radiko/Facebookも使えるフォトフレーム「DPF-WA700」
-ネットワーク対応で利用の幅が拡大した「S-Frame」
DPF-WA700 |
ソニーから11月25日に発売された7型デジタルフォトフレーム「DPF-WA700」。無線LANにも対応し、ネットワーク経由で写真や音楽を再生できることが特徴だ。
ネットワーク対応のデジタルフォトフレームは他社でも既に存在しているが、「DPF-WA700」がユニークなのは、静止画を表示しながら「radiko.jp」(対応地域のみ)も聴けることや、Facebookの静止画を表示できるなど、他社サービスと一歩踏み込んだ連携機能を実現している点。
価格は7型で実売2万円前後と、携帯キャリアなどが販売する製品に比べると高価だが、無線LAN環境さえあれば月額料金不要でネットワーク機能などが使える。この製品の特徴であるネットワーク再生機能や、AVCHD動画再生などのAV機能を中心に試した。
■ S-Frame初のネットワーク対応モデル
ソニー「S-Frame」シリーズは、「TruBlack(トゥルーブラック)ディスプレイ」などで高画質を追求した「X/XRシリーズ」や、バッテリ搭載モデル/スワロフスキー装飾モデルなどの「Dシリーズ」、低価格な「Cシリーズ」などを展開している。当初は静止画のみの対応だったが、2010年発売の「XRシリーズ」で初めてAVCHD動画再生に対応。音楽再生も行なえる。
今回紹介する「DPF-WA700」は、S-Frameで最初のネットワーク再生対応モデルだが、ソニーはVAIOブランドで2008年に発売した7型「Canvas Online」(VGF-CP1)で、無線LANを内蔵。DLNA再生にも(アップデートで)対応している。
「Canvas Online」はRSSリーダー機能やYahoo! ニュースなどの情報取得にも対応し、ソニーにとっては“インフォメーション端末”と位置付けられていたとのこと。ちなみに、ネット機能を備えたウィジェット端末として海外を中心に話題となった「chumby」が日本で発売されたのもこの少し後だった。「DPF-WA700」も、インターネット経由で天気情報は取得できるが、情報端末としてではなく、主にAV機能を強化していることが特徴だ。
DPF-WA700。今回はブラックモデルを試用した | ホワイトモデル |
ディスプレイは7型/800×480ドット(16:9)のクリアフォト液晶。1GBのフラッシュメモリを内蔵するほか、SD/SDHC/メモリースティック デュオ対応カードスロット、USBを備え、カードやUSBメモリなどの静止画/動画を表示できる。なお、動画再生やradikoに対応しないモデル「DPF-W700」も2012年1月27日に発売(実売15,000円前後)される。
操作はタッチパネルで行なう。ハードウェアのボタンは、メニューと音量+/-の3つだけと、とてもシンプル。HDMIなど映像/音声出力は搭載しない。筐体はプラスチックだが、表面仕上げの工夫などにより、安っぽさは感じられない。ただ、タブレット端末などを見慣れていると、額縁部分の太さはやや気になるところだ。
側面 | 背面。ボタン類は天面に備える | 側面カバー内にUSB端子やカードスロットを備える |
■ radiko対応でBGMの幅が拡大。NASの音楽も再生
まず、特徴であるネットワーク再生を試した。無線LANはIEEE 802.11b/g/nに対応。無線LAN設定は、検出されたSSIDを選んでWEP/WPAキーを入力すれば完了。本体のソフトウェアキーボードで入力できる。ルーターなどがWPSに対応していれば、ボタンプッシュで登録できる。IPアドレスはオート/マニュアルから選べる。
ネット接続が完了すると、LAN内にあるパソコンなどの静止画/音楽が再生できるようになる。SDカードやUSBメモリなどでカメラの写真を取り込まなくても、LAN内のパソコンなどに静止画があれば、購入後すぐに使えるというのは便利だ。
