トピック

THETA SとVRスコープで360度を撮ってフル体験!

VRスコープ付で2,100円。「RICOH THETAパーフェクトガイド」発売

 全天球撮影というジャンルが、ここ1、2年で一気にメジャーになってきた。周囲360度の風景を1つの映像に収めてしまう撮影手法だが、これを単なる「パノラマ撮影の延長」と捉えてしまうと、その楽しさは理解しにくいかもしれない。従来の写真や動画と同じように撮影データを“2次元”のまま見るだけでは、画面上では円形にぐんにゃり歪んだ画像か、左右に広いパノラマ画像のような見た目になってしまうから、「どこが楽しいの?」なんて思いかねないのだ。

「RICOH THETA パーフェクトガイド」が11月26日発売

 ところが、撮影した360度映像を、自分の視界全体に再現できるとすればどうだろう。これにGoogle CardboardなどのVRスコープを組み合わせて、360度の視界を自由に見渡すことができれば、全天球撮影に対するイメージは大きく変わってくるはずだ。誰かが撮影した憧れの異国の景色や、未知の建物の内部、スポーツしているプロアスリートの視点など、まるで自分がそこに入り込んだり、撮影者本人になったかのようなリアリティが感じられるのだから。

RICOH THETA パーフェクトガイド
Amazonで購入

 そんな魅力あふれる全天球撮影の先鞭を付けたのがリコーのTHETAであり、その最新世代となる「THETA S」が10月に発売された。すでに小寺氏のレビューでも紹介している通り、暗所での画質が改善や動画撮影の強化などでさらに魅力を高めたTHETA上位モデルとなる。

 インプレスではこのTHETA S(とベーシックモデルのTHETA m15)を解説し、使いこなし術も学べるムック「RICOH THETA パーフェクトガイド」(2,160円)を、11月26日から発売する。しかもスマートフォンと組み合わせて手軽にVRを体感できるVRスコープが付属しているので、購入したらすぐに全天球撮影の写真を使ったVRを試すことができる。今回はこのVRスコープを使ったTHETA Sの映像の楽しみ方を紹介しよう。

ムックにはVRスコープが付属

360度の静止画と動画を撮影できるハイスペックモデル「THETA S」

 まず最初に、改めてTHETA Sという全天球撮影カメラについて簡単に説明しておきたい。やや幅広のスティック型のフォルムをもつTHETA Sは、主に手で持ったり、底面に設けられたねじ穴を使って三脚などに固定して撮影するタイプのカメラだ。前面と背面にカメラレンズを1つずつ搭載し、この2つのレンズで同時撮影された映像を内部で合成することで、THETA Sの前後左右上下、つまり周囲360度の風景を捉える仕組みになっている。

最新型の「THETA S」
シンプルデザインの筐体
側面
本体上にはマイク
底面には三脚用のねじ穴が設けられている

 撮影データの形式はJPEGフォーマットの静止画像(1,400万画素相当)と、フルHD(1,920×1,080ドット)30fpsのMP4動画。本体に設けられたボタンでシャッターを切ったり、静止画・動画撮影を切り替えたり、もしくは専用スマートフォンアプリ「RICOH THETA S」(Android/iOS)と連携させてリモートから操作することも可能だ。フルオートの撮影もできれば、シャッタースピード優先やISO優先、マニュアルモードなども用意され、ホワイトバランスと露出の補正機能も行なえるなど、かなり本格派となっている。

専用アプリ「RICOH THETA S」
動画撮影時の画面
静止画撮影時の画面ではリアルタイムプレビューも行なえる

 専用アプリではTHETA Sの撮影操作に加え、静止画撮影時のプレビュー、撮影済みデータのスマートフォンへの転送ができる。撮影した静止画や動画の表示・再生機能もあり、画面をドラッグすることで視点の方向を360度、自在に変えながら眺めることが可能だ。もちろん動画再生時も同じように視点方向をリアルタイムに変えられるので、動画での進行方向とは逆の方向を見たりして、これまでにないインタラクティブ感にあふれる動画視聴を楽しめる。

