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コンシューマのためのPlayStation VR。開発2トップに聞く

SCE吉田修平氏、伊藤雅康氏インタビュー

 ついにPlayStaion VR(PS VR)の価格と発売時期が見えてきた。発売は10月、価格は44,980円だ。詳しい仕様や開発体制などについて、ハードウエア開発を担当する、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)PSプロダクト事業部長・ソフトウェア設計部門長の伊藤雅康氏と、自社ブランドのゲームソフト開発を統括するワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏に話を聞いた。

PSプロダクト事業部長・ソフトウェア設計部門長の伊藤雅康氏

 なお、両者には別々にインタビューしている関係上、似た質問もある。その点はご容赦いただきたいが、そこから見える解釈・返答の違いも興味深い。

PS4でできることはすべて「PS VR」へ

 まず伊藤氏に話を聞いていこう。

−PS VRというプラットフォームの位置付けを、改めて教えてください。

伊藤氏(以下敬称略):もちろんPlayStation 4をエンハンスするもの、という意味もありますけれど、我々としては新しいゲーム体験を作り出したいんです。ハウス(SCE・アンドリュー・ハウス社長)がプレゼンテーションで昔のプレイステーションからずっと紹介しましたが、今回のVRで、新しいゲーム体験をご提供したいと考えています。

PlayStation VRとPlayStation 4

−ゲーム体験を良くする、という意味合いでは、「酔い」とか「安全性」であるとか、VRはまだまだ未知の部分があります。それを解決するために、プラットフォームとして何をやらなければいけない、と考えていますか?

伊藤:一つは「酔い」の問題です。これはハードウエアで酔いを軽減するために、例えば120Hz駆動の要素を入れたり、パネルを有機EL(OLED)に変えたりだとかやりましたが、それだけでなくて、実際にVRタイトルを作っていただいているデベロッパーたちとともに「こういうシーンはいい」「こういうのは酔うから止めたほうがいい」という対話をしながらやっています。

 それから安全性の面については、完全に目の前を塞がれてしまうので、壁にぶつかる可能性もあります。そこでPlayStation Cameraを使い、カメラの視覚の範囲外に出たらワーニングが出るようにしています。今、そういう部分をやっています。

PlayStation VR

−カメラを自分のポジショニングだけでなく、安全性を高めるためのセンサーとしても使うわけですね。

伊藤:はい。

−(PS4の画面をそのままPS VR内に大スクリーン感覚で表示する)「シネマティックモード」は非常に面白いと思いました。

シネマティックモードの選択画面。3つのスクリーンサイズを選択できる

伊藤:あれはプロセッサーユニットの側で処理しています。シネマティックモードの場合には、PS4の側はVRであることをケアする必要はありません。

プロセッサーユニット

−大きい画面を用意できない人や、寝っ転がってPS4を遊びたい人にも選択肢になりうる、ということですね。

伊藤:そうです。我々はゲームが最優先ですが、いろいろな機能をもたせています。今のPS4もそうですよね。PS4で実現できているものは全てVRで実現できるようにしたい、と考えて実装したものです。決して「オマケ」というわけではなくて(笑)。

−あくまでVR空間の中に大画面がある、という形になっていますよね。PS VRというVRデバイスの中に「PS4がある」という考え方なんですね。

伊藤:その通りです。

−もともとPS4はVRを想定して開発されていた、とのことですが……

伊藤:もちろんPS4を最初に設計した時には、VRの細かい仕様ができていたわけではありません。「将来的にこういうものがあればいいな」という想定で開発した部分があるのですが、そこからPS VR上にPS4の体験を持っていくには……ということで、アーキテクチャを色々考えました。

−VRとしてみると、PCの方では解像度やフレームレートが上がり、フレームドロップも許されず、パワーを必要とする方向にきています。PS4はゲームコンソールとしてはパワフルですが、未知のあらゆるコンテンツを想定できるほどに高い能力があるわけではない。では。VRにパワーがもとめられるようになっていることと、PS4の固定化されたハードウエアとの関係は、どうなると考えていますか?