再生可能なファイルは「PC内にあるWindows Media Player 11/12の音楽/静止画ファイル」としており、DLNA対応は謳っていないが、実際接続してみるとPCだけでなくNAS(LAN HDD)などのDLNAサーバーも再生機器として認識され、再生できた。なお、サーバーとしてDLNA/DTCP-IP対応のBDレコーダも表示されたが、ネットワーク経由での動画再生には対応しておらず、著作権保護コンテンツもサポート外なので当然ながら再生はできなかった。
再生対応フォーマットは音楽がMP3、AAC、リニアPCM(WAV)、WMA、静止画がJPEG。なお、DRM付きファイルは再生できない。例えばAACファイルでも、iTunes DRM付きの.m4pはリストに表示されなかった。なお、ネットワーク経由で動画を再生することはできない。
「ホームネットワーク」で表示されたPCから静止画を内蔵メモリにコピーすることも可能。取り込んだ日付フォルダが自動的に作成され、そのフォルダ内に静止画が保存される。
トップメニュー | 無線LAN設定画面。WPSボタンでの登録も可能 | 「ホームネットワーク」メニュー内で、NASやDLNAサーバーなどが検出された |
radikoは音楽メニュー内にある |
次に、デジタルフォトフレームとしてはおそらく初となる、「radiko.jp」も再生した。radikoは、「音楽/ラジオ」メニュー内にあり、選択すると通常のPC用ブラウザやiPhoneアプリなどと同様に、チャンネル一覧から選局して再生を開始。配信中の番組情報や、この後の時間帯に配信される番組の一覧も表示される。
radiko聴取中に、画面左上のスライドショーボタンをタップすると、番組を聴きながら静止画スライドショーに移行。音楽ファイルを用意しなくとも、手軽なBGMとして利用できる。なお、radikoは再生のみで、録音には対応しない。設定項目でバッファ時間の変更(15秒/30秒/1分/3分)も可能。電波状況が悪い場所ならバッファ時間を長くした方が安定して受信できるが、WA700は据え置きの製品なので、短くしておいた方が起動が早くて便利だろう。
radikoの聴取が可能 | 聴取画面 | バッファ時間の変更 |
また、ユニークな機能であるFacebook連携は、自分や友人がアップロードした静止画をスライドショー形式で次々に表示できるというもの。新たに写真がアップロードされると自動更新して、画面上に表示される。
FacebookのID/パスワードを入力し、共有を許可することで、この連携が利用可能。サムネイルで一覧表示することもできる。なお、ソニーの共有サービス「Personal Space」とも連携可能。なお、閲覧できるのは静止画のみで、動画の再生には対応しない。
FacebookからWA700で閲覧可能な静止画は、最新の100枚まで。「アップされた写真を全部見る」というよりも、「何気なく眺めていたら、いつの間にか更新されていた」くらいの感覚で見るのがちょうどよく、全ての写真を見たい場合はPC、というように使い分けた方がよさそうだ。なお、Facebookの写真には、送信者とタイトルは表示できるが、フォトフレーム本体で「いいね!」やコメント入力はできない。気軽に「いいね!」だけでもできればさらによかったと思う。
そのほか、メールアドレスをWA700に登録しておくことで、そのアドレスに写真つきメールを送ると、自動で写真を表示することが可能。本文などのテキストは表示せず、写真だけを順にスライドショー表示する。
メールの写真は、登録したアドレスに届いたものを区別することなく全て表示するので、家族で使う場合などは、専用にフリーメールなどのIDを取得して登録するといいだろう。
FacebookのIDと紐付けできる | ネットワークコンテンツの写真表示。「f」のアイコンがFacebookの写真、メールのアイコンはメールで送られた写真を示している | Facebookにアップロードされた写真が表示される。写真に付けられたタイトルも合わせて表示 |
■ AVCHDのフルHD動画も滑らかに再生
