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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

 

第521回:ついに登場フルHD&PCMレコーダ、オリンパス「LS-20M」

〜ムービーカメラとも違う、音質重視設計〜



■ニーズはある「カメラ付きレコーダ」

 筆者は以前からインタビューの時にはムービーカメラを使うようにしている。2003年に出たXactiの初号機をレビューした時に、これは使える! と自分でも購入して使い始めたのがきっかけだ。

 それ以前はオリンパスのボイスレコーダで録っていたのだが、音だけだとグループインタビューの時に、誰がしゃべっているのかわからなくなるのが難点であった。しかし動画で録っておけばその問題は解決である。

 ただし、ムービーカメラのマイク性能は、ボイスレコーダに比べると十分とは言えない。リミッターがなかったり、ローカットフィルタがなかったり、指向性が曖昧だったりと、手頃な小型カメラほど音声収録は頼りなくなってしまう。しょうがないのでボイスレコーダも一緒に回したり、いろいろ工夫してきた。

 数年前からボイスレコーダに動画撮影機能が付けられないか、といろんなメーカーに企画を持ち込んでみたものの、未だそういう製品はあまり増えていない。

 ところがICレコーダの老舗であるオリンパスから、まさにドンピシャの製品がリリースされた。「LS-20M」(発売中/オープンプライス/実売3万円前後)がそれである。最高で1080/30pの動画撮影が可能、音声はもちろんリニアPCMである。

 筆者が想定している使い方では、正直ハイビジョンまでいかなくても…という気がしないでもないが、やはりイマドキの機能としてハイビジョン化は必須の流れなのだろう。また、ビデオカメラに良いマイクを付けても、リニアPCMで録るには業務用クラスのカメラが必要になる。それでは大げさすぎると思う人も多いだろう。

 上手いところに目を付けたオリンパスLS-20Mの実力を、さっそくテストしてみよう。



■独特のルックスを持つボディ

ボディはICレコーダでは大きめ

 まず見た目だが、従来のICレコーダの感覚でいるとかなり大きい。大きいと言うより、平たいと言った方がいいだろうか。動画モニター用の画面を搭載する都合もあるので、ある程度のサイズになってしまうのは仕方がないところだ。

 ビデオカメラとも違う独特の平たいルックスだが、威圧感はそれほどない。色も黒で、目立たないところがなかなかいい。

 特徴的なのはマイクの形状で、笹竹を斜めにカットしたような形になっている。内部的にはマイクカプセルが正面に対して45度の角度を付けて付けられており、左右で90度の角度となる。

 カメラはどこにあるかというと、マイクとマイクの間、本体のてっぺん部分である。サイズ的にはケータイに付いているカメラとそう変わらない。おそらく撮られている側も、まさか映像まで撮られているとは気がつかないかもしれない。


先端を斜めにカットした独特のマイク部分 てっぺんに小型カメラが

 カメラのスペックとしては、16:9撮影時の画角が49mm、4:3の時が59mm(いずれも35mm換算)で、光学ズームはなく、デジタル4倍ズームが付いている。撮影範囲は、最短で30cmとなっている。

【 ワイド端とテレ端の画角】
ワイド端 テレ端

49mm

196mm

 撮像素子は1/4型500万画素のCMOSで、有効画素数は16:9で293万画素、4:3で219万画素。動画はMPEG-4 AVC/H.264のMOV形式となる。録音のビットレートなどの設定は動画撮影モードの中にあり、連動している。

【各モードのサンプル】
撮影モード 映像bps 録音モード サンプル
1080/30p 約17Mbps 24bit/96kHz
P6260025.mov
(21MB)
24bit/88.2kHz
16bit/48kHz
720/30p 約11Mbps 24bit/96kHz
P6260026.mov
(13.6MB)
24bit/88.2kHz
16bit/48kHz
16bit/44.1kHz
480/30p 約3.5Mbps MP3 44.1kHz/320kbps
P6260027.mov
(4.5MB)
MP3 44.1kHz/256kbps
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。
また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 24bit/96kHzの音声を再生するには、これに対応したサウンドカード(サウンドチップ)やオーディオインターフェースが必要になる。オンボードのサウンドチップしかない場合、古いPCでは再生できないこともあるので、ご注意いただきたい。

 ちなみに映像編集ソフトでは、24bit/96kHz音声付きの動画を扱えないものもある。そういう映像フォーマットがこれまでなかったからだ。筆者が知る範囲では、現時点で対応しているのはApple Final Cut Proと、SONY VEGASシリーズがある。編集を考えている方は、編集ソフトのスペックを事前に確認したほうがいいだろう。なお今回撮影モードのサンプルは最高音質だが、編集サンプル映像は読者の視聴環境を考慮して、16bit/48kHzで記録している。

