~「Plus! アナログレコーダ」に見るお手軽ノイズリダクション~ |
初回起動画面 | 録音レベルの調整 |
ただ、これまでDigital Audio Laboratoryにおいて、ノイズリダクションの実験をする際は、こうした方法はとっていない。予めノイズが入ったWAVファイルを用意しておき、それに対してヒスノイズ除去やハムノイズ除去などの処理を施すという手順であったが、どうもこのソフトでは、そうした既存のファイルに対するノイズリダクション処理はできないようだ。
仕方ないので、用意したデータをS/PDIFで出力するとともに、このソフトで取り込もうかと考えたのだが、あまり一般的な方法ではないので、単純にWindows Media Playerで再生するとともに、それをそのまま内部的に取り込むという形にした。
とりあえずレベル調整を行なった後、次の画面で録音ボタンを押すとレコーディングが開始される。この際、曲間の無音状態を自動検出し、トラックを切り分けしてくれるのはなかなか便利だ。詳細ボタンを押せば、トラック分けをするか否かの設定もできる。テープやレコードから録音する場合、利用価値は高い。今回は、Windows Media Playerで3つのサンプルを間隔を置いて再生したため、曲間は完全な無音となったが、きれいに30秒ずつ切り分けることができた。もちろん、マニュアルでのトラック分割も可能だ。
録音の開始 | 無音部分によるトラック分割も可能 | トラックの分割結果 |
そして、次の画面に進むと、今回のテーマであるノイズリダクションの設定画面となる。が、やや拍子抜けという感じで、設定項目はたった2つのみ。レコードのプチプチいうノイズであるクリップノイズやクラックルノイズを取り除くための「ポップノイズを除去する」と、テープなどの「サー」というノイズを取り除く「ヒスノイズを除去する」という2つのチェック項目があるのみ。
ここで用意したノイズ入りのサンプルはクラックルノイズのもの、ヒスノイズ入りのもの、そして電源のブーンというノイズであるハムノイズ入りのものの3つ。1回の処理では同じ設定で行なってしまうため、実験は3回に分けて行なった。つまりヒスノイズ用に「ヒスノイズを除去する」、クラックルノイズ用に「ポップノイズを除去する」、ハムノイズ用には設定がないので、両方をチェックした状態で行なった。
しかし、さらに次の画面に進んでもう1つガッカリ。WAVでの保存はできず、Windows Media Audioでの保存しかできない。せっかくWindows Media 9では圧縮による劣化のないLosslessがあるのに、それも選択できず、標準のWMAだけなのだ。ただ、32~320kbpsの範囲でビットレートの変更は可能。ここでは、実際にノイズ除去の結果がどうなったかを聞いていただくため、128kbpsで保存することにした。
この保存の最中の画面を見ると、面白いクレジットを発見。このノイズリダクションは「Cool Edit」のエンジンで行なっていることがわかった。以前、このCool Editについては、サンプリングレートコンバートやピッチシフトなどの実験は行なったが、ノイズリダクション機能はチェックしていなかった。機会があれば改めて行ないたい。
ノイズ除去の設定 | 保存ダイアログ。Losslessは設定できない | 保存中の画面。右下に「Cool Edit」のロゴが |
ヒスノイズ | hiss.wma(505KB) | ヒスノイズ入りデータを「ヒスノイズを除去する」で処理 |
クラックルノイズ | cracle.wma(499KB) | クラックルノイズ入りデータを「ポップノイズを除去する」の処理を施したもの |
ハムノイズ | hum.wma(499KB) | ハムノイズ入りのデータを「ヒスノイズを除去する」、「ポップノイズを除去する」の2つで処理 |
オリジナル(参考) | original.mp3(469KB) | Areareaの「唄わなきゃ」の出だし部分。ノイズを入れる前のMP3ファイル |
【Arearea】マキシシングル:唄わなきゃ AreareaはRINO(ボーカル)、YUKI(ピアノ)の2人からなるポップスユニット。3曲入りのこのマキシシングルは、全曲ピアノ、ボーカルのみのシンプルな構成ながら心に染みる作品に仕上がっている。
Arearea (C)REALROX |
■ ヒスノイズ、ハムノイズは除去不能。ほかのソフトは結構使える
さて、結果の3つのファイルを聴いてみてどうだろうか? レコードのプチプチいうノイズはかなりキレイに除去されている。が、ヒスノイズは、若干小さくなったようにも思えるが、ほとんど効いていない。これまでいろいろなソフトで試したが、今回の効き目はその中でも今ひとつ。またハムノイズについては、そもそも設定がなかったわけだが、まったくダメという結果になった。いろいろなノイズリダクションソフトがある中、安いとはいえ、本格的に使うには良い選択肢とはいえそうにない。
ただし、Plus! Digital Media Edition付属のほかのソフトは、まずまず使える。たとえば、Plus! オーディオコンバータはWindows Media Encoderがなくても手軽にLosslessやVBR(可変ビットレート)への変換ができるし、Plus! CD ラベルメーカーも数多くのテンプレートが用意されており、簡単にラベル印刷ができる。またサウンド系ではないが、デジカメの写真データにナレーションやBGMを入れてムービー化してしまうPlus! フォトストーリーなどはお遊びソフトとして結構使えた。
Plus! オーディオコンバータ | Plus! CD ラベルメーカー |
10種類の機能で2,800円(ダウンロード版は2,500円)という価格を、どう考えるかはユーザー次第。ただ、このソフト、アクティベーション(2台分)が必要で、この価格帯のソフトに、そこまでしなくても……と思ったのは私だけだろうか。
□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□製品情報
http://www.microsoft.com/japan/plus/plushome.asp
□ダウンロード版購入サイト
http://www.microsoft.com/japan/plus/dme/partners.asp
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【2002年9月2日】【DAL】形編集ソフトの性能とは?
~ その4:オンラインソフト4種 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020902/dal69.htm
(2003年4月7日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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