SDカード内のファイルをサムネイルで一覧表示。動画は静止画の後に表示された |
フォトフレームの基本機能である、静止画や動画/音楽のファイル再生も試した。動画の再生対応フォーマットはMPEG-1/4、MPEG-4 AVC/H.264(mp4、mts)、Motion JPEG(avi、mov)。
フルHDのAVCHD動画も再生可能。ソニー「DSC-HX9V」や「NEX-5」、キヤノン「XA10」、パナソニック「HDC-TM750」、オリンパス「PEN E-P3」で撮影したAVCHD動画ファイルを再生したところ、高画質なファイルは読み込みに1~2秒かかることもあったが、いったん再生が始まると、コマ落ちなどは無く滑らかに再生できた。
画質は、「TruBlackディスプレイ」搭載モデルに比べるとコントラストが劣ることや、カメラがパンしたときの残像が気になるといった点はあるが、このサイズ/解像度のディスプレイとしては大きな不満は無い。ディスプレイの画質に関する設定項目は明るさの増減のみ。
音声はモノラルスピーカーからの出力だが、背面に備えたスピーカーユニットの振動板は直径4cmほどあり、この筐体としては大型。ユニットは下向きに配置されており、画面下部のスリットと通して前面から音が聴こえる。ボリュームを上げると箱鳴りが少し気になるが、想像以上に厚みを持った音に仕上がっており、radikoも聴きやすい。
フルHD動画を再生したところ | 外からは見えにくいが、内部にスピーカーユニットが下向きに配置されているのがわかる | 前面下部のスリットから音が聴こえる |
電源をON/OFFする時間を細かく設定できるのは便利 |
操作については、前述の通りハードのボタンが少なく、ほとんどをタッチパネルで行なう。ただこのタッチパネルは抵抗膜方式で、レスポンスはあまり良いとは言えない。例えば次の写真を見たくて右から左にスワイプしても、逆に前の写真に移動してしまったり、サムネイル一覧でスクロールするつもりが、意図しない写真を選んで拡大表示するといった誤動作が何度かあった。頻繁に操作するような製品ではないが、タブレットのスムーズな操作に慣れている人は、ストレスを感じるかもしれない。なお、タッチパネルの調整(キャリブレーション)する機能も用意している。
常に電源を入れておくフォトフレームだけに、消費電力も気になるところ。電源のON/OFFをタイマーで設定できるため、曜日ごとの外出/帰宅時間を登録しておけば、自宅にいる間だけ表示させることが可能だ。消費電力は最大13.3W/通常約5.6W。
■ ネットワーク対応で「使い続けられる製品」に
使ってみて感じたネットワーク対応の大きなメリットは、カードなどを差し替えて写真や音楽を本体メモリにコピーするといった作業が減ること。Facebookなどの写真も加えると、手間が少なく常に新しい写真を表示できるので、「写真や音楽を入れ替えるのが面倒」という人にもお勧めできる。約2万円という価格も、月額料金を払う製品に比べれば、長い目で見て負担は少ない。
DLNA対応は謳っていないが、今回試した限りではDLNA対応NASにある静止画や音楽を再生できたのも便利だった。できればローカルとオンラインのコンテンツをシームレスにシャッフル再生するモードがほしかったが、とりあえずNASにある音楽をフォルダごとに再生することはできたので、BGMとして使えた。
この製品はネットワーク経由でファームアップデートもできるので要望も書いておくと、今回radikoに対応したので、さらにNHKのIPラジオ再配信サービス「らじる★らじる」など、様々なインターネットラジオに対応していってほしい。
また、写真共有の対応サービスが少ないので、Picasaやフォト蔵、Flickrといったサービスとの連携にも期待したい。例えば「Eye-Fiカードを入れたカメラで撮影するとすぐS-Frameに静止画/動画が表示される」といったことができると、ネットワーク機能がより活かされると思う。
[AV Watch編集部中林暁 ]