プレイバック2015

VR、UHD BD、HDRにみる映像進化 by 西川善司

 2015年、映像関連、大画面関連で何があったかを振り返ってみると、幾つかのキーワードが思い出される。「Ultra HD Blu-Ray」「BT.2020/広色域/HDR」「HDMI2.0a」「4K」「仮想現実(VR)」あたりだろうか。

「Ultra HD Blu-Ray」

 4Kブルーレイこと「Ultra HD Blu-ray」(UHD BD)は、業界では、「最後の12cm光ディスクメディアになる?」とも言われており、これは、端的に「次世代映像メディアはネットワークになるだろう」ということをも意味している。

 映画が大好きな自分としては、UHD BDは、今のBlu-ray 3D的なポジションくらいまでには定着して欲しいとは思うが、「どうなっていくか」を見極めるには2016年になってからリリースされるという市販UHD BDタイトルの充実度を見てからにしたい。

 現在は、実勢価格35万円超のパナソニックのUHD BD再生対応BDレコーダ「DMR-UBZ1」しかなく、個人的にはプレーヤーがリリースされた時が手の出し時だと思っている。PS4がマイナーチェンジして、UHD BD再生対応になってくれると助かるのだが……。

世界初のUHD BD再生機「DMR-UBZ1」

「BT.2020/広色域/HDR」「HDMI2.0a」「4K」

 2014年は試験放送だった4K放送が、2015年には本放送に移行。4Kテレビの新製品は、通年、各社から発売され続けた。

特に、4K/8K映像コンテンツ向けの規格ITU-R BT.2020で規定されている「広色域」「ハイダイナミックレンジ」(HDR)に対応する4Kテレビ製品は、4Kテレビ製品選びのキーポイントとして各メディアに取り上げられた。発売後の後日ファームウェアアップデートでの対応となる機種もあるが、HDR対応4KコンテンツをちゃんとHDR表示で楽しむことができるようになるのは、今季4Kテレビのユーザーだけに許された特権で、昨年モデルのユーザー(例えば筆者)からすればとてもうやましいポイントである。

 前述のUHD BDもHDR/広色域に対応することが明言されており、「解像度の向上」だけでない、「色」「コントラスト」の高品位化の時代がついに幕開けを迎えたということでもある。

 「広色域」「HDR」の伝送に対応した「HDMI2.0a」も2015年春に規格化され、2014年時は「4Kはもうちょっと待った方が」という雰囲気がなくもなかったが、2015年からは、全要素が出揃った感もあり、あとはサイフと折り合いを付けるだけになった。

 ちなみに、筆者は、昨年、40インチの東芝REGZAの4Kモデル「40JX9」をPCモニター的に導入しているので、映画好きの筆者としては、今期新導入するとすればHDR/広色域対応の4Kプロジェクタの方かなと思い、今期のソニーの4K-SXRDプロジェクタを本命視していたが、4K/60Hz映像の表示に関してはYUV420までの対応のため、今回は見送ることにした。

ソニー「VPL-VW315」。レビューは25日掲載予定

「仮想現実(VR)」

 今年も、仮想現実(VR)関連の話題がホットな年であった。

 VRブームの仕掛け人であるOculus VR社は、E3 2015で、市販版の「Oculus Rift CV1」(CV1)を初公開。5月にはCV1を使用するためのPCの推奨スペックも公開された。そして、この奨励スペックが異様に高いことが話題になる。Oculus VR社としては上質なVR体験を担保するために、ここは妥協しなかったというわけである。

Oculus Rift CV1を体験する筆者。Oculus Touchコントローラは意外に使いやすい!

 VRブームのもう一方の仕掛け人であるソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、これまで「Project Morpheus」というコードネームだったVRシステムを東京ゲームショウ2015のタイミングで「PlayStation VR」(PSVR)に改めた。PSVRでは、PS4と組み合わせればVRが楽しめることを強調。Oculus Riftと比較すれば、導入までの敷居は低いと言え、VR入門プラットフォーム的な位置づけになりそうである。

「サマーレッスン・アリソン版」(金髪留学生版)をプレイする筆者。バーチャルな肩組みも体験(ゲームの進行にはなんの影響もありません

 CV1、PSVR、共に発売は2016年と言われており、具体的な日程自体は明らかにされていないが、2016年前半になるだろうと予測されている。今から発売が楽しみだ。

 そして、もう一つ。

 VRに関しては「カジュアルVR」とも言うべき、新カテゴリのVRも広がりを見せている。

 スマートフォン(スマホ)を装着するだけで、簡易的なVR HMDを構成できるものが秘やかな人気を博し、「むしろ、これこそがVR体験の本命」と見る向きもでてきているほど。

筆者がAmazonで購入した中華カジュアルVR-HMD。筆者はTHETA Sで撮影した写真を楽しむのにGalaxy Noteをはめて楽しんでいる

 こうしたスマホベースの「カジュアルVR」プラットフォームは、そのVR体験自体の品質は、CV1やPSVRの品質に到底及ばないが、「導入コストが安いこと」と「ユーザー自身が手軽にカジュアルVRコンテンツを作れてしまうこと」に魅力があると言われている。

 安価なスマホを合体させてVR-HMD化するグッズとしてはサムスンが12月より発売した「Gear VR」(13,800円)が有名だが、ボール紙製/プラスチック製の「ハコスコ」や中国産の同系製品などは3,000円未満で発売されており、とても安価だ。

Gear VR

 カジュアルVRコンテンツの筆頭は360度全天全周映像といわれ、これが撮影できるカメラとしてリコーの「THETA」シリーズが人気を博し、10月には性能と画質を高めた上位モデルの「THETA S」(実勢価格4万円前後)がリリースされ、売り切れ店が続出するほど人気を博している。ちなみに、インプレスではこの「THETA」シリーズと「カジュアルVR」をからめたムックが出ているそうなので、興味のある人はどうぞ。

THETA S

 ところで、YouTubeは2015年春に360°全天全周の2D映像の提供配信に対応し、11月には360°全天全周の3D映像にも対応した。つまり、ユーザーが撮影した全天全周映像を気軽にYouTubeにアップすることが出来るようになり、それをユーザーが3000円未満のお手軽VR-HMDで見られるようになったのだ。

 カジュアルVR専門のYouTuberが出てくることもそう遠い未来のことではないのかも知れない(もういてもおかしくない)。

おわりに

 約2年前に、キャリア移籍までして購入した大画面スマホのソニー「Xperia Z Ultra」が2年を迎えた。

 現時点で、その性能に不満はないのだが、2年間の間に、画面関連の故障が2回もあり、有償の補償サービスを利用して新品交換して現在ので3機目になる。Xperia Z Ultraは冬に弱いようで、いずれも寒い季節になってから故障している。また、寒い季節を迎えるし、そろそろ、契約更新の時期なので、新しいのに変えたいのだが、6.4インチのXPERIA Z Ultraに慣れてしまうと、もう6インチ未満には戻れない。何か、いい機種はないだろうか……

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(VRスコープ付録付)
RICOH THETA
パーフェクトガイド
THETA S

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちら