VIERA Station 4Kビエラは、プラズマを超えた

西川善司のパナソニック4K対応ビエラマニア【前編】

テレビ市場に4K戦国時代が到来。テレビ売り場に行けば「4K」のロゴポスターや看板が乱舞している。各社からは4Kテレビ製品がこぞって登場、それぞれが独自の最新技術を盛り込んで4Kテレビ製品を開発、それらをハイエンドクラスにラインナップしている。

パナソニックの4K対応ビエラシリーズといえば、昨年発売された「TH-L65WT600」が鮮烈なデビューを飾った。TH-L65WT600は、先進の高画質性能を詰め込んできただけでなく、「業界初のDisplayPort搭載」が話題を呼んだのだ。この唯一無二のスペックには、PCゲームユーザーはもちろん、プロフェッショナルユーザーからの引き合いも強く、4K対応ビエラの存在感を強く、業界、市場、ユーザーに焼き付けることに成功した。

そして、その後継モデルともいえる「AX800」シリーズが2014年春夏モデルとして発売されたわけだが、今回、早くもその進化版モデルとして「AX900」シリーズが2014年秋冬モデルとして投入されたのだ。

あらかじめ言っておこう。AX900シリーズは、AX800シリーズの後継ではなく、上位モデルという位置づけである。さらに付け加えるならば、AX800シリーズは今後も併売される予定だとのこと。つまり、AX800シリーズが4K対応ビエラのハイエンド機ならば、AX900シリーズは4K対応ビエラのウルトラハイエンド機とも言うべき製品というわけである。

今回、AX900シリーズの実機を視聴する機会を得られたので、そのインプレッションや考察を前後編でお届けすることにする。

4K対応ビエラ初の直下型バックライトシステム採用

AX900シリーズがAX800シリーズの後継でなく上位モデルである…というのはどのあたりが根拠なのだろうか。気になる人も多いだろう。

まず第一に、画質に関連する本質部分で最も根幹となるバックライトシステムが刷新されている。TH-L65WT600および、AX800シリーズのバックライトシステムは、白色LEDを画面の左右に配置させたエッジ型バックライトシステムだったのだが、AX900シリーズでは液晶パネルの背面に配置した直下型バックライトシステムを採用したのだ。

もしかすると、エッジ型に対する直下型の優位性に関して少し補足説明が必要かもしれない。液晶パネルは構造上、バックライトからの光をRGB(赤緑青)の3原色からなる液晶画素で絞ってフルカラー画素を表現している。プラズマやブラウン管はRGB各画素が個別に自ら発光する仕組みを採用しているのとは異なり、液晶パネルでは黒表示の画素にも、バックライトからの光がやってきている。液晶パネルではバックライトからの光をRGB各液晶画素で遮断して「黒」表示を実践するのだ。同様に、RGB各画素で光を少し透過させれば暗色の表示となる。

蛍光灯照明下で映像鑑賞する分には、これでもいいのだが、暗室で鑑賞した際には少々気になる現象を目の当たりにする。それが「黒浮き」だ。RGBの液晶画素で光を遮断して「黒」を表現しても、やはり若干の光は漏れてきて黒が淡い灰色っぽく見えてしまうのだ。

そこで考案されたのが、映像中の明暗分布に応じて、バックライトの照度を領域(エリア)ごとに強弱制御しようという「バックライトエリア制御」のアイディアだ。

TH-L65WT600および、AX800シリーズで採用していたエッジ型バックライトシステムでも、「バックライトエリア制御」は行われていたのだが、バックライト自体が左右に配置されているだけなので、明暗分布は基本的には横帯状の単位でしか行えない。

その一方で、AX900シリーズは、バックライトが液晶パネルの真後ろに二次元的に配置されているので、映像中の任意の場所で任意のバックライトの照度分布を作り出せるのだ。

今回、パナソニックの視聴室で、TH-65AX900とTH-65AX800とで、同一映像を視聴させてもらったが、両者のエリア制御の実力がかなり違うことを実感した。

テスト映像として視聴したのはヴァンパイア系ファンタジー映画の「ビザンチウム」。夜のシーンで、橋下の白い無数の柱が並ぶ歩道を登場人物達が歩くシーンだ。白い柱と柱の隙間からは背景として漆黒の水面が見えており、AX800シリーズでは、白い柱の明るさが漆黒の背景にまで漏れ出てしまっているのに対し、AX900シリーズでは漆黒の背景が白い柱の明るさに影響をほとんど受けずに黒いままであった。明らかにAX900シリーズの方が、近景としての白い柱の存在感と、その隙間から見える漆黒の背景に奥行き感をうまく描き分けることが出来ている。ありていに言えば「リアル」に見える。

パナソニック担当者は「AX900シリーズでは、プラズマのコントラスト感の再現を目指した」と述べていたが、この発言もあながち大げさではないと実感する。

直下型バックライトシステムで安直にエリア制御をやると、そのエリア境界が顕在化する現象(HALO現象)が視認できてしまうことがあるが、AX900シリーズでは、このあたりもうまくコントロールされているようで、そうした悪癖は感じられない。

AX900シリーズにおいてこのHALO現象がなぜ少ないかと言えば、エリア制御アルゴリズムを、従来の液晶テレビで行われてきたものよりも高度なものにしているため。従来は、制御対象エリアの周辺1エリアまでの影響だけに配慮していたのが、AX900シリーズでは、これを周辺2エリアにまで対象を広げたというのだ。たとば制御対象エリアが明部でも、そこから離れたところに暗部があったとすれば、その暗部に配慮してそのエリアのLED輝度の持ち上げ幅を抑え、液晶画素の開口率制御優先で明部の明るさを表現するわけだ。まさに、前述した「ビザンチウム」の「白い柱」と「漆黒の背景」が同居していたシーンがリアルに見えたのは、この制御があったことの影響も大きかったのだろう。

