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第95回:マイクロソフト「Plus! Digital Media Edition」を試す
~「Plus! アナログレコーダ」に見るお手軽ノイズリダクション~


 先日、マイクロソフトからWindows Media 9のオプション「Microsoft Plus! Digital Media Edition」が発売された。この中には、ノイズリダクション機能を装備した「アナログレコーダー」が装備されている。そこで、今回はこのアナログレコーダの性能を中心に、Microsoft Plus! Digital Media Editionについて紹介する。



■ Plus! で追加されるもの

 マイクロソフトはWindows XPの発売と同時に、XPのボーナスパックとして「Microsoft Plus! for Windows XP」を発売している。この中にはWindows Media Playerの強化ツールとして、Windows Media Playerを音声で操作する「Plus! WMP音声コマンド」、MP3ファイルをWMAに変換する「Plus! MP3オーディオコンバータ」ほか4つのソフトと、スクリーンセーバーとテーマの各種、またゲームなどが収録されていた。

 このPlus!とは別に4月4日に発売されたのが「Microsoft Plus! Digital Media Edition」だ。これはWindows Media 9シリーズ用の拡張パックという位置付けで、パッケージ版で2,800円、ダウンロード版で2,500円という安価なソフトだ。

 以前も何度か触れたとおり、Windows Media 9では、オーディオ機能がかなり拡張されており、可逆圧縮のWindows Media Audio Losslessや、24bit/96kHzや5.1chのオーディオが扱えるWindows Media Audio Professionalをサポートするなど、高機能化が著しい。

 今回のPlus! Digital Media Editionは、Windows Media 9の高度な機能を、初心者でも簡単に扱えるようにしたアプリケーション群らしい。具体的には、次の10種類のソフトで構成されている。

●Plus! パーティ モード
 全画面表示専用のスキン

●Plus! ダンサー
 11種類の3Dダンサー達が、デスクトップで踊るソフト

●Plus! アナログレコーダ
 テープやレコードなどのアナログ音源をPCに取り込み、デジタルファイルに変換する。デジタルファイルへの変換プロセスの中で、スクラッチノイズなども削除できる

●Plus! オーディオ コンバータ
 音楽ファイルの形式を簡単に変換できる。音質を保ちながらファイルサイズをコンパクトにすることも可能

●Plus! CD ラベル メーカー
 アーティスト名、曲名リスト、アルバム名などの情報が入ったオリジナルCDラベル、CDジャケット、ブックレットなどが作成できる

●Plus! 目覚まし時計
 Windows Media Playerのメディアライブラリに保存している曲をアラームとして設定できる。音楽の再生時間を調整できるスリープタイマーも設定可能

●Plus! 特殊効果と切り替え効果
 「Microsoft Windows ムービーメーカー 2」用の50種類の特殊効果や切り替え効果を収録

●Plus! シンク & ゴー
 お気に入りの音楽やニュースなどのコンテンツをPocket PCに転送できる。プロバイダ提供のコンテンツには、更新すると自動的に転送されるものもある

●Plus! スキンコレクション
 Windows Media Playerの外観を変更するスキン集

●Plus! フォトストーリー
 手持ちの画像にナレーションやBGMを入れる機能。できあがったストーリーはWebに公開したり、電子メールで送信できる

 一番気になるのがPlus! アナログレコーダだ。これまでDigital Audio Laboratoryでもいろいろなノイズリダクションソフトを検証してきたが、ついにマイクロソフトまでもがこの市場に参入したということになる。さっそくチェックしてみた。


■ ノイズリダクションは録音時に指定

 起動すると、まず簡単な説明画面が表示された後、録音レベルの調整画面へと進む。この画面は、外部のテープレコーダやレコードをサウンドカード経由で録音する際、最適なレベルに自動調整してくれるというもの。ラジカセなどが装備している自動音量調整機能とは異なり、ピークを探して、クリップしないように入力音量を調整するためのものなので、変な心配はいらない。

初回起動画面 録音レベルの調整

 ただ、これまでDigital Audio Laboratoryにおいて、ノイズリダクションの実験をする際は、こうした方法はとっていない。予めノイズが入ったWAVファイルを用意しておき、それに対してヒスノイズ除去やハムノイズ除去などの処理を施すという手順であったが、どうもこのソフトでは、そうした既存のファイルに対するノイズリダクション処理はできないようだ。

 仕方ないので、用意したデータをS/PDIFで出力するとともに、このソフトで取り込もうかと考えたのだが、あまり一般的な方法ではないので、単純にWindows Media Playerで再生するとともに、それをそのまま内部的に取り込むという形にした。

 とりあえずレベル調整を行なった後、次の画面で録音ボタンを押すとレコーディングが開始される。この際、曲間の無音状態を自動検出し、トラックを切り分けしてくれるのはなかなか便利だ。詳細ボタンを押せば、トラック分けをするか否かの設定もできる。テープやレコードから録音する場合、利用価値は高い。今回は、Windows Media Playerで3つのサンプルを間隔を置いて再生したため、曲間は完全な無音となったが、きれいに30秒ずつ切り分けることができた。もちろん、マニュアルでのトラック分割も可能だ。

