VIERA Station 4Kビエラは、プラズマを超えた

パナソニック・4Kハイエンド「ビエラ AX900」の画質の裏にあるものとは?

4Kテレビも普及期に入りつつあり、機能・サイズ・価格レンジの面で、かなりのバリエーションが生まれるようになってきた。各社ラインナップ強化を図っており、消費者としても選択肢が増えるのは、うれしい悩みだ。

とはいうものの、その中で、もっとも重要なのが「画質」であることに変わりはない。4Kの軸はやはり「画質」であり、4Kを買う人はまず画質の良さを求めるからだ。

そこでも、4Kが珍しかった頃とは、状況が変わりはじめている。

解像度の向上はベースラインであり、さらに「色」「原画忠実再現」などの点で大幅な改善を試みた製品こそが、4K世代の「ハイエンドテレビ」といえるものだ。そうした要素を備えたテレビを目指したのが、パナソニックの「ビエラ AX900シリーズ」だ。では、AX900シリーズはなぜ高画質になったのか、高画質にするためになにが必要なのか、という点について、効果と技術の両面からチェックしてみたい。

適切な超解像が「パネルにふさわしい解像感」を生む

繰り返しになるが、高画質な4Kテレビに必要なのは「高解像度であること」「原画忠実再現」「色」である。

まずは「高解像度」「原画忠実再現」の点からいこう。

4Kパネルを使えばそれだけで高解像度になる、と考えるのは、現状難しい。4K放送やネット配信もようやく始まってきたが、日常的に見るのは地上デジタル放送やブルーレイディスクの映像。最近はさらに、YouTubeなどのネット配信の映像も含まれるはずだ。すなわち、テレビは「様々なソースから得られる映像を大画面で美しく、リラックスして見るための機器」になっており、シンプルに単一のソースだけで解像感や画質を語るのが難しくなっているのだ。だから「4Kテレビだから4Kの解像度」とはシンプルに捉えず、「あらゆる映像を現状求めうる最高の解像感で楽しむために、4Kのパネルを使ったもの」と考えた方がいい。すなわち「すべての映像をパネルに合わせて最適な画質に調整する」のが本質であり、解像度の数字そのものにこだわる意味は薄れている。

そのために必要になるのは、もちろん「超解像処理」だ。2Kの映像を4Kにするだけでなく、YouTubeなどのネット動画をきれいにする機能も重要になる。AX900は、「4KファインリマスターエンジンPRO」で、そのすべてをカバーしている。

ここでポイントになるのは「原画判別技術」と「模様判別技術」だ。

超解像技術は、映像の解像度を上げる技術、といわれるが、その手法は元の映像によって異なる。超解像技術は元々は宇宙観測の分野で開発されたものであるが、AX900に採用されているのは、パナソニックが独自に開発した「モデルベース型超解像技術」である。従来機種では、入力信号の特徴を本体内にある巨大なデータベースと照合した上で、その場所場所に応じた高精細情報を決定し入力映像に付加することで高解像度化していた(データベース型超解像)。しかしデータベースを本体内に格納するにはデータ量に限度があった。この制約を乗り越えるため、AX900ではオフラインで膨大なデータベースから信号復元処理のモデルを作り、これをLSI化して超解像処理を行っている(モデルベース超解像)。

その技術をさらに最適な状態で活用するには、元々の映像がどういうものかを判別し、その情報を加味して処理する必要がある。これが「原画判別」。解像度はもちろん、放送なのか、ブルーレイなのかといったことも加味される。

さらにその後に、模様の細かい部分で最適な解像感を得るために「模様判別技術」を使った適応型ディテール超解像をかける。テクスチャ感の有無に合わせて適切な超解像をかけないと、ディテール全部のエッジが立ってしまい、映像から立体感が失われる。それを避けるためには、必要な部分をきちんと判断してディテールを高める必要がある。

こうした処理の結果、「4K」というパネル解像度に適切な画質にすることができる。さらにネット動画については追加で画質調整が行われているのだが、その辺については、次の記事で触れることとしたい。

