第380回:オリジナル楽曲を販売できる「myspaceCD」を試す
~ 登録は無料。リスナーは楽曲をCDに焼いて購入 ~
既報のとおり、マイスペース株式会社は、株式会社ポニーキャニオンの協力のもと7月13日より「myspaceCD」というサービスをスタートさせた。これはアマチュアのミュージシャンにとってオリジナルCDを発表、発売するための強力なツールとなるもので、インターネットとPCを利用してCDを流通させる仕組みだ。
今回、実際に自分で作ったオリジナル曲をmyspaceCDを用いて発売する試みをしてみた。
■ 楽曲をリスナー自身がCDに焼いて購入
ご存知のとおり、MySpaceはワールドワイドで展開する世界最大級のSNS。国内においては、より音楽に特化したSNSとなっており、多くの音楽ファンが集う一方、多くのミュージシャンの発表の場にもなっている。プロミュージシャンからインディーズ、アマチュアミュージシャンまで、ここで情報提供を行なったり、音楽作品を発表したり、コミュニティーサイトとして幅広く活用している。
JASRACなどの著作権管理団体に登録されていないオリジナルの楽曲であれば、プロモーションビデオなどを自分のページにアップロードしたり、MP3ファイルなら10曲まで無料でアップロードして発表できることから、予算的に厳しい多くのインディーズミュージシャン、アマチュアミュージシャンにとっては、強力なプロモーション・ツールとなっているのは間違いない事実だろう。
そんな中、日本発の「myspaceCD」というサービスが追加された。これはミュージシャンがCDを発売するためのサービスなのだが、既存のサービスと大きく異なるのは、リスナーの手元に物理的なCDが届くのではなく、リスナー自身がPCを用いてCD-RにCDを焼くということ。ジャケットやレーベルもダウンロードし、印刷することで、一般的に販売されているCD相等のものが入手できるというわけだ。
これまでアマチュアミュージシャンがCDを発売するとなると、かなり困難であり、かつお金もかかった。まずレコーディングやミキシング、マスタリングといった作業を行なってCDを作成し、ジャケットやレーベルも作成するというのが第1段階。次の第2段階では、CDのプレス業者に依頼して数百枚、千枚という単位で生産してもらう。
プレス枚数が少ないと単価が上がるため、どうしても10万円以上かかってしまうのが実態だ。もちろん、すべてCD-Rを用いて手元のPCで焼くという方法もあるが、その分、手間がかかってくる。
そして難しいのが第3段階の流通だ。ライブに来てもらった人に売るという基本的な物販からスタートし、MySpaceや自分のWebサイト、ブログなどで宣伝し、通信販売をするという方法があるが、メンテナンスが大変だし、送料もかかる。
特に、どのように決済するかが面倒なため、なかなか本格的な発売に踏み切れないという人も多かったと思う。インディーズであれば、会社が制作や物販を行なってくれるし、インディーズを扱うCDショップでの販売も可能ではあるが、会社がその大きなコストを負担しているわけだ。
そのため、インディーズでデビューするには、それなりの実力や実績がなければ難しく、アマチュアミュージシャンが遊び感覚でデビューできるというものでもない。
そうした高いハードルを取り除いてくれる可能性を秘めているのがmyspaceCDだ。これはMySpaceにアーティスト登録している人で、オリジナルCDを持っている人であれば誰でも無料で利用できるシステム。
先ほどの第1段階~第3段階まであるステップのうち第2段階と第3段階を担ってくれるのだ。さすがに第1段階は自分で行なう必要があるが、DAWなどを用いてDTMをしている人であれば、ここまでは作業は楽しいところでもある。
■ CDの販売価格は設定可能
今回、実際にmyspaceCDで発売開始まで漕ぎ着けたので、その手順を紹介していこう。
まず事前準備として、当然オリジナル曲を完成しておく必要がある。筆者の場合、作曲などのセンスはあまりないため、ツールを利用したオリジナル曲作成を行なってみた。
具体的には以前にも紹介したMAGIXの「Music Maker 2」を利用して3曲、また、先日紹介したばかりのブラウザ上で音楽制作ができる「Audiotool」を使って2曲、それぞれ1分程度の楽曲に仕上げた。そしてこのうちから3曲をピックアップしてアルバムとしてCDに焼いておいた。
MAGIXのMusic Maker 2を利用 | Audiotoolも利用して楽曲作成 |