伊藤:PS4というデバイスで実現できる最高のVR体験がなにか、を考えています。

 ゲームについては、ある程度やりようがあるんです。グラフィックスの問題ですから、PS4に合わせたものを作ることはできます。ただ、ビデオカメラで撮影したような映像になると、恐ろしく高解像度なものを入力される可能性もあり、解像度が足りない可能性も増えてきます。それを今のPS VRで映すにはどういう技術が必要なのか。例えばスティッチング(筆者注:映像・画像をVRに合うよう、つなぎ合わせる作業)をどうしたらいいかとか、そういう工夫で、今のPS4でも十分見れるものを作るにはどうやったらいいか、という開発・研究はやっています。

−例えばスティッチングについては、写真を入れればPS4の中でスティッチングしてVRにする、といったアプリケーションも検討されているのですか?

伊藤:そうですね。ただ、もちろん容量的には厳しくなりますけどね。

−VRフォトやVRムービーにも対応する、とのことですが、あれはPS4のメディアプレイヤーがそれらを見る機能を持つ、という理解でいいのでしょうか?

伊藤:はい、その通りです。その先として、新しいVRシアターなども考えられるかもしれません。

Media PlayerがVRフォトやVRムービーに対応
Media Playerの通常再生時

「コンシューマ」のためのVRを!

−PS VRのタイトルは、椅子に座って自分が大きく動かない、という性質のものが多いように思えます。

伊藤:やはり、広い空間で……というのは、すべての家庭で実現できるわけではないですしね。今回危険性ということもあって「座って」というプレイを推奨していますが、ライセンシーの方とも「座ることを推奨したゲームを開発してください」ということでお話はしています。PS VRとしては、「狭い空間でもできる」というVR体験を目指したいです。

−気をつけるべきところは?

伊藤:やっぱり「酔い」だとは思いますね。普通の画面でのプレイと同じ感覚で作るとすごく酔うものになります。今までの作り方ではダメなので「こういう風に変えた方がいい」というのは、デベロッパーとやりとりしながら作ってきました。

−中央視野を厚く演算して効率を良くする、といった要素もありますが、これはPS VRのSDKには含まれているんですか?

伊藤:入ってます。提供しています。

−ゲーム向けの能力としては、1080pのステレオペアを用意するのは、パフォーマンスとしては問題なさそうですか?

伊藤:おそらく問題ない、と思っています。PS VR向けだからレベルを落とさなくてはいけない、ということもありません。実際PS4のゲーム開発をしていただいているところは、1080pの画質で作っているわけですから、そこから若干、VR空間を実現するための要素を入れてもらっている程度なので、「パフォーマンスが足りない」という話はないです。

−PS VRは本質的にディスプレイです。やろうと思えばPCにもつながる。CPUやGPUが搭載されたものを「プラットフォーム」と考えてきましたが、PS VRのような存在を「プラットフォーム」と規定することもできます。PS4以外への展開の可能性はありますか?

伊藤:具体的にその意識はしていないです。我々の強みは、PS4につながるところだと思っていますので。ただ、将来的に、例えば「4Kに対応しなさい」という話になったような場合、PS4のスペックでは足りないところも出てきますし、「PCとつなげるとしたらどうだろう」とは考えたいな、と思います。

−あのデザインが発表されて1年。ハードには大きな変化はなくきているわけですか?

伊藤:そうですね。酔いの問題をかなり長きにわたって議論してきていまして、ハードのチューニングもしてはいるんですよ。より軽く感じられるように……だとか。ハードウエアとしては変わらず進めています。

−完全なコンシューマが使うことを前提としたHMDだな、という印象が強いのですが、相当議論はされたようですね。

伊藤:はい、しました、すごく(笑)。ユーザーテストも何回も繰り返しているんですよ。取説も何も見せずに「つないでみてください」と言ってできるか、とか。実際、まずは「つなげなかった」んですよね、ほとんどの場合。じゃあそれをどうやって改善していくか、結構議論したところです。今のセットであれば、ある程度一般の方に使っていただけるだろう、そこまでは持っていけたかな、と思っているのですが。

−今回ソーシャルデモなどもありました。コミュニケーション要素はPS VRの中でどういう位置付けになりますか?

伊藤:今のPS4にもチャット機能はありますし、ネットワーク対戦でコミュニケーションする要素もあります。それはVRに特化したわけではなく、PS4の要素の一つです。それを「VR特化するとどうなりますか」ということで開発したのが、一つの形かと思います。現在のPSNの「フレンドログインの通知」や「トロフィー通知」も、VRの中で普通に出ますよ。将来的には「VR向けのソーシャル機能」が盛り込まれる可能性はあります。なので、ご参考としてあのデモを展示させていただいたんです。

SCEが今回初公開した「ソーシャルVRデモ」。画面に映るキャラクターはすべて別々のPS4+PS VRからログインした人々で、実際に動きながら対話できる。

−価格はどういうプロセスで考えていますか?

