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第2回:低価格プロジェクタ4機種を試す
~ その5:まとめ編 ~

今回は第2回「低価格プロジェクタ4機種を試す」のまとめ編です。

試用して得られた感想から、それぞれの特長を比較検討します。

松下電器
TH-AE100編
ソニー
VPL-HS1(Cineza)編
エプソン
ELP-TS10編
プラスビジョン
HE-3100(Piano)編


■ 100インチ画面を最安価で手に入れたい人に→TH-AE100

 100インチを投射距離約3mで映せ、実勢価格が18万円前後と非常に安価。「低価格で大画面」――これこそがTH-AE100の最大の特長だ。

 パネル解像度は、640×480ドット(VGA)をワイド化した858×484ドット。現行のDVDビデオソフト鑑賞やVHS系のアナログビデオソースを映すには問題ないが、縦解像度がハイビジョンソースを映すには不足気味。とはいえ、720pや1080iソースの簡易再生に対応しているのは立派だ。

 映像そのもののについては、解像度の低さから、粒状感が強く出る。この特徴的な画作りに納得がいかない人は他機種を選択した方がよい。

 設置面で、他機種になかった「三脚設置が可能」という要素はTH-AE100ならではの特徴。安定した設置ができ、邪魔なときはさっと片づけられるのがいい。


■ 斜め投射を行ないたい人に→VPL-HS1(Cineza)

 「斜め投射が可能」というふれこみで登場したVPL-HS1。これ以外の機能はオーソドックスで、「斜め投射」に魅力を感じなれば、同価格帯のライバル達に隠れてしまう。

 パネル解像度は800×600ドットで、このクラスとしては標準的。720p、1080iといったハイビジョンソースの簡易再生にも対応する。各画素が完全な正方形ではないのが、大画面投影時に気に掛かる。

 投射距離も今回取り扱った製品の中ではもっとも長く、狭い部屋で大画面という用途向きではない。また、標準状態ではコンポーネントビデオ入力やパソコン入力に対応していない点など、接続性で気になる点もあった。


■ オールマイティな一台→ELP-TS10

 100インチの投射距離は3m強。±10度の水平台形補正機能があるので、実は「斜め投射」にも対応している。今や、「斜め投射」ができるのはVPL-HS1だけではないのだ。

 パネル解像度は800×600ドット。TH-AE100のように各画素の隙間はあるが、パネル解像度が高いせいもあり、TH-AE100ほど気にならない。画素が正方形なので、VPL-HS1のような独特な粒状感もない。色深度は今回取り扱った機種の中では最も高く、グラデーション表現も美しかった。

 また、公称スペックは700ANSIルーメンだが、今回取り上げた機種のうちもっとも明るかったことも付け加えておく。数年前だと、エプソンのデータプロジェクタなどで投影したビデオソースの映像品質は「とりあえず映る」程度で、決して満足のいくものではなかったのだが、最近ではかなり改善されてきた。

 今回取り上げた4機種の中ではもっともオールマイティなポテンシャルを持った製品だといえるが、それでも不満点がないわけではない。特に気になったのは、D端子やコンポーネントビデオ端子との接続が専用のD-sub15ピン端子への変換ケーブルを利用しないとできないという点だ。本体サイズは大きいので、独立した端子としてレイアウトすることは決して難しくなかったはず。次期モデルではこの点については改善して欲しいところ。


■ 使いたいときに使うカジュアル派に→HE-3100(Piano)

 パネル解像度は848×600ドット。DLP方式なので各画素間の隙間はほとんどなく、映像全体として見ても、ほとんど粒状感は感じられない。明るい色のグラデーションも美しく出せる。

 しかし、暗部の解像力の足りなさ、そして暗い色の物体が移動するシーンなどで顕著に見られるカラーブレーキング現象が気になる。「1チップDMDによるDLP方式だから仕方ない」のは確かなのだが、それが気になるユーザーには向かないのもまた確か。また、「プログレッシブ入力に未対応」で簡易再生にも対応していないというのも、同価格帯の競合機と比べると見劣りする。

 HE-3100は、今回取り扱った4製品のうち最も小さく、そして最軽量だった。標準状態で上向きに映像が投射されるような光学設計がなされているため、低いテーブルに置いた状態でも、標準的な高さに映像が投射できる。使いたいときにテーブルに置いて使い、使わないときには片づけてしまう……といった、カジュアルな使用スタイルを想定した製品だといえる。


