小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第728回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

踊る、光る、引っ掛ける!?、ユニークなBluetoothスピーカーの新顔を試す

Bluetoothスピーカーも次の世代?

 我々が気がつかないうちに、Bluetoothスピーカーはかなり普及した。ブレイクの兆しが見えたのが2012年ごろで、販売数量が前年比4.8倍と大幅に拡大(GfK調査)、その後はこれほどの成長率は保てないものの、市場としては右肩上がりとなっている。

左からソニーBSP60、LSPX-100E26J、UEのROLL、MEGABOOM

 きっかけはスマートフォンの普及である。スマートフォンの普及は、結果的にオーディオ再生装置を大量に普及させるという結果となった。これによってヘッドフォン/イヤフォン市場が活況を呈したのは記憶に新しいところだが、一拍遅れてBluetoothスピーカーの普及が始まった。

 もちろん、それ以前からBluetoothスピーカーは存在したのだが、ソニーが数千円クラスのコンパクトな普及機を投入し、若年層から徐々にスピーカーに慣れ親しむという掘り起こしを行なった。寝っ転がってスマホでSNSやりながら音楽を聴くなら、イヤフォンよりもスピーカーの方が体にまとわりつくケーブルがないため、気軽だ。ただし気軽に使える分、若年層向けではモノラルスピーカーが主流であった。

 市場が拡大すれば多くのメーカーが参入し、モデル数も増えていくため、価格やブランドでは差別化ができなくなってくる。そこで昨年はもっとしっかり音楽を聴かせるための、1ランク上を狙った商品が多数登場、そして今年は、気軽に使える路線を継承しながらも、個性的なモデルが各社から投入されることとなった。

 今回は今年発売された、ユニークなBluetoothスピーカーを集めてみた。

流石の音質、UE MEGABOOM

 Ultimate Earsはイヤフォンで広く知られることになったメーカーだが、2013年に「WS800/500」というモデルでBluetoothスピーカーに参入。その後、「UE BOOM」というシリーズを展開、同年末には「Mini Boom」という廉価モデルを発売し、市場開拓に一役買ったようだ。

 今年1月には、UE BOOMを大型化した「UE MEGABOOM」を発売した。サイズとしては、500mlペットボトルより少し背が高く、太さもある。筒型ならば車は自転車のドリンクホルダに入れたいところだが、国内向けのホルダには太さが合わないかもしれない。ゲータレードが入るぐらいのドリンクホルダなら入るかもしれないが。

大型化したUE MEGABOOM

 定格出力は18W×2で、ユニットは50mm径のフルレンジ×2基、105×47mmのパッシブラジエータ×2基を搭載する。2セットのユニットは背中合わせに配置されており、+−のボリューム表示がある方を正面にすると、それなりにステレオ感が得られる。

 天面に電源ボタンとペアリングボタンがある。底部には充電用USB端子とアナログ入力、吊り下げ用のフックがある。全体的にゴムパーツでシールドしてあり、IPX7の防水性能がある。

天面に電源ボタン
底部にフック
端子類はゴムで密閉される

 MEGABOOMのポイントは、なんといっても十分な音量と音質だろう。さすが5cmフルレンジ×2基を備えているだけあって、低域の量感も十分だ。また防水防滴モデルにありがちな高域のこもりもなく、抜けのいいサウンドが気持ちいい。今回試用したモデルの中では、音質的には最高である。室内でも十分だが、屋外で鳴らすのならこれぐらいの量感は欲しいところだ。

 バッテリの持ちも良く、20時間の連続再生が可能。日常使いなら、1週間から10日ぐらいは充電しなくても保つだろう。

 スマホ向けに専用アプリがあり、これを使うとイコライザが利用できるほか、目覚ましタイマーが使用できる。ユニークなのは、「2倍にする」という機能だ。これはMEGABOOMを2台用意すると、1つのソースから2台を同時に鳴らすことができるというものだ。個々をL/Rに割当、ステレオ再生することも可能だが、どちらかといえばエリアの両端に置いて音の届く範囲を広げるといった使い方が想定されている。

