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西田宗千佳の
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任天堂「Wii U」試作機レポート

E3 2011特別編 形よりも「2画面」が本質?!


Wii Uのリビングへの配置イメージ。Wiiリモコンと組み合わせて複数人で遊ぶことが想定されている

 本日はE3も最終日。人も少なくなり、連日大混雑だった任天堂ブースにも、ようやく(ほんの少しだけ)余裕が見られるようになってきた。そこで本日は、Wii U試作機を使ったハンズオン・トライアルの様子をお伝えしたい。

 タブレットにも、携帯型ゲーム機にも見えてしまうWii Uは、使ってみるとどのような感じなのだろうか。


 


■ 本体と新コントローラーは「1:1」のセットで動く

【訂正】
記事初出時に、コントローラ側にHDMIを備えていると記載していましたが、任天堂によれば「展示しているのは試作機で現時点ではコントローラ側にHDMIが付く予定は無い」とのことです(6月10日)

Wii U本体。正面から見たサイズはWiiとほぼ同等だが奥行きは大きい。とはいえ、かなりコンパクトなゲーム機だ

 先日のプレスイベント記事でも触れたように、Wii Uというのは決して携帯ゲーム機ではない。というか、いかにもWii U本体のように見える6.2インチ液晶を備えた機器はあくまで「新コントローラー」。本体は別に、Wii本体の奥行きを長くして、角を丸くしたようなボックスが用意されている。

 すなわち、テレビにHDMIで本体を繋ぎ、そこに「新コントローラー」と「プレイする人数に応じたWiiリモコン」を用意するのが、Wii Uの「フルセット」である。

 中でもやはり注目は、新コントローラーの使い勝手だろう。写真だけを見るとタブレットのようにも見えるが、実際に持ってみると「横に長いコントローラー」といった感触の方が近い。コントローラーの材質は、Wiiリモコン同様、マットで清潔感のあるプラスチック。各部テイストもほぼ同じ作りと考えていい。

 新コントローラーは、WiiリモコンとニンテンドーDSのセンサー系がすべて一緒になっているようなものともいえる。Wiiリモコンと違い、アナログパッド(3DSと同様の仕組みのもので、スティックではない)が左右、デジタルパッド、メインの4ボタンは同様だし、トリガーもL・Rと2つのZボタンと操作系もほぼフルに搭載している。さらには、Wiiリモコンが持っていたジャイロセンサー、加速度センサー、フロントカメラに加え、赤外線通信も搭載しているという。


新コントローラー正面。任天堂のコントローラーではおなじみのボタンが液晶を囲むように配置されている。上部には自画撮り用ウェブカメラも 新コントローラー上面。トリガーやヘッドホン端子の他、赤外線通信(IR)にも対応 新コントローラー下面。ストラップホールの他、中央に充電端子などがある
ペンを使ったタッチパネル操作

 そしてもちろん、一番目立つ6.2型/16:9のディスプレイはタッチパネルになっている。iPadなどのような静電容量式ではなく、ニンテンドーDSに近い感圧式だ。だからペンを使って線や文字を書くには都合がいい。



■ 柄は大きいが重くはない。握りやすいグリップや仕上げは「Wii」的

 実際にもってみると、やはりサイズなりの重量はある。しかし6.2インチクラスなので、iPad(9.7インチ)ほどの負担は感じない。あえて一番近い重さのもの(あくまで感覚的に、だが)を思い浮かべると、Galaxy Tabのような7インチクラスのタブレットである。しかし、グリップ部があってより握りやすいことから、それらよりは持ちやすいと感じる。

 体験でプレイしたのは「Wii Battle」と呼ばれる複数人で戦うシューティングゲームのようなもの。2人は兵士(?)となり、Wiiリモコンを使って相手を狙いつつ戦うが、新コントローラーを使う人は、UFOのような戦闘機に乗って戦うことになる。アナログパッドでも操作するが、実際の針路はジャイロセンサーによって新コントローラーの向きを検知して、その方向にUFOが飛ぶようになっている。テレビに映っているのはWiiリモコンを使うプレイヤーの操作画面だが、新コントローラーには、UFOで飛ぶ自分の姿が写っている。すなわち、新コントローラーを使う人は新コントローラーだけを使い、それ以外の人はWii的に楽しむことになる。

コントローラにはリアカメラが無いため、自分が向いた方がディスプレイの中に再現される、というAR的な挙動は、ジャイロセンサーによる

 新コントローラーが使えるのはWii U1台につき1つ。Wiiリモコンが「みんなで同時に使う用途」を指向していたのに対し、新コントローラーは「自分が楽しむ用途」向き。よりコア向きというか、パーソナルな存在である。テレビの前のパーソナルなディスプレイという点では、確かにタブレットに通じるものがある。

 新コントローラーのディスプレイ解像度はあきらかになっていない。しかし1080pや720pのような「HD解像度クラス」ではないようだ。とすると、カーナビなどで広く使われる、1,024×600ドット程度と予想しておくのが妥当だろう。それで6インチ強なら十分な解像感になるので、HDでないことは大きな弱みとはならないだろう。

 ちょと意外だったのは、新コントローラーには、自分を映すフロントカメラはあっても、「リアカメラ」がないことだ。そのため、「カメラ撮影した実景映像に映像を重ねる」形でのARは採用できない。自分が向いた方がディスプレイの中に再現される、というAR的な挙動は、あくまでジャイロセンサーによるものだ。

 Wii Uを特徴づける新コントローラーは、やはり単体で評価すべきではないのだろう。タブレットならば「ちょっとそぐわない」と思われる部分が、「ゲームのための専用機器である」と思えば納得できる。ゲームや映像配信を楽しむ場合にも、自室に持って行って見るのではなく、「家族と同じリビングにいながら、自分の世界を楽しむ」というニーズだろう。

 そう考えると、Wii UはWiiに比べ確実に「コアユーザー向け」になっている。しかしそれが理解されるには、「振る」「動かす」というシンプルな動作で、広いユーザーを掴むことを狙っていた「Wiiのコンセプト」のインパクトの影響を逃れる必要がある。本来はより個人的で、コア向けのメッセージを持った新コントローラーの可能性が、「同じように持って動かすもの」というレベルで捉えられ、正しく伝わらない可能性が高いからだ。

(2011年 6月 10日)


= 西田宗千佳 =  1971 年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う?世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ!クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(徳間書店、神尾寿氏との共著)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]