プレイバック2015

エヴァTV放送20周年。オンエア版視聴で当時の熱狂を追体験!? by 編集部:庄司

「時に、西暦2015年」

 お馴染みの極太明朝体の表記で幕を開けるTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の劇中年が、あと数日で終わろうとしている。今年を振り返ると、当然ながら使徒は攻めてこなかったし、初号機も起動せず、NERVやゼーレの暗躍もなかったが、世間では“エヴァイヤー”ならではの数々の企画や催事が人々の耳目を引いた。

2015年元日のエヴァンゲリオン公式サイト

 エヴァの舞台となった箱根にほど近い東名高速道路の足柄サービスエリアでは、世界最大を謳う初号機立像がお目見え(〜12月23日公開終了)。JR西日本では500系新幹線の外観などを初号機仕様にした「500 TYPE EVA」が11月に運行開始した。自ら取材したこともあって、セブン-イレブン ジャパン×スタジオカラーコラボの「エヴァスマホ」発売も記憶に新しい。

 だが個人的には、記念すべきエヴァイヤーは今ひとつ盛り上がらなかった。新劇場版:Qの公開から3年経ち、最終章「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」に関する続報を心待ちにしているのだが、今だに何の発表もない。これが一番気がかりだ。

 加えて、エヴァの舞台となった箱根山一帯の火山活動が一時と比べると落ち着いてきてはいるものの、今なお現地の生活・観光に少なからず影響を及ぼしていることも心配の種。夏の間に聖地巡礼へと気軽に繰り出せなかったことが心残りである。

 すっかり前置きが長くなってしまった。そんなわけで不完全燃焼感が否めない筆者的エヴァイヤーだったが、8月26日に発売されたBD-BOX&DVD-BOXはもちろん予約購入し、発売日に入手した。

当時の放映日に合わせてオンエア版エヴァを見よう作戦! なのです

 パッケージ名は「新世紀エヴァンゲリオン NEON GENESIS EVANGELION Blu-ray BOX」と「新世紀エヴァンゲリオン TV放映版 ARCHIVES OF EVANGELION DVD BOX」。BD-BOXはTV版本編とビデオフォーマット版4話(第弐拾壱話〜第弐拾四話)に加え、いわゆる旧劇場版3作や、これまでに発売されたBOX収録の特典映像もすべてHDリマスターで収めている。一方、DVD-BOXはテレビ放送時のオリジナル映像を初ソフト化したもので、BD版とは異なる本編や劇場版が収録されている。

 どちらも色付きのクリアケースに収められたパッケージで、カラーはBD-BOXが青、DVD-BOXが赤。タテヨコサイズはほぼ同じだが、BD-BOXの方が収録枚数が多いぶんやや厚め。Amazon.co.jpでの購入価格は、両方合わせて44,500円ほどだった。

新世紀エヴァンゲリオン NEON GENESIS EVANGELION Blu-ray BOX
新世紀エヴァンゲリオン TV放映版 ARCHIVES OF EVANGELION DVD BOX

 筆者が特に注目したのはTV放映版(オンエアバージョン)を初収録したDVD-BOXの方だ。世に出回っているTV版エヴァのビデオソフトはいずれも放送時の映像に何かしら手が加えられているのだが、このDVD-BOXにはそういったことが行なわれていない、いわば“素のTV版エヴァ”が収められている。

 実際に再生開始すると、「残酷な天使のテーゼ」とともに流れるオープニング映像の後、昔のセガや角川書店のロゴが大写しになり、「ご覧の番組は……の提供でお送りします」といったナレーションが入るので、従来のビデオソフトとの違いはすぐに分かる。Bパートのアイキャッチにはご丁寧にひらがな表記のタイトルも付いている。リアルタイム視聴世代ではない筆者にとっては、20年前の放映当時の映像は見たことも聞いたこともないものばかりだが、初めて放送波に乗せて送り出されたエヴァの映像を楽しめるのはとても嬉しい。

 もちろん放送当時の画質・音質なので決して見やすいとは言えないが、リテイクが入る前の細かな違い探しが楽しめるのは大きい。それにより良い画と音で見たければBD-BOXがある。そういった意味で、このDVD-BOXは「コアなエヴァファン向けのコレクターズBOX」という趣が強い。

DVD-BOXは8枚のDVDとブックレット(36ページ)を収めている

 エヴァがテレビ東京で放送開始したのは1995年10月4日(水)。これに合わせ、筆者は今年の10月4日(日)から、当時のエヴァTV放送スケジュール通りに毎週1話ずつ、TV放映版DVDを見るというプロジェクトを1人で始めた。'16年3月27日(日)には第弐拾六話まですべてを見終える算段だ。再生するタイミングまで厳密に放送時間に合わせるとなるとさすがに難しいが、休日だから平日よりは時間の都合がつけられるし、毎週見続けられる……はずだったのだが、早々にそのプロジェクトは頓挫。複数話をまとめて見るいつもの視聴スタイルに落ち着いてしまった。