IPS液晶パネルと高輝度LEDバックライトの組み合わせで「不利」を「有利」に

絵が用意できたら次は「色」だ。

テレビの色には様々な要素がある。だがその基本にあるのは「原画に忠実な映像を見せる」ということである。だが残念ながら、世の中にあるディスプレイデバイスには、どれも「得意な表現」と「そうでない表現」がある。その中で、適切なデバイスを選び、その良さを引き出した上で、不得意な部分をカバーして、ユーザーが求める「原画に忠実で満足のいく画質」を見つけ出すのがメーカーの仕事である。

そんな中、パナソニックに求められたのは「プラズマを越える画質」だ。パナソニックは2013年までプラズマディスプレイ・パネルを軸にしていた。プラズマの良さは明暗の表現力だ。バックライトの光を液晶とカラーフィルターを透過することで映像にする液晶ディスプレイと違い、プラズマは自発光。光る画素とそうでない画素の差がはっきりしていることが、映像にメリハリを生んでいた。また、視野角による色変化が出にくいため、大きなディスプレイでもより自然な色再現性だと感じられる点も大きかった。

だが、現在のパナソニックは液晶ディスプレイを主軸にしている。そこでハイエンドテレビを開発する上では、「4Kの解像感」という液晶ディスプレイの持つ強みを生かし、さらに、進化した液晶ディスプレイの持つ「輝度」を生かしつつ、プラズマの持っていた良さを液晶ディプレイの上で「さらに良いもの」として再現することが求められる。

そこで、パナソニックが最上位機種・AX900で採用したのは、高輝度な直下型LEDバックライトと、視野角特性が良好なIPS液晶パネルだ(※ 85V型はVAパネル)。

どちらにもトレードオフはある。直下型LEDバックライトはコストに跳ね返るし、IPS液晶は、液晶単体でのコントラストでは、他の液晶テレビが多く採用するVA型に劣る。しかし、そうした面を理解しつつも、高輝度直下型LED+IPS液晶を使ったことで、自然かつ高画質な、プラズマに勝るとも劣らない「高解像度・高画質テレビ」にした。

画質の特徴は、非常に自然な色合いであること、そして、明暗のバランスが非常にはっきりしていることだ。輝度が高くきらめき感のある場所ではハッとするほど明るく、暗い場所はぐっと暗い。しかもそこでも、色が失われているわけではなく、きちんと「明るさの中の色合い」「暗さの中の色合い」がある。

自然な色合いになる理由の一つは、視野角変化が少ないためだ。

一般的に液晶は視野角変化に弱い。画面が小さかった時は、テレビの前で見ていても、色変化のない「スイートスポット」から視野がずれるシーンは少なかった。だが、50型を越える大画面が基本になってくると、ソファに寝そべったり端に座ったりした程度で、スイートスポットからずれることが増えてきた。特に4Kでは、迫力・解像感を楽しむために、今までよりも近い距離で視聴する人が多い。そうすると、よりスイートスポットからはずれやすくなる。すると、俗に「液晶っぽい」といわれる白浮きが出てくるのだ。

しかし、IPS液晶は視野角変化に強く、少々の移動では色が変わらない。だから、4Kらしい解像感を味わう上で理想的な、50型を越える大型テレビの場合、よりすっきりとした、理想的な色合いを体感できる。

ただし、IPS液晶には弱点がある。すでに述べたように、コントラストでは劣るのだ。

そこで登場するのが、高輝度LEDバックライトだ。

AX900は、普及機種にあたるAX800と比較した場合、約2倍の輝度がある。高輝度LEDバックライトを採用した上に、液晶の開口率(光が液晶から表に出てくる割合)も高めているためだ。ピーク輝度が高いということは、それだけ明るい場所をより明るく感じられる、ということである。さらに、バックライトを直下型とし、微細な部分制御をかけることで、映像の中で暗いところをしっかりと暗くできる。明るさと暗さの差を大きくできるということは、すなわち、コントラストを高められる、ということである。

