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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第580回:冒険を余すところなく記録、「JVC GC-XA1」

〜防水・防塵・耐衝撃・耐低温の“戦うスポーツカム”〜


■もはやGoProだけじゃない

 個人的に「アドベンチャーカメラ」と呼んでいるジャンルがある。最も知られているのはGoProというメーカーで、ヘッドマウント、水中撮影、ラジコン空撮、車載カメラなど、幅広い用途で利用されている。以前のX-Gamesの記事でもご紹介したが、危ないことを撮影する時にはもはや欠かせないカメラだ。

 GoProが躍進した理由は、その安さである。標準キットで3万円程度という価格は、映像のプロから見れば、壊れるの前提の使い捨てカメラだ。本体は壊れても、SDカードさえ回収できれば、映像は手に入る。ある意味寿命と引き替えに凄い映像を撮るためのカメラである。

JVC「GC-XA1」

 そんなアドベンチャーカメラの領域に、大手国内カメラメーカーとしては初めて、JVCが参入する。「GC-XA1」(以下XA1)というモデルで、既に7月下旬から発売が開始されており、ネットでは2万円台前半といったところだ。

 この領域のカメラは、画質云々というよりも、「いかに過酷な条件の中でちゃんと動くか」が求められる。その点GoProは、ハウジングに入れることで様々な悪条件に耐えられるよう設計されているが、XA1は本体のみで防水、防塵、耐衝撃、耐低温をクリアする。

 ビデオカメラでも、これまで防水・耐衝撃タイプの製品はいくつか出ているが、それはあくまでも普通のビデオカメラの延長線上にあった。しかしアドベンチャーカメラは、細かいところはバッサリ割り切る。どこをどのように割り切り、何を残すのか、そのセンスが問われることになる。JVCが考えるアドベンチャーカメラを、早速試してみよう。




■想像以上に小型

小型ながら液晶モニタも装備

 XA1はこれまで写真などで外観は知っていたが、現物を見ると予想外に小さいので驚く。比較物がないと、大きく見えるデザインなのかもしれないが、実際には手の中にすっぽり握れる程度のサイズである。これに映像確認用の液晶モニタまで付いているのだから、さすが日本製である。

 外寸はレンズ側を正面として、幅35mm、高さ53mm、奥行74mmとなっている。カドがすべて面取りしてあり、これを付けた状態のユーザーが怪我をしないようにという配慮だろう。

 外装の大部分はラバーコーティングされた樹脂製だが、操作ボタンのところはこのままでも防水、防塵性能を維持するために、シリコンカバーで覆われている。シリコンの奥にハードウェアのボタンがあるといった手触りだ。


かなり広角の単焦点レンズ

 レンズの画角は、35mm換算のスペックが公開されていないが、1,280×960/30pモードの時に152度となっている。この手のカメラは、監視カメラなどと同じく35mm換算でレンズの焦点距離を表示する習慣がなく、撮影範囲の角度で表示するのが一般的だ。各画質モードと画角を撮り比べたので、1280×960モードの152度を基準として見ていただきたい。


記録モード 解像度 FPS 手ぶれ補正OFF 手ぶれ補正ON
FHD 1920×1080 30p
HD960 30P 1280×960 30P
HD720 60P 1280×720 60P
HD720 30P 1280×720 30P
WVGA 848×480 30P
静止画 2592×1944

 フルHDからWVGAまで幅広いが、720に関しては60pが撮れるのがポイントだ。多くの場合スポーツなど動きの速いものが撮影対象になると思われるので、720/60pで撮るというのが標準だと考えるべきだろう。本機をリセットすると自動的に720/60pになることからも、それが伺える。今回の動画サンプルも、720/60pで撮影している。

 撮像素子は1/2.5型504万画素のCMOSセンサーで、静止画はフルで利用するが、動画撮影時は207万画素(FHDモード、手ぶれ補正OFF)程度となる。ローリングシャッター歪みはそれほど目立たず、それなりに高速なCMOSのようである。ただレンズは、これだけの広角であるが故にかなり歪みが発生するので、そちらのほうが気になる人もあるかもしれない。

