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テンキー付きマルチクレードル付属のNet MD対応MDレコーダ
松下電器「SJ-MR250」
発売時期/7月20日 価格/オープンプライス(実売価格4万円弱)

■ 主な機能と操作性

 松下電器の「SJ-MR250」は、同社のポータブルMD機としては初のNet MD対応MDレコーダ。現在、同社の録再タイプとしては、2001年7月発売の「SJ-MR220」が流通しているが、MR250は、その約1年ぶりの後継機となる。

 パッケージには、充電やタイトル入力などを行なうための「文字入力テンキー付きマルチクレードル」を標準で同梱。また、マルチクレードルの両脇に置いて使う、小ぶりなスピーカーも付属している。

 Net MD対応なので、もちろんMDLPもサポート。SP、LP2、LP4の各モードを再生できる。録音機能も一般的な機能を備えており、本体の光デジタル/アナログ入力を使ったほかの機器からのシンクロ録音や、プラグインパワー対応のマイク入力によるステレオマイク録音が可能。サンプリングレートコンバータも内蔵し、様々な機器からの録音に対応している。

 デザイン面では、本体表面に多数の大型スイッチを配したMR220から一転、パナソニック製品の統一イメージとなった「ミラーデザイン」採用している。ふた以外の箇所も金属製で、4万円前後の上級機として十分な高級感を備えている。外形寸法は80.4×74.6×20.1mm(幅×奥行き×高さ)。同じくNet MDに対応しているライバル機、ソニーの「MZ-N1」や、シャープの「IM-MT880」に比べると、若干だが厚ぼったさを感じる。

本当の意味でのミラーは、ふた側面一部のみ。指紋が残りやすいのが少しだけ気になった MDスロット部は片手でオープン可能。動作も軽い。奥に並んだ3つのボタンは、EQの切り替え、再生モードの変更などを行なう 右側面の入出力端子部。左からイヤフォン、光/アナログ入力、マイク入力

 本体表面には、録音開始、再生/停止、曲送り/曲戻しの各ボタンが配置されている。右側面にはボリュームとホールドスイッチ。曲送り/曲戻しはシーソー式で、押しごこちは少し硬めだ。大きさも小さく、特にボリュームは使いづらい。本体上部には3つのボタンが並び、再生モードや音質補正モードを切り替えるときに使用する。これらも硬くて小さいため、頻繁に押すと指の腹が痛くなってしまった。ボタンを硬くすることで、勝手にスイッチが入ってしまうという誤動作を防止しているのだろう。もっとも、再生や録音に関する操作はリモコンでほとんど対処できる。リモコンを常用する限り、本体スイッチ類が問題になることはない。

 電池は付属のガム型ニッケル水素電池のほかに、単3アルカリ電池も併用できる。LP2なら、付属充電池だけで約33時間、単3アルカリ電池との併用で約90時間の再生が可能。出張や旅行など、長期の使用にも十分対応できる。

 本体の液晶ディスプレイは、漢字・ひらがなの表示に対応。フォントは大きく、視認性は高い。1度に7文字まで表示でき、ディスプレイ上部には、レベルメーターも表示する。

 付属の液晶リモコンには、「新ワンフィンガー液晶リモコン」という名前がついている。操作の主体は、リモコン右側の十字キーだ。左右に曲送り/曲戻し、上下にボリュームアップ/ボリュームダウンが割り当てられており、中心を押し込むことで再生/停止が可能。良く使う機能が十字キー1つにまとめられており、直感的な操作が行なえる。また、リモコン自体の形状も手になじむデザインなので、慣れれば右手だけでも操れるようになるだろう。

 リモコンの表示も漢字・ひらがなに対応。本体ディスプレイのフォントとは雰囲気の異なる、縦長のフォントを採用している。また、リモコンのディスプレイ下部には、EQやや再生モードの切り替え、バックライト点灯用のボタンが並ぶ。バックライトは連続で約5秒間点灯する。

本体ディスプレイは、タイトルの漢字・ひらがなの表示が可能。タイトルの上にはトラックナンバーやレベルメーターが表示される リモコンは平型で手になじむ形状。十字ボタンもわかりやすい。ただし、上下左右方向に押そうとしたのに、押し込んでしまうというミスも多かった リモコンの液晶ディスプレイでは縦長のフォントになる。全角英数字なども縦長になるので違和感がない

 同梱のマルチクレードルには、USB端子、スピーカー出力、DC入力を搭載している。また、手前側には特徴の1つ、テンキーが配置されている。なお、一般的な充電用クレードルに比べると、本体が上を向く。机の上に置いた場合、ディスプレイの視認性や本体スイッチ類へのアクセスの点でメリットを感じた。