THETA S内蔵メモリに記録されているデータをスマートフォンに転送
360度の映像を画面ドラッグで視点方向を変えながら閲覧できる

 というわけで、THETA Sを使っていくつか写真と動画を撮ってみたので、ひとまずはスマートフォンやPCの画面でご覧いただきたい。最近になってYouTubeでは360度動画に対応し、スマートフォン版アプリではさらにVRスコープ用の表示(Cardboardモード)も可能になっている。このVR表示については後ほど説明するが、すでにVRスコープをお持ちならぜひ試してみてほしい。

【静止画のサンプル】
新しい家(建築中)の室内
狭くて散らかっている室内
【【動画のサンプル】】
新しい家(建築中)の室内(thetas_sample03.mp4/74MB)
カートレース(thetas_sample04.mp4/1.13GB)

厚紙製のVRスコープをサクッと組み立てよう

 さて、THETA Sをまるっと解説するインプレス刊の「RICOH THETA パーフェクトガイド」だけれども、冒頭で書いたように厚紙製のVRスコープが付属している。Oculus RiftのようなVRデバイスの簡易版みたいなもので、比較的名前の知られている同種のものとしてはGoogle Cardboardがある。紙製以外にも、プラスチック製のものや、ヘッドバンド付きで両手をフリーにできるものもあったりする。

「RICOH THETA パーフェクトガイド」に付属しているVRスコープ。前面には[THETA]ロゴ(THETA Sは別売)

 ただ、どれも基本的な構造は同じで、箱形のヘッドギアのようなフォルム。一眼式と二眼式の2種類があり、今回の付属VRスコープの場合は左右の目の視界を内部中央で仕切っている二眼式で、前方にスマートフォンを横置きで差し込んで固定できるようになっている。これを手に持って顔の前に構え、手前にはめ込まれたレンズを通して見ることで、その先にあるスマートフォンで表示している映像をレンズの効果で拡大して見ることができる。

スマートフォンを差し込んで固定
このレンズを通してスマートフォンの画面を見る

 この時、スマートフォンの画面では、アプリやYouTubeのVR表示機能などを使って映像を(端末横置き時に)左右2分割した形で表示しておく。こうすることで、両目の視差を利用して立体的に映像を見ることが可能になり、これまでにない迫力と臨場感を得られるというわけだ。ムック付属の紙製のVRスコープのように、安価なものでも十分に拡張現実の世界にのめり込めることが分かる。欲を言えば、使用するスマートフォンはある程度高解像度のものにしておきたいところ。

 ちなみに、この付属のVRスコープは自分で組み立てる必要がある。と言っても、最初からしっかり折り目が付いているし、ハサミやのりを使ったりする必要もない。加工なんかも一切不要で、同梱されている組み立て手順書を見ながらやれば、迷うことなく、簡単に、立派なVRスコープが完成する、はず。コツとしては、完全に組み立てる前にレンズ部分に付着したホコリを丁寧にふき取っておくこと。レンズを通して見た時に、ホコリが少しでもあると気になってしまい、没入感がそがれてしまう。レンズのきれいさは、けっこう重要だ。

【組み立ての手順】
1.持ち上げて箱状にする
2.両側に凹みを作る
3.レンズ部の面を折って差し込み、凹みを作る
4.反対側の面も同じように折って差し込み、凹みを作る
5.左右ともツメ状の部分を折って差し込む
6.完成
7.iPhoneなどを挿入して使う

VRを体験する時は、周囲に人や物がないか注意しよう

 VRスコープを組み立てたら、いよいよVRを体験する準備に取りかかる。すでに説明しているようにYouTubeで動画のVR表示が可能になってはいるけれども、アップロードの際にPC用のツールを使わなければならなかったり、静止画をVR表示する簡便な手段がないので、THETA Sで撮影した映像をお手軽にVRで体験したいなら、専用のVRアプリを使うのが手っ取り早い。

 ただし、11月20日現在、専用のVRアプリでもでできること、できないことがある。あらかじめ整理しておくと、純正の「RICOH THETA S」アプリでは静止画のみのVR表示が可能で、iPhoneでは一眼と二眼のVRスコープに対応する2種類のモードを選択できる。Androidでは、二眼のVRスコープに対応するモードのみ用意されている。

iPhone版の「RICOH THETA S」では静止画表示時に2つのVR表示モードを選べる
二眼では左右に分割表示
Android版の「RICOH THETA S」。こちらは二眼のみ

