VIERA Station 4Kビエラは、プラズマを超えた

「テレビの本質追求」が「ディスプレイ」への扉を開いた、4Kビエラ

少々大げさかもしれないが、今年発表されたパナソニックの新ビエラは、同社の生真面目さ、あるいは率直に商品をよくしたいという気持ちが現れた製品だった。とりわけ4K液晶パネルを採用するAX800、AX900には「自分たちはテレビとはこういうものだと考えている」という、テレビメーカーとしてのプライドを感じさせるものだった。

決して捨てられない"テレビの本質"とは

かつてパナソニックがプラズマ事業とテレビ事業の変調に苦しんでいた頃、就任したばかりの津賀一宏社長に、"テレビという商品カテゴリをどう捉えているか"と尋ねた事があった。すると”なるほど”と思う答えが返ってきた。今年のビエラを見ていると、津賀氏が話していたコンセプトが、商品企画・開発の現場に浸透して、それぞれの担当がテレビの本質を追いかけたのだなと改めて感じる。

津賀氏はこう言った。

「テレビ受像機の本質は高画質以外にはないんですよ。放送する番組をメーカーが作っているわけではありません。電波を通じてテレビ局が流すコンテンツを表示するトランスデューサーがテレビです。他の要素は”お客様のお役立ち”を考えて積み重ねている部分ですが、”テレビ受像機”である限りはテレビをキレイに観てもらうことが、圧倒的に大きな要素なんです」。

そう話しつつ、しかし

「テレビではなく、ディスプレイとして捉えるならば、他の可能性も出てきます」。

と締めくくっていた。

現代のテレビには、実に多くの要素が盛り込まれている。インターネットを通じてアクセスできるコンテンツにも対応するのは当たり前だし、家庭内にあるデジタル機器やメディアストレージにも繋がる方がベターだろう。”受像機としてのテレビ”は、このジャンルの製品が持つ機能の一つでしかない。

しかし一方でもっとも重要で、もっとも利用頻度が高い部分でもある。そう考えるならば、テレビ受像機に対するニーズが多様化したといっても、やはりテレビの本質は”画質”にあるのだと思う。そして”テレビの本質は画質にあり”という部分を徹底しているからこそ、今年のビエラはユニークさを持っているのだ。

”同じようなスペック”に埋もれない価値

たとえば最上位シリーズであるAX900だが、あまた盛り込まれている機能を並べていくと、昨今のプレミアムクラスの4Kテレビにありがちなものばかりだ。単純にスペックを並べ、機能の○と×を表にするだけならば、他社ハイエンドとの区別はつかない。

直下型LEDバックライトを多分割制御し、コントラストを上げ、暗部の色再現性を高める。広色域を実現するバックライトとカラーフィルターを搭載。モデルベース型超解像でフルHDもキレイに映る。バックライト部分制御を活用した、自動コントラスト復元機能搭載。4Kパネルならではの高精細さは見た目のメッシュ感を大幅に緩和して大画面でも滑らかな質感で映像を楽しめる……などなど、他にもあるだろう。

これらは現在の液晶テレビトレンドの中で最先端ではあるが、しかし、必ずしもパナソニックだけの価値ではない。4Kテレビブームの真っ最中だけに、4Kパネルを採用したテレビには各社とも力を入れており、高画質化の要素技術に関しても同クラスの製品ならば基本はよく似ているのだ。

しかし、パナソニックは別の切り口から”本気の液晶テレビ”を作ろうと考えた。

惜しまれつつもプラズマディスプレイパネル(PDP)の生産を止めたパナソニックだが、今でも液晶がPDPに比べて優れているとされてきた要素がある。たとえば視野角、暗部色再現、局所コントラストといった部分だ。一時、パナソニックは”映画を観るならプラズマ”といったキャンペーンを張っていたことがあるが、視野角以外の要素は、すべて映画という映像作品の鑑賞に適した特性だった。