 手ぶれ補正は電子式で、縦横の動きは補正するが、画角はちょっと狭くなる。またローテーション方向の補正はしないようだ。

操作部はほとんど上面にある

 カメラ上部、JVCロゴの上にはステータスLEDがあり、録画時には赤く点滅する。光量はあるので、日中の昼間でも近くでなら確認できる。ただLEDのサイズが小さいので、ある程度離れてしまうと見えない。

 上部の細かいメッシュ部分がマイクで、その後ろの小さな穴はスピーカーだ。中央には大きめの録画/SETボタンがある。ちょっとグラつきはあるが、おそらく何かに当たって誤動作で止まらないように、あえて真上から綺麗に押さないと反応しないように作っているのだろう。

上部のエッジ部分もボタンになっている

 そのうしろには電源ボタンがあり、長押ししないとON/OFFできないようになっている。このあたりは普通のカメラとまったく違うノウハウがある。

 カメラのエッジ部分には、4つのボタンがある。液晶モニタ側には左右及び+-ボタン、反対側にはメニューと再生モードへの切り換えボタンだ。

 液晶モニタは1.5型のカラーモニタで、解像度はそれほど高くはない。また視野角も狭く、正面から見ないとちゃんとわからない。水圧に耐えられるように、手前にガラスがあり、液晶自体が5mmほど奥にあるので、上部に表示される録画時間や録画表示は、上から覗き込むと見えない。このあたりは十分とは言えないが、耐久性と価格から考えれば仕方のないところだろう。

 背面はスライド式のカバーになっており、バッテリーとSDカードスロット、ミニHDMIとUSB端子がある。充電は本体にUSBを接続して行なうので、充電中はフタが開けっ放しである。また背面にWi-Fiロゴがあるように、本機はワイヤレスでのモニタリングや設定変更が可能だ。このあたりはあとで見てみよう。


背面カバーを開けるとスロット類とコネクタ類が露出する 付属バッテリでの連続撮影時間は、40分から1時間程度

 底部には三脚穴があり、回転防止用の穴もある。側面にも同様に三脚穴があるのもなかなかよく考えられている。底部にはストラップを通す穴もあり、手持ちでの撮影にも対応する。

底部に三脚穴 側面にも同様の穴がある

 付属品としては、レンズプロテクタが2個、ゴーグルマウント、フレキシブルマウントなどがある。USBケーブルは付属するが、HDMIケーブルは付属しない。またストラップも付属しない。

充実の付属品 同梱のゴーグルマウント。ゴーグルのベルト部に取り付ける 同梱のフレキシブルマウント。ヘルメットなどに貼り付けて使用する
別売のハンドルバーマウント 同じく別売のロールバーマウント

 PC用の設定ソフトウェアは、カメラ内の内蔵メモリにインストーラが入っており、USBでPCに接続したのちインストールするという方法だ。このあたりは以前Web向けに出したPICSIOと同じである。



■はっきりくっきりの映像

 Wi-Fiを使っていろいろできるカメラではあるのだが、まずは普通に撮影してみよう。とは言ってもせっかくのアドベンチャーカメラなので、水中や自転車などいろいろな使い方をしてみた。

 絵のトーンとしては、コントラストや色味がはっきりしている。海辺での撮影は案外色味が浅くて、ビデオで撮ると面白味のない絵になりがちだが、これぐらいはっきりしていると、撮ろうという気になる。ビットレートはまあまあ高いが、何せかなり派手にカメラが揺れることが前提なので、所々に圧縮による破綻も見られる。だがまあ大した用意がなくても、ほとんどの場所で撮影できるというメリットのほうが大きい。