専用のスマホアプリで様々な機能を提供
イコライザーも揃っている
アラーム機能も
2台を連動させる「2倍にする」機能

 Bluetooth伝送距離も30mあるので、かなり遠くからでも再生することができる。実際に仕事部屋にスマホを置き、スピーカーを持って2階からお風呂場まであちこち移動してみたが、音楽が途切れることはなかった。スマホ側の仕様にもよるだろうが、快適に使えるモデルであることは間違い無いだろう。

 価格は直販価格が3万円、通販サイトでは25,000円強といったところである。

UEの新機軸、UE ROLL

 もう一つUEの製品をご紹介する。今年8月に発売された「UE ROLL」は円板状のユニークな形状を持ったスピーカーだ。直径は135mm、高さは40mmで、形状的には大判のどら焼きに近い。重量は330g。

円盤状スピーカーUE ROLL
イメージとしては大判どら焼き

 表面に大きな+と−の刺繍が施されているが、初めて見た方はこれが+−だと認識できず、十字架模様なのかと思ってしまうかもしれない。実はここのところがプッシュ式のボリュームになっているのである。

 電源とペアリングボタンは背面にあり、充電用USB端子、アナログ入力もある。ユニークなのは、背面にバンジーコードと呼ばれるゴムが付いているところだ。ゴムを外して吊り下げてもいいし、パイプ状のところに挟み込んで固定してもいい。床に置くよりもどこかに吊り下げた方が面白いだろう。

背面に電源とペアリングボタン
端子類はゴムでカバー
背面にゴムが
外して吊り下げることが可能

 内臓ユニットは50mm径フルレンジ×1基と、19mm径ツイータ×2基の、半モノラル半ステレオという構成である。スピーカーに頭を近づければ、高域はステレオになっているのがわかるが、一般的な試聴距離だとほぼモノラルだ。ただ完全モノラルよりは音の広がりがある。

 この手の小型スピーカーは、「小型の割に」というサウンドがポイントになるわけだが、本気も期待を裏切らずなかなかバランスのとれた音がする。さすがに低域はMEGABOOMには及ばないが、中低域の充実度、高域の滑らかさを考えたら、静かな室内で聴くには十分だろう。

UE ROLLにも専用アプリがある。できることはMEGABOOMとほぼ同じ

 防水防滴性能はMEGABOOMと同じIPX7。個人的にはキッチンに吊り下げて、料理しながら聞きたいところである。その点では防滴防水機能もさることながら、防汚性能も気になるところだ。スピーカー面はナイロン製の布地で、+−は普通に糸の刺繍である。撥水加工はしてあるようだが、糸の細かい隙間に汚れが入り込んでくると掃除のしようがなさそうなので、その点での不安がある。

 Bluetoothの伝送距離は20mで、こちらも日常使いでは問題ないレベルだ。またスマホアプリを使えば、イコライザや目覚ましが使えたり、「2倍にする」機能も使えるところは同じである。直販価格は12,880円で、通販サイトでは12,000円前後といったところである。

LED電球+スピーカー、ソニー「LSPX-100E26J」

 ソニーが「今ある空間をそのままに、新たな体験を生み出す」というコンセプトの商品群「Life Space UX」を打ち出したのは、2014年のCESだった。第1弾の製品は4K短焦点プロジェクタだったが、第2弾の製品がLED電球とスピーカーを組み合わせた「LSPX-100E26J」だ。製品名がややこしいが、おそらく電球の口金のサイズであるE26を入れちゃったからだろう。

電球型スピーカー「LSPX-100E26J」

 実は照明器具+スピーカーというのは、地味に人気が高いジャンルだ。過去シーリングライト+スピーカーという製品は幾つかあったが、LED電球とスピーカーの組み合わせはほとんど無かった。E26という口金は、日本で一番多く普及しているサイズなので、家庭内のどこの電球ソケットでも大抵は取り付けられる。今ある空間に新体験を、というコンセプトとしては、実に王道な製品である。

