【特別企画】今からはじめるNASでエンタメ 音楽編

設定も再生もPCレス。バッファロー「LS-V3.0TL」を活用


 NASに音楽データを保存して、DLNAやAirPlay対応オーディオやスマートフォンで音楽を楽しむ。そんな使い方がこれからは一般的になりそうだ。PCを中心とした音楽ライフが、ネットワーク対応のストレージ(NAS)やオーディオ機器、そしてスマートフォンの登場によってどのように変わるのかを見てみよう。


■ スマートフォン対応が進むNAS

iPhone 4とバッファロー「LS-V3.0TL」。NASに保存した音楽や映像をAV機器から視聴したり、スマートフォンで再生することが可能

 もしも、大量の音楽データによるPCやスマートフォンの容量不足に悩んでいるとしたら、NASの導入を検討してみてはどうだろうか?

 もともとはPC向けのファイルサーバーの進化形として登場したNAS(LAN HDD)だが、最近ではその対応範囲をAV機器やスマートフォンへと拡大しつつあり、音楽や映像データの保管場所としてはもちろんのこと、さらにネットワークを通じたさまざまな機器への音楽や映像配信のベースとしての存在感を高めつつある。

 特にスマートフォン向けの対応に関しては、NASベンダーがもっとも力を入れている分野の1つであり、各メーカーともNASのデータをスマートフォンで再生するためのアプリを次々とリリース、NASに保存した音楽や映像をスマートフォンを使って、外出先などでも視聴できるソリューションが登場している。

 NASベンダーの中でも、スマートフォン対応に熱心なのがバッファローだ。同社は、昨年からiOS用の「WebAccess i」やAndroid用の「WebAccess A」というスマートフォン向けのアプリを提供しているが、これに加えて、10月からiPhone/iPad/iPod touch向けのNAS設定用無料アプリ「SmartPhone Navigator」の提供も開始した(Androidマーケットでもダウンロード可能)。

 これにより、スマートフォンからNASに保存されている音楽や映像を再生できるだけでなく、NASの設定までもスマートフォンから可能になり、よりNASの用途が広がったことになる。


■ PCレスで初期設定可能

バッファロー「LS-V3.0TL」

 では、NASを使って具体的にどのような音楽ライフを実現できるのかを見ていこう。

 今回は、バッファロー製のNAS「LS-V3.0TL」、パイオニア製のネットワーク対応AVミニコンポ「X-SMC5-K」、そしてiPhone 4、Android 3.2搭載タブレット「Arrows Tab LTE F-01D」を組み合わせて環境を構築してみることにした。

 LS-V3.0TLは、3.0TBのHDDを1台搭載した高性能NAS。DTCP-IPにも対応したDLNAサーバー機能やiTunesサーバー機能、さらにスマートフォンからのアクセスを可能にするWebアクセス機能などを搭載し、実売価格は25,000円前後だ。

 X-SMC5-KはパイオニアのネットワークAVコンポで、DLNAやAirPlayに対応。実売価格は4万円前後。

パイオニアのネットワーク対応AVミニコンポ「X-SMC5-K」iPhone 4、およびAndroid 3.2搭載タブレット「Arrows Tab LTE F-01D」

 これまでPCやスマートフォンに保存されていた音楽データをすべて「LS-V3.0TL」へと移行し、その音楽を家ではX-SMC5-Kの「Music Server」機能(DLNA)で、外出先ではiPhoneやAndroid搭載機から「WebAccess i/A」を使って楽しめるようにしてみた。

 つまり、NASでデータを集中管理し、機器や場所を問わずあらゆる機器に音楽を配信できるようにしようというわけだ。

NASで集中管理したデータをあらゆるデバイスから再生する

 まずは、NASの設置と初期設定だが、これは「SmartPhone Navigator」のおかげで非常に簡単にできるようになった。

 今回利用したLS-V3.0TLは、高性能CPUを搭載したシングルドライブ(容量3TB)のNASだが、基本的にLANケーブルと電源ケーブルを接続して、背面のスイッチを「ON」にすれば設置は完了する。

背面にLANケーブルと電源ケーブルを接続し、電源ボタンをONにすれば設置は完了

 通常であれば、この後、PCからユーティリティやブラウザを使ってNASの初期設定をするのだが、今回はスマホ用アプリ「SmartPhone Navigator」を使って設定してみた。iPhoneにアプリをダウンロード後、NASと同じネットワークに無線LANで接続する。