 マルチクレードルでできることは、充電、タイトル入力、トラック編集、PC接続のON/OFF、付属スピーカーでの音声再生。逆にいえば、マルチクレードルなしでは、これらの機能を使用できない。本体デザインがすっきりしたのはマルチクレードルに機能を集中したためだが、外出先や移動中にちょっとした編集を行ないたい場合、不便を感じるかも知れない。

 ただし、ほぼすべての録音・再生機能を本体のみで利用できるため、「出先では再生と録音、編集は帰ってから」という使用法なら、それほど不都合を覚えることはないだろう。機能分化による本体の軽量化や操作の簡略化を考えると、むしろ合理的なデザインだと感じる。Net MDも1台のPCに対してチェックイン・チェックアウトを限定しているので、特に問題になることはないだろう。

マルチクレードル。テンキーのある面はミラーだ テンキーのほか、EDIT、DELETE、ENTERといったボタンが並ぶ。PCとの接続は自動ではなく、マルチクレードルのENTERを押す必要がある マルチクレードルを後ろから見たところ。USB、付属スピーカー用の出力端子、DC INを搭載している。スピーカーの出音には、マルチクレードルが必要

 テンキーでのタイトル入力だが、携帯電話と同じ方式なので、慣れている人ならかなり高速かつ楽に入力できる。ただし、マルチクレードルで入力できるのは半角(英数字と半角カナ)のみ。漢字やひらがなを入力する場合は、Net MD上で行なった方が便利だろう。また、ボタンがかなり硬いので、それほど快適に入力作業が行なえるわけではない。PCに接続する環境があるなら、Net MDに頼った方が良い。

 一方、ディスクの編集作業は快適だ。一般的なMDプレーヤーでは、文字表示の少ないディスプレイと小さなボタンやダイヤルで行なうため、こうした作業はどうしても煩雑になりがちだ。しかしMR250なら、「EDIT」、「DELETE」、「ENTER」が独立して設けられている上、カーソルボタンなども大きい。このため、編集作業自体は比較的苦痛にならなかった。なお、編集機能は、DIVIDE、MOVE、ERASE(ALL、TRACK)、COMBINE、GROUP SETを装備している。


■ 音質

 SP、LP2ともに、イヤフォンでの音質は、中域に高い解像感を感じた。編集部所有のMZ-N1と比べても、ボーカルやアコースティックギターがつややかなため、なかなかの美音といえる。反面、他の帯域の音抜けがあまり良くない。そのため、全体的にもっさりとした印象を受けた。また、低域がソフトなので、ジャンルによっては物足りなさを感じるかもしれない。

 今回はジョー・サンプル「ピーカン・ツリー」、パット・メセニー・グループ「スピーキング・オブ・ナウ」、フィリッパ・ジョルダーノ「ロッソ・アモーレ」を中心に聞いてみたが、リバーブ成分の多い「ロッソ・アモーレ」でも、ボーカルが埋もれず、気持ちよく試聴できた。

 音質モードは、「NORMAL」のほかに「XBS-1」、「XBS-2」、「TRAIN」を選択可能。XBSは低音補強モードだが、比較的低音の薄いMR250の特性を改善してくれる。ただし、かなりブーミーになるので、好みが分かれるところ。

 TRAINはいわゆる「電車ポジション」で、高音などをカットすることで音漏れを防ぐモード。MZ-N1などのソニー製品に内蔵されている「AVLS」と似ているが、リミッターをかけてピークを整えるだけのAVLSに対し、イコライザを使用するTRAINの方が、より高度な音漏れ対策だといえる。ただし、音質自体はかなり悪くなるので、個人的には常用する気になれなかった。

スピーカーは、チタンコーンやネオジウムマグネットを採用した本格派。バスレフポートは背面についている 付属のイヤフォン。最近の新製品に良く付属しているタイプ

 付属のスピーカーは、3cm径フルレンジユニットを搭載したバスレフ型。使用時にはマルチクレードルに接続する必要がある。コーンの素材にはチタンを使用し、ネオジウムマグネットも採用している。2001年12月に発売したスピーカー付き再生専用モデル「SJ-MJ50」のヒットに倣った装備と思われるが、出音は、中域がなめらかで、予想以上にきれいな音だった。ただし、ユニット、エンクロージャとも小さいためか帯域が狭く、こじんまりとした印象を受ける。デスクトップでの聴取を考えた設計なのだろうが、むしろ編集時のモニタ用として便利だった。

 面白いのは、本体のみでは「NORMAL」、「XBS-1」、「XBS-2」、「TRAIN」の3種類だった音質モードが、マルチクレードル装着時には「NORMAL」、「XBS-SP」の2種類になること。「XBS-SP」は低域を極端に持ち上げる補正を行なうので、付属スピーカーの低域の薄さをかなり緩和してくれる。