 今回のムックに付属しているVRスコープは、端末を挿入する部分がiPhone 5/5s/6/6sのサイズに合わせて作られているので、ここではiPhoneを例に説明するが、サイズさえ合えばAndroidスマートフォンでも問題なく利用できる。

 では、「RICOH THETA S」を起動したら「アプリ」から写真を1枚選ぼう。端末を横置きにして右から2番目のアイコンをタップするとメニューが表示されるので、「VRビュー(二眼)」を選択して端末を横置きにすると画面が左右に2分割される。そのままVRスコープに端末を挿入して、目の前に構えてのぞき込もう。と、その前に、周囲に人や物がないことを必ず確認してほしい。VRスコープをのぞき込んだら、もうそこは現実とは違う、拡張現実の世界なのだ。首や体を動かして見ることになるし、映像に驚いて思わず体が動いてしまうかもしれない。

起動後の画面から「アプリ」を選ぶ
THETA Sで撮影した好きな静止画をタップしよう
画面をタップすると現れるボタンのうち、画面下部右から2番目をタップ
VRスコープに端末を挿入し、静止画のVR表示を楽しもう

 上下左右を見るためには実際に首や体を動かしてその方向を眺める必要があり、まるでそこにいるかのようなリアリティを感じられる。

正面を向いたり
下を見てみたり
上を仰ぎ見たりと、ガンガン体を動かすことになるので、周囲に注意

 ただし、没入しすぎて、“VR酔い”しないように注意してほしい。体質的に問題ない人もいれば、酔いやすい人もいるようだ。特に使い始めには様子を見ながら楽しんで欲しい。

 静止画の臨場感もものすごいが、実は動画撮影したものもVR表示が可能で、そこにも驚きの体験が待っている。

 残念ながら「RICOH THETA S」アプリはまだ動画のVR表示に対応していないが、サードパーティ製アプリなら対応しているものがある。例えばiPhone用なら「キロル360」、Android用なら「タオ360」を使ってみよう。

 のぞき込んだ画面には、端末に転送したデータのサムネイルが表示されているはずだが、ここはVR。サムネイルは自分を取り巻くように並んでいて、表示・再生したいものを選ぶにはそのサムネイルがある方向をしっかり見なければならない。見たいデータは正面ではなく、真後ろに存在する場合もある。首をひねったり体を回転させたりして、中央にあるマーカーを見たいデータのサムネイルに合わせ、数秒間そのままホールドするとVRコンテンツの再生スタートだ。

「キロル360」のサムネイル画面

圧倒的な臨場感! THETA Sを楽しむならVRスコープ(とムック)は必携

 あとは思う存分VRコンテンツを堪能し尽くすだけ。視野角が一定範囲に限られる普通のカメラで撮った映像とは異なり、360度の風景を自由に眺められるTHETA Sの映像は、撮影した本人もその場では気付かなかった新しい発見がたくさんあり、何より臨場感が圧倒的だ。建物以外にも、森や草原のような大自然の中で撮影したものならリラックスできそうだし、カメラしか入ることのできない狭い場所の映像も面白いのではないだろうか。

 サンプル動画でも紹介している通り、筆者はちょうど新居を建てたばかり。こういった“節目”を360度撮影しておけば、今までの写真や動画とはまた違った思い出深い“記録”として残すことができ、「当時はこうだったなあ」なんて、数年後に見返した時にも新鮮に驚けるような気がする。

 THETA Sは単体でも楽しく使えるカメラだが、VRスコープとスマートフォンを組み合わせてこそ、本来の魅力を100%味わえるはずだ。THETA Sを使いこなすための「RICOH THETA パーフェクトガイド」なら、VRスコープも付属して2,160円。おトクに学んでおトクにVRを始められるこのセット、本気でおすすめだ。

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(VRスコープ付録付)
RICOH THETA
パーフェクトガイド
THETA S


日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。