小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第815回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

究極のお風呂テレビ!? 全録+防水のプライベート・ビエラ「UN-15TDX7」を試す

プライベート・ビエラとは言うが……

 ワイヤレス伝送するテレビというコンセプトの最初は、2000年発売のソニー「エアボード」ということで間違いないだろう。そこから同コンセプトでいくつか後続製品が出たが、最終的にはモニターのない「ロケーションフリー」という製品に進化。ただそれも3世代で終了してしまった。

プライベート・ビエラの新モデル「UN-15TDX7」

 チューナ部が別体となったワイヤレステレビというコンセプトは、他社に継承された格好だが、パナソニックでは、防水のワンセグテレビとして「ビエラ・ワンセグ」を2009年に商品化した。その後2012年には、DIGAにワイヤレスモニタをプラスするという格好で、「DIGA+」を商品化。つまり“チューナ+モニター”から、“レコーダ+モニター”という形になっていったのが2012年頃から、というわけである。

 2014年には再び“チューナ+モニター”の「プライベート・ビエラ」というブランドを立ち上げたが、翌2015年には同じ「プライベート・ビエラ」ながらも“レコーダ+モニター”というスタイルになっている。この時点で「DIGA+」と「プライベート・ビエラ」が合流したという事だろう。

 そして今年、プライベート・ビエラの新モデル「UN-15TDX7」が投入される。価格はオープンプライスで、実売は13万円前後。レコーダ部には、普通の予約録画型ではなく、全録機となったのが新しいポイントだ。

 防水機能もそのままで、究極のお風呂テレビ登場というわけである。早速試してみよう。

デザイン一新のモニター部

 さて本機はモニター部とレコーダ部に別れているが、大きくデザインが変わったのがモニター部なので、まずはここから先に見ていこう。

 型番が示すとおり、ディスプレイ部は16:9の15型だ。この15型というサイズが絶妙で、大型化してきたテレビからすればかなり小型、タブレットからすればかなり大型というサイズ感である。解像度は1,354×760ドットと、フルHDを下回る。だが背後に全録機が控えていることを考えれば、表示側で画素が詰まることで、高圧縮録画モードでもSN比が上がるというメリットもある。

新しい工夫が目立つモニター部

 特徴的なのは、脚部だ。一見するとA字型の脚部に見えるが、実はこの脚部が180度開脚する。つまりモニターの周囲を囲うようなフレームとなり、フックに引っ掛けて好きなところに吊り下げられるだけでなく、落下時のプロテクターにもなる。

かなり柔軟に角度が変えられる
大きく足を開いてハンドルに

 もちろん通常の床置きした場合でも、垂直から水平まで角度が変えられるほか、脚部のアームにはゴムリングがつけられており、お風呂場のタイルの上でも滑らないように工夫されている。やはり防水仕様であるからには、お風呂で使いたいというニーズは高い。そこに応えた格好である。

 モニター表面はタッチスクリーンとなっており、水に濡れた状態でも誤動作しないような工夫がされている。

 モニターの底部には、下向きにスピーカーがある。このままでは音が下向きに出てしまうので、アクリルカバー部を少し前方に丸め込むような格好で、音が前に出てくる工夫もされている。水抜きの穴もあるので、ここに水が溜まって、お風呂から部屋に持っていったらビショビショ、という事にはならない。

底部にあるスピーカー
背面には大きな指がかりがあるので、持ち運びは楽だ

 充電は専用のACアダプタで行なう。充電時間は約4時間で、およそ3時間半の視聴が可能だ。水回りで使用する際にはACアダプタを抜き、キャップをしっかり閉めておく必要がある。防水保護等級はIPX6/IPX7相当で、「あらゆる方向からの強い噴流水による有害な影響がない」、「一時的に一定水深に水没しても内部に浸水しない」という保護性能となる。

充電は専用ACアダプタ
かなりがっちりしたフタを閉める必要がある

 本体の方も見ていこう。従来プライベート・ビエラの本体は、レコーダ機能があるとはいっても基本的には「テレビ」だったので、ハーフラックサイズの小型ボディだった。だが今回はチャンネル録画(全録)機能搭載ということで、機能的にほぼ全録DIGAと同じである。したがってボディサイズも一般的なDIGAと同サイズとなっている。