伊藤:たまたま我々が(メジャーHMDの中で)最後に発表させていただいたんですが、別にあの価格を見て決めたんじゃないんですよ。最初から価格イメージはある程度決めていて、あの価格でやろう、プレイステーションなので399(ドル)、という意識で開発していました。そこにあった設計はしていますし。

−プレイステーションは長く使われる間に価格改定なども行ないますが、PS VRも同様である、と?

伊藤:はい、将来的なリファインはもちろん考えています。やっぱりプレイステーションというと(手振りをしながら)こう、下がっていく、というご期待はあろうかと思いますから、そういう風に設計してはいます。まずはこの価格でいち早くお楽しみいただきたい、と期待もしていますが。

「1080p」世代のPS4に特化した、最適なVR機器を

 次は吉田氏だ。吉田氏には、実施的な「SCEのVRの顔」としての部分と、ワールドワイドスタジオ(WWS)の役割、両面からお話を伺った。

ワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏

−価格、意外と前向きにとらえられているようですね。

吉田:日本ではまだVRへの熱は弱いか、と思っていたのですが、この時点での反応としては悪くないな、と思います。

−基本みなさんの反応はポジティブですよね。

吉田:やはり、みなさんが期待していた価格帯に収まったからではないでしょうか。
 我々もアンディ(アンドリュー・ハウス社長)も、「絶対にこの価格ありき」では作ってきていないんです。技術的にクリアーしないといけないものを満たし、「PS4がより楽しくなるもの」を前倒しで実現してはいます。しかし、なんとか「このくらいかな」という値段に抑えることができたのは、まあ、良かったな、と思っています。

−いかにいい体験を作るかがポイントかと思います。

吉田:やはり「酔わない」体験は重要です。ハードのシステム的に言えば、絶対にクリアーしなければいけないハードルがあります。マイク・アブラッシュさん(筆者注:アメリカの伝説的ゲームプログラマー。Quakeを開発、その後、Microsoft、Valveなどを経て、現在はOculus VRのチーフ・サイエンティスト)もずっと話していましたよね。リフレッシュレートが高くて、Low parsistency(映像の切り替えが素早い状態)でレイテンシーも低くて、というような。そういうところは絶対にやらなければいけない、というわけで、120HzのOLEDが来るのを待っていたんです。

 我々はPS4がベースです。PS4は1080pで60Hzもしくは30Hzの世界です。だから「1080pで最高のシステムを作るにはどうしたらいいのか」ということで、PS VRは120Hzで回しながら、パネルとしてはサブピクセルをいっぱい入れることにしました。他社さんのものと比較すると「他社の方が解像度が高い」と言われますが、サブピクセルで計るとウチの方が多いんですよ。

PS VRの設定画面

−要は、輝度を稼ぐために緑の画素だけが多いパネルよりは、均等にサブピクセルが配置されたものの方が……

吉田:そのやり方がダメ、とまでは言いませんが、1080pの世界を一番ゴージャスに見せるには、緑画素だけじゃなく、すべての画素をちゃんと用意すべき、ということです。そのために、特別にパネルを作ったんです。

 コンソールビジネスとして、そんなに毎年毎年変えられるものじゃない、長い間つかってできるだけ数多くの機器を販売する、という考え方の中で、その時に得られる最高のものを採用しよう、と。ですから基本的な性能の部分はクリアーできた、と思っています。今年出る機器としては。

 ただ、体験はその上に来るものですから、作り方でいかようにも「気持ち悪くなる」体験になり得ます。そこから先はデベロッパーの知見をためて実験している、というところです。

 今回のVRDCに行ったら、「セッションに入れない」とかいう状況です。私も一つのセッションはオーバーフロー・ルームでみましたけど、そこですら見れず外で見ている人がいたりもしました。運営としてどうか、はともかく、それだけたくさんの人が、欧米でVRの開発をしていて、すでにやっている人々の知見を吸収したい、と思っている、という希望から、ああなっているわけですよね。それはすごいことだし、嬉しいことです。