 この状態でアプリを起動すると、ネットワーク上のLS-V3.0TLが自動的に検索される。表示されたアイコンをタップして設定ナビを開始。ステップ1で管理者パスワードを(スキップ可能)、ステップ2で「BuffaloNAS.comネーム」を登録すれば設定は完了だ。


AppStoreから「SmartPhone Navigator」をダウンロード同一無線LANに接続後に起動すると自動的にNASが検出されるメニューから「設定ナビ」をタップして初期設定開始
管理者パスワードを設定。スキップも可能だが設定推奨外出先からアクセスする際に使うBuffaloNAS.comネームを登録NASの設定が完了。同時にWebAccess iへの登録も自動的に実行される
ブラウザを利用してNASの設定ページにアクセスすることも可能。すべての設定がスマートフォンで完結する

 これで、NASの管理者パスワード設定、UPnPによるルーターのポート設定、外出先からアクセスするときの接続先名として使うダイナミックDNSサービスのBuffaloNAS.comネームの登録、BuffaloNAS.com経由でアクセス可能な共有フォルダ(webaxs)の作成、さらにiPhoneに「WebAccess i」がインストールされている場合は接続先の登録までもが自動的に行なわれる。

 もちろん、NASをさらに活用するのであれば、ユーザーの登録や共有フォルダの設定、アクセス制限、各種サービスの起動など、さまざまな設定が必要になるが、これらも画面サイズは限られるものの、iPhoneのブラウザ(Safari)を利用して実行できるようになっている。

 PCを一切利用することなく、必要最低限の設定がわずか2ステップで完了するのは驚きだが、それ以外の設定もスマートフォンからできるのも秀逸だ。



■ 大容量の特性を活かしてロスレスで保存も

 設定が完了したら、肝心の音楽データをNASに保存していこう。

 PCに保存されている音楽データは、LANで接続されたNASに単純にコピー(移動)すればいい。iTunesの保存先やWindows Media Playerの保存先のフォルダをNASの共有フォルダにドラッグしておこう。

ファイルマネージャ系アプリから転送先としてWebAccess Aを選べばファイルをNASにアップロード可能

 一方、スマートフォンに保存されている音楽データは、PCと同期している場合がほとんどなので、別途コピーする必要はないと思われるが、Androidの場合は、ファイルマネージャ系のアプリからファイルの転送先として「WebAccess A」を指定することで、スマートフォンからNASへとファイルをアップロードすることもできる。スマートフォンにしかないデータは、この方法でNASへとデータを移行するといいだろう。


ShareフォルダをWebアクセスで利用可能に設定。もちろんスマートフォンから設定可能

 なお、LinkStationシリーズには、標準で作成済みの「Share」、「info」という共有フォルダに加えて、前述した「SmartPhone Navigator」によって作成された「webaxs」フォルダが存在する。

 このうち、DLNAサーバーやiTunesサーバーの参照先として設定されているのは「Share」になるが、このフォルダはリモートアクセスでの接続が許可されていないため、標準では「WebAccess i/A」から参照できない。ブラウザを利用してリモートアクセスを忘れずに許可しておこう。

 ちなみに、今回利用した3TBモデルのNASの場合、圧縮して取り込んだ場合の容量を音楽CD1枚あたり60MB程度と仮定して換算したとすると、約5万枚分保存することが可能となる。一般的な家庭にある音楽CDであれば、余裕で保存することが可能だ。

 このため、NASの大容量を活かして、CDの音質そのままにNASに取り込み直すというのも1つの手だ。WAVでも約5,000枚、ロスレスのFLACやApple Lossless Audio、Windows Media Audio Losslessを利用したとしても1万枚弱のCDを保存することが可能となる。

 最近では、FLACなどのロスレスフォーマットをネットワーク経由で再生できるプレーヤーをオーディオメーカーなどが提案している。ヤマハやパイオニア、マランツ、デノンなどがネットワークプレーヤーを発売しているほか、AVアンプなどでも同種の機能を備えた製品も増えている。こうした製品を活用するためにもシステムの中核がNASになるわけだ。

WAVやロスレス形式でもあらためて取り込んでおくのも手。大容量のNASなら、容量を気にせずデータを保存できるパイオニアのネットワークプレーヤー「N-50」

 場合によっては、スマートフォン用にAACなどの非可逆圧縮形式の音楽、保管目的や家庭用オーディオ機器での再生向けにロスレスでと、同じCDを2通りのデータで保存しておくという手もある。大容量のNASを使えば、容量に悩まされることなく、大量の、そしてさまざまな形式の音楽データを保存しておくことができるだろう。



