“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

 

第476回:ついにソニーも同時録画制限なしへ。BDレコーダ「BDZ-AX2000」

~ スマートフォンからもリモート予約可能 ~




■ 年内に伸びるか、ブルーレイ

 まだまだ夏真っ盛りといった天気が続いているが、早いものでもうレコーダは秋冬商戦モデル発表の時期となった。アナログ放送停波を来年に控えていること、さらには今年いっぱいで家電エコポイント制度が一応完了することになっていることから、テレビ、レコーダメーカーは年内の駆け込み需要を狙って、力が入っているようだ。

 特にBDレコーダは世帯普及率で言うと10%強ぐらいで、市場としてはまだまだこれからである。3Dが起爆剤になるのかならないのかは、まだこれから観測していく必要があるが、少なくともアナログ放送のみのレコーダは、そろそろ乗り換えを考えておく必要があることは間違いない。

 さてそんな中、ソニーのBDレコーダもいろいろとラインナップが変わってきた。昨年のフラッグシップ、BDZ-EX200の後継機として、BDZ-AX2000/1000が発表された。EX200は2TBのHDDを搭載したが故にかなり高いモデルとなったが、今回はAX2000が引き続き2TB、そしてHDDを1TBに減らして価格を下げたAX1000を新投入してくる。機能的には同じである。

 ソニーが考えるBDフラッグシップとは、どういうものになるのだろうか。今回は一足先に発売となるAX2000をお借りすることができた。さっそく試してみよう。



■ なにもないフロントパネル

 まずデザインだが、前シリーズはフロントパネルの下1/3ぐらいのところが分かれてフタになっていた。一方今年発表された全モデルとも、全体を一つのパネルにまとめている。前モデルのデザインもなかなか評判が良かったが、出っ張った部分にホコリが溜まるという話もあったようで、賛否が分かれた結果になったようである。

フロントパネルは1枚のアクリルで覆われたシンプルなデザイン天板から前面まで1枚のアルミを折り曲げた作り

 AX2000では、ボディ表面には電源とBDドライブのイジェクトボタン以外はなにもないという、シンプルなデザインに戻った。天板は厚さ4mmのアルミで、天板から前面までは一枚板を折り曲げた作りになっている。ただし前面は4mmではなく、少し薄くなっている。堅牢性もさることながら、めちゃめちゃ掃除がしやすそうだ。特に天板から前面パネルへの繋ぎ部分は一番ホコリが目立つ部分なのだが、そこが綺麗に拭き取れそうである。

 BDドライブは左側で、記録層を3層、4層に拡張したBDXL規格に対応した、新型となっている。BDXL搭載BDレコーダはすでにシャープが一番乗りを果たしているが、案外早く対応機器が登場してきたことになる。

 ただBDXLメディアはシャープの3層/100GBメディアが4,500円程度で登場したばかりで、結構高い。3.5インチHDDなら、1TBが買える値段である。これが普及してどれぐらい価格が下がるのかは、正直予想が付かないところである。

側面は細いスリット状の吸気口になっているBDドライブはBDXL対応天板にもBDXLのロゴが

 BDドライブの下は、MS/SDカードスロットがあり、写真の取り込みなどに対応する。またフラッグシップらしく、おでかけ転送、カメラ取り込みボタンが用意されている。ボタンのすぐ下が対応端子になっているので、間違いがない。

 操作ボタンは必要最低限度の再生・録画に対応するもののみに絞られており、そのほかチャンネル切り換え、HDMI出力切り換え、リセットボタンがある。B-CASカードスロットもここだ。

 背面に回ってみよう。前モデルのEX200はデュアルファン搭載だったが、本機はファン1つである。また電源も大幅に強化しており、以前はメガネ型端子の細いケーブルだったが、今回はがっしりした電源コネクタとケーブルになっている。

ついにアナログチューナがなくなり、アナログ入出力も整理されたかなりがっちりした電源ケーブルが付属

 RF入力は地上波と衛星2系統のダブルチューナ仕様で、今回からいよいよアナログチューナが廃止された。気になる録画補償金だが、このモデルに関して徴収するかどうかはまだ決定していないという。

 映像出力はHDMIが2系統あり、映像と音声に分けられる「HDMI AV独立ピュア出力」は引き続き搭載している。一方でアナログ系はだいぶ整理され、AV入力は1系統、出力も1系統となっている。D端子もあるが、音声出力は専用アナログ出力を持たず、AV出力を兼用するというスタイルだ。デジタル音声出力は、同軸と光の両方を搭載している。

大幅にリニューアルされたリモコン

 リモコンはかなり大幅に変更された。まず十字キー周りだが、「らくらくスタート」ボタンがホームボタンと対極の位置に移動してきた。これは従来からあった「らくらくスタート」メニューへのアクセスボタンだが、ソニー独自のクロスメディアバーに馴染めない人のために作られたメニューである。そこへの導入ボタンを、クロスメディアバーが起動する「ホーム」の反対側に持ってくることで、ユーザーがどちらから操作するかが均等に選べるようになった。

