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torne 5周年! torne mobile登場の秘密を開発陣に聞く

PS4のtorneをそのままスマホに。ネイティブコード開発

 この3月18日で、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のテレビソリューション「torne」シリーズがスタートから5周年を迎える。PlayStation 3からスタートしたプラットフォームは、より汎用性の高いデバイスである「nasne」の登場を経て、携帯機であるPS Vita、その発展型であるPS Vita TVに広がり、現在はPlayStation 4(PS4)にも対応した。

 そして今回、5周年を機に、「torne」というアプリそのものがプレイステーション・フォーマットの外へ出て行く。SCEは本日より、iOSとAndroid向けに「torne mobile」を公開した。プレイステーションで培ったtorneの快適さを、より広い機器で使えるようになるわけだ。

 その機能と狙いはどのようなものなのだろうか? torne開発チームに話を聞いた。ご対応いただいたのは、SCE・研究開発本部2部 担当部長 同3課課長の石塚健作氏と、研究開発本部2部 ソフトウェア・エンジニアの宮田直之氏のお二人だ。

ソニー・コンピュータエンタテインメント研究開発本部2部 担当部長 同3課課長の石塚健作氏(左)と、研究開発本部2部 ソフトウェア・エンジニアの宮田直之氏(右)

 なお、本記事で使っている画像は、すべてSCEから提供を受けたもので、番組表の内容は架空のものである。

基本機能はPS版譲り、縦画面・高解像度にも対応

 torne mobileは、iOSとAndroidでnasneを使い、テレビを視聴するためのアプリケーションだ。ご存じの通り、torneとはPS3・PS4・Vitaにてテレビを視聴するためのアプリケーションの名称であり、現在はnasneとの組み合わせで使うのが基本だ。その点は、torne mobileも同じである。モバイル系プラットフォームで使えるようになるわけだが、あくまで「torne」である。

torne mobileのトップ画面。リング状の配列ではなく2列にアイコンが並んだ形になっているが、機能はほとんど同じだ

 そのため、利用にはnasneが必要になる。逆にいえば、torneはあくまでSCEのテレビ視聴アプリであり、汎用のDLNAアプリではない。だから、他社のDLNA対応機器の映像を視聴することはできない。また、ソニーのブルーレイレコーダとの連携も、いまのところできない。ここが、汎用のDLNAアプリやソニー製の「TV SideView」との違いになる。

 現在のnasneは、自宅内での視聴はもちろん、屋外から宅内のnasneにアクセスする「リモート視聴」(torneでは「AnyTimeAccess」と呼称)にも対応しているが、torne mobileについても、プレイステーション向けのtorne同様、リモート視聴が行なえる。いったん自宅でnasne視聴の設定を行なっておけば、あとは自由にどこからでも、nasneで受信したテレビを視聴できるようになるのだ。

 要は、torne mobileも「torneそのもの」なのである。torneといえば、リング状にアイコンが並んだ独自のトップメニューが特徴的だが、torne mobileではそこは再現されていない。しかし、アイコンをタップすると番組リストや番組表が出てくる構成は同じで、これまでにtorneを使ったことがある人ならば、まったく戸惑うことなく使えるだろう。

torne mobileでの番組再生画面。すべてタッチで操作すること以外は、プレイステーション用と大差ない
torne mobileのEPG。タッチでスクロールできて、ピンチイン・アウトで拡大縮小できる。画面は縦での表示だが、もちろん横でもOKだ
torne mobileの録画番組リスト。見たい番組をタップすれば再生が始まる
ソニー・コンピュータエンタテインメント研究開発本部2部 担当部長 同3課課長の石塚健作氏

石塚氏(以下敬称略):基本的には、これまでのtorneと同じ、と思っていただいてかまいません。使い勝手は変えたくありませんでした。

 特徴的なリングのメニューは使わなかったのですが、これは操作性を考えてのものです。スマートデバイスになって、ポケットから取り出して使うものでクルクル回るメニュー、というのもなにか違う気がして……。コントローラーがあってのものと、そうでないものとでは違うだろう、という部分もあります。また、あのリングメニューって、デザイン的にきわめて絶妙に出来上がっていて、サイズや数を変えただけですごく使いにくく、かっこ悪いものになるんです。

宮田:内部ではグルグル回っているバージョンもありましたね(笑)

石塚:触って壊して触って壊して……という意味では、最初のtorneを作った時並みのスクラップアンドビルドを重ねています。やっぱり、操作の面で出来るだけ妥協はしたくなかったので。