録音の開始 無音部分によるトラック分割も可能 トラックの分割結果

 そして、次の画面に進むと、今回のテーマであるノイズリダクションの設定画面となる。が、やや拍子抜けという感じで、設定項目はたった2つのみ。レコードのプチプチいうノイズであるクリップノイズやクラックルノイズを取り除くための「ポップノイズを除去する」と、テープなどの「サー」というノイズを取り除く「ヒスノイズを除去する」という2つのチェック項目があるのみ。

 ここで用意したノイズ入りのサンプルはクラックルノイズのもの、ヒスノイズ入りのもの、そして電源のブーンというノイズであるハムノイズ入りのものの3つ。1回の処理では同じ設定で行なってしまうため、実験は3回に分けて行なった。つまりヒスノイズ用に「ヒスノイズを除去する」、クラックルノイズ用に「ポップノイズを除去する」、ハムノイズ用には設定がないので、両方をチェックした状態で行なった。

 しかし、さらに次の画面に進んでもう1つガッカリ。WAVでの保存はできず、Windows Media Audioでの保存しかできない。せっかくWindows Media 9では圧縮による劣化のないLosslessがあるのに、それも選択できず、標準のWMAだけなのだ。ただ、32~320kbpsの範囲でビットレートの変更は可能。ここでは、実際にノイズ除去の結果がどうなったかを聞いていただくため、128kbpsで保存することにした。

 この保存の最中の画面を見ると、面白いクレジットを発見。このノイズリダクションは「Cool Edit」のエンジンで行なっていることがわかった。以前、このCool Editについては、サンプリングレートコンバートやピッチシフトなどの実験は行なったが、ノイズリダクション機能はチェックしていなかった。機会があれば改めて行ないたい。

ノイズ除去の設定 保存ダイアログ。Losslessは設定できない 保存中の画面。右下に「Cool Edit」のロゴが

ノイズリダクションの結果
ヒスノイズ hiss.wma(505KB) ヒスノイズ入りデータを「ヒスノイズを除去する」で処理
クラックルノイズ cracle.wma(499KB) クラックルノイズ入りデータを「ポップノイズを除去する」の処理を施したもの
ハムノイズ hum.wma(499KB) ハムノイズ入りのデータを「ヒスノイズを除去する」、「ポップノイズを除去する」の2つで処理
オリジナル(参考) original.mp3(469KB) Areareaの「唄わなきゃ」の出だし部分。ノイズを入れる前のMP3ファイル

 【Arearea】マキシシングル:唄わなきゃ
 AreareaはRINO(ボーカル)、YUKI(ピアノ)の2人からなるポップスユニット。3曲入りのこのマキシシングルは、全曲ピアノ、ボーカルのみのシンプルな構成ながら心に染みる作品に仕上がっている。

Arearea (C)REALROX
http://www.arearea.net/


■ ヒスノイズ、ハムノイズは除去不能。ほかのソフトは結構使える

 さて、結果の3つのファイルを聴いてみてどうだろうか? レコードのプチプチいうノイズはかなりキレイに除去されている。が、ヒスノイズは、若干小さくなったようにも思えるが、ほとんど効いていない。

 これまでいろいろなソフトで試したが、今回の効き目はその中でも今ひとつ。またハムノイズについては、そもそも設定がなかったわけだが、まったくダメという結果になった。いろいろなノイズリダクションソフトがある中、安いとはいえ、本格的に使うには良い選択肢とはいえそうにない。

 ただし、Plus! Digital Media Edition付属のほかのソフトは、まずまず使える。たとえば、Plus! オーディオコンバータはWindows Media Encoderがなくても手軽にLosslessやVBR(可変ビットレート)への変換ができるし、Plus! CD ラベルメーカーも数多くのテンプレートが用意されており、簡単にラベル印刷ができる。またサウンド系ではないが、デジカメの写真データにナレーションやBGMを入れてムービー化してしまうPlus! フォトストーリーなどはお遊びソフトとして結構使えた。

Plus! オーディオコンバータ Plus! CD ラベルメーカー

 10種類の機能で2,800円(ダウンロード版は2,500円)という価格を、どう考えるかはユーザー次第。ただ、このソフト、アクティベーション(2台分)が必要で、この価格帯のソフトに、そこまでしなくても……と思ったのは私だけだろうか。


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□製品情報
http://www.microsoft.com/japan/plus/plushome.asp
□ダウンロード版購入サイト
http://www.microsoft.com/japan/plus/dme/partners.asp
□関連記事
【4月4日】MS、WM9拡張ツール「Plus! DME」のダウンロード販売を開始
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030404/ms.htm
【3月20日】マイクロソフト、WM9を拡張する「Plus! Digital Media Edition」
-Plus! ダンサーに初回限定で三瓶も収録
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030320/ms.htm
【2002年9月2日】【DAL】形編集ソフトの性能とは?
~ その4:オンラインソフト4種 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020902/dal69.htm

(2003年4月7日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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