AX900の直下型LEDバックライトの分割数は正確には公表されていないが、100以上と業界内では最多クラスである。その上で、駆動方式を「5×5」とした。多くの直下型LEDバックライトでは、全体を「3×3」の領域単位で区切り、このエリアの中の映像の明暗に合わせ、バックライトのオンオフを制御する。しかしそうすると、中間調の制御が難しくなり、明部と暗部の差が実際の映像より出過ぎる副作用がある。また、光る部分の周囲に暗いところがある場合、本来暗いはずのところに明かりが回り込む「Halo(ハロー)」という現象も起きやすい。だが「5×5」制御では、中間調制御がより精密に行えるため、全体として自然なコントラスト感の再現が可能になる。その分処理は複雑になるが、パナソニックはそこをトレードオフとして呑んだのだ。

この合わせ技により、AX900はIPS液晶の利点だけを採り入れ、画質を大幅に上げることに成功した。

「自然さが信条のIPSなのに、コントラスト感は十分以上にある」という特徴は、こうした選択から生まれている。

液晶の「色ひずみ」を防止、ハイライトとディテールも復元

もう一つ、AX900の特徴は「色」だ。輝度感・コントラスト感が高まったことによって、全域での色の「コク」が増した。単に濃いわけではなく、明るいところでも暗いところでも、発色がかなり自然なのである。

パナソニック・ビエラ AXシリーズの発色の良さは、同社がAX800シリーズから採用している「ヘキサクロマドライブ」に依るところが大きい。通常、テレビでの色処理は、光の三原色である「R(赤)G(緑)B(青)」の3色を軸として行われる。だがパナソニックは、ここにその補色となる「C(シアン、青緑)M(マゼンタ、赤紫)Y(黄色)」の3軸を加え、6軸(ヘキサ)で処理することでより忠実な色再現性を狙っている。

実は液晶は、暗いところでは色がずれやすい。明るいところは綺麗なのに、暗いところはベタっとして変な色だな……という液晶テレビがあるのは、輝度が低い際に、入力された色通りの表示ができず、元々持っていた色とは違う色になってしまっているからだ。これは液晶というデバイスの欠点といえる。

元々、ヘキサクロマドライブは高輝度時の忠実な色再現に加え、低輝度時の液晶の欠点をカバーする目的がある。液晶の特質によって「ねじれた色空間」を補正し、低輝度時にも忠実な色とすることができるのだ。

高輝度LEDバックライトの能力を最大限に生かすと、ハイライトの部分などのきらめきは、今までのテレビよりずっと美しくなる。だが単純に光らせたのでは、色がおかしくなって高画質にならない。本来映像の撮影時には、そうしたハイライト成分がしっかり記録されているものなのだが、放送する際やブルーレイ・ディスクに記録する際、輝度信号と色信号がスポイルされるので、「撮影時の美しさ」が再現しづらいのだ。

それを補うのが「ダイナミックレンジリマスター」だ。白飛びして映像に埋もれてしまった情報から「撮影時の輝度や色の情報」を推定し、自然な色の乗ったハイライトと、その周囲にあるディテールの乗った色再現を目指している。高輝度であることと色再現性の高さを両立させることで、原画の持っていたきらめき感を再現しよう、という狙いだ。特にシネマモードでは、ダイナミックレンジリマスターの効果を生かし、暗部・明部ともに階調性が高まり、質感の高い映像表現が楽しめる。

AX900は、「プラズマの持つ色合い」と「液晶の輝度と解像感」を併せ持つ製品になった。以前のモデルよりも、「明るいきらめきはより美しく」「暗い部分はよりしっかりと暗い」テレビへと、満足度を上げている。

パナソニックの得意としてきた、そしてユーザーの支持してきたプラズマディスプレイと、液晶の違いは厳然としてある。だが、その違いに正面から取り組むことで、AX900は「液晶らしからぬ液晶テレビ」になった印象だ。

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