 一方以前のリモコンにあった「x-みどころマガジン」ボタンが廃止された。機能的に無くなったわけではなく、新設された「My!番組表」ボタン内の機能として統合された格好である。これはあとで調べてみよう。

 12キーもフラットで大きくなり、文字入力の利便性を向上させている。また再生系のボタンも白くなり、ソニーのリモコンとしてはシックさが無くなった印象だ。ただ、レコーダの機能が増えるにつれて手元での視認性を高める必要があることを考えると、リモコンがカラフルになるのは避けられない傾向であろう。



■ 刷新された予約システム、そのわけは…

 まず番組予約から見ていこう。番組表はあらたに9ch同時表示可能な、フルHD対応となった。予約方法は、従来のように番組表内の番組を「決定」してから予約設定画面へ進む方法の他、番組を選んだのち、リモコンの「録画」ボタンを押すことで予約設定なしですぐに予約完了となる「一発予約」ができるようになった。このときの画質設定は、直前に予約されたモードを引き継ぐという。

9ch表示に対応した番組表

 通常の予約システムでは、予約前にいったん番組説明が表示されるようになった。この画面から「予約設定へ」を押すと、これまで通り画質設定などを決める画面に移行するが、デフォルトの「予約する」を選ぶと、毎回予約の設定だけが表示される。「同じ名前の番組を自動で毎回録画する」という選択肢があるため、この場で番組名による追従設定も可能だ。また番組説明文章からの語句登録も簡単に行なえるようになっている。


予約される前に、いったん番組説明が表示されるようになったこのまま「予約する」を選ぶと、毎回録画設定が出る語句登録では、文章中の任意の文字列を登録できる

 

予約には録画1、2といった区別がなくなった

 予約システムで大きく変わったポイントは、予約時にもはや録画1だとか2だとか聞いてこなくなった点である。これまでソニー機では、録画1にしかAVCエンコーダがないとか、おでかけ録画は1しかできないとか、W録画してるとBD再生できないとか、いろいろな制約があった。どれがどういう組み合わせで動くかはとても暗記できるものではなく、多くのユーザーは要するにソニーのレコーダはなんか動いてるとダメ、という漠然とした制約の中で使っていたわけである。

 今回のラインナップでは、AVCエンコーダを一新し、さまざまな同時動作が可能になっている。録画1、2という概念をなくし、両方ともAVC記録ができるだけでなく、従来できなかったW録画時のBDへの高速ダビングも可能だ。

 では次に、らくらくスタートメニューからの予約を見ていこう。「番組表から選ぶ」では、すぐに番組表に飛ぶのではなく、いったん日付を選択する画面が間にはいるようになった。これは番組表の表示中に、次の日付に移るショートカット(赤、青ボタン)が見つけられない人が多いということで、特定の日にちにすぐにジャンプできるようにしたということだそうである。

「録画した番組を消す」機能が増えたらくらくスタートメニュー「番組表から選ぶ」では、間に日にちを選択する画面が入る

 もう一つそのものズバリの「日時から選ぶ」では、日にちを指定するとその場ですぐにその日の番組が候補に上がってくるようになった。さらに時間帯を指定すると、そこから自動的に絞り込まれて行く。目的の番組がだいたい何曜日の何時頃、とわかっている場合には、番組表から探すよりも早くたどり着ける。

 ではリモコンに新設された、「My!番組表」を試してみよう。ボタンを押すと、まずテーマ選択画面が表示される。テーマは旅行&レジャーや音楽ライブ・コンサートといったジャンルに分かれており、それらを自分の好みに合わせて選択していく。するとMy!番組表が出来上がる。

日付、時間帯を選択していくごとに、リアルタイムで該当番組が絞り込まれていくMy!番組表では最初に自分の興味のあるジャンルを選択する出来上がったMy!番組表


番組情報も一緒に表示される

 実際の中味は、以前のみどころマガジンと同じようなものである。今回は番組名だけでなく、番組説明も一緒の画面に表示されるので、その場で番組概要を把握することができる。ここで「録画」ボタンを押すと、「一発予約」も可能だ。

 これまではクロスメディアバーを使いこなせる上級者の方が、いろいろ便利な機能を使えたわけだが、今回の「らくらくスタート」メニューは、上級者でもこっちを使った方が検索・予約に至る手数が少なくなる。クロスメディアバーをベースにしながら、その上に別のGUIを被せたような感じに考えた方がいいかもしれない。DOSの上にWindows 3.1が走っているようなものか。

 元々クロスメディアバーは、あまり階層化できないことやGUI上の微妙な制限があり、大量のファイルを扱うレコーダにはあまり向いていないという意見が根強くある。このあたりは急にやめると怒る人も出てくるので、わからないよーにそーっと離れていく感じなのかもしれない。今後の展開を、こちらも気づかないフリしながら観察していきたい。



