価値があるだろう。




■VOCALOID 2と便利に使える機能も搭載

 ところで、これからDTMを始めたいというユーザーの中にはVOCALOID 2のバッキングパートを作る、もしくはVOCALOID 2をボーカルに据えた音楽作品を完成させることを目的に考えている人も少なくないだろう。でも、いきなりベースパートやドラムパートを作るといってもなかなか難しいところ。それを簡単に作ってしまうというのが20年以上の歴史を持つSinger Song Writerが持つ元々の機能であり、もちろん「SSW Lite 7」にも備わっているアレンジ機能だ。

 ほとんど自動でバッキングパートを作成してくれる「EZアレンジ」という機能もあれば、数多く用意されているアレンジデータの中から自分のフィーリングに合うものだけを選んで反映させていく機能もあり、必要に応じて使い分けていけば良いはず。この際、コードを設定していく必要があるが、メロディーパートから自動でコードを判定してくれるといった便利な機能もあるのが初心者にとってうれしいところだ。

ほとんど自動でバッキングパートを作成してくれる「EZアレンジ」 アレンジデータの中から自分のフィーリングに合うものだけを選んで反映させる事もできる

 このように「SSW Lite 7」はMIDI関連の機能が充実しているが、もちろんボーカルをはじめとしたオーディオのレコーディングや編集も可能。先ほどの「SSW Start」との比較でも見たとおり、「SSW Lite 7」では最大8つのオーディオトラックを扱うことができるため、メインボーカルにコーラスパートといった使い方もできるし、アコースティックギターなどの楽器をレコーディングしていくこともできる。

 また、ミキサー画面を開くとこのオーディオトラックの構成がより分かりやすくなるが、ここではインサーションまたセンド/リターンの形でエフェクトを噛ますことができる。エフェクトとしてはEQ、コンプレッサ、コーラス、リバーブ、ディストーション……と、21種類を内蔵。さらに、VSTプラグインのエフェクトも利用できるので、自由度は非常に高い。

ミキサー画面を開くと、オーディオトラックの構成がより分かりやすくなる ミキサー画面でインサーションまたセンド/リターンの形でエフェクトを噛ませられる
エフェクトのEQ コンプレッサ コーラス
リバーブ ディストーション

 加えてこのミキサー、なんとMackie Control互換のコントロールサーフェイスにも対応している。コントロールサーフェイスの設定画面でチェックを入れるとともに、MIDIの入出力ポートを設定すればすぐに使えてしまうのだ。試しに以前紹介したiPad用のコントローラアプリ、Saitara SoftwareのAC-7 Pro Control Surfaceで試してみたところ、あっさり動いてしまった。もちろん、ミキサーだけでなく、録音、再生、早送りなどのトランスポート操作も自由自在。初心者用のDAWでここまでサポートしてくれているのは嬉しいところだ。

Mackie Control互換のコントロールサーフェイスにも対応している iPad用のコントローラアプリ、Saitara SoftwareのAC-7 Pro Control Surfaceで試したところ
ReWire対応も実現している

 そしてもうひとつ「SSW Lite 7」の新機能として紹介しておかなくてはならないのが、ReWire対応。VOCALOID 2やPropellerhead SoftwareのReason、Record、Abletonのliveといったソフトと連携・同期して動作する機能だ。個人的にはVOCALOID 2の場合、下手にReWire接続するより、ボーカルデータをWAVファイルとしてエクスポートしたものを「SSW Lite 7」のオーディオトラックにインポートして使うほうが扱いやすいとは思うが、VOCALOID 2ともしっかり連携してくれた。

 なお、ご存知のとおり、インターネットは「がくっぽいど」、「メグッポイド」、「Lily」、「ガチャッポイド」などのVOCALOID 2製品の発売元でもあるわけだが、「SSW Lite 7」などSSW製品ユーザーはこれら製品のダウンロード版を8,400円(がくっぽいどのみ9,975円)と、安く購入できるキャンペーンを3月31日までの期間、行なっているとのことだ。




■付属の「INASIOドライバ」とは?