一方、myspaceCDを利用するためにはあらかじめ、MySpaceにアーティスト登録をしておく必要がある。方法はいたって簡単。トップページの「新規ユーザー登録」メニューから「アーティスト登録」を選択し、メールアドレスやパスワード、音楽ジャンルや自分がアマチュアなのかインディーズなのかといったレーベルの登録を行なうだけでOK。すぐにアカウントが発行され、その先の利用も含めて基本的にすべて無料となっている。
登録はトップページの「新規ユーザー登録」メニューから。レーベルの登録も行なう |
次のステップとしてmyspaceCDへの登録を行なう。アーティストのアカウントでMySpaceにアクセスすると、トップにmyspaceCDのバナーがあるので、これをクリックしてmyspaceCDのページに行くと「このサービスを使う」というボタンがあるので、再度クリック。
ここではアーティスト情報として、氏名、住所、メールアドレス、電話番号、20歳以上であるか否かの5項目を入力するだけ。これによって、myspaceCDで自分のCDを販売するサービスを受けることが可能になる。
「このサービスを使う」というボタンをクリック | アーティスト情報として、氏名などを入力 |
さっそく、ログインすると、シンプルな管理画面が現れる。目的はmyspaceCDでCDを販売することなので、「楽曲・CDの登録」を選択すると、注意書きが表示された後、楽曲アップロード方法の選択画面が現れる。
ログイン後、シンプルな管理画面が現れる | 楽曲アップロード方法の選択画面 |
アップロード方法は、手元にあるオリジナルのCDから登録する方法と、WAVファイルから登録する方法の2通りが用意されている。前述のとおり、予め3曲入りのアルバムを作っておいたので、まずは「CDから」を選択。するとActiveXのアドオンソフトのインストールを促してくる。
情報バーを読むと「VISIONARE CorporationのCD Buring ActiveX」とある。VISIONARE=ヴィジョネア株式会社とはmyspaceCDのCD販売のシステムを開発した企業。問題はなさそうなので、そのままインストールすると「CDをドライブに挿入し、アップロードボタンを押してください」というメッセージが現れる。
ドライブ名もブラウザ上に現れるので指示に従って操作すると、数分でアップロードは終了する。その後、アルバム名、アーティスト名、価格、曲名、さらにはアルバム紹介キャッチコピー、アルバム紹介文、ジャンルといったものを入力していくのだ。
ActiveXのアドオンソフトのインストールを促してくる | 「CDをドライブに挿入し、…」というメッセージが現れる | アルバム名やキャッチコピーなどを入力 |
価格は300円、500円、800円、1,000円……10,000円までの設定の中から選択する。ここでは300円を選択して入力していった。またmyspaceCDの販売サイトにおいて各曲の試聴が45秒間できるが、何秒目から試聴させるかの時間指定や代表曲の設定などもできるようになっている。
その後、ジャケットやレーベルのアップロード画面に移る。まあ、確かにCDを売っていく上では非常に重要なものだとは思うが、当初用意していなかったため、とりあえず、何もアップせずに、次へ進んだ。
300円~10,000円の間で価格設定が可能 | ジャケットやレーベルのアップロード画面 |
すると銀行口座の登録画面へと移る。これはCDの販売収益金が振り込まれる口座の登録だが、すぐに登録しなくても問題にはならないようだ。気になる収益だが、CDの販売数が1~100枚の範囲においては定価×枚数×25%が振り込まれる。
また101枚目以降は定価×枚数×50%となるので、100枚を超えると、そこそこのお金にはなるようだ。ただし、トータル金額が5,000円を超えてはじめて振り込まれるという仕組みになっているので、数枚売れただけではお金は入ってこない。
■ オリジナル楽曲をアップロード
さあ、以上の登録が終わると最後に、販売ページ用アプリのインストール画面が現れる。これをインストールするとMySpaceの自分のページにMySpaceCDへのリンクや試聴を行なう画面が表示されるようになるのだ。
ところで、今アップロードしたアルバムは3曲入りだが、ほかにもCDに焼いていない曲が2曲残っている。そこでこの2曲をWAVファイルからのアップロードの手法を使って登録してみた。
販売ページ用アプリのインストール画面 | WAVファイルからのアップロードの手法を使って登録 |