■ 0.5秒で起動する瞬間起動モード

 BDレコーダの不満点として第一位に指摘されるのが、起動が遅い、という点である。完全に電源OFFから起動することはめったにないのだが、スタンバイからの復帰にもかなり時間がかかる点に多くの人が不満を募らせているようだ。かといって、常時電源ONにしておくとエコ的にどうなの、ということもあり、利便性と省エネどっちをとるかという選択を迫られていたわけである。

 今回のソニーのBD全モデルでは、新たに瞬間起動モードを搭載した。このモードをONにしておくと、スタンバイ時からの起動は約0.5秒となる。この速度なら、実質的にテレビの起動よりも速い。

 ただこの高速起動モードで待機できる時間は、一日6時間となっている。ユーザーは2時間単位で3カ所選べるほか、「学習」設定ではユーザーの利用する時間帯を測定して、必要な時間を自動的に設定する。測定は1週間程度かかるそうで、その間は通常起動モードになる。

瞬間起動モードの時間帯を指定瞬間起動ができるのは一日6時間のみ

 新しくなったAVCエンコーダは、ハードウェア的な刷新とともにアルゴリズムも新しい技術が導入された。カメラ系の製品で導入が進んでいる顔認識機能を応用した「ビジュアルアテンション」がおもしろい。

 これは映像内の顔部分を認識して、その部分に積極的にビットレートを割り振ることで、画質劣化を感じさせない技術である。これは特に低ビットレートでの録画時に威力を発揮する。

 試しにもっとも低ビットレートのERモードで実写番組を録画してみた。画面全体を評価すれば、ビットレートなりの画質ではあるのだが、人間が注視するのははやり顔部分なので、画質劣化は気にならない。ただ画面内に2人3人の時には効果があるが、5人も6人もいる場合は振り分けるビットレートが足りず、あまり効果がなくなるようだ。これは画質モードにもよるだろう。



■ スマートフォンでらくらく予約

 もう一つどうしても紹介しておきたい機能が、スマートフォンからの予約機能である。ベータ版として公開されているWEBアプリ、「Chan-Toru」を利用することで、スマートフォンからBDレコーダへの予約ができる。もちろん、WEBアプリなので、パソコンからも操作できる。これまでもケータイのメールを使ってレコーダの予約を投げる機能などはあったが、レコーダ側の設定が面倒だったり、設定した割にはうまく動かなかったりすることが多かったように思う。

 Chan-Toruの設定方法は簡単だ。サイトにログインしたのち「設定」の中の「BDレコーダの設定をする」へ進むと、16桁の数字パスワードが発行される。レコーダ側は、「本体」の「ネットワーク設定」にてパスワードを入力すると、これだけで設定は完了だ。

サイトで16桁のパスワードが発行されるレコーダ側はその数字を入力するだけ

 

番組表だけでなく、検索やランキングも利用できるクチコミ情報はテレビ王国に投稿されたものが参照される

 Chan-Toruでは、テレビ王国と連動して番組表が見られるだけでなく、予約ランキングなどが利用できる。そこからの番組予約も可能だ。また番組に対するコメントも見ることができ、評判などを知ることができる。

 このようなランキング機能は、従来レコーダ側に実装されてきたが、案外そういうことのためにレコーダを利用するという人は少ないのではないか。やはりこういったテレビ番組周辺情報は、暇な時にどこでもアクセスできるということが重要であろう。

 ここから画質設定などはできないが、とりあえず録り逃す心配は大幅に減る。この便利さは、これまでにはなかった体験だ。本機特有の機能というわけではないが、今後スマートフォンによる番組情報検索とリモート予約は、レコーダにおいて重視されてくる予感がする。



■ 総論

 これまでソニーのレコーダは、おでかけ機能やおまかせまる録などいい機能を積んではいたが、他社に比べて同時作業がほとんどできなかったために、購入の候補から落ちるケースが多かったように思う。それが今回同時作業OKになったことで、ようやく2年越しぐらいで他社に肩を並べた格好である。

 らくらくスタートメニューを大きくフィーチャーしたことが象徴するように、元々レコーダというのはコンサバなジャンルである。それがブルーレイがあることで、これまではアーリーアダプター層に振りすぎていたという点もあるように思う。30代、40代のファミリー層よりも上、50代60代に向けての商品として、そろそろ仕切り直した方がいい。

 一方で若年層、あるいはテレビ2台目層としては、もはやテレビとレコーダ別体ではなく、ある意味昔のテレビデオが築いた低価格・小型・オールインワン層もまた、復活してくるように思う。

 正直AX2000は、市場予想価格27万円前後と、決して安くない買い物である。そのぶん確かに、本当に画質にこだわりたい人にとってはいいモノではあるが、そこまで画質は重視しない、むしろユーザビリティ重視という人には、同時に発表された中級モデルも機能的には共通項目が多いので、要注目であろう。

 AX2000のみ9月25日に発売予定だが、それ以外のモデルはすべて10月下旬の発売が予定されている。はやく実機が見たいという人は、10月5日から開催されるCEATECで各社新モデルの実機が展示されると思うので、足を運んでみるのもいいだろう。

(2010年 8月 26日)

= 小寺信良 = テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]