−VRのいい体験をする、という意味では、基本的なところがまだ浸透していないんだな、とも感じました。

吉田:してないですね。やっぱり、やってみないとわからないんですよ。どんなにゲームのベテランでも、同じところで引っかかるんですよ。自分が真剣に取り組み始めるとやっとわかってくる。そして、その解決方法がいっぱいあるんだな……というのを、いろいろな会社が試していて、それをそれぞれ発表しているのは、とてもいいことです。

 日本人でもセッションに来て情報を吸収する人が多くいる、というのは嬉しいことだし、これもとてもいいことですよね。

−今年のGDCはモバイルがちょっと落ちていますが、その分VRがふえて、日本からの参加者もかなり見かけるように思います。

吉田:そうですね。日本のモバイルパブリッシャーの方々も、VRにはかなり積極的です。

−PS4+PS VRと考えた時、PS4のパフォーマンスがPCと比較してどうか、という部分もあります。PCの方は、解像度もフレームレートもあげていっていますよね。

吉田:解像度は逆のアプローチですね。解像度は1080pのままあげないで、フレームレートだけを上げるアプローチになります。でも、60Hzを120Hzにする道も、90Hzで動かす道も用意しました。高ければ高いほどいいですけど、むしろ1080pで止めることによって、快適な体験をある種保証するわけです。

 コンソールのデベロッパーというのは、常にパフォーマンスを稼いでいますよね。大きなスタジオなら自分のエンジンをずっとチューニングし続けていますし、ミドルウエアを使う会社も増えて、彼らもパフォーマンスを重視しています。ミドルウエアの会社がパフォーマンスをあげてくれれば、ものすごく多くの会社が助かります。そうした会社と組んでチューニングしていただけるか、サポートする部分が大事だと思います。

−プレイスタイルとして、PS VR向けは椅子に座るものが多いです。PS VRとしてこの形を推奨しているわけですか?

吉田:その部分はありますね。我々はまず「プレイエリア」を想定しています。PlayStation Cameraの視野角で決まっているのですが。カメラから何メートル先のホームベース状の中、みたいな情報を、デベロッパーのみなさんにも提示しています。システムの中にも組み込まれていて、ヘッドセットがそのエリアから出た時は警告が出ます。Valveのもののように、危険なエリアに仮想の壁が現れる、というものほど洗練はされていませんが。プレイエリアはわかるので、安心につながると思います。その情報はデベロッパーに提供していて、その中で安全にプレイできるように、というお話をしています。

−気になったことも。PlayStaton Moveは、カメラの角度によっては、上下の位置が検知範囲を出てしまう、という問題があります。OculusやValveのシステムに比べ、制約は感じました。

PS Moveの利用イメージ

吉田:ハードからくる制約はあるんですが、ソフト処理で回避できる部分もあるんですよ。カメラが見えなくなっても内部センサーはありますので、そっちに乗り換えてうまく処理する、というノウハウがあります。

 似た問題として、体が横や後ろを向いてしまった結果、コントローラーがカメラから隠れてしまう、ということもあります。それは、バーチャルな世界で「カメラはこっちだよ」と教えてあげることが、ノウハウの一つとなります。

−センサーとハードルとプレイ環境の情報を共有することが重要、という話ですね。

吉田:何メートルまで動ける、といったカタログ的な競争も大事なのですが、ゲームデベロッパーは常に限られたハードリソースの中で良いものを作る、という競争に慣れています。特にコンソールのデベロッパーはそうです。PS VRが彼らのビジネスにとって大事なものであると認識されれば、その中でベストな体験をつくってくれる、と私は思っています。

技ありのシネマティックモード、PS1の興奮を再び

−シネマティックモードが搭載されると、PS4にも新しい影響が反映されるような気がするのですが……。

吉田:PS4の体験が、ほぼ全部できますからね。そういう影響が出てくる可能性はありますね。

 私もこの1週間くらい、ずっとシネマティックモードでPS4を使っているんです。もう、映像を見るのがめちゃめちゃ楽しいです。2時間の映画を1本まるごと見ましたが、周りが真っ暗な中に巨大なスクリーンがあるので、すごく集中できるんですよ。普段テレビがあっても、あの周囲にはいろいろなものが置いてある。あれで気が散っているのかな、というのが、使うとわかるんです。

 ゲームは色々やりましたが、FPSで動きが速いものって、ちょっと気持ちが悪くなるものもあります。ただし、もうちょいっとスローペースなアドベンチャーはいい。私は今「Firewatch」というアドベンチャーにはまっています。あと「Outlash」。Outlashはめちゃめちゃ怖いですよ。画面の周りが黒くなって没入感が増すので。