ソニーストアで販売されている、別売の「LineMeSET」と組み合わせたところ。ランプケージとカラフルなケーブルがセットになっている。直販価格は27,580円

 多くのLED電球はフィラメント型電球のような形状とサイズだが、先端にスピーカーを配し、LEDがその後ろにあるため、形状的には電球のように膨らんだ形ではなく、円筒形となる。シーリングライト型はスピーカー部がライトの上にあるため、天井からの反射音を聞くことになる。だがLSPX-100E26Jはスピーカーが隠れず、直接音を聞くことになるため、明瞭感は上がる。

円筒形のボディ
スピーカーの後ろ側が発光する

 スピーカーの口径は40mm径フルレンジで、出力は2W。赤外線の専用コントローラも付属する。周囲がボタンになっており、再生の開始と停止、ボリュームの上下、タイマーのセットができる。内側にはぐるぐる回るリングがあり、バリアブルに照明の明るさを変更できる。

専用のコントローラも付属
リモコンにNFCが付いている
玄関のライトに使ってみた

 ペアリングは普通にスピーカー側をペアリングモードにしても可能だが、コントローラの底部にNFCがあり、そことスマホのタッチでもペアリングできる点は面白い。

 電球型ということもあり、玄関の電球をこれに取り替えてみた。通常玄関にスピーカーを配置することはあまり考えられないので、環境としてはちょっと面白いことができそうだ。肝心の音質だが、小型フルレンジらしく中高域はよく出るが、低域はほとんど期待できない。また中域に独特のピークがあり、ボーカルものではちょっと聴きづらいポイントがある。

 もっともこういった製品ゆえに、普通の音楽リスニングとして使うというケースはまずないだろう。ムード演出として使用するなら、環境音楽か室内楽あたりを小さく鳴らしておくというのが定石になる。そういったタイプの音楽なら、それほど聴きづらくはない。

使用イメージ

 さらにこのスピーカー、ソニーの小型ハイレゾスピーカーでおなじみSRSシリーズなどで使っている、アプリ「SongPal」に対応している。設定画面では、専用コントローラがなくても照明の輝度を変えたり、スリープタイマーを設定する機能がある。サウンド設定では、照明器具の種類を選ぶ項目がある。取り付ける照明スタンドの形状によって音が変化するため、それに対応するためのイコライザのようだ。玄関に取り付けて切り替えた限りでは、音の違いはよくわからなかった。

ソニーのBluetoothスピーカーではおなじみのSongPalに対応
アプリからも明るさを変えられる
イコライザの設定に、組み合わせる照明スタンドの選択機能がある。スタンドに合わせた音質に変化するそうだ

 このスピーカーの場合、ある意味設置場所が固定されることが前提なので、もう一捻りアプリケーションが欲しい。例えば人感センサーと連動して音楽が鳴るとか、何らかの条件付けでの動作が可能になれば、色々と使い道も広がるだろう。ソケット型なら常時通電も可能なので、他のBluetoothスピーカーとは違ったスタンバイの仕方ができるはずだ。

 ソニーには自分でツールを組み合わせて回路設計ができる「MESHプロジェクト」がある。このスピーカーもMESHで動作させられれば、ユーザーがアイデアをどんどん出して面白い活用ができるだろう。完成された製品として売るより、将来的には何かのソリューションを実現するためのパーツとして売られるべき商品であろう。価格はオープンプライスで、実売は24,000円前後だ。

Rolly再び? 光って踊るスピーカー「BSP60」

フル機能を使うには専用アプリが必要

 2007年に発売されたソニーの踊るスピーカー「Rolly」を覚えていらっしゃる方はどれぐらいいるだろうか。音楽に合わせて踊るというのが売りのスピーカーで、4万円弱したはずだ。今でもそうだが、当時としてはかなりぶっ飛んだ製品で、いい意味でソニーらしいとも言えるし、悪い意味ではQUALIAシリーズと並んでソニー迷走の象徴として語られることとなった。