SCE研究開発本部2部 ソフトウェア・エンジニアの宮田直之氏

宮田:今回、今までのtorneと根本的に違うのは「UIをどうするか」という点だったのですが、特に問題だったのは「多数の解像度にどう対応するか」「縦持ち・横持ちの両方に対応する」ということでした。スマートデバイスには多様なディスプレイがあり、解像度もまちまちです。どれでも快適に使えなくてはなりません。500ppi以上というデバイスにそのまま表示すると、とてもタッチできなくなってしまいます。そこで今回は、設定メニューの中に、「表示サイズ」という項目を設け、アイコンや文字サイズを変えられるようにしました。

石塚:みなさんが持っているスマートフォンで、いかに素早く使っていただくか、ということをかなり強く考えました。例えば、移動中にちょっと録画予約だけしたい……という時です。そのため、見た目ではわからないのですが、より素早く表示できるよう、EPGのキャッシュの仕組みは、torne mobileとそれ以外では変えています。

 素早く使う、という考え方であるため、torne mobileには、プレイステーション向けと違う点がひとつある。ネットワークサービス連携で「必須」となっていたPlayStation Network(PSN)のアカウントが、モバイル版では不要なのだ。現状、torne mobileには「ニコニコ実況連携機能」や「Twitter実況連携機能」がない。そのため、PSNログインが必須にならない上に、その方が「サッとつかってサッと終わる」にはいいだろう……という判断がなされている部分がある。

縦画面でtorne mobileを使った時の画面。下は大きく開く。現在は利用していないが、今後実況機能が登場した時には活用される可能性も?!

石塚:実況系などは、今後ぜひやりたいと思います。ただしその時には、プレイステーション向けではできていない「書き込み」のことも考えたいです。縦持ちで使った時は、画面に余裕も生まれますしね。この辺は真剣に検討した上で、やっていきたいです。

宮田:ビュワー的にはすでに対応が出来ているので、あとは今後の対応次第、ですね。

 なお、iOS版とAndroid版の間で機能的に差違はなく、スマートフォン・タブレットの両方に対応している。torneでは「メニューの階層を戻る」操作系が必須であり、プレイステーション向けでは「×ボタン」で対応している。Androidでは「戻る」ボタンで対応できるが、iOSには「戻る」ボタンがないため、画面上に一時的に「×」が表示され、それでカバーする。このボタンはAndroid版でも表示されるため、使い勝手の面ではOSによる差はない。

画面左端の「×」ボタンは、タップすると画面を一階層戻るためのものだ。もちろん、画面に触れていなければ表示されない

 なお、アプリは無料でダウンロードできるが、その時点では、ダミーの番組表が入っていて「torneの操作感」を体験できる、ある種の体験版のようなものだ。そこからテレビの視聴を行うには、アプリ内課金で視聴用のプラグインを購入する必要がある。これが500円なので、torne mobileの利用には、実質500円の費用がかかる。この他、UIのスキンを黒にする「トルネブラック」が300円で提供される。

torneらしい速度感が特徴、フルネイティブコードで開発

 EPGにも現れているように、torneの最大の特徴は「速さ」「快適さ」だ。この点も、torne mobileは継承している。開発途上版を触った感触では、残念ながら、PS4やVitaの速度と同じ……とまではいかないものの、現在スマートフォンなどで使える他のDLNA系アプリに比べると、ずっと素早い動作が実現されている。

宮田:画出しはできるだけ早くしたい、と考えました。DLNAの部分については、他のtorneと基本的な部分は同じです。一般的なDLNAがタイムコードベースでシークしているのに対し、バイトコードベースでシークし、位置についてもIピクチャーの場所を狙い撃ちで呼び出すようにしているのです。結果、他のアプリに比べ、画出しは素早いんです。

石塚:それでもまだ、他のプレイステーション向けに比べると遅い部分があります。それは、OSまですべて手を入れられるプラットフォームと、汎用のプラットフォームの違いだとご理解ください。機能制限として、現状では、torne mobileでは「早見再生」が実現できていません。