 気が利いたデベロッパーさん、特にインディーの方などは、そんなプレイ方法を推奨してくるかもですね。VRのための作ったゲームではないけれど、ああいうモードを使うとさらに楽しめる、というね。

ポジションセッティング

 リモートプレイの時もいったんですが、お家の大きなテレビがふさがっている時も、あれがあればプレイできますよね。場合によっては、家族に知られたくない映像を見る、とか。その時は、忘れずにテレビの方をオフにしておかないと、全部見えちゃいますけど(笑)。そういうこともできるな、とは思います。

 少し補足をしておきたい。

 シネマティックモードは、「解像度」の体験としては横が960ドットしかない。だから、映像の解像感も落ちる。よく見ると粒状感は見えてくる。解像感重視で映像を見る、ゲームをするなら、ベストとは言えないように思える。しかし、過去の非VR型HMDと違い、本当に「数メートル先に巨大なスクリーンがある」ように見える。ソニーのHMZシリーズやグラストロンも同じ言い方だったが、率直に言って「目の前数センチに数インチの画面」というニュアンスを超えるものではなかったが、これは違う。

 しかしシネマティックモードの場合、本当に映画館に一人でいるような感覚になる。真っ暗な映画館、という感触が強い。コンテンツによっては酔うことも否定してきれないため、画面の画角を大きくしてプレイすると、少々酔いやすくなる。画角が90度と最大になる「L」はそういうゲームには向かないので、他に「M」「S」と3つの画面モードが用意される。これも、「映画館のスクリーンが小さくなる」感覚だ。

 この没入感と自然さは素晴らしい。

 なにより、ソファなどに「ゆったり」腰掛けて楽しむのに向いている。非VR系HMDは、リラックスして首が動くと映像もついてきてしまったが、PS VRのシネマティックモードは違う。映画館でソファに沈み込んだ時と同じ感覚になるのだ。

 この体験には、解像感とは別の軸の良さがある。

 同様の機能はGear VRなど先行するHMDにもなくはないが、あくまで「そういう機能を持つ動画プレーヤー」だったりする。PS4の全機能が「リラックス向け」に成ってしまうPS VRとは、ベクトルがかなり異なる。

 なお、シネマティックモードではカメラは位置把握に使わないので、カメラがない場所でも使える。

シネマティックモードはソファーで体験するが、思わず前のめりになる体験者に「リラックスして、もたれかかっていいよ」と声をかけられる。VRとはだいぶ違う体験だ

−日本からの、シネマティックモードに対する反響が大きいんですよ。

吉田:日本の家庭は狭いですしね。これならテレビつけなくても済みますし。

−WWSとして作っていくVRタイトルは、どう考えていますか? もちろん、具体的なタイトルとしては、発表済みのものもそうでないものもあると思いますが。

吉田:我々の役割としては、VRに限らず、「システムでできること、どんな楽しいことができるかを、実際の例として示す」というものです。ですから、ソーシャルスクリーンのアイデアを生み出したJAPAN Studioや、The London Heistを作っているロンドンスタジオが、「こんなことができますよ」と提示してくれるわけです。The London Heistを見て映画会社の人がインスパイアされ「インタラクティブストーリーをやりたい」という話もありましたし。そういう役割を率先して担っていきます。

「ソーシャルVRデモ」を用意しましたが、いかがでした? 面白かったでしょう?

−確かに面白かったです。

吉田:あれを見せたかったのは、「ゲームのロビーがああなっていたらどうだろう?」ということなんですよ。VRの持つ可能性を他のデベロッパーに知っていただくことが役割と思っています。

 でも、それはあくまで「私」の立場としてのものなので、実際それぞれのチームで取り組んでいるのは、「新技術で新しい、面白いことができるチャンスである」と思って作っています。

 だから、WWSでVRゲームを作っているチームは、みんな楽しそうですね。しかもスピードが速い。AAAタイトルだと3年・4年、大人数でかかるものが、本当に少人数で、短期間でどんどん機会を出していける。

−PS1の時に近いですね。

吉田:近いですね。面白いことが出てくる量とか、新しい動きがどんどん出てくる感じとか。PS1の頃を思い出しました。ゲームそのものも、ゲームの周辺にある事象も、面白くしていける感触があります。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
 メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」を小寺信良氏と共同で配信中。 Twitterは@mnishi41