 後にも先にも光って踊るスピーカーなどRollyしかなかったので、つい思い出してしまうのだが、BSP60はそれよりもかなり今風になった製品だ。もともとは今年5月にau公式アクセサリー「au +1 collection」のオリジナル商品として販売が開始されたが、7月より一般販売もされるようになった。

ガンダムエイジにはハロ風とも言われるBSP60

 ペアリングしただけではただのBluetoothスピーカーだが、専用アプリと音声認識プラグインをスマホにインストールすると、音声認識で時報やアラーム、明日の天気といった情報を提供してくれる。スマホに向かって「明日の天気は?」と聞くのは何かスカした感じで気持ち悪いと感じている方も、これ相手ならそれほど違和感はない。答えるときには一歩前に出てくるのも可愛い。

ディスプレイには有機ELを採用
底部にはタイヤを装備
背面に充電用のUSB端子が
ダンスの有無はアプリから設定

 音楽に合わせて踊る機能は、スマホアプリでの設定が必須だ。踊るとは言っても、スピーカー部が開閉したり、半径10cmぐらいの範囲を動き回る程度なので、Rollyのようにぐるぐる回ったりする派手さはない。

 肝心の音質だが、中域はそこそこ出るものの、やはりデザインが邪魔するのか、高域の素直さはない。また低域もあまり出ておらず、音質的な満足度は低い。

音楽再生時のダンス

 音声認識による情報提供は、認識率としては悪くはないのだが、自由語を解釈するわけではなく、ある程度決まったコマンドしか受け付けない。例えば次の予定が知りたい場合、「スケジュール」「予定表」「次の予定教えて」「予定を読み上げて」「次の予定教えて」以外の文言ではうまく動かない。例えば「明日の予定はなに?」では認識できないのだ。

 何度か認識できない言葉が続くと、スマホ画面のボイスコントロールのヘルプが表示される。AppleのSiriのように、なんとなく会話が続いていくという感じもないので、物足りなさを感じる。ただ、会話できるスピーカーというのもまたこれくらいなので、そう言った面白さは感じられる。

 店頭予想価格は38,000円前後で、通販サイトでは3万円強といったところだ。

総論

 Bluetoothスピーカーが、単に音楽再生だけにとどまらず色々できるようになっているのは、スマートフォンと連携しているからである。この利点を活かすには、据え置き型のかっちりしたスピーカーより、多少変わった形状や利用シーンを想定した方がうまくいくようだ。今回見てきた4製品はどれもその辺りをうまく掴んでおり、ライフスタイルの広がりを感じさせる。

 一方で、あまりライフスタイル提案に寄り過ぎても、今度はスピーカーとしての基本性能とも言える、「バランスよく心地よい音楽を再生する」という方が置いていかれることになる。ある意味小型スピーカーの場合仕方がない部分もあるのだが、スピーカーとして購入するからには、消費者としては妥協したくないポイントである。

 今回試した中では、UEのスピーカーはユニークながら、音質面でも妥協のないギリギリの部分を攻め込んできているという気がする。一方ソニーの2製品は、商品としての可能性を模索中といったところで、面白いのだが音質面では必ずしも満足できるものではなかった。

 ワイヤレススピーカーは、今まさに大きな伸びを見せている分野なだけに、音がいいだけでもダメ、面白いだけでもダメという、難しいところに差し掛かっている。ストイックに音楽を再生するだけでなく、音楽を流す行為そのものがエンタテイメントになるような仕掛けが必要なのだろう。

 いつもの音楽でも、スピーカーや聴く場所を変えることで印象が大きく変わる。そういう楽しみを多くの人が得られるようになる第一歩のステージ、ということかもしれない。

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ソニー
BSP60
ソニー
LSPX-100E26J
UE
ROLL
UE
MEGABOOM




小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。