 とはいえ、筆者の目から見ても、torne mobileは、汎用プラットフォームの上でかなり「攻めた」作りになっている。例えば、映像の好きな場所へ移動するためのシークバー。各OSにはそれぞれ標準のものがあるし、Androidの場合、製品によって搭載されている標準の動画ビュワーが使っているものもあるが、torne mobileはオリジナルのものを用意し、より使いやすくしている。これは特にiOS版にて顕著だ。ソフトをどこまでいじれるか、という点については、そもそもAndroidの方がiOSより有利であり、実際開発する中では、iOSの制約で色々苦労した部分もあったという。

 もう一つ、速度のために開発チームがこだわったのは「ネイティブコードで書く」ということだ。

 スマートデバイス向けのソフト開発では、開発を容易にする目的から、様々な中間コードを使う場合が多くなっている。Androidはそもそも、ARTやDalvikといった仮想マシンを使うのが基本だし、近年は、Unityのようなゲームエンジンを使う場合も多い。こういったものを使えば、マルチプラットフォームで動作するゲーム的アプリケーションの開発の難易度はぐっと下がるが、どうしてもレイヤーが増えるため、動作速度の面では不利になる。ゲーム機向けに速度の面でこだわってきたtorneは、その差を気にした。iOS版もAndroid版もネイティブコードで書かれているのはもちろん、表示系もGPUを直接たたき、よりスピーディでリッチな動作を目指している。

 このことは、動作速度の面ではメリットとなるが、開発効率と消費電力の点ではマイナスになりやすい。GPUを使えば使うほど、SoCの消費電力は上がるからだ。

石塚:フルネイティブで書いたことによって、ゲームのもつヌルヌル感・サクサク感を実現しました。ビジュアルシーンサーチも同じように実装しています。

 こうやってGPUを叩くと消費電力が上がりやすいのですが、気を遣い、フルネイティブでありながら消費電力は最低限に抑えています。

再生対象は「モバイル向け動画」、再生機器の多彩さが悩みの種

 プラットフォームや機器による差違は、スマートデバイス向けを作る上でもっとも大きな障害である。「iOS版とAndroid版があり、どちらでも同じように使える」と書いたが、簡単なことではない。ネイティブコードで動作させること、そしてスムーズに動画を再生する上では問題になりやすい。

石塚:特にAndroidでは動作検証が大変です。大量のデバイスを用意して、片っ端から動作を確かめていきました。私は最初の1日くらいしか付き合わなかったんですが、宮田は……

宮田:200機種やりました。4、5日の間、とっかえひっかえ(笑)

 機器によって対応できる内容が異なることが、torne mobileでの「表示」の限界にもなっている。現在のバージョンでは、再生に使われる映像は、nasneが同時生成している、モバイル用のSD解像度(720×480ドット)のMP4形式のデータだ。すなわち、放送されているHD解像度のデータは再生できない。

 理由は、機器によって再生可能な形式が異なるためだ。一般的に、スマートデバイスでの動画再生には、SoC内部のデコードエンジンが受け持つ。ハード的なデコードエンジンは基本的に大きな差がないのだが、そこで「どのコーデックに対応するか」は、製品によって異なる。コーデックを使うには利用料が必要であり、すべてを搭載するのはコスト的に厳しいからだ。

 例えば、日本製であり、日本の携帯電話事業者から出荷されるスマートフォン・タブレットの場合には、テレビやレコーダとの連携が想定されるため、MPEG-2 TSやAVCのコーデックがサポートされている。しかし海外製スマホの場合、MPEG-2 TSには対応していない場合も多い。出荷後にそうした部分に手を入れることはできないし、デコードする機能は持っていても、アプリから自由に使えない場合もある。

石塚:例えば「Xperia Z3 Tablet Compact」などは、必要なコーデックすべてに対応していることがわかっています。しかし、多くのAndroidデバイスはそうではないです。iOS機器も、nasneのストリームそのままで対応できないこともわかっていました。

 正直、かなり「やってやろう」というつもりでいました。現在のデバイスは解像度が高くなっていますから、SDとHDとでは見栄えがかなり違います。他社のDLNAアプリの場合「このデバイスはOKだがこのデバイスはNG」と、ユーザーがもっているデバイスによって対応を変えているものもあります。しかしそれは複雑すぎて、我々が提示するものとは違います。現状は泣く泣く、SD解像度にしている部分があります。iOSの場合もやる気はあるのですが、できるのかできないのか、我々だけで決められない部分もあります。AndroidとiOSでは、違う悩みがあります。

