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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第588回:ついにソニーもアクションカム参戦!「HDR-AS15」

〜屋外でも室内でも。アイデア次第の超小型カメラ〜


■アドベンチャーカメラが突如戦国時代へ

 どういうわけか今年になって突然、いわゆるアドベンチャーカメラ/アクションカメラ市場が俄然盛り上がってきた。そもそもGoProなる製品が世の中に知られだしたのは、2010年のNABでの出展がきっかけだろう。

 当時初めてNABに出展したのでルールを知らなかったらしく、初日から会場で即売会をやって主催者に怒られたりしていた。そんなアマチュアっぽい企業が2年後のNABでは、パナソニックと同じひな壇で、日本企業がひしめき合う人気スペースに進出、業界人を驚かせた。

NAB2012では突如日本企業村に進出

 この手のカメラは、すでにContourなど数社が追随しているが、GoProの牙城を切り崩すまでには至っていない。それだけGoProの完成度が高いという事でもある。

 同様のカメラは8月にJVCの「GC-XA1をレビューしたばかりだが、今度はソニーからも製品が発売された。「HDR-AS15」は10月12日より発売が開始されたばかりで、店頭予想価格は3万円前後となっている。通販サイトでは既に2万7,000円程度で販売しているところもあるようだ。

コンシューマでもプロでも、カムコーダのシェアでは世界でトップのソニーが参戦ということで、このジャンルにも俄然注目が集まってきている。ソニーはどんな切り口で攻めてくるのだろうか。早速テストしてみよう。



■ユニークな設計が吉と出るか

 この手の製品はどうしても、海や山で大冒険的な使い方が想定される。そういうスタイルのレビューはすでに本誌でも詳しく行なっているので、ここでは機能総当たりではなく、筆者的に気になるポイントをピックアップしつつ、少し違った使い方を提案してみたい。

 まず本体だが、横幅が24.5mmと、かなりスマートなのがポイントだ。GoProもGC-XA1もそれなりに厚みがあるのだが、このぐらいの幅じゃないと入らない場所、あるいは空気抵抗や水流の抵抗を受けにくいという点で、後発の強みを発揮している。

 本体のみでもちろん撮影は可能だが、三脚穴がないので、どうしても固定するには付属のウォータープルーフケースに入れて使うのが前提となる。別売アクセサリでは、本体だけで固定できるヘッドバンドマウントがあるが、それ以外はケースに入れる前提のようだ。元々GoProも基本的にはそういう設計なので、考え方と踏襲したということだろう。

スマートさが魅力のボディ 本体だけでは固定できないので、ウォータープルーフケースが必須

 本体には映像用のディスプレイを搭載していない。本体横にあるディスプレイは、メニュー設定および動作確認用だ。ただ来年1月には、外付けディスプレイ「AKA-LU1」が発売予定となっている。GoProも別売ディスプレイが付けられる形になっており、こういうシステムアップもGoProをモデルにしているようだ。

 本体底部には、外部マイク入力、拡張端子、HDMI出力、USB端子がある。拡張端子を使うのは純正アクセサリのみになるだろうが、外部マイク入力を備えたのは珍しい試みである。

本体脇のディスプレイは動作・設定確認用 底部にはかなり充実した端子類が

 底部の端子を使う場合は、ケースには入れられないので、本体のまま使うことになる。そうなると端子カバーが邪魔なので、外すほうがいいだろう。この端子カバーは、底部のネジ2つを外して端子部を固定しているガードを開けると、簡単に取れるようになっている。外部ディスプレイを使う場合も、まだ実物を見たことがないのでよくわからないが、おそらくカバーを外して取り付けるのではないだろうか。

 背面には大きな録画ボタンがあるのだが、背面パネル自体が開いてバッテリとメモリーカード(メモリースティックマイクロ/microSDカード)を挿すようになっている。バッテリーボックスの作りがユニークで、標準ではXタイプのバッテリ(NP-BX1)が付属するが、同社デジカメで以前から使われているGタイプのバッテリも使えるよう、サイズ変換用のトレイが付属している。

背面には大きな録画ボタン スライドさせたのち、開く
電池はトレイに乗せて装着 Gタイプのトレイも標準で付属

 ちなみに、Gタイプのほうが幅広で薄型だが容量が960mAh、付属のXタイプは1,240mAhだ。実売では300円ぐらいXタイプの方が高い店が多いようだが、元々希望小売価格が5,880円と同じなので、そのうち同価格になるだろう。今わざわざGタイプのバッテリを買い増すメリットはない。やはり現在Gタイプのバッテリを持っている人向けのサービスと考えていいだろう。