本体サイズはもはや普通のDIGA
電源とイジェクトはハードウェアボタンで実装

 チャンネル録画では、最大6chの自動録画が可能。ただしBS/110度CSは最大5chまでとなる。中身は4ch + 2chに別れており、Netflixなどストリーミング視聴をすると、その間は後の2chの録画が止まる。

B-CASカードスロットは二段

 内蔵HDDは2TBで、本体にはBDドライブも搭載し、市販ディスクをワイヤレステレビで楽しめるほか、一般的なレコーダ同様テレビ番組をBlu-rayに書き込んだりという作業もできる。

Blu-rayドライブまで搭載

 背面に回ってみよう。RF入力は地上波/BS/110度CSの混合波。一般録画用またはチャンネル録画用として、USB HDDを増設できる。HDMI出力は1系統だが、4Kへのアプコン出力も可能だ。ネット接続は有線でもいけるが、Wi-Fiも内蔵している。

HDMI出力は4Kまで対応

 最後にリモコンも見ておこう。本機は本体だけを使えば普通の全録DIGAとほぼ同じ機能を持っている。したがってリモコンも、テレビ寄りではなくかなりレコーダ寄りとなっている。

付属のリモコン

 ただ、今年発売の全録DIGAでは、12キーを下に、十字キーを中央部に配置し、メニュー操作の利便性を上げている。一方本機付属のリモコンは、12キーが上に、十字キーが下寄りに配置されており、若干テレビ寄りの設計となっている。

完結した「プライベートテレビ」

 では早速使っていこう。通常のレコーダだと、本体をHDMIでテレビに繋ぎ、リモコンを使って初期設定を行なうところだが、本機の場合は専用モニターが付いている。例えば一人暮らしを始める人にとっては、これが唯一のテレビとなる可能性もある。

 したがって本機では、初期設定からすべて、専用モニターだけで操作できるようになっている。操作のUIは、HDMI出力されるものと違う、モニター専用のUIだ。タッチで操作する必要があるため、ボタン類が大きく配置されている。

初期設定もモニター側からできる

 チャンネル録画は最大6chではあるが、正確には4ch + オプション2chという格好だ。2chは、本体側でネット系VOD機能を使うとチャンネル録画が止まってしまう。エンコーダ・デコーダ数の制限なのかもしれないが、ストリーミングをよく利用する人は、録画チャンネルの振り分けには注意が必要だ。

ネットサービスを使おうとすると、2ch分のチャンネル録画が止まる

 画質設定は、標準のHDD割り当てを利用した場合でも、8倍モードで6chを記録して、およそ1週間分の番組が保持できる容量がある。本物のDIGAには、ドラマのみ自動で長期保存する「ドラマおとりおき」機能を搭載しているが、本機にも同じ機能が搭載されている。

【訂正】記事初出時、「ドラマのみ自動で長期保存する機能は無い」としておりましたが、ドラマおとりおき機能を搭載しておりました。お詫びして訂正いたします(8月4日)

8倍モードで6ch録画しても1週間は保持できる

 また、本体とモニターの使い分けも考慮する必要がある。モニター部と本体からのテレビへのHDMI出力は、排他仕様となっている。つまりモニターを使えば本体出力は止まり、本体でチャンネル録画などを視聴していたらモニター側は使えない。したがって、本機を複数人の家族で同時に使おうというのは、実用上無理があるかもしれない。

モニターを使い始めると本体出力が止まる

 ライブのテレビ視聴は、当然リアルタイム圧縮したのちWi-Fiで伝送されてくるわけだが、画質的にも十分で、近距離で見ても画質的な粗は感じられない。電波の通りも以前と比べるとかなり改良されており、仕事部屋から風呂場まで直線距離でおよそ5m、途中曲がり角やドアなどがあり、まっすぐ抜けているわけではないが、お風呂のドアを閉めてもしっかり受信できている。

 チャンネル録画番組を視聴する際は、ホームメニューから「チャンネル録画」を選択する。画質的にはライブ視聴よりは1段落ちる感はある。ただそれも、番組の絵柄次第である。スタジオ収録番組では元々SN比もいいのでそれほど変わらないが、ロケ番組などはかなり劣化が目立つ。

