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西田宗千佳の
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SCE社長 アンドリュー・ハウス氏インタビュー

Vitaは「3本の柱」で対応、ネットサービスにも秘策?!


 E3レポートでは恒例となった、SCEIトップインタビューをお届けする。

 ご存じの通り、昨年までSCEトップであった平井一夫氏は、ついにソニー本社社長にまでのぼりつめた。代わって、2011年9月より、SCEI代表取締役社長兼グループCEOに就任したのが、アンドリュー・ハウス氏である。ハウス氏は1990年にソニーへ入社、1995年よりSCE本社にて、マーケティングを担当した。特に北米市場でのPlayStationビジネスを中心に担当してきたが、2009年5月にソニー・コンピュータエンタテインメント ヨーロッパ(SCEE)の社長兼CEO兼Co-COOに就任、その後、現職へと就任した。昨年末、本連載でもインタビューもお届けしている。

ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)代表取締役社長兼グループCEOのアンドリュー・ハウス氏

 ハウス氏にとっては、SCEIトップとしてはじめてのE3であり、日本・アメリカ・ヨーロッパでPlayStation Vitaをローンチして、はじめて迎えるE3でもある。

 SCEのゲームビジネスが、ソニー全体でも「3本柱の1つ」に数えられ、責任が増す一方、Vitaについては苦境も伝えられる。

 ここから、SCEをどのように舵取りするのか? いくつかのポイントに絞って話を聞いた。



■ Vitaは「数年スパン」で判断、アピールの軸は3つ

E3のSCEAカンファレンス

――今回のカンファレンスは、SCEA圏内での主力ゲームタイトルのアピールが主軸で、プラットフォーム戦略全体に関する話が少なかったように思います。新ハードは別として、現在勢いが落ち始めていると言われる家庭用ゲームビジネスを、どうやって盛り上げていくのか、という施策が見えなかった、と感じました。SCEとして、家庭用ゲームビジネスの勢いをどう感じていますか? ポータブルと据え置き、それぞれでの分析を教えてください。

ハウス氏(以下敬称略):まず据え置きについて。

 PS3に関しては、意外にモメンタム(勢い)は順調に推移しています。

 昨年は、震災やタイの洪水などの影響が多少ありましたが、ほぼ目標通りです。各マーケット毎に分析しますと、日本はかなり強いマーケットシェアを持っています。ヨーロッパはさらに強い。あいかわらずNo. 1だと思っていますし、新しいマーケットも伸ばしています。北米は確かに、マイクロソフトさんが非常に強い。しかし、ほぼほぼ(Xbox 360と)同じくらいというか……。年末商戦では、前年よりシェアが上がりました。ある程度回復してきたと思っています。

 忘れてはいけないのは、新しい市場です。どうもこれまで、海賊版問題でタッチできなかった南米・アジアなどへは、さらに(PS3を)普及させたいと思っているところです。ソニーの流通の強みを十分に生かし、それらの国々でがんばろうと思っております。

 ポータブル(Vita)についてはですね、まだ、判断するのが早いと考えています。アメリカ・ヨーロッパでは発売してたった4カ月、日本でも半年です。我々は長い目で見て、従来通り、プラットフォームは「何カ月」ではなく「何年」の間で成功を判断するものなので。

 これから、Vitaでのモメンタムを作るにあたっては、主に3つの目的があり、強みにもなると考えています。

 一つは、目玉ソフト。私としては自信がありました。日本国内では受け止め方が違うかも知れませんし、別の課題かとは思いますが、欧米では「Call of Duty」「Assasin's Creed」が、Vitaならではの体験ができるタイトルとして出てくることは大きい。特にAssasin's Creedについては、単なるPS3からの移植ではなく、Ubi Softさんが自ら「このデバイスでなら新しい体験・新しいストーリーで」といっていただけたのは、クリエイター側からの評価の一つかと。

