【バックナンバーインデックス】

第2回:低価格プロジェクタ4機種を試す
~ その4 プラスビジョン「HE-3100」(Piano)編 ~

今週は連載開始スペシャルウィークとして、30万円以下の低価格プロジェクタ4機種のレビューを1機種ずつ掲載します。
4機種目はプラスビジョン株式会社のHE-3100(Piano)です。

「低価格プロジェクタ4機種を試す」その他のレビュー
松下電器
TH-AE100編
ソニー
VPL-HS1(Cineza)編
エプソン
ELP-TS10編

HE-3100(Piano)

 DLP方式のデータプロジェクタでシェアの高いプラスビジョンによるホームシアター向けモデル。DLPながら30万円前後という価格で登場、ホームシアターファンの話題をさらった。

 シルバーやブルーなど豊富なカラーバリエーションを用意。専用のチルトスタンド「HE-TS101」も、同社の直販サイトで購入できる。


■ 設置性チェック~本体重量2kg。使いたいときに使うカジュアルユーザー向け

 Pianoは完売となった限定色の黄色を含めて6色あり、設置する部屋の雰囲気に合わせたものが選べる。本体の設置専有面積はA5ファイルサイズ程度と小さく、また本体重量も約2kgと軽い。「使いたいときにだけ持ってきて使う」というカジュアルユースに最も適した製品といえる。

 映像はレンズ位置よりも上方向に仰ぐように投影されるため、低い位置に設置しても映像はそれなりの高さに投影される。よって特別な設置台を用いず、普段利用しているリビング用の背の低いテーブルの上に置いて使用することも問題ない。

 標準的な床置きのフロント投影の他、リア投影、天吊り投影にも対応。小型ながらも幅広い設置性を備えた本機ではあるが、天吊り常設を考えている人には1つ注意してほしい点がある。既に述べたように本機は映像を仰ぐようにして投影する特性があるため、天吊りとして逆になった場合には、他機種よりも映像が下に来てしまうのだ。よほど高い位置に設置するか、あるいは天井が高いか、角度をつけて取り付けないと、適正位置に投影できない可能性がある。なお、設置台、天吊り金具などは直販サイトで販売されているので、そちらを参照いただきたい。

 台形補正はデジタルベースで行なう方式で、垂直方向のみの対応となっている。よってスクリーンに対して斜め横からの投影には対応していない。

電源ケーブルは、前から接続する 本体上の操作パネルでは入力切り替えとアスペクト比切り換えができるのみ。メニュー操作をするにはリモコンが必須 コンパクトながら必要とされる接続端子は一通り揃っている。プレゼン用としても考えている人はPC接続端子がDVI-D端子だけという点に留意されたい

 レンズは固定式でズーム投影には未対応。しかし短焦点レンズの採用により、100インチ(4:3)の最短投影距離は約3.5mとなっている。ファンの音はプレイステーション 2と同程度。静かな部屋では耳を澄ますとファンの回転音が聞こえるが、実際の使用中に気になるほどではない。


■ 操作性、接続性チェック~小型ボディながら一通りの接続端子を揃える

ボタンの数は少ないが操作性はいい。とはいえ、レイアウトに無駄があるのでリモコン自体はもうちょっと小さくてもよかった?
 電源オンから実際に映像が出てくるまでの時間は約50秒。今回紹介した4機種の中では最も遅いが、プロジェクタ製品としては標準的な待ち時間だ。

 リモコンは小型で、非常にシンプルなデザインとなっている。アスペクト比を切り換える[ASPECT]ボタン、入力切り換えボタン、カーソルキーを含むメニュー操作ボタン程度で、他機種と比べるとボタンの数はかなり少ない。

 しかし、入力切り替えがダイレクトで行なえ、アスペクト比のモード切替がワンストロークで行なえるなど、使い勝手自体はとてもいい。ただ、各ボタンが自発光しないのが残念。プロジェクタは暗闇で使うことになるので、なんらかの発光ギミックを導入して欲しかったところだ。

 また、リモコン受光部が本体背面にしかない点も、ユーザーは心得ておく必要がある。これは「ユーザーの座る位置が本体の後ろ側になる」という基本設置スタイルからきていると思われる。このため、天吊り投影した場合や、部屋の最後部に本体を設置した場合では、リモコン操作の際には明確に受光部を狙う必要が出てくる。