 さらにこういうスタイルにしておけば、将来もうちょっと大型のバッテリが出てきた時に、またトレイを使ってサイズを合わせられるかもしれない。少しでも容積を減らしたいタイプのカメラなのに、こういう作りにしているということは、近いうちに大型バッテリが出るのかもしれない。

 背面カバーはいったん横にスライドさせて開ける方式だが、ロック機構が何もないので、割と簡単にずれたり空いたりする。録画ボタンの下には、録画ボタンをロックするためのスライドスイッチがあるのだが、これをスライドさせようとしてガシッと動かしたら、一緒に背面カバーが空いてしまったのには笑ってしまった。

 バッテリは軽くロックがかかっているので、蓋が開いたからといってすぐバッテリが抜け落ちるということはないのだが、本体のみを裸で使う時にはちょっと用心したほうがいいだろう。



■シンプルすぎる故に……

 では実際に使いながら、細かいところを見ていこう。本体にはメニュー操作用のNEXT、PREV、録画ボタンの3つがあるだけだ。電源ボタンがなく、どれかのボタンを押すと電源が入る。ただ録画ボタンを押すと、電源が入ったあと録画を開始してしまうので、注意が必要だ。

ケースに入れると側面のスイッチは押せない

 というのも、本体が裸の時はNEXTかPREVボタンを押せばいいのだが、ケースに入れたときは録画ボタンしか押すところがなくなってしまうので、ここを押すしかない。

 それで困るのが、いわゆる「逆スイッチ」である。これは録画ボタンがトグル式になっていることから起きる現象で、本番なのに録画を止め、止めるつもりが録画開始になってしまうというものだ。結果として撮れた映像はいらんとこばかりという、悲惨な事になってしまう。

 電源が切れていても、録画ボタンさえ押せば録画されるという考え方は、親切なような気もする。だが大抵は電源を入れたのち、撮影モードの確認などを行なうものだろう。電源投入時だけは、録画ボタンですぐスタートさせないほうがいいように思う。

 また本体の設定変更や録画開始・停止をすると、ちょっと大きめの動作音が鳴る。靜かな場所での使用には、ちょっと気が引けるレベルだ。

 その一方で、ウォータープルーフケースに入れてしまうと、設定変更はスマホなどからリモートで行なうだけなので、設定変更時には音が全く鳴らない。録画開始・停止時には音は鳴っているのだが、ケースの中なので全然聞こえないということになってしまう。

 ユーザーニーズからすれば、普通逆だろう。裸で使うのは室内である可能性が高いのであんまり音がしないほうがいいし、ケースに入れて使うのは屋外なので大きな音が鳴った方がわかりやすい。このあたり、物理的な条件でそうなってしまうので仕方がないっちゃないのだが、どうにも歯がゆい感じがする。

 撮影モードは、画質というよりも解像度違いがある、という感じだ。1080、720、VGAがあり、すべて30pである。なんとアクションを撮るカメラで60pモードがないというのは、致命的に痛い。

 一方720サイズでは、60p(2倍)と120p(4倍)のスローモーションが撮影できる。60pで撮影できる能力があるならば、720モードの等速で60pが撮れるモードが欲しかった。

撮影モード 解像度 fps ビットレート サンプル動画
HQ 1,920×1,080 30p 16Mbps
IMG_1580.mp4 (36.7MB)
STD 1,280×720 30p 6Mbps
IMG_1581.mp4 (12.1MB)
VGA 640×480 30p 3Mbps
IMG_1582.mp4 (6.73MB)
SLOW 1,280×720 60p 12Mbps -
SSLOW 1,280×720 120p 24Mbps -

 画角は一番広角で170度の範囲が撮れるが、このときは手ぶれ補正が効かない。ソニーお得意の強烈な手ぶれ補正を利用したい場合は、120度に画角を変更する必要がある。

 実際に自転車に搭載して手ブレ補正の利きを試してみた。確かにONのほうが見事にブレを吸収しているのがわかる。ただ、ロードノイズがものすごい。

【動画サンプル】
slow.mp4(89.6MB)
【動画サンプル】
stab.mp4(36.7MB)