 もう一つは、せっかくのネットワークにもう繋がっているゲーム機だということ。ですから、ゲームだけでなく、人々が期待するようなサービスを広げていくのが我々の義務です。ですから、YouTubeと、アメリカにおいてはHulu Plusを発表しました。「今後もどんどん、ゲームだけでなく、大きな画面ですばらしい画質で楽しめるサービスが体験できるようになるよ」ということがメッセージです。

 三つめは、昨日も多少話したことではあるのですが……。

 我々が内部で検討段階に入っていることがあります。それは、PSPも、せっかく7年くらいの財産がありますから、それをなんらかの新しい形で、新しいオーディエンスに、ローコストで、面白いビジネスモデルで提供できるのではないか、ということなんです。ネットワークでの配信も容易です。それが3本目の柱ですね。

――3つめの柱について、もう少し詳しく教えてください。昨日「ネットワーク配信の強化」はアナウンスしておられました。それとは違うわけですね?

ハウス:はい。昨日の話の中心は、PS1のものでした。しかし、PSPのタイトルも上手い形で活用できるんじゃないのか、ということはないではないですね。もう日本では、現実的には(PSPタイトルのダウンロード販売は)やってはいますが。UMD Passportもありますね。

 ただ、それよりもうちょっと幅広いものがあるんじゃないか……ということなんですが。

――それは、単純にPSPタイトルをダウンロード販売する、というのとは違う形、ということですね? 例えば、会員制の使い放題だとか……?

ハウス:色々あるとは思います。まあでも、まだ決定内容についてはお話できません(笑) ソニーとして色々検討している、ということで。デジタル配信だからこそ、すでに採算がとれたコンテンツを低コストに……といったことも考えられるでしょう。

 若い世代に対しVitaをアピールしたい場合、PSPのタイトルは過去のものではなく、「新しいコンテンツ」になるんです。親世代にとっては、Vitaで良い、安いコンテンツがたくさんあるなら、(Vitaを)買う理由になるのではないかな、と思っています。



■ オンラインサービスの「格差」是正に努力

――日本での施策についてお伺いします。PlayStation Plus(Playstation Networkの月額会員制サービス)であるとか、映像配信であるとか、音楽配信であるとか、アメリカに比べサービスの内容が大きく異なるものが目立ちます。もちろん、各国の事情はあるのでしょうが、格差を是正する考えはありますか?

「PlayStation Plus」の海外サービスでは、会員向けに無料プレイできるゲームの種類の強化なども発表された

ハウス:実はですね、ヨーロッパの企業の社長も、まったく同じ質問を私にしているんですよ(笑) どんな地域に行っても「うちのサービスは他国ものに比べ劣っている」という話が出ます。日本はアニメコンテンツでは、他国よりずっと充実していますよね。

 とはいえ、半分は……。おっしゃる通りです。これは言い訳ではないですが、音楽や映像になると権利関係もあります。

 でも、です。確かに、あるレベルでの統一感は必要かと、私は思って言います。PS Plusであったり他のサービスなり、できるだけ今後は、日本のユーザーにウケるようなコンテンツであっても、十分満足できるような、スタンダードなレベルにはもっていきたいと思っています。

 重ねていいますが、権利関係はあります。特に日本は独特。大変です。音楽関係も多少そうです。しかしできるだけ、各エンターテインメントコンテンツの分野とおつきあいして、バリアー、敷居のレベルをなんとかちょっと乗り越えて、提供したい。それが我々の意志です。

 自分自身の、この職に就任してからの意識として、なるべくグローバルな方針を、今後は採りたいと思っています。それは、コンテンツの提供の仕方、特に、ゲーム会社との連携・グローバル戦略においてです。彼らはどんどんグローバル戦略を採ってますから、まさに、それに合わせて、同じような見方をしないといけないと思っています。

 マーケティングもグローバルに見ないといけません。なぜかというと、ネットワークにつないでいるお客様は、たしかに物理的にある地域には住んでいるんですけれど、みんな「同じPSN」につないでいるんですよね。メッセージの統一感は重要です。他社……の名前は出しませんけれど、ディテールの部分はともかく、大きなメッセージの統一には努力したいと思います。