CDの場合との違いはアップロードの仕方のみ。ここでは1曲ずつWAVファイルを指定してアップロードしていく形となり、そこから先はすべてCDの場合と同じ手順。これで計2つのアルバムが登録されたことになる。
MySpaceの自分のページにアクセスしてみると、画面左側に確かに登録したCDが表示され、これをクリックすると試聴ができる。ただ、ジャケットなどを登録していないと、さすがにそっけない。先ほどは登録しなかったが、後からの登録も可能なので、CDからアップロードしたほうのアルバムのみに登録してみた。
画面左登録したCDが表示される | ジャケットをアップロードして登録する |
この登録にあたってはテンプレートが用意されており、これをベースにしてアップロード画像を作成する。自分の顔写真などを載せるのも恥ずかしいから、ここでは先日デジカメで撮影した風景を登録してみた。
テンプレートが用意されている |
さて、このようにしてアップロードされたら即、販売スタートかというと、実はそうではない。myspaceCDの実質的な運営を行なっているポニーキャニオンがデータのチェックを実施した上で、問題なければ販売開始となり、その期間は約2週間かかるとのこと。
ただ、今回は記事作成用ということで、ポニーキャニオンに無理をお願いし、数日でチェックを行なってもらった。本来であれば、この2週間の期間中にポニーキャニオンがレーベル用の画像に丸い切り取り線を入れる加工を行なってくれるそうだが、今回はその作業は省かれている。
■ 楽曲はクレジットカードなどで決済可能
公開された結果、MySpaceの自分のページにあるmyspaceCDのアルバムジャケットをクリックすると、購入ページへと移動し、詳細が表示される。自分で販売しているCDを自分で購入するのも馬鹿馬鹿しい気もするが、試しに購入手続きを行なってみた。
支払いはクレジットカードを使う方法と、Paypalを使う方法がある。ここではクレジットカードを利用し、消費税込みの315円で決済。再びCD Buring ActiveXが起動され、空CD-Rをドライブにセットして「書き込み開始」ボタンをクリックすると、数分でCDが完成した。
読み込んでみると、確かにオリジナルと同じものができあがった。その後、「書き込みが完了したため、決済処理を行ないました。ジャケット、レーベル、歌詞カードのデータを次のページでダウンロードできます」というメッセージが表示され、ジャケット画像などのデータのダウンロードへと進む。
購入ページへと移動し、詳細が表示 | 消費税込みの315円で決済 | オリジナルと同じものができあがった |
ダウンロードデータはZIP形式になっているので、ダウンロード後に解凍して、プリントアウトするわけだ。1点気になったのは、この決済後、メールなどが届かないこと。
それもそのはず。購入時には名前とクレジットカード番号などしか入力しておらず、メールアドレスを聞かれていなかったのだ。その代わり、決済後に問い合わせ番号が表示されるので、トラブルに備えて必ずこれは控えておいたほうがよさそうだ。
■ 売れ行き状況なども確認できる
さて、いまの方法は、アーティストのページからCD購入へと進んでいったわけだが、そのほかにmyspaceCDのサイトが存在し、ここから検索して購入することができる。
また、「ニューリリースCD」や「お勧めCD」ということで、現在発売中のCDが表示されるのだが、ここは機械的に表示しているようで、筆者が発売したCDも、しっかりここにラインナップされている。まだ、それほど知名度の高い販売サイトではないと思うが、今後これは強力な販促ツールになる可能性もある。
ニューリリースCDやお勧めCDのコーナーに、機械的だが掲載される |
管理画面から売れ行き状況などが確認できる |
一方、CDをアップロードした管理画面からは、現在の売れ行き状況などを確認することもできる。リアルタイムに販売結果が反映されるわけではないようで、購入後に確認してみても売り上げは0円のままではあるが、定期的に更新されるのだろう。
以上、myspaceCDでのCD販売の流れについて一通り見てきたが、 こうした一連のサービスをすべて無料で利用できるわけだから、自分の作品をリリースしてみたい人にとっては、魅力的なサービスといえるだろう。
さらに大きなメリットは、このサービスをポニーキャニオンが行なっており、その内容をチェックしているということ。つまり、いい音楽作品であり、人気のあるアーティストであれば、声がかかり、ポニーキャニオンのインディーズレーベル、さらには、メジャーでデビューできる可能性もあるのだ。自分のオリジナルCDを作っている人は、登録してみてはいかがだろうか?