■ 今回取り上げた4製品を使って感じたこと

 低価格帯製品であっても「DVDビデオを大画面で見る」といった用途に限っては、「それなりに満足のいく映像が得られる」ということがわかったのは収穫だった。「DVD鑑賞」用途に限れば、どの製品を選んでも「失敗した」ということにはならないといっていいと思う。

 ただし、パソコン入力の対応度にはばらつきがあり、標準で備えている機種と、専用オプションが必要な機種に分かれる。パソコンとの接続を重視する人は、機種選定には注意する必要があるということだ。とはいっても、「接続不可」という機種がなかったのは、時代を反映してのことだろう。

 ハイビジョンソースに関しては簡易再生に対応するものと対応しないものに分かれたが、800×600ドット程度のパネル解像度では、720p、1080iの高精細さが表示しきれない。こうした映像ソースの表示を重視する人は、もうちょっと高いランクの製品の購入を検討した方がいい。


DVD「ダイナソー」の実写画像

各機種の投影画面をデジタルカメラ「COOLPIX995」で撮影した。COOLPIX995の設定はオート。下に掲載した部分画像をクリックすると、全体を表示する。

使用機材
 ・スクリーン:オーロラ「VCE-100」
 ・DVDプレーヤー:パイオニア「DV-S747A」
 ・コンポーネントケーブル:カナレ「3VS05-5C-RCAP-SB」(5m)
 ・アナログRGBケーブル:カナレ「3VDC05-1.5C」(5m)

【コンポーネント接続】
TH-AE100 VPL-HS1(Cineza) ELP-TS10 HE-3100(Piano)

【デジタル接続(DVI)】 【アナログRGB接続】
ELP-TS10 HE-3100(Piano) TH-AE100


100インチ投影時の最短距離(16:9)


【4機種の主な仕様】
  松下電器
TH-AE100
ソニー
VPL-HS1
(Cineza)
エプソン
ELP-TS10
プラスビジョン
HE-3100
(Piano)
投影デバイス 0.7型液晶パネル 0.7型液晶パネル 0.9型液晶パネル 0.67型DMD素子
解像度 858×484ドット 800×600ドット 800×600ドット 848×600ドット
レンズ 光学1.2倍ズーム 光学1.2倍ズーム 光学1.35倍ズーム 単焦点固定
明るさ 700ANSIルーメン (非公表) 700ANSIルーメン 450ANSIルーメン
光源 120W 120W 150W 130W
投影サイズ 40~200インチ
(16:9)
40~150インチ
(4:3)
30~300インチ
(4:3)
36~200インチ
(4:3)
入力対応ビデオ信号 480i、480p、1080i、720p 480i、480p、1080i、720p 480i、480p、1080i、720p 480i
映像入力 コンポーネント
(オプション接続時)

(アナログRGBと兼用)
S映像
コンポジット
アナログRGB
DVI-I
DVI-D
消費電力 180W 190W 240W 200W
外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
280×235×80mm 340×300×154mm 348×274×104mm 235×198×91mm
重量 約2.7kg 約3.9kg 約4.2kg 約2.0kg

□TH-AE100の製品情報
http://prodb.matsushita.co.jp/products/panasonic/TH/TH-AE100.html
□VPL-HS1(Cineza)の製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/Peripheral/Projector/VPL-HS1/
□ELP-TS10の製品情報
http://www.i-love-epson.co.jp/products/elp/elp_ts10/ts101.htm
□HE-3100(Piano)の製品情報
http://piano.plus-vision.com/jp/product/

(2002年5月21日)


= 西川善司 =  ビクターの反射型液晶プロジェクタDLA-G10(1,000ANSIルーメン、1,365×1,024リアル)を中核にした10スピーカー、100インチシステムを4年前に構築。迫力の映像とサウンドに本人はご満悦のようだが、残された借金もサラウンド級(!?)らしい。
 本誌では1月の2002 International CESをレポート。山のような米国盤DVDとともに帰国した。僚誌「GAME Watch」でもPCゲームや海外イベントを中心にレポートしている。

[Reported by トライゼット西川善司]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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