【画質モードごとのビットレートとサンプル】

記録モード ビットレート
(VBR実測)
サンプル
FHD 16Mbps
CLIP0033.mp4
(25.3MB)
HD960 30P 10Mbps
CLIP0034.mp4
(14.1MB)
HD720 60P 15Mbps
CLIP0035.mp4
(22.8MB)
HD720 30P 9Mbps
CLIP0036.mp4
(13.5MB)
WVGA 5Mbps
CLIP0037.mp4
(6.8MB)

 デジタルズームも付いているが、単なる画像拡大である。この画質でズームする意味があるだろうか。これならむしろ、ちょっと触ってしまって画質劣化する方の懸念のほうが大きい。デジタルズームを強制的にOFFにする機能が欲しいところだ。
【動画サンプル】
CLIP0031.mp4(25.9MB)

このデジタルズームは必要か?
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 もう一つ残念なのは、音のビットレートが低いことである。実測でAAC 36kbpsしかない。所詮水中とか空中とかでは「ガガガ」とか「ゴゴゴ」とかいった音が入るだけなんだから、そんな程度で良かろうという判断もわからないではないが、人の会話が重要になるシーンでちゃんとした音になっていないというのは、一つのデメリットになる。今どきのSDカード容量からすれば、音声のビットレートなど全然大した負担にはならないので、もう少し高いビットレートで撮りたいものである。

 水中撮影はこれまでいろいろな防水カメラを試してきたが、アクセサリなしでしかも超小型なので、遊びながらでも邪魔にならない。ケータイ用として売られている適当なリストストラップがあれば、海やプールで子どもを遊ばせながら撮影する事も難しくないだろう。


水中用のホワイトバランスが充実

 付属のレンズプロテクタは、水辺での撮影には向いてないようだ。レンズキャップのようにカパッと填めるタイプで、特に密閉されるわけでもないので、中途半端にレンズとプロテクターの間に水が入る。また動作時の熱で、プロテクター内部が曇ってしまったりする。これは泥や砂汚れで、レンズに傷が付かないように使うものだろう。

 水中撮影としては、ホワイトバランスも専用のモードがある。青っぽいモードはプールで、緑っぽいモードは海で、という使い分けになるだろう。あいにく今回は水上も撮影するために、オートモードでしか撮影していないが、それでも透明度がそこそこあれば、水中もそれほど破綻なく撮れるようだ。


【動画サンプル】
sample.mp4
(110MB)
海辺などいくつかのシーンで撮影してみた
※EDIUS Pro 6.5で編集、MP4 15Mbps VBRで出力
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。
また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 

【動画サンプル】
stab.mp4(36MB)

ぶれ補正の有無を比較
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 手ぶれ補正の能力をチェックするため、自転車に取り付けてみた。別売のロールバーマウントで、パイプ状になっている場所になら簡単に取り付けられる。また三脚穴が横に付いているのも、こういった設置には便利だ。

 ブロックが敷き詰められた道を走行してみたところ、効果が全然ないわけでもないが、振動がカバーできるようなものでもない。手持ち時にはそれなりに効果はあるようだが、そもそも手持ちで撮るカメラではないため、従来のようなアルゴリズムではあまり役に立たないのかもしれない。




■充実の撮影補助機能

 こんな小さなカメラだから、所詮は丈夫でワイドで撮れるだけなんだろうと思っていたら、大間違いである。撮影機能としては、かなりいろいろ入っている。

 例えば「エンドレス録画」は、15分間をずっとループしてレコーディングし続ける機能だ。いつ何時結果が出るかわからない実験のようなものの撮影に使える。「タイムラプス撮影」は、1秒または5秒おきにに一コマ撮影する機能で、低速撮影を実現する。「反転」は上下を逆にする機能だ。上から貼り付けるしかないような場所では、映像の上下が逆になってしまうので、この機能を使って正対させるというわけである。