SLOW及びSSLOWのサンプル。スロー撮影はS/Nが落ちるので、室内ではライティングは必須 手ぶれ補正のON/OFF比較。かなり効きがいい
編集部注:動画は編集しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 今回は別売のハンドルバーマウント「VCT-HM1」をお借りして取り付けてみたが、おそらくカメラ本体がケース内で揺さぶられている音を拾っているのではないかと思われる。どうもこのマウントは、背が高すぎるのではないか。縦方向で固定すると振動でカメラがビヨンビヨンしているのが、目視でもわかる。映像は強力な手ぶれ補正で事なきを得ているが、この音は問題だ。

VCT-HM1を使ってハンドルに固定。ただこの固定方法では、かなりキツく固定しないと、激しい振動と自重で滑ってだんだんうつむいてくる 縦方向で固定。これだとうつむかないが、かなりビヨンビヨンする

 もう一点、サンプル映像で水平が取れていない事に関して言い訳させて貰いたい。このバーマウントには上下のチルト機構はあるが、左右の傾きが変えられない。ということは、ハンドル部分の水平なところに取り付けなければ、水平な絵が撮れないということである。

【動画サンプル】
laps.mp4(31.1MB)

撮影した静止画を編集ソフトでタイムラプス動画にしてみた
編集部注:編集・出力しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 だが、そもそもハンドルが水平な自転車ばかりではない。今回使った自転車のハンドルで、一番水平な部分に取り付けたつもりだが、それでもちょっと傾いている。水平のアジャストも可能な作りじゃないと、どのハンドルにも付けられるという事にはならない。

 なお、動画以外の撮影モードとして、「インターバル静止画記録」モードも用意している。これはいわゆるタイムラプス撮影を行なうもので、静止画の撮影間隔は5/10/30/60秒から設定できる。静止画として残すのも良いが、繋げると時間を早送りしたような独特の映像が作れる。動画の合間に挿入すれば、演出のアクセントにもなるだろう。ただ、静止画の連番ファイルを読み込んで動画にする機能は、画像管理ソフトとして提供されているPlayMemories Homeではできない。別途高機能な編集ソフトが必要である。。




■モンダイのケース周り

 付属ケースまわりは、色々語るべきところが多い。底部に三脚穴があるが、三脚のねじ穴と、回転防止用の穴が通常のカメラと逆向きについている。

ケースの三脚穴は、普通のビデオカメラと反対向き

 以前レビューした、ソニーデジタル双眼鏡「DEV-3」もそうだった。これは筆者も知らず読者の方に教えて貰ったのだが、双眼鏡の世界では、三脚のパン棒が自分のほうにあると使いづらいので、パン棒を前にやるように、敢えて三脚穴が逆向きに付けられているそうである。本機も同じ考え方なのかもしれない。


【動画サンプル】
flare.mp4(31.6MB)

ケースの有り無しでレンズフレア比較
編集部注:編集・出力しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 ただこのカメラの場合、普通にパン棒が手前にあったほうがいいというケースもあるだろう。三脚固定用の台座はネジ2本で止まっているだけのようなので、別売で正方向向きの台座に付け替えられるようなオプションがあってもいい。これはサードパーティでも簡単に作れそうだ。というか2つの穴は同じぐらいの径なんだから、両方にネジ切っとけば良かっただけなんじゃないか、という気もしないではない。

 ケースに入れることで気になるのが、映像な影響がどれぐらい出るのか、ということだ。特に気になるのが、フレアである。ケースのありなしでフレアを比較してみたところ、光源からの放射状のフレアが増えている。

 しかしそれ以前に、ケースなしでこれほどフレアががっつり出るのには驚いた。レンズこそカール・ツァイス テッサーだが、コーティングが今ひとつのようだ。まあ価格を考えれば、致し方ないところかもしれない。さらにこれだけ逆光でもフレアの形が円形であることから、おそらく内部に絞りはなく、シャッタースピードとセンサー感度で露出を追従させていることが想像できる。

 もう一点の懸念は、集音である。ケースに入れれば当然遮音されるわけだが、本機の場合はケースに入れないとそもそも固定できないので、特に水中撮影をしようと思わなくてもケースに入れる事になる。その状態で、それがどれぐらい音を拾うのかは気になるところだ。


【動画サンプル】
audio.mp4(88.4MB)

3パターンで音声収録を比較
編集部注:編集・出力しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 標準ケースのレンズ部分(正面ドア部分)は、集音が可能なタイプではない。集音可能タイプのドアは、別途11月下旬発売となっている。