 ちなみに、20年前の12月20日の放送話は第拾弐話「奇跡の価値は」。衛星軌道上から落下攻撃でNERV本部を破壊しようと迫る第10使徒サハクィエルを、エヴァ3体同時展開による殲滅戦で倒すというアレだ。最も気に入っているエピソードで、まさに“明るいエヴァ”が絶頂を極めたあたりだと思う。

DVD-BOXの輸送箱。パッケージ内容などの詳細仕様が印字され、資料保管箱っぽい雰囲気
ディスクケースは発泡スチレンシートとプチプチで二重にくるまれている。これはBD-BOXも同様だ

 ちなみに、筆者がエヴァに初めて出会ったのは90年代も終わりの、ちょうど中学生に上がるあたりの頃。第拾壱話「静止した闇の中で」再放送を見たのがすべての始まりだった。宇宙や星の話題が好きだった筆者は当時、発令所に表示された「EVA」という単語を見て、スペースシャトルなど宇宙船から船外に出て作業を行なう“船外活動(Extravehicular Activity)”のことだと勘違いし、「いつになったらこのロボットたちを格納できるすごい宇宙艦が出てくるのかなあ」と勝手にワクワクしていた。

 ネットもスマホもアニメ誌もない環境に育った少年が、何の前情報も無く「エヴァ沼」に転がり込んでどうなるか。次第に暗くなる展開を固唾を呑んで見守っていたが、劇場版では意味不明な病室シーンに続いて惣流・アスカ・ラングレーと弐号機が凄惨なバトルに敗北、さらにまったく救いのない映像が続き、締めは「気持ち悪い」の一言。「パッヘルベルのカノン」の演奏シーンには癒やされたが、それ以外のシーンから受けた衝撃はあまりにも大きかった。

 今の中学生のように学校で気軽にアニメ話ができる環境など無いに等しく、気が付くと図書館でエヴァの世界観の元ネタである心理学や宗教思想、哲学、歴史、テクノロジーの本を片っ端から読み漁っていき、関連のあるアニメ作品を追いかける人間になってしまっていた。筆者にとってエヴァは、(終盤はともかくとして)純粋にアニメとして面白かった作品であると同時に、自身の“幼年期の終わり”を告げた作品でもあった。

10枚のBDと176ページに及ぶブックレット、LD・VHSの封入特典「EVA友の会」(復刻版)を収めている
BD-BOXの輸送箱。こちらもパッケージの内容や同梱品など詳細仕様が印字されている

リマスターBD版は映画館で徹夜視聴。完結編は来年に期待?

 実はここしばらくTV放映版DVDばかり視聴していて、BD-BOXの方は開封していなかった。発売直後の8月28日/29日に、TOHOシネマズ 新宿で2夜にわたって開催された「西暦2015年 夏 『新世紀エヴァンゲリオン』 Blu-ray BOX発売記念上映会」で、全話(ビデオフォーマット版を除く)+(旧)劇場版2作を観て満足してしまったことも影響している。この上映会では実に18年ぶりとなる、オリジナルの「シト新生 DEATH & REBIRTH」の劇場上映も行なわれた。

 各日13話+劇場版1本を、午後9時から翌朝午前5時頃まで徹夜でひたすら観るという行為は精神的にも体力的にもなかなか厳しく、しかもあの内容である。何度か休憩を挟みながらとはいえ、もはや魂と肉体の持久戦に近かった。周囲からは、脱落者の立てるいびきが時折聞こえてくるという有り様。すべてを観終わった後は変な高揚感と虚脱感に襲われ、しばらく動けなかった。

 さて、今年はエヴァイヤーということで「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」に関する何らかの情報が出ることに淡い期待を寄せていたのだが、年の暮れを迎えてもとうとう何の発表もなかった。「早く完結編を観たい、いつまで待たされるんだ? 本当に公開されるのだろうか?」とモヤモヤした気分を抱えたままエヴァイヤーの終わりを迎えるのはちょっと辛いが、制作側にとっては仕方のない事情もあるようだ。

 '07年に「エヴァより新しいアニメは無かった」とぶちあげた声明文からもうすぐ9年。「疲弊する日本のアニメを未来につなげ、蔓延する閉鎖感を打破したい」と始めた新劇場版に自らの魂を削られ、「Qの公開後、僕は壊れました」と漏らしてしまうほど壮絶な日々が、庵野監督にはあったのだろう。それでも納得のいくまで作り込まれた最終章の情報が来年には解禁され、すべてのエヴァファンの胸中に今一度「歓喜の歌」が流れることを切望している。

2016年以降に持ち越されたシン・エヴァンゲリオン劇場版:||

(庄司亮一)