■ モバイル対抗は「PS Mobile」で、変化の時代への対応は「待ったなし」

――特にモバイルについては、スマートフォン・タブレットのような、インディペンデントなデベロッパーが活躍するプラットフォームとの競合が、我々の予想よりも早く進んでいると思います。それらのプラットフォームとの競合状況についてはどう考えていますか? その対策の中には、PlayStation Mobileのようなものも含まれると思いますが。

ハウス:まず、私が最近、この件についてよく話すことがあります。

 この業界のビジネスを見ている人達は、コンソール/コアゲームと、ソーシャル/モバイルを、けっこう切り分けて考えています。しかし率直に言って、ユーザーとしては「ゲームが面白いかどうか」「遊び方/遊べる時間と私のライフスタイルが合うかどうか」を考えているはずです。そうすると、多分、今(コアとモバイルで)極端に分けている世界が、どんどん近づいていくと思うのです。

 なぜなら、スマートフォンへの移行に伴い、「スマートフォンのゲーム」と呼ばれているものの遊び方と品質が大きく変わると考えられるからです。同時に、据え置きコンソールでも、携帯機でも、ネットワークに繋がるようになりました。時間はかかるかもしれませんが、いままでのゲームを作っていたクリエイターが、よりソーシャルな要素を採り入れた、人と人のつながりを生かしたゲームプレイを実現するのではないか、と私は考えています。

 それがまず大前提です。

PlayStation「Suite」は「PlayStation Mobile」に名称が変わった

 そこで当然、我々が強調するのは「PS Mobile」ですね。まさに(コアゲームとソーシャルの)融合性は、目指そうとしているところです。ご存じの通り、PS Mobileの強みは、(コアゲームの)開発環境作りの知識を生かしていることにあります。

 従来通りの我々のコンソール・フォーマットですと、わりとコストが高いハードウエア・ツールを配布しないといけないため、開発初期段階では開発者の数は限定されてきます。しかしモバイルの世界ですと、PS Mobileがまさにそうですが、デジタルで開発環境を安価に配布する世界になります。それができるので、あっというまに、幅広いデベロッパーが商売することができるようになるのではないか、と思っています。

 PS Mobileは、うまくいけば、色々な参加者にメリットがあります。

 ユーザーにとっては、いいモバイルのゲーム体験ができて、Playstaion Storeにより、ゲームが探しやすく、導入しやすい環境ができます。

 スマートフォンメーカーにとっては、端末に付加価値をあっというまにつけられます。HTCさんがこれに気がつき、乗ってきてくれたことを、私としてもとてもありがたいと感じています。

 コンテンツクリエイターですが……。モバイルの世界では、コンソールのプロプライエタリなフォーマットより、なるべく大きなインストールベースのあるAndroidの上で動くものの方がいい、ということになるでしょう。

 PS Mobileによって、よいゲームで、特に新しい才能を育てたいんですよ。そして新しいマーケットを作る。彼らがリーチできるような環境は、我々が作りたいと思っています。

――SCE社長になられて、ご自身としてのオリジナリティ、ご自身の責任として成し遂げたいことを、教えてください。

ハウス:今ゲーム業界の中では、あらゆる形で、ビジネスモデル・コンテンツモデルなどの変化が起きています。非常に激しいトランジションの時代だと思います。

 私はそこで、リーダーシップによって、一番対応できる、SCEの組織とビジネスモデルを作りたいと思っています。それ以上は、ちょっといえないです。秘密。

――その成果を出すまでの時間はどうですか?

ハウス:時間は、ないです。なるべく早く立ち上げたいと考えています。

(2012年 6月 7日)


= 西田宗千佳 =  1971 年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う?世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ!クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(徳間書店、神尾寿氏との共著)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

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[Reported by 西田宗千佳]