 背面パネルの接続端子は、S端子、コンポジットビデオ端子、コンポーネントビデオ端子、DVI-D端子と一通りのものが揃っている。

 今回紹介した4機種の中では唯一、音声入力端子を持っておらず、本体側に簡易スピーカーを内蔵していない。プロジェクタ内蔵のスピーカーはほとんど簡易再生用途にしか利用しないのでAVユースにおいてはほとんど利用する機会もないし必要性もない。ただ、本機をプレゼン用途にも流用しようと考えている人は、この点をあらかじめ頭に入れておいたほうがいいだろう。

 また、Pianoに備え付けられているDVI端子は、デジタル専用のDVI-D端子となる。DVI-D端子はアナログRGBを入力することは不可能なので、パソコンとの接続を考えている人は自分のマシンがDVI端子を備えているか確認しておかなければならない。


■ 画質チェック~ハイコントラストだが暗部表現が苦手

画素間の隙間が殆ど無いのがDMD素子を使ったDLP方式プロジェクタの最大の特長だ

 光出力は450ANSIルーメンで、今回紹介した4機種のうちではもっとも暗い。しかし、コントラスト比は700:1であり、このクラスとしてはトップクラスを誇る。

 これはPianoがDMD素子を使ったDLP方式を採用しているためだ。透過型液晶方式では光源からの光を透過させるかさせないかで表現するが、DLP方式では、明るいところは光源からの光を反射することで表現し、暗いところは光を反射しないことで表現する。

 液晶方式では暗部表現が光源の光が強くなればなるほど「光漏れ」が抑えられなくなり、黒が明るく、浮きがちになってコントラスト比が下がる。DLP方式では動作原理上それを抑えられるため、黒が締まるようになり、その結果コントラストが上がるのだ。

 パネル解像度は848×600ドット。PC画面を映すときには800×600ドットで、16:9のワイドアスペクト比のビデオ画面は848×480ドットで映すために、このようなパネル解像度になっている。

 各画素はほぼ正方形で、DMDらしく各画素感の隙間が殆ど無い。100インチ近い大画面に拡大投影した場合でも、各画素に分離感は殆ど無く、とても濃密な映像を見せてくれていた。フラットな面の表現においても、液晶でありがちな粒状感もない。

 しかし、色の表現についてはカラーフィルターを回転させて多色表現を行なう1チップDMD方式らしい、クセが垣間見られる。明るい色のグラデーションは美しいし、マッハバンドのようなものはほとんど見えず、自然な中間色表現が行なえている。その一方で、暗い色のグラデーションは、マッハバンドが非常に顕著に表れて見える。明るいところは明るいし、暗部は確かに暗く投影されるので、映像全体としてみるとハイコントラストなのだが、暗部の解像力が足りない感じを受ける。


画質調整項目一覧。色温度は標準ですでにやや高め プロスキャンモードとはプログレッシブ化ロジックの動作モードを指定するもの。通常はオートでOK 台形補正は垂直方向のみ


■ 映像系ソース~プログレッシブ入力には未対応

 暗いシーンの多い映画などでは、全体的に細部がよく見えないのが気にかかった。また、Pianoでは従来の4倍速でカラーフィルターを回転させているとのことだが、やはりシーンによってはカラーブレーキング(正しい色で見えない現象)が見え隠れする。とくに暗めの色で配色されたものが移動するシーン、例えば扉がスライドして開くような場面などでは、ざわついた感じのカラーブレーキングを顕著に感じる。しかし、この現象を感じるのは個人差があるので、購入前に自分の目で確かめてほしい。

 一方、明るい色調が中心のアニメなどでは、粒状感の少ない、面の表現の美しいDLPらしさが功を奏し、鮮烈な画を出してくれる。極論すれば、「Pianoは実写よりもアニメ向き」というのが筆者の率直な感想だ。

 また、Pianoはプリセットの色調セットとして「ビデオ」、「フィルム」、「グラフィックス」の3つを持っており、再生する映像の種類に応じて好みのものに切り換えることができる。

 ●「ビデオ」 明るいところが一層明るくなり、よりコントラストが高まった色合いになる。一般的なビデオソースを見るのに適したモード。
 ●「フィルム」 暗い階調表現が正しく行なえるよう、全体的に明るさが抑え気味になる。幾分か、前述の暗い箇所の解像力欠如が改善されるが、競合機と比べるとまだ見劣りする。
 ●「グラフィックス」 暗部も含めて全体的に明るくなる。映像鑑賞用と言うよりは文字や図版の視認性を重視した色調で、どちらかといえばプレゼン向きのモードといえる。

 いずれのモードにおいても、黒の沈み込みは保たれており、コントラスト自体は高い。また、色温度はこうした色調セットとは別に設定する仕組みとなっており、「標準」は緑が水色っぽく見えるほどかなり高めになっている。映像鑑賞の場合は「低」にしたほうがいい。

【DVDビデオ『ダイナソー』での投影画像】
 コンポーネント接続の投影画像をデジタルカメラ「COOLPIX995」で撮影した。ソースはDVDビデオの「ダイナソー」(国内版)。
 COOLPIX995の設定はオートで、撮影後に1,024×577ドットにリサイズし、下に掲載している部分画像を切り出した。部分画像をクリックすると全体(640×361ドット)を表示する。

(c)Disney Enterprises,Inc.