 まあ付属のドアでも全く音が入らないわけではないが、水中ならともかく、地上でこれだけしか音が入らないというのはキツい。せめて裸の本体に三脚穴が付けられるオプションがあれば良かったのだが、現状ではそれもない状態だ。ケースなしで何かに付けられるオプションはヘッドバンドマウントしかなく、音の収録が必要な用途では非常に使いづらい。

 【お詫びと訂正】
 記事初出時、「標準ケースの正面ドア部分は集音可能なタイプ」と記載しておりましたが、誤りでした。集音可能なドア部分はオプションで用意されています。お詫びして訂正させていただきます。(2012年10月18日)

 音声のモニターは、収録中はやりようがない。スマホのPlayMemories Mobileで映像のプレビューはできるが、音声までは流れてこない。


涼しい午前中から熱い昼過ぎまで撮影したところ、ケースの内側が曇る事があった

 またケースに入れると、内部で曇りやすいので注意が必要だ。本機は録画中に温度が上がりやすいように思う。それが故に、ケース内に水分があると、蒸発してレンズが曇るようだ。おそらくレンズ前が一番温度が低いのだろう。

 本来ウォータープルーフケースは、水に潜るときにしか使わないものなので、内部の温度が上がっても周りから冷やされるため、温度は均衡する。だが本機の場合は地上で水に濡れる心配がなくても、とりあえず固定するためだけにケースに入れる必要があるので、ケース内の温度が上がりやすく、余計に曇りやすい。

 別売で曇り止めシートもあるので、この問題は認識しているということなのだろうが、やはりこのケース以外に本体を固定する方法がないということが、色々と余計な問題を引き起こしているようだ。




■総論

 アドベンチャーカメラとしては薄型、ツァイスレンズ搭載に強力な手ぶれ補正、さらにはスロー撮影も対応と、スペック的にはかなりいい感じにまとまっている本機だが、実際に使って見ると、細かいところで惜しい部分が散見される。

 メインの用途では、まず動きの速いアクションを撮影するのに、60p撮影・再生モードがないというのは残念だ。今後ファームウェアで機能を追加するという話もあるようなので、そちらに期待したいところである。

 また、そもそもケースに入れないと固定もままならないというのでは、GoProもそうだからいいだろ、という事ならGoProを使えばいいので、商品として勝てない。せっかく本体が小さいのに、ケースに入れるとスマートなルックスが活かせないのも残念だ。

 Wi-Fi機能に関しても、JVCのGC-XA1が単体でUstream放送ができるほどの高機能ぶりから見れば、これまでのソニーのデジカメとできることは大差ない。

 そこまで言っておきながら、筆者は購入を決定した。というのも、全然別の使い方を見つけたからである。それは、取材用レコーダとしての使い道だ。

 これまで複数人を相手にしたインタビュー取材などにMP4の動画カメラを活用してきたが、それはあとで文字起こしするときに、誰がしゃべっているのかがわかるようにするためだ。だが多くのMP4カメラは画角が45mm程度しかなく、テーブルの上に構えると1人か2人ぐらいしか入らない。しゃべっている人に向けていちいちカメラを向け直す必要があった。

 それなら遠くに離せばいいじゃないか、と思われるかもしれないが、そうすると音が遠くなって集音に問題が出る。痛し痒しだったのである。

 それがAS15で一発解決する。元々単体での音声収録性能は高いし、外部マイクも使える。GC-XA1も検討したが、あちらは音がAAC 36kbpsしかなかったので、集音用としては使えなかった。ソニーのカメラはAAC 48kHz/128kbpsで撮れる。

 問題は固定方法だが、先日気まぐれで買ったiPhone用の固定スタンドが丁度使えることがわかった。VGAで最長110分(付属バッテリ使用の実撮影時間)というのも、普段のインタビューなら丁度いい線だ。

先日ヨドバシで見つけて買っておいたiPhone用の固定スタンド(右) そもそもはこうやってiPhoneを挟むもの 向きを変えればAS15にピッタリ。外部マイクも使える

 ついでにHDMI出力も、カメラのクリーン出力が出るのがオイシイ。ネット放送では、手元カメラや寄りカメラとしても使えるだろう。これだけのワイドレンズはなかなか存在しないだけに、アクセントを加える面白い武器になりそうだ。

 アドベンチャーカメラとしてはまだまだ改善の余地アリだが、基本スペックは高いので、固定方法さえ見つければいろんな用途に使えそうだ。先入観にとらわれず、いろいろトライしてみると楽しいカメラである。

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ソニー
HDR-AS15
(2012年 10月 17日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。

[Reported by 小寺信良]