チャンネル録画された番組が番組表形式で表示される

 面白いのは、モニターを消音した時だ。この時、自動的に「字幕」がONになる。元々最近のテレビには標準的に搭載されている機能で、本来は難聴者対策として用いられるものだが、音楽をかけながらテレビを流し見したいときなどに便利である。

 通常は画面タッチで操作していくわけだが、実は付属のリモコンも、リモコンコードを変更することで、モニター部に向けて操作する事もできる。モニター部は近くで見るためのものではあるが、それでも手が届かない程度の遠くからちょこっと操作したいという時もあるだろう。ただしリモコンは防水ではないので、お風呂での使用はできない点は注意が必要だ。

「テレビ操作」ボタンをONにすることで、モニター部からもレコーダ部の操作が可能

本体とモニター側の機能差

 本体の機能は、ほぼ現行のDIGAと変わりないので、特に取り上げてご紹介するほどでもないだろう。ここではモニターでの機能との差異についてまとめておく。

 モニター部での特徴的な機能として、ホームメニューの「最新情報」がある。これはチャンネル録画されたニュース番組のうち、常に最新のものに一発でアクセスできる機能だ。

 「つづき」という機能も、本体側にはない機能だ。これはチャンネル録画番組を視聴していて、途中で中断した場合、直前まで見ていた番組の続きから再生してくれる機能だ。これなどはリモコンに搭載してもおかしくない機能だが、なかなか場所も取れないのだろう。

ホームメニューの「最新情報」、「つづき」はユニークなポイント

 専用モニター独自の機能を搭載する一方で、本体でしかできない機能もある。例えばチャンネル録画番組から見たい番組を探す時などは、検索機能は必須かと思うのだが、モニター側からは検索機能が利用できない。上記のようにリモコンを使った操作もできるのだが、この場合でもモニター側からは検索機能が利用できない。

強力な検索機能は本体操作のみ

 またDIGAではわりとお馴染みの機能である、画面の4方向に機能を出して関連機能や番組にアクセスできる「再生メニュー」がある。UI的にタッチ操作でやったら効率上がりそうではあるのだが、これも本体のみでモニター側からはできない。

DIGAではお馴染みの「再生メニュー」も本体のみ

 またネット系VODの視聴も、本体のみでモニター側からはできない。まあNetflixとかなら、確かにタブレットなど他でも見られる手段があると言えばあるのだが、お風呂の中でNetflixのドラマをゆっくり見たいというニーズは少なくないだろう。

 もっともモニター側にはWebブラウザが搭載されている。そこからNetflixに行って視聴するという手もあるかと思ったのだが、どうもブラウザの機能が足りず、きちんとサイトが表示できなかった。

総論

 全録機能が付いたプライベート・ビエラは、もはやプライベート・ディーガとも呼べるようなものに進化した。Blu-rayドライブの搭載で、BDの映画を好きな場所で楽しめるというのも魅力だ。

 レコーダであれば、テレビのライブ視聴とレコーダの録画番組を見ることは、やはり外部入力への切り換えなどが発生するため、別行為という意識が働く。だが本機の場合、テレビのライブ視聴から付属モニターを使っているため、チャンネル録画への移行がシームレスだ。例えばたまたまテレビをつけて、面白そうなヤツやってると思えば、すぐに最初から視聴に移行できる。

 通信状況も良好で、お風呂場での視聴は、画質、レスポンスともに満足いくものだった。一方長時間利用する際にはACアダプタを繋ぎっぱなしになるわけだが、充電中はずっと大きめの蓋が開きっぱなしとなるので、格好が悪い。短時間での利用しか想定していないのかもしれないが、もう少しスマートな仕掛けが欲しいところだ。

 スマホやタブレットでもテレビ視聴の道はあるが、テレビっ子にはシンプルに使える専用ディスプレイはアリだろう。お風呂だけでなく、寝るときにベッドサイドへ持っていったり、寝起きでニュースをチェックしたりと、寝室でも便利に使える。

 欲を言えば、本体とディスプレイと別々で視聴できるパワーが欲しかったところだが、全録機とモニターまで付いて13万円前後という価格を考えると、いくばくかの制限があっても仕方がないところかもしれない。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。