■ DLNA/AirPlay対応コンポやスマートフォンで再生する

DLNA対応のX-SMC5-Kなら、NASに保存された音楽をネットワーク経由で直接再生可能

 ここまで準備ができれば、あとは機器から再生するだけだ。

 まず、家庭用のオーディオ機器での再生だが、今回利用したパイオニアの「X-SMC5-K」であれば、DLNAでの再生が簡単だ。X-SMC5-Kを有線LAN、無線LANのいずれかでネットワークに接続後、メニューから「Music Server」を選択すればLS-V3.0TLにアクセス可能になる。

 メニューを見ながらリモコンでサーバー上のライブラリを表示し、曲を選択すればそのまま再生することができる。NASに、家庭内のCDをすべて保存しておけば、CDを入れ替えることなく、手元からすべての音楽を再生できるというわけだ。

 一方、スマートフォンでの再生には、バッファローの無料アプリ「WebAccess i/A」を利用する。iPhoneやAndroid端末に、このアプリをインストール後、「BuffaloNAS.comネーム」を登録し(SmartPhone Navigator利用時は登録済み)、アクセスすることでNAS上の音楽データを再生することができる。

 このアプリは、バックグラウンドでの再生にも対応しているうえ、フォルダ単位でのシャッフルや連続再生が可能となっている。NAS向けのアプリの中には、バックグラウンド再生に対応していないものもあるので、プレーヤーとしても使いやすい印象だ。

 便利なのは、外出先でも3G回線などを利用して自宅の音楽を再生できる点だ。「BuffaloNAS.comネーム」を登録することによって、スマートフォンを外に持ち出した場合でも、自宅のNASにアクセスできるようになっている。

 つまり、ネットワークにつながる環境さえあれば、もう音楽データは持ち歩く必要はないわけだ。

WebAccess iやWeb Access Aを利用することでサーバー上の音楽を再生可能。もちろん外出先でも3G経由で再生できる

■ コントローラーとしてスマートフォンを活用する

 このほか、スマートフォンをコントローラーやリモコン的に使うこともできる。

 今回利用したパイオニアの「X-SMC5-K」は、AppleのAirPlayに対応している。このため、WebAccess iでNAS上の音楽をiPhoneで再生した状態で、出力先としてAirPlayをタップし、X-SMC5-Kを選ぶことで、音楽をX-SMC5-Kから(もちろんApple TVでも可)再生することが可能となる。

 Androidの場合はAirPlayが使えないが、DLNA1.5に対応したクライアントアプリを利用することで、同様のことが可能だ。サーバー(DMS)となるNAS上のデータをコントローラー(DMC)となるAndroid端末上で選択し、レンダラー(DMR)となるX-SMC5-Kなどで再生することができる。

AirPlayを利用することで、NASの音楽をiPhone経由でX-SMC5-Kで再生できるDLNAに対応したTwonkyなどを利用すれば、スマートフォンをDMCとしてX-SMC5-KなどのDMRでNASの音楽を再生可能

 DLNAの場合、オーディオ機器だけでなく、サーバー側やアプリ側で再生できる音楽形式が限られる場合があるうえ(上記の組み合わせではApple Lossless AudioやWindows Media Audio LosslessはNG)、コントローラーからの操作がレンダラーに反映されるまでに若干のタイムラグがあるが、基本的に常に手元にあるスマートフォンを使って、家庭内のオーディオ機器で音楽を再生できるのは、なかなか快適だ。

 場合によっては、自宅のNASの音楽を友人宅のオーディオ機器やApple TVを使って再生するといったこともできるので、いろいろな応用ができそうな機能だ。


■ NASを音楽の中心に

 このように、NASを利用すると、単純にPCやスマートフォンの音楽データを移行できるだけでなく、さまざまな機器との連携を楽しめるようになる。

 これまで、NASはPCの周辺機器、文書などのデータ保存用というイメージが強かったかもしれないが、実際にはオーディオ機器やスマートフォンとの相性が良い製品へと進化しつつあるので、エンタメライフのために導入を検討してみるのもいいだろう。

 ただし、NASを選ぶ際は、NAS本体の機能だけでなく、アプリの完成度もきちんとチェックしておくことが大切だ。そういった意味では、今回取り上げた「LS-V3.0TL」は、AV用として検討する価値がある1台と言える。


(2011年 11月 10日)

[Reported by清水理史]