コンポーネント接続
DVI-D接続

視聴機材
 ・スクリーン:オーロラ「VCE-100」
 ・DVDプレーヤー:パイオニア「DV-S747A
 ・コンポーネントケーブル:カナレ「3VS05-5C-RCAP-SB」(5m)

 また、本機固有の機能として映像フィルタ機能がある。「ビデオフィルタ」、「ズームフィルタ」の2種類があるのだが、どう利くのか、直感的にわかりにくい。いろいろ試してみたところ、入力映像を表示前にフィルタリングするのが前者で、デジタル化した映像を拡大縮小処理する段階で適用するフィルタが後者のようだ。過度にかけるとぼやけるだけなので基本的にはOFFにするか、浅めにかける程度がいい。

 さて、一点忘れてはならないのが、本機はプログレッシブ映像の入力に対応していない。もちろん、ハイビジョンの1080i、720pもダメ。最近の「ホームシアター向け」の製品としてはちょっと適応能力に乏しい。

 しかし、一般的なNTSCインタレース映像等を入れた場合の表示品質は良好。DVDプレーヤーのプログレッシブ出力は受け付けてくれないが、Pinao自体が2-3プルダウン検出が可能な高性能プログレッシブスキャンコンバータを内蔵している。


■ ゲーム機、パソコン~PC入力はDVI-Dオンリー

投射距離と画面サイズ(16:9)
※台形補正機能は使用せず、ズーム最短の状態
 一般映像を投影したときと同じく、暗いシーンの多いゲームではカラーブレーキングが気になるが、応答速度そのものは良好でめだった残像は無い。明るい色調のゲームであれば、アニメを投影したときと同様、色乗りのよい映像が楽しめる。

 PCとの接続は、既に述べたようにDVI-D端子に限定される。カラーグラデーションはディザリングの感じもなく滑らかで美しいが、白黒グラデーションは暗部にやはり特有のざらつきが出てしまう。

 対応解像度は640×480ドット、800×600ドット、1,024×768ドットの3つ。800×600モードは、本機のパネル解像度が848×600ドットなのでリアル表示となるが、640×480ドットは拡大表示、1,024×768ドットは縮小(圧縮)表示となる。拡大縮小ロジックはなかなか優秀なようで、640×480ドット、1,024×768ドット両モードともにトゲもなく美しく表示できていた。1,024×768ドットにおける文字の視認性は良好、これならば実用レベルだと言える。

【HE-3100(Piano)の主な仕様】
DMDパネル 0.67型ワイド848×600ドット
レンズ 短焦点固定
光源 130W 高圧水銀ランプ
投影サイズ 36~200インチ
対応走査周波数 水平15~85kHz、垂直50~85Hz
対応ビデオ信号 480i
映像入力 DVI-D、コンポーネント(RCA)、コンポジット、S映像(各1)
消費電力 200W
外形寸法 235×198×91mm(幅×奥行き×高さ、突起部含まず)
重量 約2.0kg

(トライゼット西川善司)

□プラスビジョンのホームページ
http://www.plus-vision.com/
□製品情報
http://piano.plus-vision.com/jp/product/index.htm
□関連記事
【2001年10月17日】プラスビジョン、DLPプロジェクタ「Piano」用のチルトスタンド
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011017/plus.htm
【新プ】実売30万円を切るDLPプロジェクタ プラスビジョンHE-3100 「PIANO」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010705/npp11.htm
【2001年4月20日】プラス、30万円を切る世界最小・最軽量のDLPプロジェクタ
-ホームシアター市場本格参入第1弾
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010420/plus.htm

(2002年5月16日)


= 西川善司 =  ビクターの反射型液晶プロジェクタDLA-G10(1,000ANSIルーメン、1,365×1,024リアル)を中核にした10スピーカー、100インチシステムを4年前に構築。迫力の映像とサウンドに本人はご満悦のようだが、残された借金もサラウンド級(!?)らしい。
 本誌では1月の2002 International CESをレポート。山のような米国盤DVDとともに帰国した。僚誌「GAME Watch」でもPCゲームや海外イベントを中心にレポートしている。

[Reported by トライゼット西川善司]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 impress corporation All rights reserved.