もちろん、液晶には液晶の良い部分もあり、液晶テレビを主力としてきたメーカーは、液晶テレビの長所を伸ばし、短所を目立たなくする技術開発を行ってきたのだが、パナソニックは違った。プラズマが持っていた美点を、最新の4K液晶パネルでも引き継げるよう技術開発を行ってきたのだ。

それが、いくつかの記事で紹介してきた様々な画質改善のアプローチだったが、その結果はなかなかのものだった。シネマプロモードは最良のプラズマをも超える映画画質を勝ち得たのだ。唯一、動画解像度だけは及んでいないが、それも4K入力にも対応する倍速補完で、クラストップの実力たりえている。

加えてAX900はリビングモード時には液晶らしい”明るさ”を活かした絵作りも完成度を高め、IPSながら違和感少なく制御幅の大きいLED部分制御が高いコントラスト感を演出している。

パネル自身のコントラストが低いIPSで、ここまで積極的かつ違和感の少ない部分制御は、それだけでも賞賛に値する。過去の製品を振り返ると、IPSで直下型LEDバックライトの積極制御を行っていた製品はほとんどない。パネル自身のコントラストが低いということは、漏れ光が多いということであり、バックライトを動かすことでの違和感(ハロの多発)が発生しやすいからだ。

実は同じAX900でも85V型モデルはVAパネルを採用している。元のコントラストが高いため、IPSモデルより高い画質を実現しているが、視野角を含めたトータルの満足度はIPSモデルの方が高い。”お一人様”でテレビを観るならば、正面に座ればいいだけのことだが、家族でテレビを楽しむとなると話は変わってくる。

IPSの視野角が良いという長所をさらに伸ばすため、パナソニックは位相補償フィルムを採用することで、斜め上などIPSが不得意な方向への視野角を広げている。このことが印象を良くしている面もあるだろう。PDPから液晶パネルへ。上位の高画質モデルを置き換える上で、パナソニックは”プラズマテレビ開発から把握していたPDPの本質的な長所”を液晶に変更した後にも失わないよう仕込みをしてきたのだ。

だからこそ、ヘキサクロマドライブのような広色域パネルの能力を活かした、他社にない考え方の機能を盛り込めだのだ。スペック指向ではなく、ユーザー体験指向。このあたりがパナソニックの生真面目さだと思う。

基礎がしっかりしているからこそ挑戦できる”ディスプレイ”の世界

しかし、生真面目に、愚直にテレビとしての画質に取り組んでいるからこそ、それ以外の機能も生きてくる。どんなに素晴らしい付加機能があったとしても、”テレビとして買った”のに画質が悪いのでは話にならない。しかし、基本である画質さえしっかりしていれば、いろいろな挑戦が行える。

AX800から搭載されている「マイチャンネル」も、その挑戦のひとつだ。放送、録画、YouTube、ビデオオンデマンドサービスなどから横断的にコンテンツを検索できるこの機能は、テレビ放送を映すだけではない「ディスプレイとしてのビエラ」を体現している。検索自体も、音声入力を採用したことで文字入力のストレスを軽減し、テレビならではのリラックス感を大切にしている。このあたりは、先だって掲載された西田宗千佳氏の記事に詳しい。

そうした中で、個人的に”よくぞ”やってくれたと感じているのは、初めての4Kビエラ以来、一貫してDisplayPort 1.2aに対応していることだ。4K品質を毎秒60フレームで完璧に表示できるソリューションを提供している。DisplayPortに対応するパソコンはとても多いので、さまざまな使い方が可能になると思う。もちろん、HDMI 2.0対応のHDMI入力端子は、HDCP 2.2対応かつHDMI 2.0の高速モードにも対応している。

スマートフォンやタブレットで放送中、録画済みの番組を外出先から視聴できる「Panasonic Media Access」をはじめとした新しい試みも含め、今後のさらなる発展を予感させる今年の新ビエラシリーズだった。

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