~ その2:普及価格帯PCIオーディオカードの実力 ~ |
DELTA Audiophile2496 | ECHO DIGITAL AUDIO MIA | ONKYO SE-80PCI |
まずM-AUDIOの「Delta Audiophile2496」は、DTM市場などで非常に人気のある低価格オーディオカードで、実売2万円程度の製品。Deltaシリーズの中のエントリーモデルとして位置付けられているものだが、カード上にアンバランスのアナログ2chと(RCA端子)とS/PDIFの入出力とともにMIDIの入出力も備えており、オールマイティーな仕様といえる製品。
CubaseやLogic、SonarといったDAWソフトで用いると、レイテンシーが小さいということでも定評がある。また、常駐型の設定ユーティリティでは、各入出力のレベルを設定できるようになっている。
Audiophile2496の設定ユーティリティ | 8つのバーチャル出力を持つMIA |
MIAはECHO DIGITAL AUDIOの製品で、標準価格は39,800円。国内ではフックアップが扱っている。ECHOはLayla24、Mona、Gina24などのラックマウント型ブレイクアウトボックスを使うハイエンド製品を発売している。
このMIAはその一番ローエンドに位置付けられる製品で、24bit/96kHzに対応。オーディオ端子をカード上に搭載し、アナログ端子としては、入出力ともにバランス/アンバランス対応のTRSフォンを2つずつ持つ。デジタルはコアキシャルのS/PDIF入出力を備えている。ただし、内部的には8つのバーチャル出力を持っており、それがドライバとして搭載されている内部のミキサーを通じて2チャンネルにミックスされて出力されるようになっている。
そして3つ目のSE-80PCIはONKYOの製品。実売8,000円程度で購入できる手軽なデバイスで、サウンドチップにESS TechnologyのMaestro M3iを搭載する。アナログ2chの入出力と、デジタル入出力としてオプティカルのS/PDIFを備えており、アナログ部分は金メッキ端子を用いるなど、回路・配線への気配りが感じられる。
ただし、サンプリングレートは48kHz固定で、サンプリングビット数も16bitのため、AudiophileやMIAとは異なるジャンルの製品だろう。価格的に考えてもサウンドカードの上位版という表現がいいのかもしれない。
なお、個人的にはSE-80PCIのセッティングに苦労してしまった。PCのケースの形状の問題で、SE-80PCIを挿すことができなかったのだ。SE-80PCIでは、RCA端子が大きく出っ張っているとともに、かなり端に設置されているため、私のマシンの場合、物理的につなぐことができなかった。仕方なく、SE-80PCIのバックブラケットを取り外し、やや不安定な状態で実験を行なった。
■ ノイズの少ないMIA。ドライブのアクセス音は影響少
では、さっそく実験結果について見ていこう。まずは入出力を直結し、何も再生しない無音の状態でレコーディングしたらどれくらいのノイズが乗るかという実験から。それぞれの結果をグラフで見れば、その差はハッキリわかるだろう。ちょっとスケールが違うので、わかりにくいが、この結果を見る限りMIAがダントツにいい。-90.3dBという小さなレベルのノイズが出ているものの、その出方も少なく、DCオフセットもない。これはハードウェアの構造が、Audiophile2496やSE-80PCIと大きく異なることが要因となっているのだろう。
Audiophile2496 | MIA | SE-80PCI |
MIAのみは、バランスケーブルで入出力ともに接続できるため、ノイズの影響を受けにくい。また入出力レベルも民生機が扱う-10dBvのほかに+4dBvのモードも持っており、これも有効に働いているはずだ(ここでは+4dBvで計測)。Audiophile2496の結果も、レベル的にはMIAのものとそれほど変わらないが、ピークはもう少し大きく、信号も完全にランダムなノイズとなっている。一方のSE-80PCIは-75dB程度のノイズが入っており、MIAやAudiophileとは明らかに質が違うものであることがわかる。
次に、CD-ROMドライブやHDDの動作中にレコーディングしてみた。結果はグラフの通りだ。先ほどのものと比較しても、ほとんど違いは見受けられない。よく、「レコーディングするとドライブのアクセス音が入ってしまう」と言う人がいるが、マシンの環境にもよるのかもしれない。前回のものを含め、これまでの実験からそうした状況は見受けられなかった。
Audiophile2496 | MIA | SE-80PCI |
次に行なったのが、-20dBの矩形波をレコーディングし、その波形がどのくらい歪むかを見るというもの。これについては、前回もあまり差はなかったが、それは今回も同様だった。高性能なデバイスならもっとキレイな波形になるのではと思ったが、なかなかそうも行かないようだ。
Audiophile2496 | MIA | SE-80PCI |
4番目の実験は、これらのノイズを周波数帯ごとに見るとどうなっているのかを見るもの。具体的には1kHzのサイン波をレコーディングした際の周波数成分がどうなっているかを見る実験である。
ノイズの大きさは1番目の無音を録音する実験からもある程度予測できるが、これを見るとより状況がハッキリわかる。やはり結果はMIA、Audiophile2496、SE-80PCIの順となっており、特にSE-80PCIは倍音成分以外のノイズがかなり入り込んでいるのがわかる。
Audiophile2496 | MIA | SE-80PCI |
最後はスウィープ信号を使った周波数特性を見るもの。どれだけ低域から高域までフラットに音が出ているか、フラットにレコーディングできるかを見る実験であるが、これはノイズとはまた少し次元の違ったテストであり、必ずしもノイズの状況には連動しない。とはいえ、これら3つの結果からはMIAが健闘している。低音もフラットであるし、高域もかなり伸びている。AudiophileやSE-80PCIも、それほど目立って大きな差はない。その意味では、いずれの製品もまずまずであるといっていいだろう。
Audiophile2496 | MIA | SE-80PCI |
次回は、USBデバイス3製品を取り上げることを予定している。
□M-AUDIOのホームページ
http://www.m-audio.co.jp/
□製品情報(DELTA Audiophile2496)
http://www.m-audio.co.jp/products/deltaAP/deltaAP.html
□ECHO DIGITAL AUDIOのホームページ
http://www.echoaudio.com/
□製品情報(MIA)
http://www.hookup.co.jp/products/soundcard/echo/mia.html
□オンキヨーのホームページ
http://www.onkyo.co.jp/
□製品情報(SC-80PCI)
http://www2.onkyo.co.jp/product/products.nsf/view/7FD2EE9805D6554249256BC000258507
□関連記事
【1月20日】【DAL】PC用オーディオデバイスの音質をチェックする
~ その1:USBオーディオ、M/B、サウンドカードを検証 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030120/dal84.htm
【1月6日】【DAL】PC用オーディオデバイスの音質をチェックする
~ 序章:ノイズ、レベル、波形変化の検証法 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030106/dal83.htm
(2003年2月3日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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