 マイクの間にはピークLEDもある。音声がピークレベルに達した時にオレンジ色に点灯するほか、充電中やファイルアクセス時にも点灯する。

液晶モニタは2.0型

 液晶モニタは2.0型で、5段階の輝度設定が可能。角度が変えられないので、構造上相手に向けたら下側からのぞき込むような格好になるが、視野角はそれほど広くはない。

 液晶の左には外部マイクとイヤホン端子、ストラップ用の穴もある。電源とホールド兼用スイッチがその下だ。底部に近いREMOTEボタンは、別売の赤外線リモコンの受信機を装着する端子。


端子類は左側に集中 反対側にはSDカードスロット

 反対側はSDカードスロットがあり、最大32GBまで対応。2GBのSDカードが付属している。その下のスライドスイッチは、映像を記録するか、音声のみかの切り替えだ。

 液晶の下にはオレンジ色に光るサブディスプレイがあり、録音レベルや記録時間、バッテリ残量などを表示する。したがって映像用の液晶モニタにはステータス表示が少なくて済むというメリットがある。

レコーダらしくサブモニタでレベルを表示 操作ボタンはかなり数がある

 操作ボタンは十字キーを中心に、左右に大きくRECとSTOP、下に5つの機能ボタンがある。Fnボタンには、録音モード、画質、ホワイトバランス、露出補正といった機能を割り当てられる。

 底部のフタを開けるとUSBとHDMI端子がある。HDMI端子はHDMIマイクロ(タイプD)で、接続用のケーブルは別売となっている。USB端子に接続する充電器は付属する。

 裏面はスピーカーと、三脚穴がある。最近ではデジカメの普及によりミニ三脚が廉価で手に入るので、こういう配慮はうれしい。

 デザインから見ると、底部に単四電池が2本ぐらい入りそうな感じだが、実際には専用のリチウムイオンバッテリを使用する。

底部にUSBとHDMI端子 裏面に三脚穴が空いているのはナイス USB充電器も付属


■従来にはない撮影感覚

スタンバイにするまでは録画ファイルのリスト画面になっている

 ではさっそく撮影してみよう。撮影日はあいにくの曇天であったが、ホワイトバランスはオートで十分に追従できた。録画は、RECボタンを1回押してスタンバイ、2度目のプッシュで録画といったスタイルだ。

 ICレコーダとしては普通の動作だが、スタンバイ状態にしないとカメラがONにならないところは、ビデオカメラやデジカメとは動作が違う。逆に常時カメラをONにしないことで、バッテリの保ちを確保するという狙いもあるのかもしれない。


【動画サンプル】
zoom.mov(26MB)

デジタルズームしかないので、ズーム時には画質劣化する
 ほぼ50mmという画角は、対象が1人の場合は距離的にも撮りやすいが、室内で数人を相手に撮影するにはちょっと狭い。画角が狭いとどうなるかというと、それだけ後ろに下がらなければならないわけで、映像はそれでいいとしても音の収録としては遠くなってしまう。どうせ光学ズームを付けないのであれば、もっと極端に広角のレンズの方が面白かったただろう。

 映像のモニタリングに関しては、相手の目の高さに構えると自分はそれ以上に高い位置からのぞき込まなければならないため、撮影をする、というスタイルで使うにはしんどい。やはり録音にプラスする参考としての動画を撮る、という使い方のほうが、製品の作りには合うようだ。


 ビットレート的には1080/30pで17Mbpsもあるが、映像的には若干眠い。画質を決める要素はレンズ、撮像素子、画像処理などいくつかあるが、やはりレンズのサイズがサイズだけに、なかなかビデオカメラ並みの画質には至らないようだ。

 フォーカス機能についてはとくに記載はないが、フォーカスを自動追従している感じもないので、おそらくパンフォーカスだろう。近接距離は30cmだが、液晶画面が小さいので、フォーカスが合っているかどうかの確認が難しい。


【動画サンプル】
stab.mov(85.1MB)

手ぶれ補正のONで画角は変わらないが、補正量は小さい
 手ぶれ補正も付いている。ON/OFFで画角は変わらないので、元々余裕のある撮像素子面積を使って補正するようだ。効果のほうは歩きながらの手持ち撮影を補正できるほどではなく、じっと止まっている状態で補正が効くぐらいである。

 自動逆光補正機能がないので、自分で露出補正をしてやる必要がある。露出補正機能は、±0/0.3/0.7/1.0/1.3/1.7/2.0で補正するのだが、面白いのは+2.0の次が-2.0と言った具合に、設定がループしているところである。普通どちらかの端で止まるようになっているので、ちょっとびっくりする。


