小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第805回
3カ月経っても話題作に追いつける! 時間がない人のための全録DIGA「DMR-UBX7030」
2017年5月24日 08:50
テレビを再発見する
以前“テレビを壁掛けにする”というを書いた。さらにソファも新調し、テレビを見ながらゴロ寝生活ができるようになった。
こうして環境が整っていくと、これまで時間がなくてなんとなく見なくなっていたテレビも、見るようになる。最近はテレビドラマ復活の機運が高まり、確かに一時期よりもレベルが上がってきたと思わせる作品が増えてきた。つられて音楽のヒット曲もまた増えてきている。今さらながら、テレビの底力を再発見しているところである。
さてそうなると、今度はどうしても効率を求めたくなる。ドラマな気分なのにバラエティしかやってないと、なんだよー的な気分になる。かといって録画ドラマが溜まっていくと、なんだか宿題が溜まっていくような気がしてしまうし、そうなるとテレビからの情報を、自分のやり方に合うように効率的に処理するのためのレコーダがいるよね、という話になってくる。
今回ご紹介するパナソニック「DMR-UBX7030」は、7TBものHDDを備えた全録春モデルの最上位機種だ。最大10ch/28日間の全録が可能なほか、ドラマだけは90日間保存できる「ドラマおとりおき」機能を搭載した。「この仕事の山を越えれば見るぞ!」と思ってたら、いつの間にか消えてた、という人も、3カ月はお楽しみの猶予期間があるというわけだ。
5月19日より発売が開始された新モデルは、「DMR-UBX7030」、「UBX4030」、「BRX2030」の3モデル。店頭予想価格はそれぞれ、23万円前後、16万円前後、9万円前後となっている。同時録画チャンネル数とHDD容量は以下の通り。
型番 | DMR-UBX7030 | DMR-UBX4030 | DMR-BRX2030 |
チャンネル録画 | 10ch | 6ch | 6ch |
HDD | 7TB | 4TB | 2TB |
UHD再生 | ○ | ○ | - |
HDMI出力 | 2 | 2 | 1 |
価格 | 23万円前後 | 16万円前後 | 9万円前後 |
Ultra HD Blu-rayの再生にも対応した文句なしの最上位モデルを、さっそく使ってみよう。
やや高級感が後退したボディ
ボディデザインは、DIGAお馴染みの両サイドが斜めにカットされた独特のスタイルは継承されている。いつもの感じ、ではあるのだが、今回は天板にも斜めのテーパーが入っている。それがどうも、フロントパネルに至るまですべてがアクリルのピカピカ感に包まれており、妙に安っぽい印象を与える。
7TB、UHD BD搭載で実売20万円台は安いとは言えるのだが、特にUBX7030の購入者としては「20万も出したのになぁ……」という残念感は否めないのではいだろうか。最上位機種はもう少しシックな質感でいて欲しかった。
上部の電源とイジェクトボタンは、物理スイッチではなくタッチ式。全録モデルではないDIGAは物理スイッチだが、全録モデルは昨年のBRX7020に引き続き、タッチ式の採用となった。
フロントパネルの中の配置は、7020とほぼ同じ。ただしBlu-rayドライブがUHD Blu-ray再生対応となっている。チューナとしては11ch搭載。そのうち最大10chを全録として使用できる。
HDDは3TB+4TBの合計7TB。10chを最大28日間保存できる。ただしユーザーは内部2台のHDDを意識する必要はなく、全体で7TBという認識で十分だ。チャンネル録画モードは、DRから15倍までを選択できる。
背面を見てみよう。通常のHDMI出力に加えて、音声出力用のHDMIをもう一つ備えているあたりは、上位モデルの面目躍如といったところか。UHD BD搭載と相まって、もう一度ホームシアター頑張ってみようかなという気にさせる。外付けHDD用のUSB端子も2系統。通常録画用とチャンネル録画用に別れている。
リモコンは7020のものと変わらない。ボイス操作や、モーションボタンを使っての画面上操作に対応している。
ドラマの一気見に対応
ドラマ好きなんだけど忙しい、そういう人が陥りがちな問題が3パターンある。1つ目は、ネットで話題のドラマを知ったんだけど、すでに何話か過ぎ去ってしまって、最初の話が分からないから入り込めないというパターン。何か自分が知らない事があるんじゃないか、そういう不安を抱えては楽しめないタイプだ。
2つ目は、わりときちんとした人にありがちなのだが、話題のドラマを始まるまですごく楽しみにしてたのに、忙しくて1話目を見逃してしまい、それ以降やる気を失うパターン。
3つ目は、話題なのは知ってて、全部放送が終わってからGWや夏休み、正月休みに家に引きこもって一気に見ようとしたが、すでに最初頃の話は自動消去されてしまって悔しい思いをするパターン。
一般的に全録は、HDD容量と録画画質との兼ね合いにより、保存できる日数が決まる。その保存日数が過ぎると、あとは順次古いものから消えていく。通常ドラマの1クールは3カ月なので、少なくとも90日は保存期間がないと、自動で録ってるから安心というわけにはいかない。だから通常は、とりあえずチャンネル録画されている番組を手動で通常保存領域に移さないといけなかった。
この春モデルから搭載された「ドラマおとりおき」機能は、この問題を解決する。チャンネル録画された番組のうち、「19時~22時59分の間で放送される」「地上波」「ドラマ」という条件に当てはまるものは、別領域に保存される。