AX800シリーズのフォローもしておくと、室内を蛍光灯照明下にすると黒浮き感は幾分か低減され、AX900シリーズとの見え方の差は縮まる。ただ、暗室で映像世界に没頭して見ようという向きには、AX900シリーズの方が高品質であることは間違いない。

また、AX900シリーズは直下型バックライトシステムという構造上、搭載されているLEDの個数もTH-L65WT600および、AX800シリーズより各段に多い。ということは、絶対的な輝度の高さもAX900シリーズは、TH-L65WT600および、AX800シリーズを上回るということになる。輝度優先の画調を選択すれば、明るい室内でも相当に明暗のメリハリの効いた映像が楽しめる。パナソニック担当者によれば一般的な液晶テレビの400〜450nitの約1.5倍のピーク輝度が得られるというから凄い。なお、この高輝度性能を活かした高画質化機能「ダイナミックレンジリマスター」については次回、紹介する。

広視野角で色調変位の少ないIPS液晶パネルを採用!

TH-L65WT600および、AX800シリーズとAX900シリーズとで大きく異なるポイントがもう一つある。

それは液晶パネルだ。

TH-L65WT600および、AX800シリーズでは垂直配向型(VA型)液晶パネルを採用していたのに対し、AX900シリーズではIPS型液晶パネルを採用するのだ。

IPS型液晶パネルは、広視野角なのが特徴で、もっと言えば、斜めから見たときの色調変位が小さいという特性があるのだ。「別にテレビを斜めから見ない」という人にも恩恵はある。4Kテレビの場合、その高解像度ぶりを堪能するために比較的、視聴距離を短めにして見るのがスタンダードになりつつありが、その場合、大画面テレビの正面に座ると、テレビの両端あたりは視線角度的に斜め方向になりがちだ。こうした時にもIPS型液晶パネルならば安定した色再現性で楽しめるのだ。

今回の評価でも、TH-65AX900の正面からわずか1メートルと数十センチ程度の至近距離で視聴したり、やや横方向にずれた位置からも眺めてみたのだが、IPS型液晶らしい安定した色表現が行えていた。まぁ、当然と言える。

なお、これまたTH-L65WT600および、AX800シリーズのフォローをしておくと、VA型液晶パネルがダメかというと、そんなこともない。むしろ黒の締まりや暗部階調性能はVA型液晶パネルの方がIPS型液晶パネルより優れている。ちなみに、AX900シリーズも85インチのTH-85AX900はVA型液晶なのだ。

それでは「逆に、IPS型液晶パネルを採用しているAX900シリーズは、黒の締まりや暗部階調性能はVA型液晶パネル採用のTH-L65WT600および、AX800シリーズに及ばないということなのか」という疑問を持つ人もいることだろう。

それは間違いだ。

だからこそ、AX900シリーズはその特性を補うのが直下型バックライトシステムを採用しているのである。VA型液晶パネルは、本質的に黒の締まりや暗部階調性能が優れているからこそ、TH-L65WT600および、AX800シリーズはエッジ型液晶パネルの採用でも目標性能が得られていたということもできる。

なかなかよくできたラインナップ構成だといえる。

実勢価格15万円前後で手に入るTH-40AX700もお奨め。4K対応PCモニターの購入検討者は要チェック!!

さて、より深いAX900シリーズの高画質性能のうんちくや解説、インプレッションは次回の【後編】で紹介するとして、最後に、40型のTH-40AX700について触れておきたい。

今回のパナソニックの視聴室で、TH-65AX900の視聴を終えて、ふと目にとまったのが、TH-40AX700だったのだが、なんと40インチサイズの4K対応ビエラなのだ。4K対応ビエラとしては最小サイズなのだが、これがコンパクトなリビングルームや、あるいはPCモニター兼用のデスクトップテレビとして丁度いい感じなのである。

PCモニター的に活用するというと視聴距離は50〜70センチ程度。「近すぎないか」…という指摘がありそうだが、20インチのフルHD画面を田の字状に並べたと思えば、それほど巨大というわけでもない。ドットバイドットでPC画面を表示したときにも、20インチのフルHD画面を想像すれば「細かすぎる」こともなさそうなのが想像できるだろう。

AX900やAX800、TH-L65WT600のようにDisplayPortはないが、HDMI2.0には対応しているので、NVIDIAのGeForce GTX970/GTX980であればHDMI経由で4K/60Hz表示を行える。そして何より、実勢価格が安い。現在、約15万円前後の値を付けているところもあり、30インチ前後の4K対応PCモニターが20〜30万円で販売されていることを考えれば、このコストパフォーマンスの優秀性は異常である(笑)。

しかも、TH-40AX700は、当たり前だが、ビエラなのでテレビ製品としても優秀だ。音声リモコンは付いているし、USBハードディスクによる録画機能までも搭載。おまけに画質は最新ビエラの映像エンジンベースなので、下手な4K対応PCモニターよりは断然高画質だ。本誌読者は割合としてヘビーPCユーザーが多いはず。4K対応PCモニターの購入を検討しているのであれば、このTH-40AX700も候補に入れて検討すべきだ。

というわけで、前編はこれにて終了。

次回は映像エンジン側の解説と評価をメインに行っていく予定だ。

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