 また、スタンバイ状態で絵を確認して露出補正したいな、となったときには、いったんSTOPボタンを押してスタンバイを解除しないと、そもそもメニューが表示できない。せめてFnキーに割り当てた動作ぐらいは、スタンバイ状態から直接行けるとよかった。

 また補正設定した後も、いちいちメニューを消す動作をしないとスタンバイや録画にならない。録画チャンスを逃さないようにすることを考えると、RECボタンを押したら最優先でスタンバイになるといった機能も欲しいところだ。

音質設定は、映像記録モード設定の中にある 露出補正は、設定がループになっている




■音質はさすが

【動画サンプル】
sample.mov(95.1MB)

さすがに音質とステレオセパレーションは良好
 肝心の集音だが、左右のステレオセパレーションは良好で、広がり感は十分だ。ただ指向性が前だけにあるわけではなく、結構後ろの音もがっつり拾う。インタビューではそれでもいいと思うが、ターゲットが決まっている収録で使うにはもう少し前に指向性が欲しいところだ。

 またマイクケースが斜めに切り立っていることもあってか、フカレには弱いようだ。ただローカットフィルタとして100Hzと300Hzがあるので、これを使えばフカレ音をかなりカットできる。屋外の集音では気をつけたいポイントだ。


屋外ではローカットフィルタは必須

 電池持続時間は、録音時約3時間45分(リニアPCM)/約4時間(MP3)と資料にあるが、動画を撮影するともっと短くなる。今回は約1時間の撮影だったが、時々電源を切っていたとはいえ、最後にはバッテリ残量があと1目盛りを残すのみとなった。USBから給電しながらの動作もできるようなので、動画も撮りながらインタビューを収録するには、USBバッテリなどが必要になるだろう。

 しかし動画を撮影するとなると、バッテリよりも先に4GBのファイルの壁が先に来る。1080/30p、24bit/96kHzの動画撮影でテストしてみたところ、連続で34分弱のところでファイルサイズが4GBに達するようで、自動的に停止する。インタビューなどを録るよりも、ライヴや楽器の練習など、もっと特別なものを録るといった使い方になるだろう。


【動画サンプル】
effect.mov(64.6MB)

映像のエフェクト効果「マジックムービー」

 LS-20Mには、お遊び的な機能も盛り込んである。「マジックムービー」は、いくつか種類を選んで撮影時にエフェクトをかけた状態で収録できる。正直何に使うのと言われると困るが、このあたりはこれからこなれてくる部分だろう。

 再生時の音声イコライザは、ROCK/POP/JAZZの3プリセットのほか、ユーザー設定として5バンドのグラフィックスEQが付いている。

 編集機能としては、ファイルの分割機能がある。クリップで分割したい位置で止めておき、メニューに入ったのち「ファイル設定」→「ファイル分割」を選択するとクリップが分割され、元のフォルダとは別の「EDIT」フォルダに分割ファイルが移動する。

 逆に結合の機能はないので、いわゆるカット編集のようなことはできない。分割によって必要な部分を切り出していくという編集ができるということだ。




■総論

 リニアPCM録音が主流になってきて、これまでビジネス用として使われてきたICレコーダの世界に楽器メーカーが参入してきた。Roland、KORG、TASCAM、ZOOMなどの製品がICレコーダ売り場に並ぶようになり、従来のビジネスモデルメーカーも徐々に上質なマイク、リニアPCMで高ビットレート記録と、ハイクオリティ側へシフトせざるを得ない状況になってきている。

 とは言ってもなかなか差別化が難しく、最後はデザインと値段競争になってしまって海外メーカーにやられるケースが多いわけだが、老舗オリンパスがカメラを足すという発想で、新しい方向性に挑戦してきた。元々光学メーカーなだけに、やろうと思えば相当なところまでできると思われるのだが、今のところ主軸を録音に置いているのがわかる。

 いかんせん初号機なので、ユーザーの期待とかみ合うところ、かみ合わないところはあるかと思うが、ZOOMの「Q3」のようなモデルと合わせ、今後一つのスタイルを形成するのではないかという気がする。楽器メーカーがこういうものを作るのは難しいだろうが、ソニー、パナソニック&三洋といったカメラとレコーダの両方を作っているところも今後ライバルになるかもしれない。

 インタビューで使いたい筆者からすれば、カメラのワイド端不足、バッテリ保ち時間というポイントがクリアされれば、ICレコーダへの信頼性を築いてきたオリンパス製なだけに、ぜひ導入したいと思う。



(2011年 6月 29日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]