 今後も継続して開発は続けていきます。スマートフォン系ならばなんとかなるのではないか……と考えているのですが、今後の課題です。

宮田:一番苦労しているのは、やはりビュワー部分です。特に、ARIBで規定されているデュアルモノ(音声多重)コンテンツの対応で苦慮しています。色々手を加えているのですが、iOSについては、最初の公開の状態では、主・副両方の音が同時に出てしまう状態になります。

 表示系について、まだまだ機種毎に問題を抱えているが、その上で、プレイステーション向けに近づけていくことが当面の目標となる。

PS4の「コンパニオン」にも。torneは「マルチプラットフォームありき」だった

 5年前はPS3版だけだったtorneの世界も、いまは大きく拡大している。PS3・PS4・Vita・Vita TVに加え、今回、iOSにAndroidと、6プラットフォームにまで広がっている。各機種のサポートにはそれなりの苦労があり、しかも、ネイティブコードで作るとなると、非常に大変なものに思える。しかし石塚氏は「みなさんが思うほど大変ではない」と話す。そしてそこからは、torne mobileが生まれた背景に話が広がった。

石塚:初期から、色々なプラットフォームに対応できるよう、ソースコードの管理を行なっていました。Vita版やPS4版もその成果です。GPUの扱いについても、PS3・Vita・PS4向けに同じようなシェーダを作り、同じように流し込んで対応できるようにしていたんです。今回のスマートデバイス版も、似たようなやり方で作っているんですよ。

宮田:一度動いてしまえば、意外と問題は起きなかったですね。UIを作り直す、という苦労はありましたが。

石塚:ゲーム機の場合メモリーの制約もありますからね。いまや、PS3などと比較した場合、スマートデバイスの方がメモリー量が多いですから……。

 この辺の話、実は筆者はある程度理解していた。オフレコながら、以前より、「開発のポータビリティを重視しており、ゲーム機以外への移植も不可能ではない」との話が出ていたからだ。実はtorne mobileも、本来はPS4版と同時に提供が検討されていたものだ。

石塚:モバイル版については、ずっとリサーチは続けていたんです。

 PS4版を作った際、コンピューティングパワーの拡大という意味では、PS3版から極端なエンハンスが難しい、ということもわかっていました。ならば、どういう要素を追加するのが良いだろうか……ということを考えていたのですが、そこで出てきたのが「コンパニオンアプリ」という存在です。

 PS4には、スマホアプリと連携する「コンパニオンアプリ」という機能がある。例えば、SCEが公開している「PlayStation」公式アプリは、PS4のリモコン代わりになる機能を持っていて、文字入力などが行なえる。ゲーム毎にコンパニオンアプリを用意することも可能で、ミニゲームの結果を共有したり、サブディスプレイとして活用できたりする。

 torne mobileは、PS4のコンパニオンアプリとしての機能ももっている。PS4側でまず連携操作を行なっておくと、その後、torne mobileトップ画面の「リモコン」ボタンを押せば、スマホやタブレットが「PS4版torneのリモコン」に早変わりする。

 従来PS4版torneは、PS4のコントローラー(DUALSHCK 4)からしか操作できなかった。PS3版にあったBluetoothの専用リモコンも使えない。しかし、今回torne mobileが登場したことで、リモコン問題に一定の解決策が示されたことになる。PS4がサスペンドした状態であれば、そこからの復帰も、PS4やDUALSHOCK 4に触れることなく、torne mobileのコンパニオン機能から行なえる。石塚氏も「自宅に帰ったばかりでコントローラーが目の前にない時でも、スマホから操作できる」とその利便性を強調する。コンパニオン機能については、テレビ視聴機能とは切り離したものであるため、torne mobile内でのテレビ視聴機能にお金を払っていない状態でも使える。すなわち「無料」でもいい。

 このように、PS4版と不可分であったモバイル版だが、諸事情により、同時の提供は難しかった。

石塚:まずなにより、PS4版の早期提供が求められていました。また、AnyTime Accessの準備も必要でしたし、iOSとAndroid版を同時に提供するのも難しい……という事情があり、モバイル版の提供は後日に、ということになりました。

 今回、5周年の時期が見えてきたので、ここで提供しましょう、ということになったのです。

 SCEの営業的な要望としても、「スマートフォンでどのアプリを使えばいいのかわかりづらい」という声があった。業界標準規格に対応しており、SCEのソリューション以外でも対応できる、という点は強みではあるのだが、わかりやすさでは確かにマイナスだった。元々のtorneのコードがそのまま横展開されていることから、torne mobileはやはり「torneそのまま」に近いことが、なによりも差別化点になる。「魂はなにも違いがない」と石塚氏も胸を張る。