15分間をループでとり続ける「エンドレス録画」 タイムラプス撮影もできる 上下反転機能も備える

 さらに、こんな小型ながらWi-Fi機能がやたらと充実しているのも大きなポイントだ。まず一つは、スマートフォンを使ったカメラリモート。今年の春モデルのeverioでも実装されていたが、JVCはWi-Fiを使ったカメラコントロールに熱心である。

Wi-Fiモバイル用の機能も充実

 アプリは「WiVideo」という名称のものが、iOS用とAndroid用に用意されている(無料)。Wi-Fiメニューから「モバイル用無線LAN」を選択すると、アクセスポイント経由やホットスポット(スマートフォンをテザリングモードにしてアクセスポイントとする)などの選択肢が出てくる。またiOSデバイスに対しては、XA1をアクセスポイントにするダイレクトモードも使える。これらの方法でXA1とスマートフォンを接続して、アプリでコントロールするという流れだ。

 一番簡単なダイレクトモードで試してみた。Wi-Fiで接続するときに1分ぐらい待たされるのが難点だが、いったん接続してしまえば、あとは難しくない。映像と音声のモニター、録画の開始と停止、デジタルズーム、静止画撮影などができる。


スマートフォンでカメラをコントロール iOS用WiVideo 設定の変更は本体でやるよりも便利

 特に静止画撮影は、本体での操作は面倒だが、スマートフォンアプリではボタンを押すだけなので簡単だ。動画の記録モード変更も本体での設定よりも簡単にできるのでお勧めである。ある程度離れた場所からも映像と音声がモニターできるが、録画中はストリームが止まるようだ。それでもせっかくXA1を使うのであれば、ぜひ活用したいアプリである。

 PC用のアプリを使うと、さらに多くの機能が使えるようになる。このアプリでもライブ映像を確認したりできるが、「アカウントセットアップ」でUstreamやYouTube、FacebookのアカウントをXA1に記憶させることができる。アカウントをセットすれば、あとはXA1とモバイルルータがあれば、どこからでもUstrem放送ができる。Wi-Fi設定からUstreamを選ぶだけで、いきなり放送が開始されるというイージーさである。

PC用のWiVideo 各種WEBの動画サービスのアカウントを設定 Ustreamに複数のチャンネルがある場合は、1つを選択する

 FacebookやYouTubeへは、撮影した映像をアップロードするという形で対応する。他にもPicasaやTwitVidにも対応する。

 最後に映像出力だが、XA1はHDMI端子を備えている。ライブ映像もここから出力されるので、一瞬マルチカメラ配信のソースとして使えるのではないかと期待したが、残念ながら電池残量や録画残量の表示が残る。まあここをクロップしてしまえば使えないこともないが、せっかくの超小型、しかもワイドレンズなので、近接の据え置きカメラとしてそのまま使いたかった。

各種サービスへの動画アップロードも可能 HDMI出力には録画残量などが常時オーバーレイされる


■総論

 GC-XA1は、GoPro対抗という見方をされがちだが、実際にはネットワーク機能をはじめとして面白い撮影機能が沢山あるので、GoProユーザーもプラスαのカメラとして便利に使えるだろう。なにしろオプションなしのそのままで防水・耐衝撃なので、運用は楽だ。

 またそれほど高品位ではないが、液晶モニタが付いている点も大きい。カメラを設置するときに、アングルがどうなってるのか、水平が取れているかといったことがその場で確認出来るのが強みである。GoProもオプション品の液晶モニタがあるが、XA1は同価格帯ながらそれが標準で付いているということになる。

 エクストリームスポーツをやる人は、今は大抵GoProの1つや2つ持っているようである。もちろんそういうユーザーもターゲットではあるが、子どもと一緒に海やプールにザバザバ入っていってそれなりにちゃんと撮れる超小型カメラ、しかも格安というのは、これまでなかなかなかった。実は新しい時代の子育てカメラなのかも、という予感もちょっとするのである。

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GC-XA1

(2012年 8月 22日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。

[Reported by 小寺信良]