インターネットの代表取締役である村上昇氏

 ところで、「SSW Lite 7」および「SSW Start」のインストーラを見ると、見かけないドライバソフト「INASIOドライバ」なるものが同梱されていることに気付く。実はこのドライバ、インターネットの代表取締役である村上昇氏が、自身でプログラムを書いたというものなのだが、これがよくできた便利なものなのだ。

 「SSW関連の問い合わせで非常に多いのがオーディオドライバ周りです。初心者ユーザーが多いこともあり、オーディオインターフェイスなしにSSW単体で購入される方が多くいらっしゃいます。ここで、ASIOドライバの説明になると、なかなかうまく伝わらないのも事実です。ソフトを購入されたのに、さらにオーディオインターフェイスの購入を促すのも心苦しいですし……。そこで通常PCでも小さいレイテンシーで使えるようにするドライバを開発しました」(村上氏)という。


「SSW Lite 7」のインストーラー。「INASIOドライバ」をインストールする項目がある

 よく似た考え方のソフトとしてはフリーウェアの「ASIO4ALL」がある。またSteinbergの「Generic Low Latency ASIO」も同様のものであり、そのインターネット版がINASIOドライバというわけだ。

 実は、公開前の段階からベータ版を使わせていただいていたが、これが非常によくできており、ASIO4ALLよりもずっと安定して使える。というのも、このドライバ、インストーラは1つだが、XP用とVista/7用の2つから構成されており、それぞれの環境によって異なるものがインストールされるようになっている。

 まずXPの場合、ASIO-WDM/KSドライバがインストールされる。そう、SONARなどで利用されているWDMドライバのカーネルストリーミングを利用し、これをASIOに変換することで、低レイテンシーを実現するというものだ。

 一方、VistaおよびWindows 7の場合にはASIO-WASAPIドライバ(β版の段階ではASIO-CoreAudioドライバと命名されていたが、Macと混同して分かりにくいということで、この名称に変更となった)がインストールされる。手元にあったマシンがWindows 7だったので、こちらがインストールされた。このドライバは「SSW Lite 7」で利用できるほか、もちろん他社のDAW、音楽プレイヤーソフトなどでも利用可能だ。

オーディオポートの設定画面。ASIO-WASAPIドライバを指定する こちらはASIOの設定画面

 ASIOコントロールパネルを見ると、ちょっと見慣れない用語が出てきて戸惑う。Mode設定のところに「EXCLUSIVE」、「SHARE」なるものが出てくる。とりあえず設定方法としては、最近のマザーボード搭載のHD-Audioであれば、EXCLUSIVEを、古いAC97のサウンドチップやUSBオーディオであればSHAREを選択すればいい。

 また、ここに書かれているWaveRTに対応した機材はまだ少ないが、Echo Audioのオーディオインターフェイスが対応しているほか、MOTUも対応させることを表明している。もっとも、こうしたオーディオインターフェイスの場合は、専用のASIOドライバが付いてくるので、INASIOドライバを使うまでもないわけだが……。

ASIOコントロールパネル最近のマザーボード搭載のHD-Audioであれば、EXCLUSIVEを選ぶ 古いAC97のサウンドチップやUSBオーディオであればSHAREを選択

 バッファサイズはデフォルトで10msecとなっているが、もしプチプチと音が途切れたり、ノイズが大きく感じられる場合には、少し大きく設定すると問題なくなるはずだ。筆者の環境では、HD-Audioを使ったEXCLUSIVEモードでも、USBオーディオを使ったSHAREモードでも10msecの設定で問題なく、快適に利用することができた。

 なお、このINASIOドライバは「SSW Lite 7」、「SSW Start」にバンドルされているほか、インターネット製品の登録ユーザーであれば、同社Webサイトからダウンロード可能になっているので、興味のある方は試してみてほしい。


 

筆者からのお知らせ
1月31日に電車のホームから線路に転落するという事故により、頭と手に大怪我をしてしまい、半月ほど入院しておりました。そのため、「藤本健のDigital Audio Laboatory」を2週に渡って休載させていただきました。多くの方々にご迷惑、ご心配をおかけしたことを、ここに深くお詫び申し上げます。

 


(2011年 2月 21日)

= 藤本健 =  リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto

[Text by 藤本健]