■ Net MD

同梱のBeatJam Net MD対応版。製品版の「BeatJam-XX TREM」に比べると、CD書き込み機能などが省略されている
 パッケージに同梱されるソフトは、パナソニック専用のNet MD対応版「BeatJam」。2月に発売されたサブウーファ付きCD/MDシステム「SC-SV1」に付属していたのと同じものだ。

 主な特徴は、Net MD機器へのチェックイン・チェックアウト機能と、「カナ変換機能」を搭載していること。カナ変換機能は、英数と半角カナにしか対応していないMDプレーヤーを考慮したもので、タイトル中の全角文字を半角カタカナ、または半角英数字に変換する。

 MR250をはじめ、発売中のNet MD対応機器はすべて漢字・ひらがな表示に対応している。しかし、MDLPプレーヤーの中には、半角領域しか認識しない機種も多い。MR250で作成したMDを漢字・ひらがな表示非対応のプレーヤーで再生することが多い場合、有用な機能といえるだろう。

 なお、現行のNet MDポータブル機3モデル(MR250、MZ-N1、IM-MT880)について、Net MDでの転送速度を比べてみた。転送に使用したのは、ロッソ・アモーレの12トラック目、「ジュリエッタのバラード」。約5分23秒の曲だが、これをLP2(132kbps)でPCに記録し、各機種に転送してみた。ファイルサイズは5.1MB。転送に使ったPCは、CPUがPentium 4 1.6 A GHz、メモリがSDRAM 512MBという構成で、OSにはWindows XP Professionalをインストールしている。また、MR250付属のBeatJamに加え、MZ-N1に付属していた「OpenMG Jukebox」も転送ソフトに使用している。結果は次の通り。

【各ポータブルNet MD機器の転送時間】
 松下電器
SJ-MR250
ソニー
MZ-N1
シャープ
IM-MT880
BeatJam Ver.1.1.0.0約49秒約28秒約1分9秒
OpenMG Jukebox Ver.2.2約45秒約30秒約1分10秒

 発売時期が古いMT880が最も遅く、MZ-N1が最速となった。また、MR-250の場合、転送ソフトにより、若干の違いが出ているのが興味深い。


■ まとめ

 高級感あるデザインや、使いやすいリモコン、漢字表示への対応と、機能面での満足度は高い。また、編集機能をマルチクレードルに分離したアイデアも評価したい。まだ数の少ないNet MD対応機だが、購入時の選択肢に入れるべき製品だろう。音質も水準以上で、特にボーカルに強いコンプがかかったJ-POPSなどにはマッチすると思う。

 ただし、せっかくのテンキー入力が英数字と半角カナのみだったり、ボタンが硬くて使いづらかったりと、残念な部分もある。また、編集機能を搭載していない割には、それほど本体が小型・軽量化されていないのも惜しい。さらに、ラインアウトを装備していないという大きな欠点もある。「付属スピーカーがあるから必要ない」というコンセプトかもしれないが、やはり、手持ちのアンプにもつないでみたい。

 あとは4万円前後という価格をどうみるかだろう。現在、店頭価格で最も高いのがMR250の4万円前後で、MZ-N1が38,000円弱、MT880が37,000円前後といったところ。豪華な付属品を考えると妥当な価格設定なのかもしれないが、コアユーザーの中にはスピーカーを必要としない人も多いはず。販売戦略上のコンセプトからは外れるのだろうが、個人的には「スピーカーなしモデル」の登場を期待したい。

【電池持続時間】
 再生時録音時
SPLP2LP4SPLP2LP4
付属充電池約25時間約33時間約40時間約13時間約17時間約21時間
単3アルカリ電池約39時間約50時間約63時間約8時間 約13時間約16時間
付属充電池、単3アルカリ電池併用時約70時間約90時間約110時間約35時間約46時間約56時間

【主な仕様】
圧縮/伸張方式ATRAC/ATRAC3
周波数特性20Hz~20kHz
実用最大出力3.5mW×2ch
入出力入力端子光デジタル/アナログライン(M3)、マイク(M3)
出力端子ヘッドフォン(M3)
最大外形寸法80.4×74.6×20.1mm(幅×奥行き×高さ)
重量約97g(本体のみ)/約124g(付属充電池含む)

□松下電器のホームページ
http://www.matsushita.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn020516-1/jn020516-1.html
□関連記事
【6月14日】松下、スピーカー付属のNet MD対応ポータブルMDレコーダ
―漢字表示が可能、クレードルに10キー装備
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020614/pana.htm
【3月7日】【新プ】Net MD対応のサブウーファ付きCD/MDシステム 松下電器「SC-SV1」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020307/npp24.htm
【1月7日】【DAL】第40回:シャープ「IM-MT880」に見るNet MDの実力
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020107/dal40.htm

(2002年7月25日)

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