HDDの中は、通常はチャンネル録画領域と通常録画領域で分け合っているが、この春モデルからは第3の領域「ドラマおとりおき」領域という部分が確保されている。上記の条件に該当するドラマはそこにチャンネル録画され、その容量が満杯になるまでは保存される、という仕掛けだ。
おとりおき用の領域は、340GB、540GB、800GBの3段階にセットすることができる。仮に1日あたり平均3時間のドラマが保存されると仮定すると、それぞれおとりおき期間は約30日、60日、90日となる。
またこの領域に保存された番組は、自動でスマホ持ち出し用に番組を自動エンコードするよう設定もできる。持ち出し画質は、150kbps(180p)、650kbps(360p)、1.5Mbps(360p)、1.5Mbps(720p)の4段階にセットできる。
基本的には初期設定ですでにおとりおき機能はONになっており、HDD容量800GB、持ち出し作成は650kbpsにセットされている(BRX2030は除く)。買ってからほっといても、一応おとりおきはされる仕組みだ。ただしおとりおきのHDD領域を変更したい場合は、早めに設定しなおしたほうがいいだろう。
スマホ視聴が標準に
テレビドラマの視聴は、選択肢が多様化した。昔ながらのレコーダとテレビの組み合わせに頼らずとも、今はNetflixやHulu、Amazonプライム・ビデオなどで見てしまうという人も多いだろう。つまりドラマスクリーンはもはや、テレビよりもスマホに移ったと言っていい。
レコーダで録画したドラマの視聴も、同じルートのほうがユーザーには利便性がある。レコーダの宅外視聴やスマホ持ちだしは、もう数年前から各社ともに力を入れている部分だ。だが細かいところで差が出始めている。
ユーザー側としての大きなポイントは、宅外リモート視聴を利用するのに、無料なのか有料なのかという点だ。パナソニックでは、視聴アプリ「Panasonicメディアアクセス」とClub Panasonic IDがあれば、無料で宅外視聴できる。他社の場合は、有料のプラグインや視聴アプリそのものを購入する必要がある。
有料とはいっても500円~1,000円程度なので、まあ社会人にとってはいくらもしない金額ではある。ただユーザーとしては、有料では「使ってみようか」という心理的ハードルは大きく、なかなか普及しない。普及しなければ、新しいビジネスとしての展開もない。
宅外視聴をマニアしか使わないオプション機能と見るか、標準機能として製品価格の中に入れてしまうかというスタンスの違いがあるという事だろう。
一方で通信を使わず、番組を転送して持ち出すという機能も改善された。例えば飛行機や新幹線の中など、通信機能が使えないところで視聴するには、番組持ち出ししかない。ネットの時代とは言え、意外に外せない機能なのだ。
ところが昨年秋までは、転送の際、無料では1.5Mbps(360p)しか使えなかった。他にも1.5Mbps(720p)と650kbps(360p)というモードがあったのだが、それらは有料会員しか使えなかった。
一方この春モデルでは、すべてのモードが無料で使えるようになった。さらに転送スピードと転送容量を節約する150kbps(180p)モードも追加されている。
ドラマおとりおきで録画されている複数の番組は1つのフォルダにまとまっているが、持ち出しではフォルダごと転送できるようになった。つまり複数回の転送も、一度の操作で可能になっている。
音楽再生に使う人が意外に多い?
意外なところでは、昨年秋モデルで搭載した音楽再生機能がかなり利用されているというところだろう。パナソニックの愛用者アンケートによれば、DIGAでの音楽CD再生は23.1%、音楽CDのリッピング機能は19.9%のユーザーが利用しているという。
考えてみれば、ノートPCからもCDドライブがほぼなくなった今、一部の高級専用プレーヤーを所持している音楽ファンを除けば、今やCDを再生する機器自体が手元にない家庭が案外多いということだろう。そんなところに、「あれ? レコーダで再生できるじゃん!」という気づきがあったのかもしれない。
さらに、音楽を最高192kHz/24bitにアップコンバートして出力する「ハイレゾリマスター」も搭載されている。音楽CDを再生する場合は、HDMI出力時で最大176.4kHz/24bit、光デジタル出力時は最大88.2kHz/24bitとなる。光デジタル出力も備えているので、ハイレゾ対応DACと組み合わせて楽しむというのもありだろう。
総論
全録レコーダといえば、やることはとにかく全部録るだけなので、そもそもあまり説明するような商品ではない。これまではメニューの使い勝手とか番組の検索方法で各メーカーの使い勝手が出る程度だったわけだが、今回の全自動DIGAは、昨今好調なドラマ、これにフォーカスをあてて自動的に手当してくれるという方向に出た。
考えてみれば、「録って」「転送して」「見る」という一連の流れは、ルーチンワークである。ということは、当然省力化の可能性があるということだ。これまでレコーダの学習機能というのは、番組の好み学習程度にしか使われてこなかったが、今後はA.I.を武器に、ユーザーのルーチンワークを自動化してくれるという道も考えられる。ユーザーは、スマホがあれば、それがネットサービスなのか、自分ちのレコーダなのかを考えずに、単に検索から行き着くという世界が近づいて来ているのかもしれない。
そもそも、ソニーやシャープに現行の全録機はなく、東芝にはあるがHDD容量やUHD BD対応など、新要素のパワーではDIGAの方が強い。次の世界に一番近いところにいるのが、今のところパナソニックの全自動DIGAなのではないだろうか。
パナソニック DIGA DMR-UBX7030 |
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