 ソニー側はテレビやレコーダの連携のために「TV SideView」を必要としており、「テレビもnasneも」という幅の広さが求められていたが、SCEとしては「PS4連携」と「シンプルさ」が求められていた……ということになる。汎用のDLNAアプリやTV SideViewは今後も使えるため、複数の機器を同時に1つのアプリから使いたい場合には、torneではなくそれらのアプリを使うべきだ。PS3やPS4で提供されている、torneからソニーのレコーダを使う「レコ×トルネ」については、「まだそこまで手が回っておらず、対応できていない」(石塚氏)という。

 一方、nasne向けには、Android用に「nasne ACCESS」というアプリもある。こちらでもnasneの録画視聴は可能であり、だぶり感も指摘されるが、こちらは「パーソナルコンテンツ視聴が中心。一方、テレビが見れないのは不自然なので、テレビ視聴にも対応した」(石塚氏)という事情もあったという。iOS版nasne ACCESSが提供できていないことも、torne mobileの提供につながっている。

 torneが「多彩なプラットフォーム」に対応可能であることが示されたということは、さらに広がる可能性もあるのだろうか? 例えば、Androidを使ったテレビプラットフォームである「Android TV」や、Windowsはどうだろう?

石塚:現状では「興味はあるが、決まっていることはなにもない」というお答えになります。動かすことはできるでしょうが、操作系も見直しが必要でしょう。市場性なども考えねばなりません。

トルネフがしゃべる?! エンタメ企業の面目躍如

「テレビを見る」という機能面で、torne mobileはtorneそのものだ。だが、使ってみると色々小技が凝らされている部分もある。

torne mobileではトルネフがたびたび登場。面白い番組を教えてくれる役割を果たす
torne mobileのトル数ランキング。番組発見の助けになる機能だ

 例えば「トルネフ」。torneのイメージキャラクターとして知られるものだが、PS4版から、番組の告知などを行ない、利用者とコミュニケーションをとるようになった。torne mobileでもこの機能が搭載されている。ただし、PS4ではリアルタイムレンダリングで再現されていたトルネフも、消費電力低減のため、スマートデバイスでは「画像が下から表示される」感じになった。

 プレイステーション版では、録画量を「トル数」として計測して見せる機能があるが、torne mobileでも対応している。ただし、torne mobileでPSNへのログインは使わないため、自分の「トル」はスマホからは集計されないし、リアルタイムでの視聴数「ミル」も見られない。あくまで「トル数」を見て、番組を見つける助けとしているわけだ。

 また、PS4版には存在する「トルネフのアンケート」も、torne mobileには搭載されている。毎回お題に答え、その情報を見て楽しんでもらうための機能なのだが、PS4版とモバイル版では、違う点が1つある。

トルネフによるアンケート機能。PS4版譲りのものだが、モバイル版にはちょっとした仕掛けがある

 アンケートの利用量に応じて「ルーレット」を回せるようになっているのだ。その結果、torne mobile内部で聞ける「トルネフの声」がもらえる。トルネフの声は、PS4版登場の際に作られたプロモーションビデオに準じたものとなっている。「PS4版では、アンケートに答えていただいた方々に報酬を出すことが出来なかったので、ちょっとしたお返しのつもり」(石塚氏)だという。なお、ルーレットで商品、というと「課金」と思う人がいそうだが、この機能には一切課金要素はないので、ご安心を。

 もう一つ、torneでは恒例になった要素がある。

 テレビの「ダミー番組表」だ。テレビ番組表の内容には著作権があるし、時々刻々と変化するものなので、広告などに使うのは難しい。そこでtorneチームは、宣伝用画像やプロモーションビデオ向けに、毎回ダミーの番組表を作っている。これが無駄に凝っていて、密かに人気がある。

 今回、torne mobileでは、課金前にテストで使ってもらうための「ダミーデータ」として、アプリにダミー番組表が仕込まれた形で提供される。中身にはあえて触れないので、ダウンロードしたらぜひ楽しんでみていただきたい。

宮田:正直、ダミー番組表の内容でのダメ出しが大変だった。面白くないって言われるんですよ(笑)

石塚:面白くして当然でしょ。だって、我々はエンターテインメント企業なんだから!

 こういうところに凝るのが、SCEという会社の特徴なのだ。

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西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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